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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科59巻2号

2004年02月発行

雑誌目次

特集 GIST(gastrointestinal stromal tumor)診療の最前線

GIST(gastrointestinal stromal tumor)の現況

著者: 山村義孝

ページ範囲:P.126 - P.128

はじめに

 臨床的には粘膜下腫瘍の形態をとり,組織学的には紡錘形細胞の増殖からなる消化管の間葉系腫瘍(gastrointestinal mesenchymal tumor:GIMT)は,従来そのほとんどが平滑筋腫または平滑筋肉腫と考えられてきた.しかし免疫組織化学的手法の進歩に伴い,今日ではGIMTの多くがgastrointestinal stromal tumor(GIST)であると考えられるようになっている.

 しかし,近年の急激な研究の発展は一方ではGISTという疾患概念について各研究者間に多少の混乱を生じさせていることも事実であり,早急なコンセンサスが必要である.その意味で日本胃癌学会のなかにGIST委員会が組織されたのはまさに時宜を得たものと言える.また本特集においても,基礎と臨床の各方面から一流の研究者が執筆されており,GISTについての今後の研究や治療のコンセンサスに大きく寄与するものと期待している.

GIST(gastrointestinal stromal tumor)の免疫組織化学による診断

著者: 大橋明子 ,   廣田誠一

ページ範囲:P.129 - P.135

 要旨:消化管間葉系腫瘍の大部分はGIST,筋原性腫瘍(ほとんどが平滑筋腫,稀に平滑筋肉腫),神経性腫瘍(ほとんどが神経鞘腫)の3種類に分類されるが,これらはKIT,CD34,デスミン,α-smooth muscle actin(α-SMA),S-100蛋白,ビメンチンの免疫組織化学的診断を行うことでほぼ鑑別できる.GISTの90~100%はKITがほぼ均一にかつ強陽性に染まり,CD34が約70~80%の症例で陽性となる.デスミンはほぼ100%陰性,αSMAは約20%の症例で部分的に陽性となる.S-100蛋白はほぼ100%陰性を示す.現在ではGISTという用語は明らかな平滑筋腫や神経鞘腫などを除いたKITやCD34が陽性となる腫瘍,換言するとカハールの介在細胞への分化を示す腫瘍と理解される.

家族性gastrointestinal stromal tumor(GIST)

著者: 西田俊朗 ,   遠藤俊治 ,   松田暉

ページ範囲:P.137 - P.144

 要旨:家族性腫瘍は稀ではあるが医学研究上も腫瘍学上も重要な概念である.ほとんどの家族性腫瘍は優性遺伝を示すが,特定の遺伝子の機能喪失型(loss-of-function mutations)生殖細胞突然変異(germline mutation)で生じることが多い.原因遺伝子が明らかな家族性腫瘍症候群の内,3症候群,すなわち,多発性内分泌腫瘍症候群タイプ2(原因遺伝子:RET遺伝子),家族性腎乳頭癌(MET)と家族性gastrointestinal stromal tumor(GIST)が機能獲得型突然変異(gain-of-function mu-tations)で生じる.KIT遺伝子がコードするKITタンパク質は血液幹細胞,メラノブラスト,肥満細胞,杯芽細胞,および消化管カハール細胞(ICC)に発現しており,家族性GISTでは胃,小腸に多発するGIST以外に,ICCの過形成,皮膚の色素沈着を認める.家族性GISTの研究からKIT遺伝子の機能獲得型突然変異はGIST発生の原因であり,GISTの進展と悪性化には他の幾つかの遺伝子が関連していること,ならびにGISTはICCないしICCに分化する運命にある細胞が腫瘍化したものであることが示唆された.

胃GISTの悪性度診断

著者: 長晴彦 ,   円谷彰 ,   小林理 ,   西連寺意勲 ,   本橋久彦

ページ範囲:P.145 - P.148

 要旨:胃GIST切除例41例の臨床病理学的特徴からその悪性度について検討した.現在までに10例が転移・再発をきたし,転移形式は肝・腹膜転移が多く,リンパ行性の再発はなかった.c-kit遺伝子変異陽性率は88%(36/41)と高いが,変異の有無や変異形式は転移再発と関連せず,腫瘍径・漿膜浸潤の有無・MIB-1 labeling indexが関与していた.また,生存期間との関係では漿膜浸潤の有無および腫瘍径が予後因子であった.現行のリスク分類による再発の予測は感度90%,特異度48%であり,今後は特異度も高い新たな分類が望まれる.

GIST(gastrointestinal stromal tumor)の標準的手術療法

著者: 大平寛典 ,   大山繁和 ,   山口俊晴 ,   柳澤昭夫 ,   加藤洋

ページ範囲:P.153 - P.156

 要旨:GISTに関する概念,治療法において未だ一定のコンセンサスが得られていないのが現状である.GISTに対する当施設の外科治療結果と他施設からの報告を検討した結果,現時点での臨床または病理学的特徴として,①リンパ節転移の頻度は約10%前後,②主な転移臓器は肝臓,③原発,転移病変ともにsurgical marginを確保できれば長期生存の可能性あり,④過去に行われたadjuvant therapyの中に有効なものは見られなかった,が考えられた.以上から,1)surgical marginを確保した切除を行う,2)腫瘍径が大きい症例では近傍リンパ節転移もありうる,3)腫瘍被膜の損傷を避ける,4)転移再発症例は可能であれば切除する,が重要である.

GIST(gastrointestinal stromal tumor)に対する腹腔鏡下手術―適応と方法

著者: 大谷吉秀 ,   古川俊治 ,   吉田昌 ,   才川義朗 ,   久保田哲朗 ,   熊井浩一郎 ,   亀山香織 ,   向井萬起男 ,   杉野吉則 ,   北島政樹

ページ範囲:P.157 - P.162

 要旨:GIST(gastrointestinal stromal tumor)に対する腹腔鏡下手術の適応と方法を述べる.GISTの約70%は胃に発生し,癌にみられるようなリンパ節転移は稀で,転移再発様式は肝転移もしくは腹膜播種の頻度が高い.また,術前組織学的診断率は低い.そのような背景から腹腔鏡下胃局所切除術は粘膜下腫瘍のうち,胃原発の充実性腫瘍,腫瘍径5cm以下,噴門や幽門から離れている症例に良い適応となる.この条件から外れる腫瘍に対しては腹腔鏡補助下手術もしくは開腹手術が行われる.手術の基本は,①正常部分を含めた部分切除,②腹膜播種再発予防のため,腫瘍の被膜を術中に損傷しない,などである.症例の選択を慎重に行えば本手術は診断と治療が同時に行え,QOLも考慮した優れた方法となる.

GIST(gastrointestinal stromal tumor)の薬物療法

著者: 神田達夫 ,   大橋学 ,   富所隆 ,   中川悟 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.163 - P.168

 要旨:KIT陽性消化管間質腫瘍(GIST)に対してメシル酸イマチニブ(グリベック(R))の保険使用が可能となった.イマチニブはKITキナーゼ阻害作用をもつ,いわゆる分子標的薬である.その特異な作用機序と高い抗腫瘍効果はこれまでの化学療法とは大きく異なり,治療を行う上でとまどうことも多い.本稿では,転移・再発性GISTに対するイマチニブ治療の成績と使用上の注意点につき概説する.イマチニブは50%を越える奏効率と90%を越える1年生存率を示し,代替治療のない転移・再発性GISTにあっては第一選択であり,標準的治療と言える.一方,治療中の自然再燃もあり,その長期成績は明らかではない.術前・術後の補助療法に関するデータは現在集積されつつある.イマチニブ治療にあたってはこのような臨床エビデンスの現状を十分に理解しておく必要がある.

GIST(gastrointestinal stromal tumor)の超音波内視鏡診断

著者: 大橋信治 ,   岡村正造 ,   浦野文博 ,   細井努 ,   石川英樹 ,   後籐順 ,   佐藤都佳 ,   多々内曉光 ,   船坂好平 ,   瀬川昂生

ページ範囲:P.149 - P.152

 要旨:現在,GISTの定義は消化管壁に発生する間葉系腫瘍の中で,免疫組織化学的にKITレセプターを発現する腫瘍とされている.EUSによるGISTの悪性所見は径3cm以上,腫瘍内部の無エコー領域,辺縁不整,内部エコーの不均一,分葉像などがある.これらの中で2ないし3項目を満たすものを悪性としている.現在,リスク分類が提案されているが,これを基準としてもより大きな腫瘍径,無エコー領域,辺縁不整は有意なhigh-risk指標である.近年,EUS下穿刺吸引生検(EUS-FNA)が実用化され,HE染色,免疫染色(c-kitなど),Ki-67 labeling indexの検討も可能である.KITチロシンキナーゼ拮抗剤STI-571は転移を有するGIST例に光明をもたらし,保険適用となった.本薬の治療適応を含む合理的な治療選択基準の確立において,EUSおよびEUS-FNAの果たす役割は大きい.

カラーグラフ 世界に向かう甲状腺疾患診療の新技術・3

甲状腺病変に対する内視鏡補助手術

著者: 清水一雄 ,   北川亘 ,   赤須東樹

ページ範囲:P.119 - P.125

はじめに

 内視鏡下手術は,その低侵襲性,整容上の利点から各科領域で日常行われている術式となっている.しかし,甲状腺外科領域においてはYeungら1),Huscherら2)および石井ら3),筆者ら4)の最初の報告以来,6年あまりが経過したにすぎず,本疾患を扱う比較的限られた施設で行われているのが現状である.しかし,近年,その手技は工夫,改善され,国内・外で広まりつつあるといえる.

 甲状腺内視鏡下手術手技の着手が遅れたのは,既存腔のない狭い部位に作らなければならない新たな手術操作腔,また甲状腺はとくに易出血性の臓器であり,重要神経血管が近接することからデリケートな手術が要求されるなどがその理由であろう.しかし,甲状腺疾患は圧倒的に女性に多い疾患であるとともに,つねに露出された前頸部に手術創が入ることから,通常手術と遜色ない手術操作腔が得られ内視鏡操作を行うことができれば,主に整容上の利点から内視鏡下手術は,きわめて有用性があると思われる.現在は,各施設から独自の工夫された方法が報告されているが5~7),本稿では,当科における240例を越える甲状腺内視鏡補助下手術の経験をもとに,内視鏡下手術を取り扱う施設で,甲状腺手術の経験があれば何処でも行える,簡便で実用性のある筆者らの術式(前頸部皮膚吊り上げ法による内視鏡補助下甲状腺手術video-assisted neck surgery:VANS法)を示し,適応疾患,手術手技について述べる.

目で見る外科標準術式・45

Kugel法

著者: 堀孝吏 ,   坂本昌義 ,   佐藤兼俊 ,   公家健志 ,   金本彰 ,   梅村彰尚 ,   菊一雅弘 ,   平田泰

ページ範囲:P.169 - P.175

はじめに

 鼠径ヘルニアに対するtension free修復法にはさまざまな術式が存在するが,鼠径管後壁を腹腔側から修復する術式の最大の欠点は“手技の煩雑さ”である.Kugel法は専用に考案されたパッチを用いることにより,従来施行されてきた腹膜前到達法によるinlay修復をより簡便に行おうという術式である1~5)

 本稿では,左側ヘルニアに対する手技を図示する.

病院めぐり

半田市立半田病院外科

著者: 久保田仁

ページ範囲:P.176 - P.176

 半田市は愛知県南部の知多半島の付け根にあります.江戸時代より醸造の町として栄え,現在も中埜酢の本社をはじめ,酒,醤油などの醸造所が数多くあります.当院は昭和24年7月に中島飛行機から移管された病院で,40床の半田市民病院として歴史が始まりました.当時は外来診療所と入院病棟と結核・伝染病棟が市内の3か所に分かれた場所にあり,外来は午前8時~午後5時まで,外科手術は夜やっていたそうです.外来診療後に二人乗り自転車に医師が前,看護婦が後ろのペダルを踏んで回診,手術に回ったとのことです.

 昭和27年に半田市立半田病院と改称し,125床の鉄筋建ての病院を新築し移転しました.当時は東海地方の公立病院で鉄筋建てがまだない頃で,地方公立病院のモデル病院として造られ,見学者がひっきりなしに訪れたそうです.

NTT東日本関東病院外科

著者: 小西敏郎

ページ範囲:P.177 - P.177

 電電公社の職域病院として1953年に東京・五反田に開設された関東逓信病院は,NTT(日本電信電話株式会社)と民営化され,病院も一般開放され,NTT東日本関東病院と改名した.そして情報通信のNTTが「世界に冠たるマルティメディア病院」をめざし,2000年12月に完全なペーパーレス/フィルムレスの電子カルテシステムKHIS 21(Kanto Hospital Information System 21世紀)を備えた新病院がオープンした.21世紀のユビキタス社会(“いつでも,どこでも,だれとでも”の時空自在の情報時代)における医療をめざしている.

 外科ではクリニカルパスによる患者中心の医療を推進して,術後15日で退院する開腹先行の胸腔内吻合術や血管吻合によるスーパーチャージを行う胸部食道癌の手術,日帰り手術を含めて患者が治療法を選択するお好みメニュー方式の鼠径へルニアの手術,マイクロ血管吻合による乳房同時再建を伴う乳癌の手術,腹腔鏡補助下の胃癌・大腸癌の手術,経肛門アプローチによる直腸腫瘍の手術などの新しい治療を積極的に展開している.また,パスの導入により手術患者の入院期間を短縮できたことから,緊急手術患者の入院や,手術以外の食道癌の放射線化学療法,手術不能進行癌や術後再発癌の癌化学療法やターミナルの患者の緩和医療などでも積極的に受け入れている.また術後感染対策としての外科手術部位感染(surgical site infection:SSI)のサーベイランスは昨年から厚生労働省が国家事業として進めることになったが,当科がわが国の中心となって推進してきたので,術後のSSIの発生も減少している.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・14―Billroth一門と甲状腺外科

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.178 - P.180

 近代的外科学を創設推進したビルロート(Theodor Billroth)は,胃癌切除手術などの腹部内臓外科領域にとどまらず,多方面で科学的精神に裏づけられた先駆的な業績を残すとともに,後にヨーロッパ各地の大学教授となった弟子たちとともに近代的外科学を推進していったのである.

 今回は,Billrothおよびその一門と甲状腺外科とのかかわりを述べていきたい.

臨床研究

腹膜播種を伴う大腸癌切除例の臨床病理学的検討

著者: 山口由美 ,   柴田俊輔 ,   石黒稔 ,   万木英一 ,   西土井英昭 ,   村上敏

ページ範囲:P.181 - P.186

はじめに

 大腸癌における腹膜播種は血行性転移とともに予後を左右する重要な因子の1つである1).腹膜播種症例の多くは予後不良であるが,外科的切除により長期生存する患者も散見される2~4).今回,腹膜播種を伴う大腸癌の予後規定因子を解析し,外科的切除の適応と限界につき検討した.

手術手技

デンマークの脳死肝移植

著者: 俵藤正信 ,   石橋敏光 ,   安田是和 ,   永井秀雄 ,   山本宏 ,   Peter Noergaard

ページ範囲:P.187 - P.191

はじめに

 日本でも脳死と臓器の移植に関する法律が成立して以来脳死肝移植が開始されたが,施行後5年以上を経過した現在その数は20数例に過ぎず1,2),日本人外科医が短期間に脳死肝移植手術を経験することは困難である.当科とデンマークの肝移植施設Rigshospitaletは肝胆膵手術・肝移植において留学生が直接手術に参加する相互交流を行っており,1年間ずつ留学した2名の日本人外科医が70例の脳死肝移植手術に直接参加する機会を得た.そのなかで日本では経験しがたい複雑な症例,難症例にも遭遇した.

 脳死肝移植手術の手術時間を規定するのは主に肝摘出術であり,その手技には多くのピットフォールが存在する.またドナー肝の阻血時間も考慮すると,迅速かつ的確な肝摘出が移植手術の成否を左右すると言っても過言ではない.デンマークでは肝摘出困難例に対し,肝授動前に静脈バイパスを先行させるなどして効率的に肝摘出を行っていた.

 今回はデンマークの脳死全肝移植,特にその肝摘出手技を中心に紹介する.
 

臨床報告・1

胃癌術後症例にみられたEDTA(ethylene diamine tetraacetic acid)依存性偽性血小板減少症の1例

著者: 奥芝知郎 ,   川村健 ,   中久保善敬 ,   直江和彦 ,   渡辺不二夫

ページ範囲:P.193 - P.196

はじめに

 偽性血小板減少症は血球数算定用の抗凝固剤であるethylene diamine tetraacetic acid(EDTA)によって血小板が凝集して生ずる見かけ上の血小板減少症で,時として特発性血小板減少性紫斑病などの血小板減少を伴う疾患との鑑別に苦慮することがある.今回,筆者らは胃癌術後に偽性血小板減少症と診断された症例を経験したので報告する.

急性腹部大動脈瘤内血栓症の1例

著者: 黒柳裕

ページ範囲:P.197 - P.199

はじめに

 破裂は腹部大動脈瘤の合併症の中で最も一般的で,かつ致死率の高いものである.その一方で,動脈瘤内に生じた血栓による下肢急性動脈閉塞症も頻度は低いながらも存在し,その死亡率も高く迅速な診断と治療が求められる1)

 今回,筆者らはこの比較的稀な病態を呈した腹部大動脈瘤の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

食道癌周術期に合併しMRSA腎症と考えられた1例

著者: 梶谷展生 ,   猶本良夫 ,   村田年弘 ,   白川靖博 ,   山辻知樹 ,   田中紀章 ,   杉山斉 ,   槙野博史

ページ範囲:P.201 - P.204

はじめに

 多剤耐性菌であるMRSAは院内感染症の原因菌として特に注目を集めている1).しかしMRSA感染に起因する糸球体腎炎については報告例も少なく十分な認知が得られていない状況である.筆者らはMRSA感染とのに関連が疑われ,急速進行性腎炎およびネフローゼ症候群を呈した1例を経験したので報告する.

大腸内視鏡検査で偶然発見された回腸早期癌の1例

著者: 東崇明 ,   久保宏幸

ページ範囲:P.205 - P.208

はじめに

 検診にて大腸内視鏡検査を受けた患者の終末回腸に小さな隆起性病変が偶然見つかり,生検にて回腸早期癌と診断した.小腸癌はイレウス症状や血便などの症状にて診断がつくことが多く,無症状で見つかることはごく稀である1,2).今回,大腸内視鏡検査で偶然発見された回腸早期癌の1例を経験したので報告する.

腸管回転異常症を伴った胃癌の1例

著者: 境雄大 ,   小倉雄太 ,   成田淳一 ,   木村大輔 ,   須藤武道 ,   相内晋

ページ範囲:P.209 - P.212

はじめに

 腸管回転異常症は1万人に1人の割合で発生する先天性疾患で,多くは新生児期から小児期に発症し,成人になって発見されることは稀である1).また,胃癌を併存した腸管回転異常症の報告は稀である.今回,筆者らは腸管回転異常症を伴った胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Video-assisted thoracic surgeryで治癒しえたサルコイドーシスに合併した気胸の1例

著者: 宮坂義浩 ,   中川真宗 ,   渡部雅人 ,   土居布加志

ページ範囲:P.213 - P.215

はじめに

 サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,高率に胸腔内病変を合併するが,気胸の合併は約2%と稀である1,2).今回,筆者らは保存的治療が功を奏さずvideo-assisted thoracic surgery(VATS)で治癒しえたサルコイドーシスに合併した気胸の1例を経験したので報告する.

内視鏡的治療が奏功せず外科的切除を施行した胃前庭部毛細血管拡張症の1例

著者: 矢島浩 ,   織田豊 ,   河野修三 ,   又井一雄 ,   矢永勝彦 ,   山崎洋次

ページ範囲:P.217 - P.219

はじめに

 胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia:以下,GAVE)は稀な疾患で,慢性消化管出血の原因として近年注目されている1).今回筆者らは内視鏡的治療が奏功せず,外科的切除を施行したGAVEの1例を経験したので報告する.

TAEにて止血しえた小児外傷性十二指腸壁内血腫の1例

著者: 阿部仁郎 ,   三井毅 ,   浅田康行 ,   飯田善郎 ,   三浦将司 ,   宮山士朗

ページ範囲:P.221 - P.224

はじめに

 腹部鈍的外傷による十二指腸血腫は比較的稀な疾患であり,その治療法は最近では保存的治療が第一選択とされている1).また保存的治療としてTAEを施行した報告は稀である2).今回,筆者らはTAEにより止血しえた小児外傷性十二指腸壁内血腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

肝両葉多発転移・直腸膀胱瘻を伴った直腸癌の1切除例

著者: 吉見富洋 ,   中里宜正 ,   清川貴司 ,   天貝賢二 ,   女屋博昭 ,   板橋正幸

ページ範囲:P.225 - P.229

はじめに

 近年,他臓器に浸潤する大腸癌に対する骨盤内臓全摘術の成績は向上している1,2).また,大腸癌肝転移に対する切除術も良好な成績を上げつつある3,4).しかし,未だに肝両葉多発転移を有する膀胱浸潤直腸癌に対しては通常姑息的治療が実施されているものと推測される.当院ではこのような症例に対し根治を意図した切除術を実施後1年6か月現在無再発の例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腸重積を合併したPeutz-Jeghers症候群の1例

著者: 宮野剛 ,   岩瀬博之 ,   内田陽介 ,   石戸保典 ,   城田繁 ,   卜部元道

ページ範囲:P.231 - P.235

はじめに

 Peutz-Jeghers症候群(以下,PJ症候群)は消化管ポリポーシスと皮膚粘膜の特有な色素沈着とを特徴とする疾患であるが,消化管ポリポーシスに対する長期的治療に苦慮することが多い1).筆者らは腸重積を起こし,手術を要したPJ症候群の1例を経験したので,腸重積を合併した本邦報告例の集計の考察とともに報告する.

大腸癌同時性巨大尾状葉転移の1切除例

著者: 中川原寿俊 ,   川崎磨美 ,   古屋大 ,   吉光裕 ,   上田順彦 ,   澤敏治

ページ範囲:P.237 - P.241

はじめに

 大腸癌尾状葉転移は大腸癌肝転移の中でも稀であり,その予後は不良とされている1,2).当院においても大腸癌巨大尾状葉転移の1切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

肝放線菌症の1切除例

著者: 大司俊郎 ,   加藤奨一 ,   加藤修志 ,   兼信正明 ,   山本修 ,   鹿野信吾

ページ範囲:P.243 - P.247

はじめに

 放線菌症は慢性化膿性肉芽腫性疾患で,口腔内常在菌であるActinomyces israeliiその他の放線菌属によってもたらされる疾患である1).今回,筆者らは肝生検で確定診断が得られず,各種画像診断にて悪性腫瘍を否定できないため,幽門側胃合併切除を伴う肝左葉切除術を施行した肝放線菌症の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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