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文献詳細

雑誌文献

臨床外科59巻11号

2004年10月発行

文献概要

特集 小外科・外来処置マニュアル Ⅱ.頭部・顔面・口腔・咽頭

32.ピアスなどによる耳介炎症

著者: 加瀬康弘1

所属機関: 1埼玉医科大学耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.104 - P.105

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耳介軟骨膜炎

 耳介に生ずる炎症は耳介軟骨膜炎となりやすい(図1).解剖学的に耳介を覆う皮膚は薄い皮下組織の層を介して,軟骨膜および耳介軟骨と近接している.したがって,耳介への鈍的あるいは鋭的外傷は容易に軟骨膜および軟骨へと波及する.さらに,外耳道など周囲からの連続的な波及や,反復性多発性軟骨炎のような自己免疫疾患によって耳介に炎症をきたす場合もある.耳介皮下への炎症波及によって耳介軟骨と軟骨膜は分離・剥離するので,炎症が長引くと軟骨膜から栄養補給されている耳介軟骨は壊死に陥り,炎症は消退しても将来の耳介変形の原因となる.

 治療で肝要なことは,耳介軟骨の栄養障害を最小限にくいとめるため,早期に治癒に導くことである.遷延化すればするだけ栄養障害は重篤になり,治癒後の耳介の変形が強くなる可能性がある.ゆえに,初期から抗生剤の点滴静注を強力に行う.いったん膿瘍が形成された場合はただちに切開排膿し洗浄する.不良肉芽や軟骨に壊死が生じたら,鋭匙などによってある程度取り除く.反復性多発性軟骨炎ではステロイド投与が有効であるが,しばしば反復,増悪を繰り返すので完全離脱は容易でなく,長期にわたって維持量を投与することもある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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