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文献詳細

雑誌文献

臨床外科58巻5号

2003年05月発行

文献概要

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・5―Billroth Ⅰ法の完成

著者: 佐藤裕12

所属機関: 1北九州市立若松病院外科 2日本医史学会

ページ範囲:P.704 - P.705

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 アメリカのAbsolonは,Billrothに関して多くの著書を著しているが(事実,筆者も彼の文献を参考にした),1968年「Review of Surgery]誌に「Resection of the Cancerous Pyrolus Performed by Professor Billroth」と題した論文を寄せている(この論文はAbsolonがミネソタ大学外科のWangensteen教授の退官に際して行った口演をまとめたものである.Wangensteen自身も「Theodor Billroth and his unique school of surgery;図1」という論文をものにしている).これはBillrothが最初に行った胃癌切除手術の詳細を弟子のWölflerが報告したものの英訳である.ここに2,3,4例目の胃切除症例の臨床経過が掲げられているので,以下にその概略を紹介する.

 2例目(図2)は2月28日に行われ,患者は39歳の女性であった.胃癌が疑われたが,確診に至らなかったため試験開腹し,幽門部に生じた髄様癌を確認し,2時間45分かけて切除している.しかし,術前の胃内腔洗浄が不十分であったこともあり,術後も胆汁を混じた嘔吐が続き患者の衰弱が進行するため,術後6日目に再開腹した.この際,残胃が高度に拡張していたため,胃壁を腹壁に固定した後に十二指腸に栄養チューブを挿入・留置するにとどめ,1時間ほどで手術を終えている.しかし,術前から栄養状態が悪く,衰弱も高度であったことから,術後経過は思わしくなく患者は再手術から30時間後に死亡した.剖検により,癌切除は完璧であったことが確認されたが,この症例においてBillrothは,いわゆる「oralis superior」で残胃十二指腸吻合を行っており,このため残胃の大彎側が嚢状に拡張(Billrothはこれを「diverticular pouch」とよんでいる)して通過障害をきたしていたことも判明した.以後,Billrothはこういう状況に陥ることを避けるため,残胃と十二指腸の吻合様式を「oralis inferior」に改めた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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