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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科58巻2号

2003年02月発行

雑誌目次

特集 胆囊癌NOW

胆管拡張を伴わない膵胆管合流異常と胆囊癌―予防的手術は理論的か

著者: 高尾尊身 ,   今村博 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.151 - P.156

 要旨:膵胆管合流異常症(以下,合流異常症)における予防的手術の適応に関して,胆道粘膜の前癌病変部とMUC1およびp53蛋白発現との関係を免疫組織学的に検討した.MUC1とp53蛋白は合流異常症例の癌部で高い発現率を示し,胆管拡張の有無にかかわらず胆囊粘膜の異型上皮部で正常上皮と炎症部に比べて有意に高い発現を認めた.また,胆管拡張例の胆管粘膜では異型上皮部にMUC1の高い発現を示したが,p53蛋白は陰性であった.一方,胆管非拡張例の胆管粘膜では非合流異常症例と同様にMUC1とp53蛋白はともに陰性であった.したがって,合流異常症では予防的手術は必須であるが,術式の選択として胆管拡張型では拡張胆管切除と胆囊切除を伴う分流手術が,非拡張型では胆管に異常がみられない限り胆囊切除で十分と考えられる.

慢性胆囊炎と胆囊癌の鑑別診断

著者: 金光敬一郎 ,   平岡武久 ,   辻龍也 ,   高森啓史 ,   田中洋 ,   生田義明 ,   坂本快郎

ページ範囲:P.157 - P.164

 要旨:慢性胆囊炎と胆囊癌の鑑別診断について,自験例と文献上からその鑑別の要点について検討した.鑑別上問題となる病態は慢性胆囊炎で胆石充満や限局性壁肥厚を示す場合で,平坦型胆囊癌の合併や胆囊癌との鑑別診断が問題となる.これらの鑑別診断には超音波検査のほかに造影CT,造影MRIが有力で,その壁構造の変化を検索し,また肥厚した壁の造影状態を観察することで鑑別が行われているのが現状である.特に黄色肉芽腫性胆囊炎や平坦型胆囊癌の術前診断は現状でも難しく,今後の画像診断法の進歩に負うところが多い.最終的には術中エコーを詳細に検討し,胆囊粘膜層の連続性,周辺臓器と病変の関係を把握し,鑑別診断することが肝要である.

m/mp胆囊癌の診断と治療方針

著者: 新井田達雄 ,   吉川達也 ,   高崎健

ページ範囲:P.165 - P.167

 要旨:m/mp癌の存在診断は術前に困難である症例が多い.隆起を主体とする癌や膵・胆管合流異常が併存する場合はEUSなどの画像診断の進歩により比較的容易に術前存在診断は可能であるが,胆石合併例,慢性・急性炎症時や石灰化胆囊などがあると存在診断は困難で,術中・術後の病理組織診断で初めて癌と診断されるものが多い.特にⅡ型の表面型の術前診断は現時点にても難渋している.したがって,術中胆囊粘膜の不整を見つけたならばただちに迅速凍結組織診と周囲のリンパ節生検を行うべきである.m癌ならば全層切除を伴う胆囊摘出術,mp癌ならば全層切除を伴う胆囊摘出術+D1のリンパ節郭清を行えば予後は良好である.

ss胆囊癌の治療をどうする―主として胆囊床切除の立場から

著者: 三宅秀則 ,   藤井正彦 ,   佐々木克哉 ,   鷹村和人 ,   高木敏秀 ,   田代征記

ページ範囲:P.169 - P.172

 要旨:漿膜下に浸潤した胆囊癌は胆囊静脈経路やリンパ行性に肝臓のS5とS4aの領域に主として浸潤しやすいとされており,筆者らの施設では癌からの距離を十分にとるという考えのもとss胆囊癌に対してはS5+S4aの区域切除を最近では標準術式としている.しかし,胆囊摘出や胆囊床切除でも予後が良好なss癌症例もある.癌占居部位が腹膜側で,術中エコーでは明らかなss浸潤の所見がなく,mpまでかssまで及んでいるか判別困難で,術後検索でss癌と診断されるような症例でリンパ節転移が陰性の症例に対して胆囊床切除が適応となると考える.病変が肝臓側に及んでいることや漿膜下への浸潤が強く疑われる症例では,肝S5+S4a区域切除に切り替えることが望ましい.

ss胆囊癌の治療をどうする―主として肝S4a,S5切除の立場から

著者: 木下壽文 ,   原雅雄 ,   大堂雅晴 ,   平城守 ,   今山裕康 ,   奥田康司 ,   青柳成明 ,   白水和雄

ページ範囲:P.175 - P.180

 要旨:胆囊癌の術式の選択においては癌腫の壁深達度がきわめて重要である.ss胆囊癌(以下,ss癌)は早期癌と進行癌の中間の進行度と位置づけられ,治療法により成績向上が期待されている.ss癌以上では多彩な進展様式を示すためリンパ節転移,肝浸潤,肝十二指腸間膜浸潤の程度により術式を選択すべきである.胆囊癌における肝への進展様式は直接浸潤,リンパ行性転移,胆囊静脈を介する血行性転移などが関与している.ss癌の治療成績向上のためにはリンパ節郭清と肝切除範囲が問題である.当科では以前はss癌に対して肝床切除術(いわゆる胆囊床切除術)を基本としてきたが,治療成績の向上にはつながらず,またss癌の漿膜下浸潤増殖様式の検討や術後の肝床部再発の反省からss癌の肝切除範囲は十分なsurgical marginとしてS4a,S5切除が妥当であると考える.

肝門浸潤胆囊癌の手術治療―適応と限界

著者: 宮崎勝 ,   伊藤博 ,   木村文夫 ,   清水宏明 ,   外川明 ,   大塚将之 ,   吉留博之 ,   嶋村文彦 ,   加藤厚 ,   貫井裕次

ページ範囲:P.181 - P.184

 要旨:進行胆囊癌(stageⅢ,Ⅳ)切除85例の成績をその進展様式別に比較検討した.肝床浸潤型35例,肝門浸潤型21例,肝床・肝門浸潤型26例,その他3例であった.肝門浸潤を示した例の約1/3に血管合併切除を要した.治癒切除率は肝床浸潤型71%であったのに比べ,肝門浸潤型33%,肝床・肝門浸潤型31%と有意に低かった.手術死亡率は肝床浸潤型6%に比べ肝門浸潤および肝床・肝門浸潤型では14%,19%と高い傾向を示した.術後生存率では肝床浸潤型が有意に他群に比べ良好であり,1年,3年,5年生存率が54%,27%,17%であった.進行胆囊癌の中でも肝床浸潤例に対しては積極的外科切除を選択すべきと思われるが,肝門浸潤例に対しては,その手術適応は慎重になされるべきと考えられた.

胆囊癌における肝膵合併切除の意義

著者: 塚田一博 ,   阿部秀樹 ,   坂東正 ,   長田拓哉 ,   野澤聡志

ページ範囲:P.185 - P.187

 要旨:胆囊癌に対する肝葉切除かつ膵頭十二指腸合併切除は術前門脈枝閉塞などにより術後合併症などの頻度は低下してきているが,まだ長期予後は十分ではない.腫瘍の進展とともになにが必要最小限の切除かを判断して適応を決定すべきである.肝葉切除と膵頭十二指腸同時切除は姑息的切除や肝転移,大動脈周囲リンパ節転移などの超進行癌さらに予防的肝転移や予防的リンパ節転移のための適応としては控えるべきである.

胆囊癌に対する腹腔鏡下胆囊摘出術

著者: 加藤貴史 ,   草野満夫 ,   村上雅彦 ,   早稲田正博 ,   五藤哲 ,   牧田英俊 ,   中村明央 ,   星野光典

ページ範囲:P.189 - P.194

 要旨:胆囊癌に対する腹腔鏡下胆囊摘出術(以下,LC)は,「予期せぬ胆囊癌に対して容認されうる適応」と,「胆囊癌を疑う症例に対する適応」の2つに分けて考えるのが妥当である.予期せぬ胆囊癌では,術後の固定標本の病理組織学的検索により深達度に対応した追加切除を行う必要がある.また,胆囊癌を疑う症例に対するLCでは,胆汁散布による癌細胞播種,切除断端の癌遺残を防止するため全層胆囊摘出術,No12cリンパ節切除などが必要である.いずれの場合も術中または術後の病理診断に応じて,適切な追加根治術を施行するという方針であれば,胆囊癌に対するLCはtotal biopsyの意義において開腹術を越えるメリットがあると思われる.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方 23

乳腺の切除標本の取り扱い方

著者: 増田幸蔵 ,   井上泰 ,   今成朋洋

ページ範囲:P.143 - P.149

 “近代乳癌の父”であるウイリアム=ハルステッドが,乳腺と胸筋と腋窩リンパ節を一括して取り除く定型的乳房切除術を発表したのは1896年である.その後,100年近く主流であったこの術式によって切除された標本が提出されることは現在ほとんどない.今日,乳房切除術の主流は,胸筋温存乳房切除術(Auchincloss,Patey)1,2)であり,さらに,より乳房の切除範囲を狭めた乳房温存術3,4)が増加の一途をたどっている.2000年には約40%が乳房温存術となっている5).乳癌は明らかに急速な増加を示しており,年間33,000人の新規患者があり,9,000人が乳癌で死亡している6).この現状を考慮すれば,乳房温存術はますます増加していくものと考えられる.当院でも同様の状況であり,過去5年間の乳癌手術例206例中61例(30%)に温存術(quadrantectomy)が行われ,最近の2年間では40%近くに達している.本論文における乳腺切除標本の取り扱いもこの温存術を中心に記載することになる.

 乳腺の切除標本には,生検材料と手術材料がある.さらに,術中迅速診断材料が加わる.外科医にとって最大の関心事は,病理組織学的な腫瘍の良・悪の鑑別と,切除材料断端の評価,つまり,取り切れているか否かの診断である.このことが実際に行われるためには,外科医と病理医が連携し,切除標本の取り扱いに関して,リアルタイムで協議を積み重ねていくことが肝要である.検体の取り違いのないようにつねに注意すること,バイオハザードとくに感染症の有無については,検体申込用紙に正確に記載することは当然必要なことである.

目で見る外科標準術式・37

甲状腺濾胞性腫瘍の手術

著者: 岡本高宏

ページ範囲:P.195 - P.201

はじめに

 甲状腺濾胞性腫瘍には濾胞癌と濾胞腺腫とが含まれる.両者を手術前に鑑別することは必ずしも容易でなく,細胞診でも癌と腺腫の区別をせずに濾胞性腫瘍として診断することが多い.したがって,濾胞性腫瘍の症例では濾胞癌の可能性をいつも念頭に置き,甲状腺全摘そしてアイソトープ(131I)治療となる場合があることを想定して手術を行うべきである.とりわけ大切なのは副甲状腺と反回神経・上喉頭神経外枝の温存である.

私の工夫―手術・処置・手順

超音波ガイド下における伏針の摘出

著者: 高島勉 ,   畑間昌博 ,   仲田文造 ,   平川弘聖

ページ範囲:P.202 - P.203

 伏針は外科外来でしばしば遭遇する疾患であるが,比較的深い位置に存在するものや,侵入経路が塞がってしまったものなど,体表から確認しえない場合には摘出に難渋することが少なくない1,2).一般的にはX線不透過性のものはX線透視下に2方向から各2本のカテラン針を刺してマーキングを行い,これを目標として異物を探して摘出する3)とされているが,実際に行うと異物を発見するのに難渋することが多く,結果的に皮膚切開や剥離範囲が大きくなることもまれではない.しかし,伏針は10 MHz程度の周波数の体表用超音波装置で描出される場合が多く,とくに金属針であれば極めて明瞭に描出される(図1,2).

 実際の手技としては,局所麻酔下に伏針の尾側端より約1cm尾側に1cmの皮膚切開を置き,超音波での観察下にモスキート鉗子を用いて皮下および筋膜を鈍的に剥離し,伏針を鉗子で把持する(図3).鉗子をいろいろな方向に軽く動かしながら針と周囲組織の動きを観察して周囲の軟部組織越しに把持していないことを確認し,伏針を摘出する.出血のないことを確認し,創はストリップテープで閉鎖する.摘出後にX線撮影を行い遺残物のないことを確認する(図4).

医療制度と外科診療2

医療制度とは何か

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.204 - P.205

制度と契約

1.制度

 制度とは社会生活を円滑かつ効率的にする仕組,約束,契約である.

 制度を下記の切り口で考えることができる.

病院めぐり

石川県済生会金沢病院外科

著者: 川浦幸光

ページ範囲:P.206 - P.206

 昭和11年4月金沢市に診療所として開設された.当初は内科,外科のみで10床程度であった.外科は金沢大学心肺総合外科(旧第1外科)の関連病院であるが,昭和61年までは一人医長であった.現在では13診療科,医師30名,260床(緩和ケア病棟の28床を含む)の地域中核病院である.

 開設当初はJR金沢駅近傍に位置し,総合病院であったが,少子化や,高齢化の影響から,入院患者のうち,寝たきり状態の高齢者が占める割合が増加していった.それに加え病院の老朽化が拍車をかけた.金沢市医師会の開放型病床(20床)に加え,緩和ケア病棟を備えた地域密着型の急性期医療病院として平成6年10月1日,金沢市郊外に新築移転した.

小牧市民病院外科

著者: 桐山幸三

ページ範囲:P.207 - P.207

 小牧市は人口14万8千人,愛知県北西部に位置し,名古屋空港,東名・名神高速道路に隣接し,名古屋市への交通の要所となっています.病院は,桜と紅葉の名所でその頂に名勝小牧城のある小牧山のすぐ南にあり,その周囲は城下町特有の入り組んだ道路に取り囲まれ,駐車場は不足気味で午前中はかなり混雑しますが,午後になるとどこかのんびりとした趣になります.

 病院は昭和56年,余語弘先生(現名誉院長)が院長に就任し,それまでの一地方病院から尾張部の基幹病院への改革が始まりました.医療面,職員の意識,経営面のすべてにおいての大改革であり,昭和60年の第1期工事に始まり平成8年の第5期工事に至り,病床数は187床か544床に増床され,職員数も232人から662人に,1日当たりの外来患者数も459人から2,265人と飛躍的に増え,この間救急救命センターも併設され,平均在院日数は27.1日から14.6日と減少し,損益収支もつねに黒字を維持,自治体病院のなかでは最優良な病院と評価されるまでに整備されました.

文学漫歩

―ショーペンハウエル(著)石井 正,石井 立(訳)―『女について』―(1968年,角川書店 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.208 - P.208

 ゴミ焼却施設の排ガス中ダイオキシン濃度規制に則り,当院の焼却炉も新設されることになった.血液や体液の付着した危険ゴミの分別もさらに徹底することになり,感染対策チーム(ICT)に所属する私としては,職員の感染対策への意識向上の絶好の機会と考えている.外科医は便を,泌尿器科医は尿を平気で扱っていて,内科医から変に感心されたりするが,便から医師に感染することは稀で,まして尿など普通は無菌である.血液のほうがずっと危険で,採血や注射を頻繁に行う内科医も注意して貰わねば困る.

 ダイオキシンの件で,内分泌攪乱物質(環境ホルモン)は有名になった.ホルモンのような作用で生殖機能を傷害したり,発癌や免疫能異常を誘発する可能性が指摘されている.かつて大量に使用されていたDDTやPCBによる鳥類の雌性化や哺乳類の精子数の減少などの報告もあるようだ.工業先進国では男児の出生が有意に減少しているそうで,欧米ではヒトの精子数も減少しているとの報告もある.何処かの川の魚がほとんど雌になっているという報道もあった.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・2

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.209 - P.211

 外科学の発展に多大な貢献をなした恩人の一人として,ビルロート(Theodor Billroth;1829~1894:図1)の名前を挙げることに異存を唱える者はいないであろう.言うまでもなく,石炭酸を用いた防腐法を提唱したリスター卿(Joseph Lister;1827~1912),レジデント制度を創始し多くの弟子を育てることによって,アメリカにおける外科学隆盛の基礎を作ったハルステッド(William Stewart Halsted;1852~1922)らとともに,「Billroth」の名は外科学史上不朽のものである(図2).

 今回掲げた図2は,1960年の「Ann Surg」誌に掲載された「Five Pillars of Surgery(外科学を推進した5組の柱石ないし中心人物)」と題された挿図であるが,この図のキャプションとして,「有史以来の外科学史を通観して,外科学の発展に関して多大な貢献をなした人物名を5人に限って挙げることは非常に難しいが,ここに挙げた5組がその候補として十分な資格を有していることには異存のないところであろう.

インターネット検索時代の文献整理術・2

文献検索と保存(医学中央雑誌WEB編)

著者: 讃岐美智義

ページ範囲:P.213 - P.216

 前回のPubMedにひきつづいて,今回は医学中央雑誌WEBの概要と有効活用のためのファイル保存方法を解説する.医学中央雑誌WEBの場合有料のサイトであるが,個人でも利用可能なパーソナル版があるので多くの方々に利用されている.

■ 医中誌WEBでの検索

 Internet Explorerなどのwebブラウザのアドレス欄にhttp://www.jamas.gr.jp/を入力し,医学中央雑誌WEBにアクセスする.会員として登録済みであれば検索が可能になる(医中誌パーソナルWEBの会員登録済みとして,話を進める).医中誌パーソナルWEBの右隣にある[ログイン]ボタンをクリックして,次に表示される画面で検索スタートをクリックする.ユーザーID,パスワード入力画面が表示されるので,それぞれの欄に入力して[Login]ボタンをクリックする.次の画面ではBasicモードを選択する.図1がBasicモードの検索画面である.

特別寄稿

アウトカム志向のクリニカルパスからPOMRへ―腹腔鏡下胆囊摘出術クリニカルパスに連動した日めくり式医療記録用紙

著者: 本田五郎 ,   須古博信 ,   副島秀久

ページ範囲:P.217 - P.225

はじめに

 2001年に行われた日本クリニカルパス学会のアンケート調査によると,クリニカルパスの導入目的として最も多かったのはインフォームドコンセント(94.6%)であり,わが国では多くの施設で患者サービス向上のためのツールとして認識されていることが伺える1).しかし,クリニカルパスは巧く活用すればチーム医療とEBM(evidence-based medicine)を支援する効果的なツールにもなりうる2).そして,そのためにはアウトカム志向のクリニカルパスに連動した新しい形の医療記録用紙が重要な役割を持つと考えられる.そこで,当院の腹腔鏡下胆嚢摘出術クリニカルパスに連動した日めくり式医療記録用紙をその開発コンセプトとともに紹介する.

Problem-Based Conference(16)

Problem-Based形式の口述試験による評価(その2)

著者: 町淳二 ,   児島邦明

ページ範囲:P.227 - P.240

1 はじめに

 前回の医学生を対象としたproblem-based形式の口述試験に続いて,今回は研修医を対象とした口述試験の例を示し,その質疑応答に対する評価を行います.このような口述試験のやり方については,前回に述べた通りです.そして最後に,problem-based conferenceやproblem-based形式の口述試験などを通しての医学生や研修医の教育や評価について,今後,日本においてもこのような教育・学習方法が広く実践されるように期待し,まとめを述べます.

臨床研究

術後肺塞栓症17例の検討―予防ガイドラインの必要性

著者: 大木亜津子 ,   志田晴彦 ,   増田幸蔵 ,   今成朋洋 ,   山本登司

ページ範囲:P.241 - P.246

はじめに

 周術期の肺塞栓症(pulmonary embolism:以下,PE)の発生は稀ではあるが発症すると重篤な経過をとり,致死率の高い術後合併症である1).本邦での発症率は欧米に比べて低いとされてきたが,疾患に対する認識と診断精度の向上により報告が増加している2).またPEは術後良好に経過していた患者に突発する場合が多く,臨床的,社会的にも重大な問題を伴う.しかし一方では予防が可能な合併症の1つともされている.米国では術後肺塞栓症の予防ガイドラインが示されている3)が,本邦では確立した予防ガイドラインは示されていない.PEの発生,死亡率を減少させる鍵はその発生原因とされる深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:以下,DVT)の予防である.近年,PEの予防として味村らは下肢弾性包帯着用や間歇的下肢圧迫法(intermittent pneumatic compression:以下,IPC)によるDVT予防が有意差は認めないものの副作用も少なく,有用であると報告している4).当院では2000年から全身麻酔手術のほぼ全例にこれらの予防処置を行っていたが,それにもかかわらず最近PEを3例経験した.このため更なる予防としてヘパリン投与を含めたガイドラインが必要と考えた.

 本稿では,当院における過去10年間の術後PE症例の概要を述べ,診断,治療,成績,予防ガイドラインについて検討した.

虫垂粘液囊胞の画像所見―自験例7例の検討

著者: 福岡秀敏 ,   伊藤重彦 ,   吉永恵 ,   國崎真己 ,   鹿島清隆 ,   木戸川秀生

ページ範囲:P.247 - P.249

はじめに

 虫垂粘液嚢胞は比較的稀な疾患で,本疾患を念頭に置いていないと術前診断は困難である.そのために嚢胞腺癌の頻度が高いにもかかわらず急性虫垂炎や腹腔内膿瘍など良性炎症性疾患として緊急手術される場合も多い.今回,筆者らは自験例7例および自験例を含む本邦報告例192例の画像所見を中心に若干の文献的考察を加え報告する.

臨床報告 1

誤飲した魚骨により腹壁膿瘍をきたした1例

著者: 木内俊一郎 ,   森河内豊 ,   滝吉郎 ,   高林有道

ページ範囲:P.251 - P.253

はじめに

 異物は誤飲してもそのほとんどが自然に排泄されるが,比較的稀に消化管穿孔や穿通を起こし,腹膜炎を発症したり腹腔内腫瘤,膿瘍を形成することがある1).本邦では食習慣から魚骨による消化管異物が最も多く,異物による消化管穿孔の中でも魚骨が最も多い.今回,魚骨が消化管穿孔を起こしたもののそれが腹膜炎に至ることなく軽快し,後日腹壁膿瘍として発症した1例を経験したので報告する.

3D-CTが診断に有効であった成人横行結腸嵌頓Morgagni孔ヘルニアの1例

著者: 森和弘 ,   安田雅美 ,   天谷公司 ,   経田淳 ,   吉光裕 ,   竹山茂 ,   荒井和徳

ページ範囲:P.255 - P.258

はじめに

 Morgagni孔ヘルニアは横隔膜ヘルニアの中でも3%前後と頻度は少なく,比較的稀な疾患である1,2).今回,筆者らは横行結腸の嵌頓による腸閉塞症状にて発症した成人Morgagni孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.

有茎性に膵外への巨大発育を示した膵漿液性囊胞腺腫の1例

著者: 吉留克英 ,   角村純一 ,   岩瀬和裕 ,   藤田繁雄 ,   田中智之

ページ範囲:P.259 - P.262

はじめに

 1962年Campbellらは膵囊胞腺腫を病理形態学的に漿液性囊胞腺腫と粘液性囊胞腺腫に分類し1),1978年Compagnoらにより臨床上両者を独立した疾患として取り扱うことが提唱され,疾患概念が確立された2,3).以降,近年の画像診断の発達に伴い漿液性囊胞腺腫の報告例が増加しており,本邦において1994年水本により140例が集計報告されている4).筆者らは画像所見上膵囊胞腺腫の特徴的な像を呈していたが,膵との連続性が不明であり,術前確定診断が困難であった症例を経験したので報告する.

Recklinghausen病に早期胃癌と多発性気腫性囊胞を合併した1例

著者: 青木孝文 ,   庭野元孝 ,   大石達郎 ,   笹野満

ページ範囲:P.263 - P.266

はじめに

 Recklinghausen病(以下,R病)は皮膚および神経の多発性神経線維腫とカフェ・オ・レ斑を主徴とし,眼・骨変化,脳・脊髄腫瘍など多彩な症候のみられる優性遺伝性疾患である1~4).R病と悪性腫瘍の合併頻度は高い1,3)が,胃癌の合併は比較的少ない5).今回,筆者らはR病に早期胃癌と多発性気腫性嚢胞を合併した稀な症例を経験し,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(以下,LADG)を施行した.R病に合併した早期胃癌にLADGを行った最初の報告となる自験例を呈示し,若干の文献的考察を加えて報告する.

超高齢者粘液産生膵癌の1切除例

著者: 鳥正幸 ,   山崎芳郎 ,   桑田圭司 ,   小林晏

ページ範囲:P.267 - P.270

はじめに

 粘液産生膵癌は近年診断技術の進歩に伴い報告例が増加している.今回,筆者らは胃癌術後無症状で経過観察中に偶然発見された超高齢者の粘液産生膵癌の1切除例を経験したので報告する.

粘液中のCEA値,CA19-9値が異常高値を呈した虫垂粘液囊胞腺腫の1例

著者: 本田勇二 ,   河野哲夫 ,   日向理 ,   田中暢之

ページ範囲:P.271 - P.274

はじめに

 虫垂粘液囊胞腺腫は特徴的な症状が出現しにくいため,術前診断が比較的困難とされる比較的稀な疾患である1).筆者らは大腸内視鏡検査で偶然発見し,特徴的な検査所見を呈したため術前診断することができ,その囊胞内粘液中のCEA値,CA19-9値が異常高値を示した虫垂粘液囊胞腺腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

早期食道癌に併存した悪性リンパ腫の1例

著者: 大熊利之 ,   指宿睦子 ,   田平洋一 ,   山口祐二 ,   平岡武久 ,   川筋道雄

ページ範囲:P.275 - P.278

はじめに

 近年,重複癌症例は多数報告されているが,食道癌と悪性リンパ腫の同時性重複癌はきわめて稀であり,本邦では1例の報告1)があるのみである.今回,筆者らは早期食道癌に同時性に併存した悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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