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文献詳細

雑誌文献

臨床外科58巻5号

2003年05月発行

文献概要

ここまで来た癌免疫療法・12

―臨床の場で今後の進展が期待される新規治療法―新規遺伝子治療

著者: 高山卓也1 田原秀晃1

所属機関: 1東京大学医科学研究所先端医療研究センター外科・臓器細胞工学分野

ページ範囲:P.695 - P.698

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はじめに

 近年,先天性疾患や癌の発症機構が分子生物学的機能解析の進歩により,遺伝子レベルで明らかになり,遺伝子治療はその原因遺伝子の制御もしくは補完する治療法として期待されている.1990年に米国でADA(adenosine deaminase)欠損症の患者に世界初の遺伝子治療が行われて以来,世界で500以上の遺伝子治療のプロトコールが実施され,3,000人以上の患者が治療を受けている.表に示すように2003年1月現在,遺伝子治療に関して600以上の臨床試験が実施され,患者数は3,000人をこえる.そのプロトコールの対象疾患の60%以上が悪性腫瘍であり,2,000人以上の患者が臨床試験を受けている.また,多くの臨床研究が第1・2相試験段階にあり,従来の治療法と比較対象とした第3相試験のプロトコールは4件行われている.

 本邦においては,その治療計画は文部科学省,厚生労働省で慎重な審査を受けて承認される.しかし,承認されても治療の安全性が医学的に証明されていないため既存の治療法に抵抗性の疾患および病期の患者にのみ対象となる実験的治療法である.つまり,必然的に末期癌の患者が対象になるため,治療効果は安全性の証明とともに副次的に腫瘍の縮小および患者のQOLの改善が目標となり,けっして完治という理想が目的とはならない.つまり,この臨床研究段階を経ることにより将来的に癌の治療法として確立が期待できるのである.

 本邦における遺伝子治療は,1995年に北海道大学でADA欠損症に対する遺伝子治療に始まり,東京大学,岡山大学,東北大学,千葉大学,大阪大学などとさまざまなプロトコールの申請および臨床試験が始まっている.本稿では本邦で行われている悪性腫瘍に対する主な遺伝子治療を紹介し,あわせてその問題点についても紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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