文献詳細
特集 肝細胞癌治療の最前線
切除不能肝細胞癌に対する減量肝切除と経皮的肝灌流による集学的治療
著者: 富永正寛1 具英成1 岩崎武1 福本巧1 楠信也1 土田忍1 高橋応典1 田中基文1 武部敦志1 黒田嘉和1
所属機関: 1神戸大学大学院医学系研究科消化器外科
ページ範囲:P.293 - P.301
文献概要
2段階治療対象例は31例(stageⅣA/ⅣB;23/8)で,腫瘍分布により遍在型と多中心型に分類した.術式は遍在型で葉切除以上が大半で6例に門脈本幹腫瘍栓を同時摘出した.多中心型は全例部分切除,うち3例で腹腔内孤立性リンパ節を同時切除した.遍在型はB型肝炎,肝機能良好例で大型かつ高度血管侵襲陽性例が多かった.PIHPは肝切後平均2回施行した.2段階治療完遂27例では奏効率85%(CR 13例,PR 10例)で,CRは全例遍在型であった.生存率は,完遂27例で1年生存率87%および5年生存率41%ときわめて良好であった.とくに遍在型では,3年生存率62%に対し多中心型0%と遍在型で予後改善が顕著であった.一方,Vpの3年生存率は陽性43%,陰性48%とVp陽性でも陰性と同等レベルまで改善した.従来切除不能の大型多発例や門脈腫瘍栓併存例でも肝機能が許せば本法により中期ないし長期予後の改善が高率に得られ,とくにVp陽性の腫瘍遍在型は至適適応であり,本法が合理的で強力な治療戦略になると考えられた.
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