文献詳細
特集 肝細胞癌治療の最前線
肝細胞癌に対する生体肝移植治療:適応拡大に向けた新たな戦略
著者: 佐藤好信1 山本智1 中塚英樹1 大矢洋1 原義明1 小林隆1 竹石利之1 畠山勝義1
所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器一般外科学分野
ページ範囲:P.309 - P.316
文献概要
筆者らは新たな適応基準として,移植後流血中肝癌細胞の転移着床の観点から血中h-TERT mRNAに注目した.また適応拡大の工夫として,ミラノ基準逸脱例に移植前5-FU+IFNβによる免疫化学療法,そして術後転移着床予防としてアドリアマイシンの全身投与と5-FUの門脈内投与(Sandwich chemotherapy)を試みた.さらに免疫抑製剤の早期減量のためドナー血門脈内投与を行った.移植直前h-TERT mRNA陽性症例は全例早期再発をきたした.また移植前陽性症例であっても,免疫化学療法で陰性化した症例は再発を認めなかった.ドナー血門脈内投与は免疫抑制剤の早期減量,ステロイド早期離脱を可能にした.今後より良い適応基準と治療法の開発により,ミラノ基準をこえた適応拡大が可能となってくるものと思われる.
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