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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科58巻6号

2003年06月発行

雑誌目次

特集 癌肝転移の治療戦略

転移性肝腫瘍に対する切除療法

著者: 梅北信孝 ,   田中荘一 ,   斎浦明夫

ページ範囲:P.747 - P.750

 転移性肝癌に対する治療法として外科的切除が最も有効である.転移性肝癌は肝機能が正常で,大量の肝切除も可能である.適応としては肝転移巣がすべて切除できること,肝切除後の残肝機能が維持されることである.肺転移など他の転移巣があっても切除できれば肝切除の適応となる.大腸癌肝転移は多数個の例でも長期生存があり,両葉多発例でも切除の意義がある.残肝再発予防のために肝動注療法も行われる.胃癌肝転移も累積5年生存率は29%であり,切除の意義がある.Neuroendocrine tumorは腫瘍がslow growingであり,減量手術でもホルモン症状の軽減が得られることから予後良好とされる.

癌肝転移に対する肝切除の術式とその成績

著者: 小森山広幸 ,   萩原優

ページ範囲:P.751 - P.755

 転移をきたす癌は本来的には悪性度が高い癌であるが,転移巣の切除により長期生存が得られるのも事実である.癌の肝転移に対する切除の多くは大腸癌に由来するもので,他疾患での肝切除は少なく,また長期生存も稀である.大腸癌の肝転移巣切除には部分切除と系統的切除の2つが行われているが,治癒切除をしえた症例の比較では予後に差はない.切除例の30~50%に5年生存が認められており,単発性のみならず多発であっても条件が適えば切除が治療の第一選択となっている.肝切除以外に長期予後が期待できる治療法がない現状では,残肝機能を考慮したうえでの積極的な切除が予後を改善しうる治療法と考えられる.

大腸癌肝転移に対する肝動注治療―治療戦略の中での位置付けと今後の展望

著者: 貞廣荘太郎 ,   鈴木俊之 ,   石川健二 ,   田中洋一 ,   中村知己 ,   田島知郎 ,   幕内博康 ,   斎藤拓郎 ,   村山千恵子

ページ範囲:P.757 - P.761

 大腸癌の転移,再発部位として肝臓は最も頻度が高い.肝転移に対する治療の第一選択は手術であるが,肝切除後の無再発生存率は30%以下であり,集学的治療の必要性が示唆される.半減期が短く,肝での抽出率が高い5-FU系抗癌剤の肝動注は肝転移巣に高濃度の薬剤を到達させ,しかも末梢血中の濃度を低く保つことが可能であり,副作用を抑えながら高い抗腫瘍効果を期待できる.しかし切除不能の肝転移に対して全身化学療法に比べて高い奏効率を示すものの,生存期間の延長には至っていない.また肝切除後の補助化学療法としての効果も評価が定まっていない.最近,切除不能例に対して肝動注をneoadjuvantとして用いた後に肝切除する報告が散見される.肝動注は手術に次ぐ強力な局所治療法であり,今後さらに集学的治療の中で検討されていくと思われる.

99mTc-MIBI動注投与による肝動注化学療法の治療効果予測

著者: 佐口徹

ページ範囲:P.763 - P.766

 転移性肝癌に対するリザーバー動注化学療法は必ずしも確立されたものではない.原因の1つに治療抵抗例の存在が挙げられる.筆者らはP糖蛋白関連性の多剤耐性腫瘍のイメージング製剤であるといわれている99mTc-MIBIをリザーバーから動注し,集積程度と治療効果との関連性について検討している.定量指標としてearly ratio(ER),delayed ratio(DR),retention index(RI)を算出している.これまでの結果,治療有効群では悪化群と比べER,DRは高値を示し,明らかな関連性を示した.転移性肝癌に対する99mTc-MIBI動注投与による評価は動注化学療法の治療効果予測に有用であると思われる.

転移性肝癌における局所波凝固療法の治療成績と問題点―マイクロ波凝固療法とラジオ波凝固療法を中心に

著者: 土居浩一 ,   江上寛 ,   別府透 ,   石河隆敏 ,   広田昌彦 ,   島田信也 ,   松田貞士 ,   小川道雄

ページ範囲:P.767 - P.773

 大腸癌を中心とした転移性肝癌に対して腫瘍径と存在部位から適切なアプローチを選択し,さまざまな工夫により合併症を予防し,局所凝固療法を行った.当科にて局所凝固療法を施行した大腸癌肝転移(40例)における5年累積生存率は37%であった.肝動注化学療法を行った症例(5%)よりも有意に良好で,肝切除症例(41%)との差は認めなかった.しかし転移性肝癌の組織学的特徴である腫瘍組織の線維化や微小転移巣のため,局所再発が25%に認められることから,適応を肝切除不能症例に限定するべきである.また局所再発の予防には十分なサージカルマージンの確保と局所化学療法の併用が必要である.

胃癌肝転移に対するPEIT併用肝動注療法の有用性

著者: 片柳創 ,   土田明彦 ,   伊藤一成 ,   高木融 ,   青木利明 ,   青木達哉 ,   小栁𣳾久

ページ範囲:P.775 - P.778

 予後不良である胃癌肝転移症例に対するFEMによる肝動注療法の成績は50%生存期間6~17か月で非動注群の3か月より良好である.自験例ではPEITとFEMによる肝動注化学療法を併用したところ50%生存期間877日と有意に予後を改善した.これはPEITによる既知の腫瘍に対する直接効果と,肝動注療法で残肝腫瘍の発育を抑えることができる上に,微小転移を早期の段階で治療している可能性があるためと思われた.CR 1例,NC 8例,PD 2例であったが,NC期間は平均18.6か月と長期であり,long NCを効果ありに含めると奏効率81.8%となり,従来の治療と比べて有効な方法であることが示された.

切除不能転移性肝癌に対する凍結療法の試み

著者: 長田真二 ,   佐治重豊

ページ範囲:P.779 - P.782

 転移性肝癌に対する治療戦略として肝切除術が確立された手段として認識されている.一方,切除不能癌に対する低侵襲性治療の期待も高まっている.低侵襲で,かつ十分な治療効果が期待できる局所療法の1つとして凍結療法(cryoablation)があげられる.凍結治療は凍結壊死による直接的な腫瘍破壊効果のみならず,免疫誘導により遠隔転移巣が消失したという興味深い研究結果が報告されており,全身療法としても期待可能である.本稿では,教室における実験的検討をはじめ,臨床的試みである細径プローブを用いた液体窒素による凍結装置の使用経験をもとに,諸外国で報告されている治療成績について文献的考察を加え,凍結療法の有用性と特徴を概説する.

転移性肝腫瘍に対する温熱療法

著者: 坂本匡人 ,   永田靖 ,   光森通英 ,   坂本隆吏 ,   河村幸子 ,   荒木則雄 ,   小倉昌和 ,   増永慎一郎 ,   平岡眞寛

ページ範囲:P.783 - P.785

 手術不能な転移性肝腫瘍に対する治療法の1つに温熱療法がある.この時の加温方法には主に深部領域加温あるいは組織内加温が用いられるが,当科では8 MHzRF誘電加温装置を用いた深部領域加温による温熱治療をTAE,動注療法,放射線治療,免疫賦活剤などと併用しつつ行ってきた.1983~2000年に当科で温熱治療を行った転移性肝腫瘍症例の中で測温およびCTによる効果判定が可能であった45症例の内訳はCR 3例(7%),PR 17例(38%),NR 12例(27%),PD 13例(29%)で,1年生存率は32.5%であった.組織の加温に用いられる装置に依然改良の余地があり,治療中の測温技術や最適な併用療法の決定法など克服すべき点は多いが,温熱療法は手術不能な転移性肝腫瘍に対して有益な治療法である.

癌肝転移に対する肝動脈塞栓療法

著者: 棚田稔 ,   久保義郎 ,   高嶋成光

ページ範囲:P.786 - P.788

 原発性肝癌に対する治療法の1つである肝動脈塞栓療法を転移性肝癌に対して行った.塞栓療法の効果は腫瘍の血流動態に左右されるが,塞栓療法後切除した大腸癌肝転移症例では血管造影で腫瘍の血流が乏しいにもかかわらず,組織学的に広範囲の壊死が認められた.しかし,臨床的に問題となる多発肝転移症例では,繰り返しの治療によっても奏効率,予後とも不良であった.このため,現時点では塞栓療法は血流の豊富な特殊な症例を除き,転移性肝癌の治療としては適当ではない.

胃癌肝転移化学療法における抗癌剤感受性試験

著者: 久保田哲朗

ページ範囲:P.789 - P.792

 胃癌肝転移症例50症例を対象として生存転帰に与える腫瘍側・治療側因子について検討を加えた.腫瘍側因子では原発巣の組織型,肝転移度は生存転帰に影響を与えなかったが,腹膜播種の併存症例の生存期間は不良であった.治療側因子では胃原発巣切除可能であった症例は切除不能症例に比べて推計学的に有意に良好(p<0.005)な生存転帰を示した.50症例中抗癌剤感受性試験が施行されたのは15症例であった.抗癌剤感受性試験で有効と判定された薬剤が投与された症例9例中2例のCR,2例のPR効果が得られ,真陽性率は44%,真陰性率は100%,正診率は66.7%であった.適応抗癌剤が投与された適応群の平均生存期間(364日)は非適応群の平均生存期間(134日)よりも推計学的に有意に良好(p<0.01)であったが,リザーバー挿入の有無は生存転帰に影響を与えなかった.胃癌肝転移切除不能症例に対しては原発巣の感受性試験に基づいた化学療法が局所の制御および生存期間の延長に有用と考えられた.

大腸癌肝転移に対する遺伝子治療の現状と将来

著者: 柳衛宏宣 ,   江里口正純

ページ範囲:P.793 - P.798

 大腸癌の肝転移に対して新しい治療法として遺伝子治療が注目されている.現在までに4つの遺伝子治療が行われているが,いずれもin vivo法でベクターとしてアデノウイルスあるいはリポソームを用いている.(1)p53遺伝子に変異・欠失のある大腸癌の肝転移に対して,正常p53遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター(SCH58500)を肝動脈内に動注する臨床試験,(2)消化器癌の転移性肝癌に対するE1B55Kを欠いた変異ヒトアデノウイルス(ONYX-015)を用いた肝動注療法遺伝子治療の臨床試験,(3)cytosinedeaminaseを組み込んだ非増殖性アデノウイルスベクター(ADGVCD. 10)を大腸癌患者の肝転移巣に直接注入する臨床試験,(4)allovectin-7(HLA-B7/β2マクログロブリン遺伝子のプラスミドと脂質DOPEとDMRIEを混合したリポソームベクター)を直接エコーガイド下に大腸癌の肝転移巣に注入する臨床試験が進行中である.今後,癌治療において集学的治療法の1つとして遺伝子治療は重要な位置を占めると思われ,安全でかつ使用しやすいベクターの開発が必要となる.

目で見るカラーグラフ 世界に向かう乳腺疾患診療の新技術・2

乳管内視鏡:技法の工夫

著者: 神尾孝子 ,   亀岡信悟

ページ範囲:P.743 - P.746

はじめに

 “乳癌の発生の場”である乳管上皮の微細な増殖性変化を直視下に捉えることのできる乳管内視鏡検査は,乳頭からのアプローチ法が1989年に日本で開発1)されて以来,装置の改良2)や技法の向上により,いまや乳腺疾患―とくに乳管内病変診断を行ううえで,確立された必須の検査法となっている.

 本稿では,乳管内視鏡装置および良好な画像を得るための手技の工夫と要点について筆者らの用いている方法を中心に紹介する.

医療制度と外科診療6

医療に関する基本的事項(3)―医療の非営利性

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.804 - P.805

医療の非営利性

 多くの医療従事者も大部分の国民も,医療は非営利である,非営利であらねばならないと考えている.はたしてそうであろうか.なぜ,非営利であるのか,なぜ,非営利でなければならないのかを考えたことがあるのだろうか.

 そこで,今回は,“医療の本質は非営利である”を命題に検証する.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・6―胃切除手術の先駆者たち

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.806 - P.807

 弟子のMikulicz(1850~1905,図1)は,1881年4月のドイツ外科学会において,予後的にはかならずしも満足できるものではなかったが,Billroth外科教室で行われた初期3例の胃癌切除手術を報告した(Billrothは,幽門切除という手技が胃癌患者の救済に有望な治療法になりうることを確信していたのである).そして,同学会においてポーランドのRydygier(1850~1920,図2)が,Billrothに先立って1880年11月に自分自身が行った胃切除手術について報告している.

 これによると,1880年11月16日にBillrothの症例と同じように幽門狭窄症状を呈した胃癌患者に手術を施している.Billrothが採用した横切開と違って,Rydygierは正中切開で開腹し,いわゆる「oralis inferior」すなわち今日いうところの「BillrothⅠ法」で,胃十二指腸吻合(後日,Rydygierは「Billroth法」とよばれるようになったこの「oralis inferior」式再建のpriorityを強く主張したという)を行ったが,患者は虚脱状態から脱することができず術後12時間で死亡した(「Extirpation des carcinomatous Pyrolus. Tod nach zwolf studen.」).

私の工夫―手術・処置・手順

スリット付き痔核鉗子(大見式)による内痔核結紮術

著者: 大見良裕 ,   星加奈子 ,   大見琢磨 ,   城俊明 ,   深野雅彦 ,   長谷川信吾

ページ範囲:P.809 - P.810

はじめに

 痔瘻の手術はMilligan&Morgan法(1937年)1)による結紮切除術が基本となり,Thomson(1975年)2)のanal cushion theoryが注目されるに従い,今日ではできるだけ肛門機能を温存する方向に変わってきている3~6)

 今回,簡便で,肛門管上皮を温存し,内痔核を確実に結紮し,ほとんどの大きさの内痔核に対応できて,かつ術後出血の少ない内痔核の結紮法を,新しい鉗子(図1)を使用することによって可能にしたので,ここに報告する.

文学漫歩

―太宰 治(著)―『新樹の言葉』―(1982年,新潮社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.811 - P.811

 桜桃(サクランボ)が好きだ.姿も愛らしく美しいが,上品な甘みと酸味の調和した味もまた素晴らしい.しかし,高価で旬も限られている.「お父さんの子供の頃は缶詰しか食べてないのだから」と娘と争いながら食するのが我が家の梅雨時の年中行事である.「子供より親が大事,と思いたい」,太宰治の『桜桃』の有名な一節に共感する.

 6月19日は「桜桃忌」.没後50年以上を経ても太宰の墓前には何百人ものファンが訪れる.実は私も太宰が好きだ.「太宰は麻疹みたいなものだ」と揶揄される.「いい歳をして太宰とサクランボが好き?」と言われても好きな物は好きだ.ついでに言えば,私は尾崎豊の歌とソフトクリームも好きだ.

病院めぐり

総合病院北見赤十字病院外科

著者: 新里順勝

ページ範囲:P.812 - P.812

 北海道東部の北見市にある当院は,昭和10年に日本赤十字社北海道支部野付牛療院として開設され,昭和18年に北見赤十字病院として改称されました.

 昭和44年に東館,昭和55年に西館,その後北館,平成2年に南館を増設しました.平成4年に救命救急センターを併設し,オホーツク医療圏の地方センター病院として指定されました.

埼玉県厚生連熊谷総合病院外科

著者: 遠藤正人

ページ範囲:P.813 - P.813

 熊谷市は関東平野の中央に位置して,人口約15万人,荒川の桜並木が美しく風情豊かな町です.当熊谷総合病院は昭和20年に病床数45床,職員40名で誕生いたしました.その後,診療科を増設して現在15診療科,医師35名,322床の総合病院で,地域の基幹病院のひとつとして診療に励んでいます.とはいえ心臓血管,呼吸器科,小児外科,形成外科などの診療科はなく,他の専門病院との連携も不可欠です.

 熊谷市には公立病院はなく,当院が公的病院として救急医療に積極的にかかわっています.近年,救急医療の市内受診数増加に伴い,時間外救急はますます増加の傾向を示しています.私ども外科は,病床数45床,1日平均入院患者数45人,平均在院日数20日,1日平均外来患者数70人です.熊谷医師会との病診連携のなか,外科の紹介率は30%です.当院は千葉大学の関連病院のひとつであり,外科のスタッフも先端応用外科学の医局より派遣されています.現在のスタッフは角田洋三(外科医長),遠藤正人(病棟部長),阿久津泰典,星野敏彦,久保島麻里,加賀谷暁子の6名で構成されています.

インターネット検索時代の文献整理術・6

EndNoteと全文PDFファイルとの連携

著者: 讃岐美智義

ページ範囲:P.815 - P.818

 全文文献といえば,以前は別刷りやコピーなどの紙媒体で管理していたが,かなり多くの英文誌のPDFファイルをインターネット経由で入手できるようになった.Version 5以降のEndNoteは,テキストデータだけでなく,他の形式の書類(たとえばPDF)の連携が可能になった.

 最終回である今回は,ファイルを連携することで,抄録テキストと全文文献(PDF)を整理する方法を紹介する.

ここまで来た癌免疫療法・13

―臨床の場で今後の進展が期待される新規治療法―新規サイトカイン治療

著者: 高山卓也 ,   田原秀晃

ページ範囲:P.819 - P.822

はじめに

 免疫反応にかかわる細胞から放出される蛋白質を一般にサイトカインといい,免疫反応,炎症反応,造血反応などの生体機能の制御や細胞の増殖,分化,抑制など生体の恒常性,そして癌細胞などを攻撃する抗腫瘍作用を持つ.サイトカイン療法とはこのサイトカインを全身または局所に投与することによって抗腫瘍免疫の増強を目的とする治療法である.表1に本邦で保険適用として認められているサイトカイン療法を挙げる.前稿1)ではこれらのサイトカイン療法の概略を述べた.本稿では悪性腫瘍を対象に最も広く行われているIL-2を用いたサイトカイン療法の現況と,今後臨床応用が期待されるIL-12とIL-18についての展望を紹介する.

臨床研究

急性虫垂炎疑診例に対するCT検査の有用性の検討

著者: 小林成行 ,   池田昭彦 ,   村上正和 ,   清水康廣 ,   清水信義

ページ範囲:P.823 - P.826

はじめに

 急性虫垂炎は外科医にとって最も身近な急性腹症であるが,保存的治療で治癒可能な軽症例であるにもかかわらず,安易に開腹手術を選択されることも決して少なくない1).当科では急性虫垂炎疑診例に対してルーチンにCT検査を施行し,手術適応を判断している.今回,筆者らは過去5年間の治療成績を検討し,CT検査の有用性を確認しえたので報告する.

手術手技

原発性上皮小体機能亢進症に対する術中シンチグラフィ併用のラジオガイド下手術

著者: 北川亘 ,   清水一雄 ,   赤須東樹 ,   田中茂夫

ページ範囲:P.827 - P.830

はじめに

 従来原発性上皮小体機能亢進症の手術は両側の上皮小体すべてを確認した後,病的上皮小体を摘出する両側検索法(bilateral exploration)が標準術式であった1).近年,画像診断の進歩により術前正確な病的上皮小体の局在部位診断が可能となり,1側のみを検索する術式(unilateral exploration)も施行されるようになってきている2,3).この1側検索法のうち,さらに限局した部位を検索する術式がラジオガイド下手術と考えられ,本術式は1997年Normanらにより初めて報告された4).筆者らは2000年1月から携帯用ガンマプローブと99mTc-sestamibiを用いたラジオガイド下手術を導入し,その有用性を報告してきた5~7)

 今回,筆者らは移動可能なモバイル型ガンマカメラ(2020tc ImagerTM;Digirad)で術中シンチグラフィ撮影を施行し,病的上皮小体の局在部位診断を術中行い,病的上皮小体の取り残しが防止できたラジオガイド下手術6例を経験したので1症例を呈示し,その手術手技とモバイル型ガンマカメラの有用性について報告する.

臨床報告 1

杙創による直腸損傷の1例

著者: 越湖進 ,   稲葉雅史 ,   内田恒 ,   斉藤幸裕

ページ範囲:P.831 - P.834

はじめに

 杙創とは先端が鈍な物体が偶発的に生体内に刺入した状態の創の総称で,比較的稀な外傷形態である1).会陰部や肛門周囲から刺入した場合には骨盤内臓器はもちろんのこと,腹腔内臓器の損傷の有無とその程度の把握が必須であり,迅速な初期治療が重要である.今回,筆者らは高所からの墜落が受傷機転となった杙創による直腸損傷の1例を経験したので報告する.

内視鏡検査が誘因と考えられた胃切除術後の空腸胃重積症の1例

著者: 島田守 ,   山本紀彦 ,   李喬遠 ,   岡博史 ,   本多正彦 ,   阪口正博

ページ範囲:P.835 - P.838

はじめに

 胃空腸吻合術単独あるいは胃切除術後に空腸が吻合部を介して胃内に重積する空腸胃重積症はきわめて稀な疾患である.今回,筆者らは胃内視鏡検査が誘因と考えられた胃切除術後の本症の1例を経験したので報告する.

サーベイランスにより発見された遺伝性非ポリポージス大腸癌(HNPCC)の1例

著者: 西原政好 ,   藤本高義 ,   伊澤光 ,   金井俊雄 ,   冨田尚裕

ページ範囲:P.839 - P.842

はじめに

 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は若年に発症し,大腸多発癌,多臓器重複癌の発生などの特徴を有する遺伝性疾患である1).遺伝性疾患においては臨床医は詳細に病歴聴取を行い,その発端者を的確に診断し,第2,第3の癌の発生を予防するのみならず,近親者に対するサーベイランスも行う必要がある.今回,筆者らはサーベイランスにより発見されたHNPCCの1例を経験したので報告する.

巨大胃囊胞の1例

著者: 道上慎也 ,   矢田克嗣 ,   森田昌宏 ,   火伏義純 ,   小川佳成

ページ範囲:P.843 - P.846

はじめに

 胃囊胞は胃に肉眼的,組織学的に囊胞を形成し,ほとんどが粘膜下腫瘍の形態を呈する比較的稀な疾患であり1),大きさも6cmを超えるものは少ない2).今回,筆者らは12cmの巨大な胃囊胞の1例を経験したので若干の文献的考察とともに報告する.

多発性囊胞を形成した乳腺乳頭腺癌の1例

著者: 岸仲正則 ,   清水保延 ,   宮本康二 ,   松波英寿 ,   池田庸子

ページ範囲:P.847 - P.850

はじめに

 日常遭遇する乳癌の多くは充実性腫瘍で,囊胞を形成するものは比較的稀である1~4).今回,筆者らは多発性囊胞を伴う乳腺乳頭腺癌の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.

腫瘍切除を行い腸管を温存した回腸脂肪腫による成人腸重積の1例

著者: 岡田禎人 ,   鈴木勝一 ,   中山隆 ,   渡辺治 ,   伊与田義信

ページ範囲:P.851 - P.854

はじめに

 成人型腸重積は全腸重積症例の5~10%と比較的稀な疾患で1),腫瘍や炎症などの器質的疾患を伴うことが多い2).良性腫瘍が原因疾患の場合その治療は腸重積の整復と腫瘍の切除であるが,ほとんどの報告例は腸切除を行っている.今回,筆者らは腹部CTによる術前診断に基づき,腸重積整復後,腫瘍切除を行い,腸管を温存することのできた回腸脂肪腫を原因疾患とする成人型腸重積の1例を経験したので報告する.腸重積整復後に腸管を温存し,腫瘍切除を行ったという回腸脂肪腫による成人腸重積の報告は自験例が初めてである.

十二指腸巨大stromal tumorの1切除例

著者: 徳永俊照 ,   角村純一 ,   吉留克英 ,   藤田繁雄 ,   永井勲 ,   宮本一雄

ページ範囲:P.855 - P.857

はじめに

 近年,消化管の間葉系腫瘍の鑑別分類に通常のhematoxylin-eosin(HE)染色だけではなく,免疫組織化学的な手法の発達により組織由来の明らかでない症例が存在することが認識されるようになってきた.そこで,消化管の間葉系腫瘍は4つのsubtypeに分類されるようになってきた1).今回,筆者らは平滑筋への分化を示した十二指腸の巨大stromal tumorの切除例を経験したので報告する.

子宮および右卵巣が嵌頓した右大腿ヘルニアの1例

著者: 東崇明 ,   久保宏幸

ページ範囲:P.859 - P.861

はじめに

 鼠径ヘルニアと比べて大腿ヘルニアのほうが嵌頓率が高いことはよく知られている7,9).大腿ヘルニアの嵌頓内容はその大部分が小腸か大網であり,子宮が嵌頓することは非常に稀である.今回,筆者らは子宮および右卵巣が嵌頓した右大腿ヘルニアの1例を経験したので報告する.

CTにて術前診断しえた先天性股関節脱臼を伴う両側閉鎖孔ヘルニアの1例

著者: 佐々木義之 ,   種村廣巳 ,   大下裕夫 ,   菅野昭宏 ,   日下部光彦 ,   波頭経明

ページ範囲:P.863 - P.866

はじめに

 閉鎖孔ヘルニアは近年検査機器の発達によりその報告例が増加しているが,両側性の閉鎖孔ヘルニアは非常に稀である1).本疾患における診断,治療,臨床的意義について文献的考察を加えて報告する.

腹腔鏡下胆囊摘出時に発見された副肝の1例

著者: 岡田健一 ,   清水壮一 ,   黒田浩章 ,   中村修三 ,   安村和彦 ,   高橋伸

ページ範囲:P.867 - P.869

はじめに

 肝臓の発生異常により生ずる副肝は稀であり,そのほとんどが手術,剖検,腹腔鏡検査に際して偶然発見されることが多く,術前に診断されたり,臨床症状を呈することは稀である1).今回,筆者らは腹腔鏡下胆囊摘出術の際に偶然発見した副肝の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

小網リンパ管腫の1例

著者: 鶴海博 ,   佐々木定之 ,   早瀬ヨネ子

ページ範囲:P.871 - P.874

はじめに

 リンパ管腫は小児の頸部,胸部に好発する良性腫瘍であり,腹腔内に発生することは稀である.今回,筆者らは小網に発生した囊胞性リンパ管腫を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

小腸の多発性gastrointestinal stromal tumor(GIST)により消化管出血をきたしたvon Recklinghausen病の1例

著者: 河西秀 ,   添田純平 ,   大森敏弘 ,   小池秀夫 ,   樋口佳代子 ,   田内克典

ページ範囲:P.875 - P.878

はじめに

 小腸の多発性GISTにより消化管出血をきたしたvon Recklinghausen病の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

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