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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科59巻4号

2004年04月発行

雑誌目次

特集 甲状腺癌治療の最適化を目指して

超音波検診の意義と発見微小癌に対する診療方針

著者: 柄松章司 ,   伊藤和子

ページ範囲:P.395 - P.399

 要旨:1991年から当院健診センターでは女性に対して超音波による甲状腺検診を行っている.対象は40~50代が80%である.1991年から1995年までの5年間に15,190人が受診し,976人が要精検となり,癌59人が発見され,うち33例は微小癌であったため,小さな病変は精検しないことにした.1996年から2000年までは15,540人が受診し,要精検は453人,癌発見は30人,うち微小癌は10例であった.検診で見つかり1年以上経過をみた微小癌が15例あり(平均観察期間39か月),わずかに増大したものが4例,変化しなかったものが11例であったことから,当科では検診発見微小癌に対してはリンパ節が腫大しているものや甲状腺被膜への浸潤が疑われるもの以外は経過観察する方針をとっている.

細胞診の読み方と限界―濾胞性腫瘍を中心として

著者: 森一郎 ,   谷口恵美子 ,   覚道健一

ページ範囲:P.401 - P.404

 要旨:今までの甲状腺腫瘍細胞診断では濾胞状構造をもつ細胞集塊が得られた時,濾胞癌と良性の濾胞腺腫やその他の病変との区別が十分ではないことが大きな障害となっていた.最近この点を少しでも改善するため細胞診断の診断様式が変更になったので,これを紹介する.いままで,濾胞状細胞集塊が得られた場合,ほとんどのものをClassⅢまたは疑陽性としていたが,新しい診断様式ではこれらの多くのものは良性,鑑別困難,悪性の疑いなどにその特色により分けられることとなった.利用する臨床医の間での無用の混乱を避けるため,この診断様式での約束と濾胞状腫瘍を中心に,新しい診断区分にどのような疾患が含まれるかなどを解説した.

甲状腺乳頭癌に対する標準手術とその根拠

著者: 岡本高宏 ,   小原孝男

ページ範囲:P.405 - P.408

 要旨:甲状腺乳頭癌の治療について解説した.甲状腺の一側に限局し(T≦-3),明らかなリンパ転移や遠隔転移がなく(N0,M0),かつ周囲臓器への浸潤がない(Ex≦-1)症例に対しては患側の甲状腺葉と峡部の切除,そして患側内深頸リンパ節の保存的郭清を標準術式としている.より進行した症例に対してはその状況に応じてさらに広範囲の手術と補助療法(放射性ヨードによる転移の検索・治療,さらにTSH抑制療法)を考慮する.これまでに報告されている“リスク・ファクター”や,術前超音波検査による病変の評価はそうした検討に活用されてこそ意義がある.

甲状腺濾胞癌の治療法と予後因子

著者: 野口志郎

ページ範囲:P.409 - P.412

はじめに

―甲状腺濾胞癌の概念の成立と発展

 濾胞癌と診断される甲状腺腫瘍の頻度はとくに西欧社会では20世紀の半ば頃から減少した.したがって,濾胞癌についての研究論文も乳頭癌に比較すると著しく少ない.濾胞癌の減少の理由は1つには甲状腺癌の分類基準が変わったことと,今1つは1920年から30年代に起こった疫学的,栄養学的変化によるものである.Lindsay1)が1960年に従来は濾胞癌に分類されていた甲状腺癌で,臨床的にも生物学的にもmultimodalityがあり,リンパ節転移が多く頸部以外に広がることの少ない腫瘍があることを発表し「follicular variant of papillary carcinoma」と名づけたが,多くの病理学者はこの意見には従わず,AFIPの小冊子2)に従った.我々が甲状腺の病理学を勉強し始めた頃にもAFIPの小冊子がBibleのようなものと考えられていた.その分類では腫瘍の50%かそれ以上が濾胞状の細胞配列を示すものを濾胞癌であると定義していた.一部の病理学者は“50%またはそれ以上”という曖昧な定義に異論を唱え,「mixed papillary-follicular carcinoma」と呼ぶことを提唱した.しかし,腫瘍の性質は乳頭癌の性質に非常に似ていた.この名称の混乱は病理学者のみならず,臨床家とくに内分泌医や外科医にまでも混乱を招き,単に高分化癌「well-differentiated thyroid carcinoma」と呼ぶものも出現した.この用語は現在でも使用されている3)が,意味は少し変わって濾胞癌と乳頭癌を比較する場合に使われることが多い.実際に純粋な濾胞癌で乳頭様の増殖の全くないものは臨床的にはunifocalで血流に乗って増殖し,リンパ節に転移することは稀であった4).この分野における細胞病理学の重要性は現在の細胞診の発達した時代には乳頭癌の細胞学的な特徴は乳頭癌と濾胞癌とを鑑別する最も確かなものとして広く認識されるに至っていることからも明らかである5,6).濾胞癌と間違えられやすい病変には「follicular variant of papillary carcinoma」のほかに「hyperplastic nodule」あるいはまたは細胞診による人工的な被膜の破損(Warrisome histologic alternations following FNA of the thyroid:WHAFFT)と髄様癌の「follicular variant」などがある.Lindsayは主として濾胞性の配列の上皮細胞で形成していても部分的に乳頭状の増殖が見られる甲状腺癌は(follicular variant of papillary carcinoma)乳頭癌に分類したが,Meisnerら2)はそれを認めなかった.しかし,Chenら7)は1977年には甲状腺内の腫瘍の細胞の配列は全部濾胞性の構造を示す6例を報告して,そのうち5例は乳頭癌に特徴的な核とpsammoma bodyをもち浸潤性に増殖し,局所リンパ節転移を有する症例を報告し,彼らはこのような稀な形態を示すものは乳頭癌に分類するほうが適切であると主張した.

 しかし,follicular variant of papillary carcinomaが遠隔転移を起こしやすいかどうかは結論が得られていないようである.

散発性甲状腺髄様癌に対する診断と治療―:遺伝性との対比

著者: 宮澤幸正 ,   坂田治人 ,   川島太一 ,   落合武徳

ページ範囲:P.413 - P.417

 要旨:神経稜に起源を有する傍濾胞細胞(C細胞)由来の甲状腺髄様癌は全甲状腺癌中1.3%にすぎない稀な癌である.臨床症状は頸部腫瘤が最も多いが,遺伝性では随伴病変による高血圧,頭痛,動悸といった症状を認める.穿刺吸引細胞診で髄様癌の診断となるものは6割程度だが,良・悪性の鑑別診断には有用である.血清カルシトニン・CEA値測定は100%とは言えないものの,甲状腺髄様癌の診断に非常に有用な検査である.遺伝性髄様癌は全摘術が必要であるが,散発性髄様癌は癌の甲状腺内の広がりに応じて葉峡切除から全摘までの範囲を選択できる.髄様癌の術後再発は頸部リンパ節,残存甲状腺,肝臓に多く見られた.

甲状腺癌近接臓器浸潤に対する治療方針

著者: 岩崎博幸

ページ範囲:P.419 - P.423

 要旨:甲状腺癌の近接臓器浸潤の頻度は低いが,気管,食道に浸潤した場合を中心に治療方針を述べる.気管侵潤の中でも反回神経が温存でき,輪状軟骨より縦隔側で気管に浸潤がある場合は環状切除(sleeve resection)のよい適応である.食道浸潤は筋層までがほとんどであり,頸部食道は気管膜様部と接し,背側やや左側にあるため,左側前壁の浸潤が多い.近接臓器に浸潤がある場合,その手術適応は手術成績に基づき検討されるべきものであるが,予後のよい癌であるので可及的な切除でも予後に差がないという意見もある.遊離空腸再建や気管環状切除などの手術成績が向上することで治療の適応が広がると考える.

甲状腺高分化癌局所再発例に対する外科治療

著者: 杉野圭三 ,   浅原利正

ページ範囲:P.425 - P.430

 要旨:再発甲状腺癌の治療は甲状腺癌治療で最も大きな問題である.特にハイリスクグループの治療には難渋することも多い.局所リンパ節再発では十分な郭清により再々発を防ぐ必要がある.気管,食道浸潤を伴う局所再発ではQOLを考慮し,できるだけ喉頭機能の温存に努める必要がある.特に反回神経浸潤を伴う場合には神経温存が不可能であれば積極的に反回神経再建術を行うべきである.再建困難例でも対側頸神経わなの利用や下咽頭収縮筋内での神経の露出により再建可能な症例もある.また,再三の再手術を行う症例も多く,内頸静脈のみならず周囲の側副血行路や神経温存にも配慮が必要である.

甲状腺分化癌遠隔転移例に対する131I内照射療法の実際とその予後

著者: 杉野公則

ページ範囲:P.431 - P.435

 要旨:甲状腺分化癌遠隔転移例に対する放射性ヨード治療の効果は組織型,転移部位,病巣の大きさなどにより異なる.予後の改善が認められる因子としては,131Iの集積があること,若年者であること,転移巣が小さいこと(転移の早期発見)といわれている.筆者の施設における取り込みの認められた症例での15年生存率は乳頭癌で65%,濾胞癌で33%であった.予後という側面からは本治療が有効でない症例も多々ある.過度の期待を患者に持たせることは慎まなければならない.

甲状腺未分化癌と悪性リンパ腫に対する診療方針

著者: 中山貴寛 ,   芝英一

ページ範囲:P.437 - P.442

 要旨:甲状腺未分化癌と悪性リンパ腫はともに高齢者に多く,急速に増大する腫瘍とそれによる圧迫・狭窄症状を主訴として受診することが多い.したがって,迅速かつ的確な対応が求められる.ともに超音波検査と穿刺吸引細胞診によりほとんどの症例の診断が可能である.甲状腺未分化癌の治療法は化学療法・放射線療法・手術療法を組み合わせた集学的療法が唯一完治をもたらす可能性のある治療法である.その中でも化学療法が中心的役割を担っている.ただし残念ながら現時点ではいかなる治療法が奏効したとしても平均生存期間は6~12か月であり,ヒト固形癌の中で最も悪性度の高い腫瘍である.一方の悪性リンパ腫の治療法も化学療法が中心となり,必要に応じて放射線療法を追加する.手術療法による予後改善の報告はみられないため外科的アプローチは組織生検にとどめるべきである.治療が奏効すれば10年生存率で約60%と良好な予後が期待できるため,こちらも的確な診断と治療法の選択が重要となる.

甲状腺癌に対する内視鏡下手術の適応と限界

著者: 清水一雄 ,   北川亘 ,   赤須東樹

ページ範囲:P.443 - P.448

要旨:甲状腺悪性腫瘍の中で内視鏡外科的治療の対象となる疾患は甲状腺乳頭癌,濾胞癌,髄様癌である.乳頭癌は最も頻度が高く予後が良い.直径1cm以下の微小乳頭癌は更に予後良好で内視鏡下手術の適応である.術前検査でリンパ節転移を示唆する症例は郭清範囲に限界のあることから内視鏡下手術の適応外である.濾胞癌で適応となるのは微小浸潤型であり腺葉全摘を行う.一方広範浸潤型濾胞癌は全摘術が必要であること,周囲への浸潤傾向が強いことから根治的治療に限界があり内視鏡手術の適応外である.家族性髄様癌で遺伝子診断陽性症例に対する予防的甲状腺全摘,経過観察中にカルシトニン,CEAの腫瘍マーカーが陽転した初期の症例に対する甲状腺全摘は内視鏡下手術の良い適応である.女性に多く,露出された前頸部に切開創の入る甲状腺手術において本術式は特に整容上きわめて有用性がある.しかし,整容上の利点を追及するあまり根治性を軽視することがあってはならない.

カラーグラフ 肝・膵・脾内視鏡下治療最前線・1

腹腔鏡下肝部分切除術

著者: 板本敏行 ,   中原英樹 ,   大段秀樹 ,   田代裕尊 ,   浅原利正

ページ範囲:P.389 - P.393

はじめに

 近年,内視鏡下手術はあらゆる分野で急速に普及し,良性疾患,早期癌に対しては標準術式となっている.一方,腹腔鏡下肝切除に関しては,1991年に良性肝腫瘍に対する部分切除がはじめて報告されたが1),その後10年以上経過した現在においても本術式が普及しているとは言い難い.また,わが国においては保険診療適用外であり,実施している施設も限定されている.当科では肝外側区域の海綿状血管腫に対して,1996年にはじめて本術式を導入し2),その後おもに肝硬変合併肝細胞癌に対する低侵襲治療として行ってきた.また2001年4月には高度先進医療の認定を受けた.

 本稿では肝硬変合併肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除術の手技を中心に概説する.

特別寄稿

医療制度改革における混合診療の意義

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.449 - P.454

はじめに

 社会制度構造改革の一環として,医療制度改革,21世紀における医療のあり方が論じられており,これからが正念場である.次世代が明るい未来を期待できるようにするためには変革が必要である.変革には痛みが伴うが,現役世代がこの峠を越える義務がある.

 医療費抑制策が推し進められている.医療は規制が厳しく,また,患者が選択するための情報を得られず,競争原理が働かず,非効率,すなわち,無駄が多いと指摘されている.一方では,医療事故をはじめとする医療機関の問題が指摘され,医療の質向上,すなわち医療機関の総合的な経営の質が問われている.

 医療費を抑制しつつ,質の向上を目指すことは至難の業である.なぜならば,質の向上に必要な医療費の負担を誰がするかの議論は放置して,国民や患者の要求水準は限りなく上がり続けるからである.今,必要なことは,国民や患者が求める医療の質の基準を規定し,次いで,それに必要な資源,すなわち費用の負担を誰がするかを決めることである.

 規制緩和,公正な競争原理の導入,経営の効率化,公私の役割分担の明確化,受益と負担の関連,すなわち,自己責任を果たすことが求められている.混合診療と株式会社の参入が象徴的意味で議論されている.本稿では,主に混合診療に関して検討する.

目で見る外科標準術式・47

小児鼠径ヘルニア手術

著者: 横井忠郎 ,   松藤凡

ページ範囲:P.455 - P.462

はじめに

 小児鼠径ヘルニアは先天的に腹膜鞘状突起(processus vaginalis)が開存することに起因する.このため,ほとんどが外鼠径ヘルニアであり,手術ではヘルニア囊を高位結紮することが肝要である.成人で必要となる鼠径管後壁の補強や内鼠径輪の縫縮などを加える必要はない.

 一般的にはこのヘルニア囊の高位結紮のみを行う手術をsimple herniorrhaphyと総称しており,表のように細分される.Lucus-Championniereが始めたものであるが,その後Pottsがこの方法を普及させたこともあり,現在はPotts法が最も普及した術式である.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問

連載の開始にあたって

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.463 - P.463

 医療の現場には,「昨日の常識は今日の非常識」と言われることが多く,外科の臨床でも,「それは古い」「今はそうでない」と言われることが多い.医療や医学は日進月歩であり,外科医は時代の変化に対応して変わっていかなければならない.

 一方,先人の知恵は大切であり,古くからの経験に裏づけられた実績ほど頼りになるものはない.外科医は日々の習慣を簡単に変えることはできず,「これが新しいやり方だ」と言われても,なかなか素直に受け入れられるものではない.

1.手術後の抗生物質は必要か

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.464 - P.465

 手術後の感染を予防するために使用される抗生物質は,執刀前の投与が必須であり,長時間の手術では手術中の追加投与が勧められている.手術後は手術当日で終了するのが世界の標準であるが,手術後3~4日間以上も投与するのがわが国の常識であり,広域スペクトラムの強力な抗生物質が安易に使用されている.

 わが国は世界の医薬品の20%を消費しており,わが国の医師は抗生物質を好んで使用している.手術後(手術前や手術中ではない)に投与される抗生物質は,ほんとうに感染予防に役立っているのであろうか.本稿では,前半でこれまでの代表的な論文を紹介し,後半で参考までに筆者の愚見を述べる.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・16―1873年12月31日,「喉頭癌」を切除す!

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.466 - P.468

 1881年に行った胃癌切除手術があまりにも有名なため,Billrothが1873年に世界に先駆けて喉頭癌を切除したことは忘れられがちであるが,ヨーロッパではBillrothの業績を語るに際しては,むしろ胃癌より喉頭癌切除手術のほうが先に取り上げられる(以前「ビルロート余滴・4」で述べたように,ウィーン大学付属医学史博物館のBillroth顕彰文でもまず1873年に行われた喉頭全摘手術のことが先に述べられている:図1).言い換えれば,Billrothが「近代外科学のパイオニア」と賞せられるようになるきっかけはこの喉頭全摘手術であったと言える.

 今回は,以前よりたびたび引用しているAbsolonの論文に基づいて,この歴史的手術の詳細を紹介していくことにする.

私の工夫 手術・処置・手順

合成吸収性モノフィラメントのループ針を用いた連続縫合による閉腹法の工夫―とくにロックの手技

著者: 岡崎誠 ,   篠崎幸司

ページ範囲:P.470 - P.471

 わが国では,長い間,閉腹操作は絹糸による結節縫合が行われてきた.最近,SSI(surgical site infection)防止および操作の簡便性より,腹膜を含む筋膜の縫合にモノフィラメントの合成吸収糸(PDS(R)Ⅱループ糸)を用い,連続縫合を行っている.手技上の工夫として,連続縫合時の途中のロックの方法,および途中において結節縫合を組み合わせることによって行っている点である.下腹部正中切開を例にとり解説する.

病院めぐり

埼玉県済生会栗橋病院外科

著者: 小池太郎

ページ範囲:P.472 - P.472

 栗橋町は首都圏50キロメートルに位置し,周囲を利根川,中川,権現堂川の3つの川に囲まれた人口2万6千人の埼玉県北東部の町です.古くは箱根・碓氷と並び日本の三大関所の1つである日光街道の栗橋関所が置かれ,宿場町,船運の町として栄え,現在は商工業と農業中心の町に発展してきました.

 当院の歴史は比較的新しく,平成元年7月に開設し(210床),患者数の増加に伴い,平成11年7月に新棟を建設し310床に増床しています.現在12診療科,常勤医師数51人,看護師数270人,1日の外来患者数は平均1,000人をこえ,北葛北部の中核病院となっています.院是“心”のもと,3つのテーマ(①救急医療,②地域医療,③予防医学)と5つの使命(①地域医療推進のために,②高度医療実施のために,③予防医療のために,④救急医療体制充実のために,⑤福祉活動実践のために)を掲げて診療を行っています.

磐田市立総合病院外科

著者: 岩瀬正紀

ページ範囲:P.473 - P.473

 当院は戦前より存在した旧陸軍病院を継承し,昭和21年に国民健康保険組合立磐田病院として,昭和27年12月に市立磐田病院として国府台に新築移転され,また昭和58年に磐田市立総合病院と名称変更し,平成10年5月には大久保の地に新築移転されました.現在は一般病床数500床,21標榜診療科に常勤医61名,非常勤医15名,研修医11名です.磐田市を中心として,今後合併予定である3町1村を含めると約17万人を医療圏とする唯一の急性期総合病院です.

 1日当たりの外来患者数は約1,300名,入院患者数は約450名,平均在院日数は19.7日です.当院の特徴は救急患者の多さだと思います.年間の救急車受け入れは4,332件,年間の救急患者の受け入れ数も平日時間内を除いて年間26,515名.他方,市民の健康を守る検診業務に力を入れるべく健診センターを併設し,成人病,癌検診を行っています.

臨床研究

下腹部手術既往のない症例に対する腹膜外アプローチによる鼠径ヘルニア内視鏡下手術の検討

著者: 犬飼道雄 ,   臼井由行

ページ範囲:P.475 - P.478

はじめに

 全腹膜外ルート内視鏡下ヘルニア根治術(TEP:totally extraperitoneal approach)はその根治性の高さや良好なQOLのために,鼠径ヘルニアに最も適した術式の1つと考えられている1~4).しかしコストがかかることや高い習熟度が必要であることから,あまり広く行われていないのが現状である.そこで,筆者らは同側下腹部手術既往のない症例に対するTEPの治療成績をまとめたので,ここに報告する.

臨床経験

褥瘡術後瘻孔の保存的治療―ハイドロゲル材(グラニュゲル(R))の使用経験

著者: 小坂正明 ,   中澤學 ,   中田浩善 ,   草田朗子 ,   和田充弘 ,   上石弘

ページ範囲:P.479 - P.483

はじめに
 
 褥瘡手術後,時として縫合不全,血腫や滲出液の漏出などにより縫合部に瘻孔の発生を見ることがある.いったん術後瘻孔が発生すると皮弁と母床の密着が損なわれ,ポケット状の広い内腔を生じ,治癒までに長い時間を要することがある.人的・経済的負担などの面から速やかに治癒させることが望まれる.

 今回,新しい創傷被覆材であるハイドロゲル材(商品名:グラニュゲル(R),コンバテック社製)を褥瘡術後瘻孔の治療に用い良好な結果を得たので報告する.

臨床報告・1

家族性大腸腺腫症と開腹既往のない小腸腸間膜線維腫の1例

著者: 徳永俊照 ,   角村純一 ,   吉留克英 ,   藤田繁雄 ,   永井勲 ,   宮本一雄

ページ範囲:P.485 - P.487

はじめに

 腸間膜の原発性腫瘍は稀であり,中でも腸間膜線維腫症の報告例は少ない.本症は開腹手術の既往のある患者や家族性大腸腺腫症の患者に発生することが多く,それらの既往を伴わないものはきわめて稀である.今回,筆者らは家族性大腸腺腫症と開腹既往のない小腸腸間膜線維腫の1例を経験したので報告する.

腫瘍との鑑別が困難であった肝内血腫の1例

著者: 鈴木裕之 ,   諏訪敏一 ,   山下純男 ,   尾本秀之 ,   石川文彦 ,   新田宙 ,   瓦井美津江

ページ範囲:P.489 - P.491

はじめに

 肝内血腫の原因の多くは外傷性であるが,今回筆者らは外傷の既往がなく,肝腫瘍性疾患の破裂との鑑別が困難であった肝内血腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

術前部位診断が可能であった空腸原発GISTの1手術例

著者: 清水謙司 ,   中西章人 ,   林隆志 ,   佐藤文平 ,   辻雅衛

ページ範囲:P.493 - P.497

はじめに

 消化管出血を主訴としているにもかかわらず,上部・下部内視鏡でも出血病変を認めない場合,原発性小腸腫瘍は鑑別診断の1つに挙げられる.しかしながら原発性小腸腫瘍は特有の症状や身体所見に乏しく,術前部位診断が困難である場合が少なくない.今回,筆者らは頻回の消化管出血で発症し,保存的治療に終始していた患者に対し,小腸腫瘍を強く疑い,術前診断で腫瘍部位の特定が可能であった空腸原発gastrointestinal stromal tumor(GIST)1)の1手術例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

胃癌からの虫垂転移による急性虫垂炎の2例

著者: 河内康博 ,   重田匡利 ,   藤田雄司 ,   宮下洋 ,   山下吉美

ページ範囲:P.499 - P.502

はじめに

 転移性虫垂癌は稀な疾患で,その原発巣として胃癌が比較的多く,急性虫垂炎をきたし発見される場合が多い1~3).今回,筆者らは胃癌からの虫垂転移による急性虫垂炎の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

乳頭部癌術後孤立性肝転移に対し切除しえた1例

著者: 米田啓三 ,   勝又健次 ,   野村朋壽 ,   一宮博勝 ,   加藤孝一郎 ,   青木達哉 ,   小栁𣳾久

ページ範囲:P.503 - P.506

はじめに

 十二指腸乳頭部癌は膵頭部癌領域の中で予後良好であると言われている.しかし再発巣に対して切除の適応となる場合はきわめて稀である.これは再発時多発性肝転移や腹膜播種が重複し,切除不能な症例が多いからである1).今回,筆者らは乳頭部癌に対し膵頭十二指腸切除を施行し,3年後に孤立性肝転移を認め,切除しえた1例を経験したので報告する.

Mesh plug法による鼠径ヘルニア修復術5年後に発症した大腿ヘルニアの1例

著者: 上野正勝 ,   井川澄人 ,   久保田太輔 ,   寺倉政信 ,   大場一輝 ,   西野佳浩

ページ範囲:P.507 - P.509

はじめに

 Mesh plugとonlay patchを用いたmesh plug法による成人鼠径ヘルニア根治術の登場で鼠径ヘルニアの術後再発は減少したとされている1~6).今回,筆者らはmesh plug法による鼠径ヘルニア修復術5年後に発症した大腿ヘルニアの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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