icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科58巻8号

2003年08月発行

雑誌目次

特集 癌化学療法レジメンの選択とその根拠:消化器癌

消化器癌化学療法における新規抗癌剤の開発状況と市販後評価

著者: 大柳文義 ,   長島文夫 ,   佐々木康綱

ページ範囲:P.1029 - P.1033

はじめに

 消化器癌に対する化学療法は1957年に5-fluorouracil(5-FU)が臨床導入されて以来,40年にわたり5-FUに代表されるフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬が中心的役割を果たし,至適投与方法,投与量,投与経路の選択を求めて臨床研究が続けられてきた.さらにbiochemical modulationを用いた効果増強の試みは成功し,leucovorin(LV)との併用は実地医療で汎用されている.しかしながら,1990年代以降,irinotecan(塩酸イリノテカン,CPT-11),paclitaxel(PTL),docetaxel(DTL),gemcitabin,oxaliplatin(L-OHP),capecitabine,S-1(tegaful+CDHP+gimeracil)などの新しい抗癌剤の出現により,消化器領域における化学療法は大きな変革を遂げつつある.

 本稿では進行・転移・再発大腸癌および胃癌における化学療法について新しい抗癌剤を中心に臨床試験および市販後調査の結果と合わせて解説する.

食道癌に対する化学療法レジメン―術前・術後補助・再発例

著者: 田中寿明 ,   末吉晋 ,   笹原弘子 ,   山名秀明 ,   白水和雄 ,   藤田博正

ページ範囲:P.1035 - P.1040

 他臓器浸潤T4食道癌に対する化学放射線療法は標準治療となっている.一方,切除可能(T1b~T3)食道癌に対する術前・術後の補助療法の有効性は未だコンセンサスが得られていない.従来わが国で行われてきた術後の予防的化学療法(CDDP/5-FU)は手術単独に比べて予後の改善は得られないが,リンパ節転移例で再発予防効果があるかもしれない.補助化学療法に関するrandomized controlled trial(RCT)の大半は欧米のものである.癌の組織型や手術の内容を考慮すると,わが国独自のRCTによる補助療法の評価と標準治療の確立が必要である.また,taxane系薬剤など新規抗癌剤の有効性の評価も急務である.

胃癌に対する化学療法レジメン―術後補助・進行/再発例

著者: 篠原尚 ,   野村栄治 ,   馬渕秀明 ,   西口完二 ,   谷川允彦

ページ範囲:P.1041 - P.1046

 進行・再発胃癌に対する化学療法の有効性はbest supportive careの2.5~4倍の延命効果によって証明されているが,従来頻用されてきたFAMTX,ELF,FPといった5-FUを含むレジメンは奏効率は高くても生存期間において5-FU単独投与を凌駕することはできず,標準療法とはなりえていない.しかしS-1やCPT-11などを加えた新世代の治療レジメンが第Ⅱ相試験で高い奏効率を示しており,第Ⅲ相試験の結果が待たれる.一方,術後補助化学療法に関しては手術単独を対照とした臨床試験自体が少なく,その有用性を検証するに至っていない.現在,優れた経口抗癌剤S-1を用いた比較臨床試験(ACTS-GC)がStageⅡ,Ⅲを対象として展開されている.本稿では胃癌化学療法の代表的レジメンから,大規模な臨床試験で評価されたものを中心に紹介する.

大腸癌に対する化学療法

著者: 小西毅 ,   渡邉聡明 ,   名川弘一

ページ範囲:P.1047 - P.1052

 大腸癌に対する治療の第一選択は手術である.大腸癌に対する化学療法の適応は切除不能な進行・再発症例に対して行う場合と,治癒切除後の再発のリスクが高い症例(主にDukes C症例)に対して術後補助療法として行う場合とに大別される.切除不能な進行・再発症例に対して一般的に行われている化学療法としては5-FU単剤投与,5-FU/LV療法,CPT-11単剤投与などがあげられる.一方,術後補助療法として一般的に行われている化学療法としては5-FU/LV療法に加え,本邦では経口フッ化ピリミジン剤が汎用されている.

大腸癌肝転移に対する肝動注治療―本邦で実施可能なレジメン

著者: 貞廣荘太郎 ,   鈴木俊之 ,   石川健二 ,   佐口武史 ,   前田裕二 ,   深澤麻希 ,   田島知郎 ,   幕内博康 ,   斎藤拓郎 ,   村山千恵子

ページ範囲:P.1053 - P.1057

 肝臓は大腸癌の転移,再発部位として最も頻度が高い.肝転移に対して手術が治療の第一選択であるが,肝切除後の無再発5年生存率は30%以下であり,肝動注治療を含めた集学的治療の必要性が示唆される.半減期が短く,肝での抽出率が高い5-FUを主とする抗癌剤の肝動注は肝転移巣に高濃度の薬剤を到達させ,しかも末梢血中の濃度を低く保つことが可能であり,副作用を抑えながら高い抗腫瘍効果を期待できる.現在肝動注のレジメンは種々報告されており定まったものはない.本稿では本邦で実施可能な肝動注レジメンについて概説した.

直腸癌に対する術前照射併用化学療法

著者: 加藤孝一郎 ,   小栁𣳾久 ,   青木達哉 ,   榎本正統 ,   原知憲

ページ範囲:P.1059 - P.1063

 直腸癌に対する放射線化学療法は欧米に始まり,近年では本邦でも施行されるようになった.教室で以前から行っていた術前照射療法の良好な結果を踏まえ,増感剤としてACNUを付加し,その効果を検討した.縮小率,狭窄の程度,周堤の変化,出血の程度などに改善効果を認めたが,統計学的有意差を証明できず,ACNUによる相乗効果は証明できなかった.この効果が証明されたのは壁深達度のみであり,これは放射線照射の効果のみが強く出現し,増感剤としての併用化学療法は影を潜めてしまったが,深達度改善による術前down-stagingの効果も期待され,化学療法剤の選択と投与量に発展性のあることが示唆された結果となった.今後は在院日数の短縮化という術前照射療法には不利な現状も踏まえ,照射装置の改良と照射方法の検討ならびにより効果的な化学療法剤の模索が必要である.

肝癌に対する肝動注などの化学療法レジメン

著者: 波多野悦朗 ,   猪飼伊和夫

ページ範囲:P.1065 - P.1069

 肝動脈塞栓化学療法(TACE)は肝癌治療の重要な治療法の1つであり,手術,ablationに比べ局所制御能は劣るものの,適応範囲の広い治療法で手術,ablation治療後の多発再発時にも一般的に用いられている.最近の無作為化比較試験でTACEが生存率の延長に寄与することが明らかにされた.

 肝癌化学療法における最近の進歩は肝動脈注入化学療法であり,門脈腫瘍栓を伴う切除不能例に対し5-FUとCDDPまたはインターフェロン併用5-FU動注で良好な奏効率が報告されている.しかしながら,全身化学療法においては有効なレジメはなく,臨床試験として行われているにすぎない.

胆道癌に試用される化学療法レジメン

著者: 水元一博 ,   大内田研宙 ,   永井英司 ,   山口幸二 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.1071 - P.1074

 胆道癌の治療に用いられる化学療法は単独施設での症例数が限定されていることや抗腫瘍効果の判定が困難なことから,radomized controlled trial(RCT)はほとんど実施されておらず,推奨できる治療法は確立されていない.

 切除不能胆道癌に対しては自己拡張型メタリックステントによる減黄処置の後に化学療法,または放射線化学療法が行われる.単剤での効果は5-FUやマイトマイシンCが約10%の奏効率があり,多剤併用療法では5-FUに白金製剤を含む治療,あるいは5-FU,ドキソルビシン,マイトマシンCの併用療法が試みられている.体外照射に腔内照射を加える放射線照射はリンパ節転移のない症例に対して効果が期待され,これに5-FUが加えられることが多い.治癒切除が可能であった症例では放射線照射と5-FUを術後補助療法として実施すると,40~50%の5年生存率が期待される.

膵癌に対する化学療法レジメン―単独および放射線照射併用

著者: 砂村眞琴 ,   江川新一 ,   阿部忠義 ,   福山尚治 ,   元井冬彦 ,   武田和憲 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1075 - P.1080

 新規抗癌剤gemcitabineの臨床使用が可能となり,新たな集学的治療の開発と外来診療によるQOL改善の可能性が広がっている.Chemoradiationとgemcitabineを組み合わせた集学的治療を進めているが,著効症例も見られ,プロトコールを作製して症例を集積している.今後,切除術後におけるadjuvantとしてのgemcitabineの役割を臨床研究で明らかとする必要がある.Gemcitabineに対する感受性を規定する遺伝子の同定を進めており,責任遺伝子が判明すればオーダーメード医療に応用できるものと期待している.

GIST再発例の化学療法レジメン

著者: 神田達夫 ,   大橋学 ,   中川悟 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.1081 - P.1087

 GISTはこれまで再発すると外科的切除以外には有効な治療法がなかった.最近,チロシンキナーゼの分子標的薬として開発されたメシル酸イマチニブ(グリベック(R))がGISTに対して高い効果を示すことが明らかにされた.米国における第Ⅱ相臨床試験では奏効率54%,1年生存率88%という結果であった.服用後の悪心,浮腫,筋肉痛,皮疹,白球球減少など,いくつか特徴的な副作用はあるものの,比較的容易に対応可能である.現在,効果が期待できる唯一の薬剤であり,イマチニブが再発GISTの第一選択薬と思われる.日本ではまだ保険適用でなく,使用は専門家による十分な情報提供のもと,慎重に行われなければならない.

目で見るカラーグラフ 世界に向かう乳腺疾患診療の新技術・4

乳管微小病変の乳管内視鏡分類

著者: 蒔田益次郎

ページ範囲:P.1021 - P.1028

はじめに

 異常乳頭分泌の診断では,乳管内の腫瘍性病変の有無とその鑑別が問題となる.乳管内視鏡は乳管内にある病変に対して直接アプローチできるため,異常乳頭分泌症例に対する有用な検査法である1,2)

 乳管内視鏡や乳管内生検を駆使することにより,異常乳頭分泌症例を非侵襲的に診断することが可能となった.乳管内視鏡の実際や乳管内生検の詳細は他稿に譲り,本稿では異常乳頭分泌の効率的な診断指針となる乳管内視鏡分類について解説する.

目で見る外科標準術式・40

乳房再建を前提とした経乳輪皮下乳腺全摘術

著者: 南雲吉則 ,   有木かおり ,   丹羽幸司 ,   岡田浩幸 ,   吉武哲 ,   山口悟

ページ範囲:P.1089 - P.1095

はじめに

 乳房温存術非適応例には胸筋温存乳房全摘術が行われるが,皮膚および乳頭・乳輪の欠損を生じるため再建がより困難で,再建後も大きな傷を残す.そこで筆者らは第3の選択として,皮膚を切除せずに経乳輪的に乳腺を全摘する経乳輪皮下乳腺全摘術(trans-areolar total glandectomy:TATG)を提唱している.本法の導入により乳房再建は容易になった.

医療制度と外科診療8

医療に関する基本的事項(6)―患者第一の医療

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.1096 - P.1097

患者第一の医療をするべきである

 今回は患者第一,患者本位,患者中心,患者が主人公という“常識”を検証したい.

 命題:患者第一の医療をするべきである.

私の工夫―手術・処置・手順

虫垂炎手術における皮下膿瘍を防ぐ工夫

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1098 - P.1099

 虫垂炎手術は,一般的に外科手術のなかでは簡単な手術と思われがちである.患者も簡単な手術と思っており,そのため合併症は医療訴訟になる危険性がある.虫垂炎手術のなかでもっとも多い合併症は皮下膿瘍である.この皮下膿瘍の頻度を少しでも少なくするために工夫を加えたので報告する.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・8―胃癌研究のその後の展開:Mikuliczの貢献

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1100 - P.1103

 Billrothの門下から多くの俊英が輩出し,それぞれが外科学の進展に大きく貢献したことは以前(第2回目)にも述べたが,胃癌の外科治療の領域においてBillrothを継いで多大な貢献をなしたのはMikulicz(Johannes von Mikulicz-Radecki, 1850~1905)である.Mikuliczは胃・食道鏡(図1)の創始者として知られるが,今日ミクリッツの名は,病名として「ミクリッツ病(Mikulicz's disease)」,外科手術に関連しては「ミクリッツ腹膜鉗子(peritoneal clamp)」,「ハイネッケ-ミクリッツ(Heineke-Mikulicz)式幽門形成術」や「ミクリッツ-タンポン(Mikulicz's tamponade)」などに冠名(eponym)として残っている.

 Billrothのもとで研修を積んだ後,KrakauからKönigsbergを経て,1890年にポーランドのBreslau大学の外科教授に迎えられたのであるが,この大学在任中の1898年に「Arch. klin Chir. 51, 525, 1898)」誌に「Beiträge zur Technik der Operation des Magencarcinoms:胃癌手術について」という論文(図2)を寄せて,Billroth以来の胃癌研究を集大成している.この論文は第27回ドイツ外科学会でMikuliczが行った口演をまとめたもので,Billrothが胃癌切除術(幽門切除:pylorectomy)を臨床応用すべく弟子のGussenbauer&Winiwarterに命じて行わせた動物実験と剖検に基づく研究結果(Die partielle Magenresection:Arch. klin Chir. Bd. 19, Seite 347)を引き合いに出しながらそれまでの研究の成果を論じている.

病院めぐり

公立藤岡総合病院外科

著者: 石崎政利

ページ範囲:P.1104 - P.1104

 当院は昭和26年11月15日に当時の藤岡町を中心とした16か町村医療事務組合立の多野病院として開院し,当時病床数は結核病床を加え42床でした.その後,昭和33年,昭和46年,昭和61年に増築,増床し,藤岡市を中心とする医療圏内の地域中核病院として地域医療の向上に寄与してきました.昭和60年8月12日には上野村御巣鷹山で日航機墜落事故があり,多くの患者の救命にあたり,生存者4名のうち3名を収容しました.平成9年4月に現在の公立藤岡総合病院に名称を変更しました.平成14年4月には病院の外来部門を附属外来センターとして新築分離し,入院棟も改修後救急センターを開設し,急性期病院として機能強化を図り,現在,診療科17科,病床数391床で診療をしています.

 外科は群馬大学第一外科の関連病院として,日本外科学会認定施設・修練指定施設,日本消化器外科学会認定施設,日本呼吸器外科認定施設,日本乳癌学会認定施設として認定されています.スタッフは科長の石崎外科部長他8名が群馬大学第一外科から派遣され,診療にあたっています.外科病床は50床で,診療は食道・胃・大腸,肝・胆・膵など消化器(石崎部長,茂木医長,大沢医長,福地医長,相場医員,緒方医員),乳腺・甲状腺(石崎部長),呼吸器(茂木晃医長)を中心に一般外科全般を扱い,機能温存手術,内視鏡を用いた縮小手術,また拡大手術を取り入れています.昨年の手術件数は500件で,悪性疾患では食道癌4件,胃癌44件,大腸癌63件,肝胆膵癌11件,肺癌13件,乳癌32件,良性疾患では胆石・胆嚢ポリープ46件,ヘルニア59件,虫垂炎61件,イレウス15件,消化管穿孔8件でした.救急センターが開設されてから緊急手術が増え,外科医師の負担も増加しています.

埼玉県立がんセンター外科

著者: 末益公人

ページ範囲:P.1105 - P.1105

 当センターは,昭和50年11月に埼玉県のがんに関する医療および研究の中核機関として,県下全域を診療高度圏とする高度な医療を行うとともに,地域医療水準の向上に役立ちうる施設として病院,研究所,図書館を併立し,全国から優秀な人材を集めて埼玉県北足立郡伊奈町小室に設立された.そのため開院時のスタッフは,北は札幌医大から南は鹿児島大学に至るまでの10数大学からのがん専門家の集まりであった.

 開設当初は,100床であったが,その後増床を重ねて現在400床,診療科は16で,常勤医67名,非常勤医13名である.開院以来,完全紹介制をとっており,県下医師会との病診連携を図り,開業医,一般病院からの紹介が多く,一日の平均外来患者数724名,病床利用率92.0%,平均在院日数16.6日である.

文学漫歩

―ロレンス(著)伊藤 整(訳),伊藤 礼(補訳)―『チャタレイ夫人の恋人』―(1996年,新潮社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.1106 - P.1106

 新型肺炎SARS(severe acute respiratory syndrome)のほうが有名になったが,昨年まではサーズと言えばSIRS(systemic inflammatory response syndrome)であった.SIRSは侵襲によって全身的な炎症反応が惹起された状態で,臓器不全の準備状態である.SIRSから離脱できないと多臓器不全MOF(multiple organ failure)に移行する.

 MOFという略語も,数年前の旧大蔵省不祥事事件での大蔵省(ministry of finance)接待担当「MOF担」で有名になった.財務省と名前が変わったが,英語名はそのままで,日本経済も多臓器不全のままである.

日常診療に役立つPalm活用術・2

診療に役立つPalmwareと周辺機器

著者: 讃岐美智義

ページ範囲:P.1107 - P.1111

 Palmが医療分野でPDAの優位に立つ理由の1つは,数多く作られている医療関係Palmソフトウェア(Palmware)や周辺機器の多さにある.今回は,日常診療に役立つPalmware(Palmソフトウェア)と周辺機器について解説する.

ここまで来た癌免疫療法 最終回

癌免疫療法の今後の発展のために

著者: 田原秀晃 ,   佐藤まりも ,   高山卓也 ,   安藤裕一 ,   市川直哉 ,   竹田明彦 ,   別宮好文 ,   角田卓也

ページ範囲:P.1112 - P.1116

はじめに

 これまで1年あまりにわたって,急速に進歩しつつある癌免疫療法に関連する情報を提供してきた.このシリーズの最初に紹介したように,これまでさまざまなタイプの癌免疫療法が検討されてきた.歴史的にみてそのなかには,開発の初期段階にて脚光を浴びたものの臨床的には成功しなかったものが多数存在する.しかし,長年にわたる着実な研究により,その有用性が科学的に認められた抗CD20抗体や抗Her2/neu抗体のような薬剤も少数ながら出現してきているのも事実である.これらの希少ではあるが成功した例からその考え方や開発手法をうまく学ぶことができれば,理論的には有望であると考えられながら,臨床の場での地位を確立するには至っていないT細胞による腫瘍特異的な細胞傷害性を利用した免疫療法の開発も進み,確立された治療法ともなり得るであろう.

臨床報告 1

直腸gastrointestinal stromal tumorの1例

著者: 板野理 ,   田中克典 ,   服部裕昭 ,   鈴木文雄 ,   大高均 ,   緒方謙太郎

ページ範囲:P.1117 - P.1120

はじめに

 消化管に発生する間葉系腫瘍では筋原性/神経原性両マーカーに染色されない一群,gastrointestinal stromal tumor(GIST)が約80%を占めることが明らかとなってきた1).しかしその定義や分類,診断法は確立,浸透したものとは言えず,臨床面での検討も十分とは言えない.今回,筆者らは直腸原発のGISTの1切除例を経験したので報告する.

特発性腹直筋血腫の1例

著者: 石田善敬 ,   清水淳三 ,   寺田卓郎 ,   龍沢泰彦 ,   川浦幸光 ,   高橋史郎

ページ範囲:P.1121 - P.1123

はじめに

 特発性腹直筋血腫は比較的稀な疾患であり,本症の存在を念頭に置かないと腹腔内病変と誤診し,不必要な開腹手術が行われた症例の報告も散見されている1,2).今回,筆者らは穿刺吸引により正確な診断を得,保存的治療により軽快した特発性腹直筋血腫の1例を経験したので報告する.

根治術を施行しえたスキルス胃癌穿孔の1例

著者: 村上望 ,   北川晋 ,   足立厳 ,   森田克哉 ,   飯野賢治 ,   山田哲司

ページ範囲:P.1125 - P.1128

はじめに

 胃癌の穿孔は比較的稀であり,中でもスキルス胃癌の穿孔はきわめて稀である1,2).今回,筆者らはスキルス胃癌の穿孔に対して二期的に根治術を施行しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

急速な経過をとった上行結腸未分化癌の1例

著者: 里本一剛 ,   上川康明 ,   小林達則 ,   上山聰

ページ範囲:P.1129 - P.1133

はじめに

 大腸に発生する未分化癌は稀であり,報告例は少ない.また予後に関してはきわめて不良とするものが多いが,良好であったとの報告例もある1~7).今回,筆者らは横行結腸に直接浸潤を示す上行結腸癌に対し切除術を施行し,病理組織学的に未分化癌と診断され,術後急速な経過をとり死亡した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

内攻型Fournier's gangreneの1例

著者: 日馬幹弘 ,   河北英明 ,   大久保利隆 ,   野牛道晃 ,   黒田直樹 ,   山梨美紀夫

ページ範囲:P.1135 - P.1139

はじめに

 Fournier's gangreneは比較的稀に見られる外陰部を中心とした急性化膿性炎症で,生命予後に影響をきたしうる重篤な疾患である1).従来,陰嚢・会陰部の皮膚所見の激しい症例を中心に報告がなされてきたが,近年,内攻型とよばれる会陰部の皮膚症状に乏しく腹壁,後腹膜へと急速に進展する症例が報告されている2).今回,血液透析患者に併発した本症例を経験したので文献的考察を含めて報告する.

経腹的腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術が有用であった左大腿-右大腿動脈バイパス術後の外鼠径ヘルニアの1例

著者: 西山徹 ,   加藤紘之 ,   橋本裕之 ,   飯村泰昭 ,   久保田宏 ,   和泉裕一

ページ範囲:P.1141 - P.1144

はじめに

 1994年11月~2002年10月に240例の成人鼠径ヘルニアに対し,経腹的腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(以下,TAPP)を施行した.最近TAPPが有用であった左大腿-右大腿動脈バイパス術後の外鼠径ヘルニア症例を経験したので報告する.

腸重積にて発症し腹腔鏡補助下手術を施行した盲腸癌の1例

著者: 小笠原豊 ,   万代康弘 ,   大谷順

ページ範囲:P.1145 - P.1147

はじめに

 成人の腸重積症は器質的疾患に起因することが多く,大腸では癌が関与していることが多い1).今回,腸重積にて発症し,腹腔鏡補助下手術を施行した盲腸癌症例を経験したので報告する.

臨床経験

胃瘻造設後の合併症を予防するための空腸瘻同時造設術

著者: 大野敬祐 ,   秦史壮 ,   八十島孝博 ,   柳内良之 ,   西森英史 ,   平田公一

ページ範囲:P.1149 - P.1152

はじめに

 胃瘻および腸瘻の目的は栄養投与あるいは胃内容の減圧であり,悪性腫瘍根治切除などのmajor surgeryにおける付加手術として行われることも多い.経腸栄養法は静脈栄養よりも生理的な栄養法であり,かつ安価で管理が簡単なため,患者やその介護者に受け入れられやすい1,2).また,静脈栄養に比べて安全で合併症も少なく,長期にわたり使用可能であり,在宅においても入院中と同等の栄養管理が施行可能である1,2).経口摂取の低下した患者に対して在宅で可能な経鼻栄養法があったが,安全にかつ管理の容易な胃瘻からの経腸栄養法が多用されている.

 筆者らは造設後早期の胃食道逆流による誤嚥性肺炎を防ぐ工夫として小開腹下に胃瘻および空腸瘻の一期的な造設術を10例の患者に対して行ったので,その有用性を報告する.

ハイドロコロイドとハイドロファイバーを併用した閉塞性ドレッシングによる下腿潰瘍の2治療経験

著者: 井上聡 ,   和多田晋 ,   夏錦言 ,   高原哲也 ,   飯田修平

ページ範囲:P.1153 - P.1156

はじめに

 12年間にわたる難治性静脈うっ滞性下腿潰瘍と,下肢蜂窩織炎に伴う巨大下腿潰瘍に対してハイドロファイバー(アクアセル(R))を併用したハイドロコロイド(デュオアクティブ(R))による閉塞性ドレッシングを試み,良好な結果が得られたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら