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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科59巻12号

2004年12月発行

雑誌目次

特集 術中の出血コントロールと止血のノウハウ

術前検査の選択とその読み

著者: 小山高敏

ページ範囲:P.1389 - P.1394

 要旨:出血傾向の術前の正確な診断は,手術の成功と術後の適切な管理のために不可欠である.

出血傾向は,血管壁,血小板,凝固・線溶因子の異常によって引き起こされる.出血傾向の原因の正確な診断には,血小板・凝固・線溶系の検査,出血時間といった止血検査の成績が不可欠であるが,既往歴に出血傾向がなく手術ではじめて止血困難に遭遇して出血性素因が見出される場合も多い.現行の止血検査で異常がみつからない場合もある.診断に重要なのは,家族歴を含む病歴の注意深い聴取と身体所見の正確な把握であり,検査はそれを確定するための手段である.また,検査は選択的に実施して診断と治療のために利用すべきである.出血性素因の原因を鑑別して手術に臨み,血小板輸血や凍結血漿,凝固因子製剤,抗線溶薬の使用を適切に行うことがきわめて重要である.

播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断と治療

著者: 西川政勝 ,   田丸智巳

ページ範囲:P.1395 - P.1401

 要旨:播種性血管内凝固症候群(DIC)は様々な原因から生じる全身の血管内凝固の活性化によって特徴づけられる後天性症候群であり,微小血栓形成による循環障害のため臓器機能障害をきたすとともに,血小板,凝固因子,線溶因子が消費性に低下して出血症状を呈する重篤な病態である.

 凝固線溶系分子マーカーの測定によってPre-DICをより早期に的確に把握することが重要である.DIIC治療の原則はあくまでも原因の除去・軽減にあり,(1)基礎疾患の治療,(2)抗凝固療法,(3)補充療法の三者を並行して行う.

止血剤の使い方

著者: 松股孝

ページ範囲:P.1403 - P.1408

 要旨:抗凝固剤の服薬歴情報を収集することが術前には重要である.術後はナッハブルーテンの時代から肺血栓塞栓症予防の時代になった.術中の出血コントロールのためには,oozingの防止が重要である.Oozingの防止は手術時間の短縮と輸血の回避につながるが,そのためには,肝機能障害や大型腫瘍などが原因となって術前から存在している凝固線溶活性の異常を把握することが大切である.肝切除術などでは,術中に亢進してくる凝固線溶活性を適切にコントロールする必要がある.デスモプレシン(R)やナファモスタットの有効性を証明し,使用経験を報告した.

動脈,静脈,臓器出血に対する止血の基本手技

著者: 篠原尚 ,   水野惠文

ページ範囲:P.1409 - P.1413

 要旨:出血は外科手術において宿命的なものであるが,的確な対処を怠れば視野を妨げ,操作を遅らせ,結果として手術のqualityを著しく低下させる.また,出血量が多くなれば輸血が必要となり,生命の危険も伴う.したがって,血管走行を含めた局所解剖を熟知し,出血させない手術を遂行することが重要であるが,出血した場合には速やかにしかるべき止血法を講じることである.すなわち,まず(1)出血点を確認し,(2)原因(動脈か静脈か,実質性出血かなど)を把握したうえで,(3)最適な止血法の選択を行う.本稿では術中によく遭遇する動脈,静脈,臓器からの出血に対する一般的な止血の基本手技を解説した.

内視鏡下手術における止血のためのサージカルデバイス使用のノウハウ

著者: 林賢

ページ範囲:P.1415 - P.1421

 要旨:内視鏡下手術では開腹手術に比較して術中の出血対応への処置が難しく,処置を誤ると出血量の増加や手術時間の延長のみならず,根治性や安全性が損なわれる側面があり,十分な注意を要する.本稿では出血予防器具と出血時処置具に分けてデバイスの紹介と特徴を述べるが,これらの使いこなしが精緻な内視鏡手術の完遂に大きく関与するため,日頃から十分な対応を考慮しておく必用がある.

止血のための組織接着剤と局所止血剤の使用法

著者: 関仁誌 ,   宮川雄輔 ,   宗像康博

ページ範囲:P.1423 - P.1428

 要旨:最近の外科領域では繊細・緻密な手術手技を要求され,止血は最も重要な操作の1つである.動脈性の出血には外科的な結紮や縫合などの操作を要するが,静脈性あるいはoozing様の出血に対しては組織接着剤や局所止血剤が有用である.現在,臨床に用いられている組織接着剤および局所止血剤としては,シート状フィブリン接着剤,液状フィブリン接着剤,合成接着剤(シアノアクリレート系),コラーゲン製剤,酸化セルロース,ゼラチン製剤,トロンビンなどがある.本稿では組織接着剤と局所止血剤の概要を解説するとともに,主な製剤の使用経験を述べ考察を加えた.

肝切除術における術中の出血コントロール

著者: 板本敏行 ,   大段秀樹 ,   田代裕尊 ,   浅原利正

ページ範囲:P.1429 - P.1433

 要旨:肝切除術中の出血を回避するためには,解剖を熟知したうえで丁寧な手術手技を心がけることが重要である.ルーペの着用によって繊細な血管処理や止血操作などが可能となる.出血した場合の対処は,決して慌てることなく術野を確保することが第一で,無理な止血操作はかえって大量出血を招く.特に,肝静脈や下大静脈からの出血のほとんどは,出血点を軽く圧迫することによって止血が可能である.肝離断中の出血のほとんどは肝静脈枝からの出血で,CVPを5cmH2O以下に維持することによって出血量を軽減できる.麻酔科医との密な連携が必要である.

骨盤内手術における出血コントロール

著者: 萩原明於 ,   阪倉長平 ,   大辻英吾 ,   山岸久一

ページ範囲:P.1434 - P.1440

 要旨:骨盤内手術の出血は静脈性大量出血を特徴とする.その原因となる要因は骨盤部血管の特殊性と手術視野の悪さである.これら2つの要因の対処として,つぎの(1)~(5)の処置をあらかじめ行っておけば,出血が起こりにくいのみならず,いざ出血した場合も容易に止血できる.具体的には,(1)骨盤内静脈を空虚に保つ工夫を実行すること,(2)乾いた手術野で丁寧な血管処理を行うこと,(3)血管処理の順番を誤らないこと,(4)細い静脈の結紮糸が抜け落ちないように糸針を用いて断端処理すること,(5)静脈性出血は慌てて鉗子で静脈を摑みにいかず,出血の勢いを弱めるまで局所止血剤を用い,正確で辛抱強い圧迫止血を行うこと,が重要である.

腹腔鏡下手術における出血コントロール

著者: 森田純二

ページ範囲:P.1443 - P.1447

 要旨:内視鏡外科手術を順調に完遂する要点の1つに,出血をさせないことがある.最近は内視鏡外科手術が多く施行されるようになり,出血コントロールのための器具も多く開発されている.内視鏡外科手術の場合,これらの器具を適切に使い分けることと,出血の状況を内視鏡下に的確に判断することが必要と思われる.本稿では,出血を最小限にするコツと,出血コントロールのために開発されている器具の特徴を述べ,不幸にして出血した場合の対処についても述べた.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・2

胃食道逆流症に対する腹腔鏡下逆流防止手術

著者: 小澤壯治 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1383 - P.1388

はじめに

 胃食道逆流症に対する治療には,酸分泌抑制薬を中心とした内科的治療,逆流防止手術,そして最近になって登場した管腔内視鏡治療などがある.そのなかでも有効性が高い腹腔鏡下逆流防止手術は,Dallemagneら1)によって1991年に最初の文献報告がなされ,その後,世界各地で施行されるようになった.

 本稿では,代表的な腹腔鏡下Nissen手術について解説する.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問

9.手術後のガーゼ交換は必要か

著者: 松股孝

ページ範囲:P.1448 - P.1449

【創部の観察】

 毒になりかねない消毒薬を創にたっぷりとつけて,ごわごわしたガーゼを当てるばかりが毎日の外科の医療行為ではない.ガーゼを固定するテープ負けで皮膚は水疱だらけになっている.ガーゼ交換の意義があるとすれば,創部の観察であろう.大腸菌などは20~30分に1回分裂するのだから,人間千年の形質変化をわずか1日で遂げてしまう.抗生物質を何日間も使ってよいはずはない.発赤や創部痛が認められれば,その部分を抜糸して排膿しなければならない.ドレナージすれば治療的抗生物質も必要ない.クリニカルパスのバリアンスにならずにすむ.

10.抜糸はなぜ7日目か

著者: 鎌倉達郎 ,   満行みどり

ページ範囲:P.1450 - P.1452

 われわれ外科医の常識として,抜糸は7日目である.大きな切開創の場合は7日目に半抜糸を行い,翌日あるいは翌々日に残りの抜糸を行うことが多いと思う.少なくとも筆者が一般外科の時代の1990年前半まではこのような常識のもとに抜糸を行っていたのを覚えている.今回,本テーマの執筆機会を得たので,あらためてこの常識について考え直し,美容外科医としての経験のなかから少しでも日々の診療の役に立てばと思い述べる.

 まず,創はどのような時間経過で治っていくのだろうか.現在の知見に照合し,創傷治癒について概観してみる.創傷治癒の機転には,炎症反応期,肉芽形成期,安定期の3つのステップがある.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・23―ビルロート「医師(医士)のあり方」を論ず

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1453 - P.1455

 明治25年2月に発刊された中外医事新報(第285号)に,「維納大学教授ドクトル,ビルロート貴族院に於いて大いに医士の位置を論ず」という一文が掲載されている.これは当時,倫理観の沈潜とともに甚だしく低下していた医師の社会的地位を向上させるべく,ビルロートがオーストリア国会において行った演説の要旨であり,ここにビルロートの医師観(医師のあり方に関する考え)が吐露されているので,今回は,このビルロート演説の紹介文を紹介する.

 Billrothはこのときから15年ほど前に“Lehren und Lernen(教育と学習)”という一文を発表し,当時の医士の立場の困難性について論じたが,明治24年11月25日の国会における医務院設立に関する法案審議に際して意見を陳述し,医務院設立の必要性を説いたのである.

日米で異なる外科レジデント教育・医療事情(第5回)

手術場における米国外科研修の到達度

著者: 十川博

ページ範囲:P.1456 - P.1457

◇はじめに◇

 過去数回にわたって米国外科研修システムの枠組みについて述べてきた.今回は外科研修の根幹にあたる手術経験の差について述べよう.日本の外科医養成システムとの決定的違いは,米国のシステムではエンドポイントが決まっていて,たとえば一般外科の場合は5年間であり,5年間終了後には単独で一般外科の手術ができるようにシステムを作っているところであろう.これは米国のプラグマティズムが際立っていて,日本やヨーロッパの見て学ぶ方式のやり方とは異なる.

 手術ができなければ卒業できない.それが米国の基本姿勢である.ここでは筆者の所属するニューヨーク州立大学ストーニーブルック校レジデント1年目から5年目までの手術経験を紹介する.ちなみにストーニーブルックではメインとなる大学病院および関連病院のウインスロップ病院,そしてVA(在郷軍人病院)の3つの病院にて研修を行い,アカデミックな現場(ストーニーブルック)と開業外科医中心の病院(ウインスロップ),そしてレジデント主体の病院(在郷軍人病院)という3つの違った環境を経験することができる.

病院めぐり

公立陶生病院外科

著者: 木村保則

ページ範囲:P.1458 - P.1458

 公立陶生病院は,名古屋市の東約15kmの陶磁器で有名な瀬戸市にあり,瀬戸市,尾張旭市,長久手町の2市1町がその母体で,昭和11年10月13日に開設されました.

 診療科は現在20科,一般病床666床,結核44床,感染6床の計716床を有し,医師121名,16看護単位で構成されています.愛知県東部の基幹病院として救急診療および一般診療を担っており,外科は呼吸器外科と心臓血管外科が独立し(手術など協力体制は良好です),われわれは消化器外科および乳腺内分泌外科を担当しています.また,日本医療機能評価機構認定病院,臨床研修指定病院,日本外科学会,日本消化器外科学会,日本胸部外科学会,日本消化病学会,日本救急医学会,日本集中治療医学会など各種学会の認定医・専門医修練施設になっています.

富士宮市立病院外科

著者: 霜多広

ページ範囲:P.1459 - P.1459

 富士宮市立病院は昭和20年12月に市立富士宮病院(病床数32床)として開設されましたが,新たなニーズに応えるべく昭和61年4月に富士宮市立病院として再出発しました.環境は良好で,霊峰富士の麓に位置し,病院の北側の窓からは富士山を,また,近隣からは駿河湾を望む景勝地にあります.東名高速道路の富士インターから車で20分,身延線富士宮駅から徒歩1分ですが,新幹線新富士駅からのアクセスに難がある点が問題です.富士宮市だけでなく周辺地域である富士市,芝川町,富士川町などからも多数の患者を受け入れ,当地区の基幹病院としての責務を果たしています.

 外科スタッフは木村泰三(院長)を筆頭に,消化器外科および呼吸器乳腺外科を対象として霜多広,鈴木憲次,川辺昭浩,岡本和哉,大端考,ほかにレジデント2名,スーパーローテーター1名の計9名です.医局員やレジデントは主に浜松医科大学第一,第二外科から派遣されています.また,(1)日本消化器外科学会専門医制度修練施設,(2)日本外科学会認定医制度修練施設,(3)日本呼吸器外科学会認定医制度関連施設,(4)日本胸部外科学会認定医関連施設などとして活動し,多くの若い先生方の資格取得の一助になっています.医局員の活発な学会活動は特徴の1つで,平成14年度は21の学会発表,11の発表論文を数えました.「よい論文発表は普段の地道で綿密な臨床経験から」がモットーです.

海外医療事情

韓国の医療事情

著者: 米村豊 ,  

ページ範囲:P.1460 - P.1463

はじめに

 筆者らは東アジアにおける胃癌の標準治療を開発するため,1995年韓国,台湾,中国,日本の13施設でEast Asia Surgical Oncology Group(EASOG)を結成した.第1回の会合を京都で開催し,高度進行胃癌に対する新しい化学療法をメインテーマとした.FEPMTXと名づけたこの化学療法はresponse rate 52%,MST 356日という成績であった1)

 その後,胃癌のリンパ節郭清のランダム化比較試験D2 vs D4を1996年から開始し,256例が集積,2003年に終了している2).また韓国の施設と腹腔内洗浄液を用いた遺伝子診断を開発しつつある3~5).現在はEASOGは20施設に増加した.図1は静岡がんセンターで行われたEASOGのワークショップClinical Pathway of Peritoneal Dissemination from Gastric Cancer(2002年11月23日)の一こまである.このような関連から韓国における医療事情を述べる.

臨床外科交見室

腹腔鏡下手術の光と影

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1464 - P.1464

 わが国で腹腔鏡による胆囊摘出術がはじめて行われてから,はや15年近くが経とうとしている.腹腔鏡による手術が開始された当初は,従来の開腹手術に慣れている外科医にとって,この手術法がはたして世に広まるのかは半信半疑であった.しかし,現実はものすごい勢いで行われるようになった.胆囊摘出はもとより,胃や大腸,食道,はては肝臓や膵臓の手術,乳腺や甲状腺の手術,また小切開で十分可能な虫垂炎や鼠径ヘルニアにまで広がっており,腹腔鏡の対象にならない手術を見つけるほうが難しくなってきた.

 一方,新たな問題も生じてきた.腹腔鏡による前立腺癌摘出手術のトラブルが社会問題化したのは記憶に新しいところである.このトラブルの問題とは別に,医学論文や学会では通常の手術と比較して,腹腔鏡による手術の有用性がさかんに論じられている.

目で見る外科標準術式・53

低位筋間痔瘻に対するseton法

著者: 坂田寛人

ページ範囲:P.1465 - P.1473

はじめに

 Seton法は瘻管に紐を通して治す方法で,古くはインドのクシャラスートラに始まり,ヒポクラテスも馬の毛とリントの線維を互いに縒った紐を痔瘻の二次口から原発口へと通して肛門外で結紮し,これが緩むだびに結紮を繰り返しながら瘻管の開放を行った1).さらにわが国では本間棗軒や畑嘉聞らにより行われている古典的痔瘻治療法で,近年再評価された痔瘻の一治療法である.

臨床研究

内痔核に対するPPHの有用性に関する臨床的検討

著者: 山本壮一郎 ,   千野修 ,   齋藤美津雄 ,   南康平 ,   清水直樹 ,   原正

ページ範囲:P.1475 - P.1478

はじめに

 1998年に内痔核手術においてLongo法1)が発表され,肛門粘膜および肛門上皮の温存をはかることによって疼痛が軽減でき,術後,早期の社会復帰ができるようになった.われわれはこれまで内痔核に対して結紮切除術を中心に施行してきたが,術後疼痛の軽減と入院日数の短縮を目的にLongo法(procedure for prolapse and hemorrhoids:以下,PPH)を導入した.

 今回,われわれはPPHの有用性について結紮切除術と比較しての臨床的検討を行った.PPH施行例で認めた治療上の問題点と合併症について検討したので,文献的考察を加えて報告する.

開胸術後の疼痛に対する持続肋間神経ブロックの有効性

著者: 矢野義明 ,   小泉貴弘 ,   菊池寛利 ,   浅井陽介

ページ範囲:P.1479 - P.1483

はじめに

 開胸手術後の疼痛は,ほかの部位の手術に比べて長時間持続する激痛を伴うことが多く,ひいては重篤な肺合併症を引き起こすリスクファクターでもある1,2).したがって,開胸術後の疼痛を緩和することは,患者の苦痛軽減のみならず肺合併症予防の立場からも重要である.

 今回,筆者らは開胸手術症例に対してSabanathanらの方法1,3)をもとに持続肋間神経ブロック(continuous extraplueral intercostal nerve block:以下,CEINB)を試みたところ,術後の疼痛緩和にきわめて有効な結果を得たため若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・1

胃癌術後に嚥下障害で発症した強直性脊椎骨増殖症の1例

著者: 柳澤智彦 ,   小澤昭人 ,   石橋久夫 ,   下形光彦 ,   笹岡隆一 ,   三澤弘道

ページ範囲:P.1485 - P.1488

はじめに

 日常の臨床において,脳血管障害などの神経疾患,咽喉頭癌,甲状腺癌,肺癌などの悪性疾患に伴う嚥下障害の患者を診察している外科医は多いと思われる.

 今回,われわれは胃癌術後に嚥下障害をきたし診断に苦慮した強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis:以下,ASH)の1症例を経験したので報告する.

Meckel憩室に伴うmesodiverticular vascular bandによる絞扼性イレウスの1小児例

著者: 栗栖泰郎 ,   岩本明美 ,   熊谷佑介 ,   豊田暢彦 ,   岩永幸夫

ページ範囲:P.1489 - P.1492

はじめに

 日常の臨床における小児急性腹症の原因としてイレウスはときに経験されるが,Meckel憩室を原因とするものは少ない▲1~5)▲.

 今回,Meckel憩室による絞扼性イレウスに対して手術を行い,その半年後に癒着性イレウスによって2度目の手術を行った小児例を経験した.小児急性腹症の原因と手術のタイミングを考慮するうえで貴重な症例と思われたので報告する.

肝切除術後に生じた門脈血栓症に対して経上腸間膜動脈血栓溶解療法が著効した1例

著者: 杉山眞一 ,   別府透 ,   石河隆敏 ,   太田尾龍 ,   渡部文昭 ,   江上寛

ページ範囲:P.1493 - P.1496

はじめに

 今回,われわれは腹腔鏡補助下肝切除術後の高アンモニア血症を伴う門脈血栓症に対して,上腸間膜動脈を介した血栓溶解療法を施行し,改善した症例を経験したので報告する.

手術手技

直腸LST病変に対する粘膜切開剥離術(パラシュート法)

著者: 太田博俊 ,   二宮康郎 ,   関誠

ページ範囲:P.1497 - P.1500

はじめに

 最近は無症状でも検診(便潜血反応など)を受ける機会が多くなり,精査の結果,ときに直腸領域に表層拡大型腫瘍(lateral spreading tumor:以下,LST)が発見されることがある.

 20mm以下のLSTについては,従来の内視鏡的粘膜切除(endoscopic mucosal resection:以下,EMR)で対処が可能であるが,20mm以上のものに対してはEMRでは一括切除できず,十分な病理診断が得られない症例をときに経験する.Minimally invasive transanal surgery(以下,MITAS)1)やtransanal endoscopic microsurgery(以下,TEM)2)やEndo-GIA法などで一部の施設では切除しているが,大きさによっては辺縁を含めた病巣が一括に,しかも病巣の損傷もなくきれいに切除できないのが現状である.

 われわれは病巣が50mm以上あっても,病巣周囲の正常な辺縁を含めて,きれいにしかも一括切除できる粘膜切開剥離法(パラシュート法)を行っているので,その手術手技を紹介する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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