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文献詳細

雑誌文献

臨床外科58巻7号

2003年07月発行

文献概要

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・7―Billroth Ⅱ法の登場

著者: 佐藤裕12

所属機関: 1北九州市立若松病院外科 2日本医史学会

ページ範囲:P.965 - P.968

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 1885年1月15日にBillrothは今日の「ビルロートⅡ法(残胃と空腸との端側吻合による再建:以下,B-Ⅱ-法と略す)」の原型となった手術を実施したが,それ以後Billrothの後を継ぐように,多くの外科医により種々の変法が開発発表されてきた(図1).しかし,歴史を顧みると,最初の「B-Ⅱ-法」は胃部分切除に引き続いて直ぐに胃空腸吻合を行うことを企図してなされたものではないのである.この手術の伏線となったのが,1881年9月28日に弟子のWölfler(図2)が,切除不能な幽門癌患者に実施した「胃空腸吻合(Gastro-Enterostomie:図3)」である.Wölflerは,幽門部の癌性狭窄のため胃拡張をきたした38歳の男性患者に,この手術(胃空腸吻合)を施術した.まず診断を確認するために試験開腹したところ,胃癌が肝十二指腸間膜や膵に浸潤していたため,切除を諦めて胃に小腸を吻合することにし,空腸を結腸前経由で挙上して胃の前壁に縫着したのである.これにより嘔吐は止み,第8病日には固形食がとれるまで回復した.Wölflerは,「この手術(胃空腸吻合)の意義は,患者を狭窄の原因から解放し生命が少しでも長らえるようにする」ところにあると考えていたようである.

 そして,この手術の成功を受けて,10月2日にはBillroth自身が2例目(通過障害のある45歳の男性患者)の手術を行ったのであるが,この患者は術後も胆汁性嘔吐が続き,第10病日目に死亡した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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