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文献詳細

雑誌文献

臨床外科59巻11号

2004年10月発行

文献概要

特集 小外科・外来処置マニュアル Ⅷ.四肢・皮膚

117.ケロイド,肥厚性瘢痕

著者: 井上達史1 熊谷一秀1

所属機関: 1昭和大学附属豊洲病院外科

ページ範囲:P.348 - P.350

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はじめに

 毛囊炎,外傷,手術,熱傷などを契機とした隆起性皮膚腫瘤を見ると“ケロイド”と称されることが多い.しかし,このほとんどは誤った認識である.創部の多くは1,2か月で赤く隆起し,いわゆるミミズばれの状態になる.そして,半年から1年が経過すると放置しておいても平坦で白くなっていく.この病変は受傷範囲を越えて増殖することはなく,約99%は肥厚性瘢痕であると言われている.一方,ケロイドは,1 損傷範囲を越えて周囲の健常部に浸潤,増殖する,2 病変が拡大するとともに中心部には治癒傾向を認める,3 数か月や1年が経過しても消退傾向が認められない,4 前胸部,肩部,背部,下腹部,耳介などに好発し,体質が関与する1),などが特徴である.

 ケロイドと肥厚性瘢痕は真皮結合織の過剰増生で,創傷治癒機序で再生増殖する血管内皮細胞や線維芽細胞から産生されるTGF-β1やPDGFなどのサイトカインが増加し,結合織の過剰増生の悪循環に陥った状態と考えられている2)が,組織学的に鑑別することは困難である.しかし,治療方針については大きな違いがあるため,慎重な鑑別診断と適切な治療が求められる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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