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特集 小外科・外来処置マニュアル Ⅲ.頸部・肩
42.鞭打ち損傷,頸椎捻挫,外傷性頸部症候群,Barré-Liéou症候群
著者: 安岡正蔵1
所属機関: 1安岡整形外科脳外科クリニック
ページ範囲:P.136 - P.138
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「鞭打ち損傷」は,自動車の追突や衝突事故を原因とすることが最も多い.追突事故時の頭部頸椎は,後方への過伸展とそれに続く前方への過屈曲の状態となるが,これが“鞭打ち(whiplash)”にたとえられたものである.頸椎の過伸展・過屈曲・回旋強制外力によって頸椎椎間板や椎間関節,関節包,周囲の靱帯,筋肉,神経などの軟部組織の損傷が引き起こされ,項頸部痛を主症状とする病態である.
(1)1995年のケベック鞭打ち症関連障害(whiplash associated disorders:WAD)特別調査団による研究1)によって提唱されている分類はつぎのとおりである.
Grade 0:頸部痛なし.
GradeⅠ:頸部痛のみ.
GradeⅡ:頸部痛+頸椎運動制限・圧痛あり.
GradeⅢ:頸部痛+神経学的所見(筋力低下・知覚障害・腱反射低下消失)あり.
GradeⅣ:頸部痛+骨折・脱臼あり.
この分類では,後述のBarré-Liéou症候群は記載されておらず,めまいや耳鳴,頭痛などはどのgradeにも表れ得るとするとしている.
(2)「鞭打ち損傷」は日本では診断名としては不適当であるとされており,代わりに「頸椎捻挫」または「外傷性頸部症候群」が用いられている.このうち,外傷性頸部症候群を頸椎捻挫と同義とするものと,後述のBarreé-Lieéou症候群と同義に扱うものとに分かれているのが現状である.
(3)項頸部痛のほかに,頭痛,吐き気,めまい,耳鳴り,眼精疲労などを伴う症例に対しては,頸椎捻挫と区別してBarré-Liéou症候群を診断名とすることが多い.
(4)筆者は,頸椎捻挫と外傷性頸部症候群を同義とし,かつ総称として用い,症状の程度を表すケベックWAD分類のGrade数値とBarreé-Lieéou症候群(+または-)を併記することを提唱したい.これは,後述のようにケベックWAD分類のGrade数値とBarreé-Lieéou症候群の有無が予後に関連しているからである.
「鞭打ち損傷」は,自動車の追突や衝突事故を原因とすることが最も多い.追突事故時の頭部頸椎は,後方への過伸展とそれに続く前方への過屈曲の状態となるが,これが“鞭打ち(whiplash)”にたとえられたものである.頸椎の過伸展・過屈曲・回旋強制外力によって頸椎椎間板や椎間関節,関節包,周囲の靱帯,筋肉,神経などの軟部組織の損傷が引き起こされ,項頸部痛を主症状とする病態である.
(1)1995年のケベック鞭打ち症関連障害(whiplash associated disorders:WAD)特別調査団による研究1)によって提唱されている分類はつぎのとおりである.
Grade 0:頸部痛なし.
GradeⅠ:頸部痛のみ.
GradeⅡ:頸部痛+頸椎運動制限・圧痛あり.
GradeⅢ:頸部痛+神経学的所見(筋力低下・知覚障害・腱反射低下消失)あり.
GradeⅣ:頸部痛+骨折・脱臼あり.
この分類では,後述のBarré-Liéou症候群は記載されておらず,めまいや耳鳴,頭痛などはどのgradeにも表れ得るとするとしている.
(2)「鞭打ち損傷」は日本では診断名としては不適当であるとされており,代わりに「頸椎捻挫」または「外傷性頸部症候群」が用いられている.このうち,外傷性頸部症候群を頸椎捻挫と同義とするものと,後述のBarreé-Lieéou症候群と同義に扱うものとに分かれているのが現状である.
(3)項頸部痛のほかに,頭痛,吐き気,めまい,耳鳴り,眼精疲労などを伴う症例に対しては,頸椎捻挫と区別してBarré-Liéou症候群を診断名とすることが多い.
(4)筆者は,頸椎捻挫と外傷性頸部症候群を同義とし,かつ総称として用い,症状の程度を表すケベックWAD分類のGrade数値とBarreé-Lieéou症候群(+または-)を併記することを提唱したい.これは,後述のようにケベックWAD分類のGrade数値とBarreé-Lieéou症候群の有無が予後に関連しているからである.
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