文献詳細
文献概要
目で見る外科標準術式・54
坐骨直腸窩痔瘻に対する括約筋温存術式と肛門保護手術(Hanley変法)
著者: 瀧上隆夫1 嶋村廣視1 竹馬彰1 根津真司1 仲本雅子1 竹馬浩1
所属機関: 1チクバ外科胃腸科肛門科病院
ページ範囲:P.1577 - P.1583
文献購入ページに移動坐骨直腸窩痔瘻は痔瘻の中で低位筋間痔瘻についで多く約20%を占める.原発口はほとんどの場合6時の方向にある.原発口から細菌が侵入し,内外括約筋間に膿瘍を形成し,さらにCourtney's space(深肛門後隙,原発巣)と呼ばれる間隙を経て,左右の坐骨直腸窩に炎症が波及して形成される痔瘻である.片側のみの痔瘻はsinglehorse shoetype(Ⅲu),両側のものはhorseshoetype(馬蹄型痔瘻ⅢB)と呼ばれ,肛門尾骨靱帯を穿破したものである.
痔瘻の治療の原則はいずれの型であろうとも原発口,原発巣,感染巣の完全除去であることに変わりはない.坐骨直腸窩痔瘻(膿瘍)の治療において,創をすべて開放するには肛門に対するダメージが大きく,諸家により根治性を維持しながら括約筋を可及的に温存し,術後創の変形の少ない術式が種々工夫されてきた1,2).1965年Hanley3,4)は坐骨直腸窩膿瘍に対して肛門後方の原発口から内括約筋の一部,皮下,浅外括約筋の一部を切開し,原発口,原発巣を開放創とし,左右に広がる膿瘍に対しては皮膚切開を行い,ドレナージ創を作製することでほとんどの症例で良好な成績を上げたと発表している.その後原発口から内括約筋の一部と皮下外括約筋は切開するが,浅外括約筋は切開しないで膿瘍腔,瘻管を開放するHanley変法が一般的に行われるようになった.
筆者らは坐骨直腸窩痔瘻の手術に対しては一般的には原発口,原発巣,二次口を含めた瘻管を可及的にくり抜き,肛門後方の死腔となった括約筋間隙を強彎Vicryl(R)糸で縫合・閉鎖し,その縫合・閉鎖部を肛門管上皮および直腸粘膜で被覆縫合する術式5)をとっているが,坐骨直腸窩膿瘍で一期的に根治手術をめざす場合や,原発巣周囲の炎症が強く,瘻管をうまくくり抜けない場合はHanley変法で行っているので,この稿では筆者らの行っている坐骨直腸窩痔瘻の手術術式について述べる.
掲載誌情報