icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科59巻6号

2004年06月発行

雑誌目次

特集 内視鏡外科手術を安全に行うために

〔Editorial〕内視鏡下手術を安全に行うために

著者: 出月康夫

ページ範囲:P.664 - P.665

 内視鏡下手術による医療事故が相次いでマスコミで取り上げられ注目を浴びている.

 腹腔鏡下胆囊摘出術がわが国に導入されたのは1990年であるが,この手術のわが国での健全な発展と普及を目指して翌年には内視鏡下手術研究会が設立され,腹腔鏡下手術の安全性を確保することを目的として1992年8月には“内視鏡下外科手術施行にあたってのガイドライン”が公表されている.

鏡視下食道切除術を安全に行うために

著者: 桑野博行 ,   宮崎達也 ,   中島政信 ,   加藤広行

ページ範囲:P.667 - P.671

 要旨:鏡視下食道癌手術は現在多施設で行われるようになってきている.食道癌手術は限られたスペースで深部の微細な操作を行う必要性があることから内視鏡による拡大,採光,良視野という大きな利点がある.一方,鏡視下手術は従来の手術と比較して術者の触診が不十分,視野外で起こっていることが認識できない,正確な出血量が把握しづらい点が欠点として挙げられる.鏡視下手術を安全に行うために最も重要なポイントはその手術適応とconventionalな術式への移行に躊躇しないことである.鏡視下食道切除術と腹腔鏡補助下胃管作製術の適応と手技,安全に施行するためのポイントについて概説する.

早期胃癌に対する腹腔鏡補助下胃切除術を安全に行うために

著者: 永井祐吾 ,   田中信孝 ,   永井元樹

ページ範囲:P.673 - P.679

 要旨:腹腔鏡補助下胃切除を安全に行うためのポイントを解説した.進行癌やリンパ節転移を除外するために超音波内視鏡やCT画像診断は不可欠である.切除範囲は術前内視鏡で施行した点墨点を目安にする.術者は患者左側に立ち,左側腹部の2本のトロカールで郭清操作を行う.助手は患者右側に立ち,右側腹部(右手),心窩部(左手)のトロカールから術野展開を行う.術者は主として超音波凝固切開装置を用い,胃周囲血管の剝離を行う.クリップの脱落や超音波凝固切開装置のキャビテーションで思わぬ出血をきたすことがある.胃周囲の血管走行を術前から十分把握し,血管周囲の郭清は細心の注意を払って行うべきである.突発的出血に際し,ガーゼ圧迫でコントロールできなければ速やかな開腹コンバートの構えが重要である.

腹腔鏡下胆囊摘出術を安全に行うために

著者: 植木敏幸 ,   佐田正之 ,   小田斉 ,   中村光成

ページ範囲:P.681 - P.685

 要旨:今回,腹腔鏡下胆囊摘出術の手術手技と危険性についてまとめた.炎症が高度で胆道の解剖学的位置関係を確認できない場合には胆管損傷などの危険性も高い.術者は手術手順と問題点を十分に理解したうえで手術に臨む必要がある.手術は安全性が最も重要である.病態に応じた術式を選択することが重要で,腹腔鏡下での手術操作が無理であると判断したらためらうことなく開腹手術へ移行すべきである.

腹腔鏡下脾臓摘出術を安全に行うために

著者: 奥芝知郎 ,   奥芝俊一 ,   加藤紘之

ページ範囲:P.693 - P.697

 要旨:特発性血小板減少性紫斑病をはじめとする脾腫のない疾患に対し腹腔鏡下脾臓摘出術はいまや標準術式になりつつある.手術は脾臓周囲支持組織の切離と脾への血行遮断に尽きるが,この過程において出血を中心とする偶発症,合併症が多施設から報告されている.本稿では解剖の要点を概説し,筆者らが経験した合併症を起こしやすいポイントとその対処法を中心に述べる.

腹腔鏡下虫垂切除術を安全に行うために

著者: 近森文夫 ,   片岡友和 ,   国吉宣俊 ,   国吉和重 ,   高瀬靖広

ページ範囲:P.699 - P.703

 要旨:腹腔鏡下虫垂切除術(LA)179例の合併症として腹壁トラカール刺入創部出血を1例,appendiceal stump abscessを1例,腹腔内遺残膿瘍を2例,臍部皮下膿瘍を2例経験した.腹壁トラカール刺入創部出血に対しては腹腔鏡下に鮒田式胃壁固定具を用いてトラカール創を縫合・止血した.断端膿瘍に対しては虫垂根部断端が壊疽性変化をきたしていたため,Endo GIA(R)を用いた盲腸部分切除とドレナージを施行した.腹腔内遺残膿瘍に対しては開腹によるドレナージを施行した.以上から,これら合併症を回避するためには,1)虫垂間膜や虫垂根部の体内結紮に不安があれば二重結紮とする手間は惜しむべきではない,2)フック型電気メスによる虫垂断端粘膜の焼灼による断端粘膜の静菌化,3)腹腔内汚染症例に対する十分な洗浄とドレナージ,また合併症の早期発見と修復のためには,1)終了時のトラカール刺入創部の出血の有無のチェック,2)モニタードレーンの挿入などが肝要と思われた.

消化性潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下大網被覆術を安全に行うために

著者: 柏木秀幸

ページ範囲:P.705 - P.711

要旨:消化性潰瘍穿孔に対し腹腔鏡下穿孔部閉鎖術は有用な治療法である.発症早期の限局性腹膜炎には保存的治療が,高度の腹膜炎には開腹手術が用いられるが,本治療は両者の間に位置している.開腹手術に比べ侵襲性が低く,保存的治療に比べ腹腔内洗浄ならびに穿孔部の閉鎖を行う利点を有している.特に,十二指腸潰瘍や胃潰瘍前壁の穿孔に有用であるが,穿孔部の閉鎖には大網被覆が用いられる.腹腔鏡下に穿孔部の大網被覆を安全かつ確実に行うには縫合手技の習熟と,この縫合を考慮したトロッカーの挿入位置が大切である.開腹への移行は術前の評価や内視鏡検査により減らすことができるが,本治療の目的は確実な救命にあるので,開腹への移行は躊躇しないことである.

腹腔鏡下大腸手術を安全に行うために

著者: 國場幸均 ,   渡邊昌彦 ,   中村隆俊 ,   佐藤武郎 ,   根本一彦 ,   井原厚 ,   大谷剛正

ページ範囲:P.687 - P.692

 要旨:腹腔鏡下大腸手術を合併症なく安全に行うためには腹腔内においての鉗子操作をはじめ様々な工夫を要する.本法では開腹手術に比較し視野が狭小で腹腔の全体像が把握しにくく,適切な視野展開が困難な場合が多い.腹腔内の限られた空間で鉗子操作を合理的に進めるためには鉗子を挿入する以前に体位固定の準備を含め種々の工夫が必要となる.また術中出血を極力抑えることが最も重要であり,そのためには安全な剝離層を露出し,手技を継続するための膜構造と血管走行をはじめとする解剖を熟知することが常に要求される.ただし術中偶発症によっては躊躇せず開腹に移行する判断力が求められることを忘れてはならない.

カラーグラフ 肝・膵・脾内視鏡下治療最前線・3

膵頭十二指腸切除術

著者: 宇山一朗 ,   飯田修平 ,   落合正宏

ページ範囲:P.659 - P.663

はじめに

 内視鏡下膵頭十二指腸切除はGagnerら1)により1994年に初めて報告されたが,その後も少数の報告が散見されるのみで普及した術式ではない2,3),本邦では1996年に筆者らが初例を報告したが4),他に報告がないうえ,筆者らも現在では行っていない.そこで,本稿では筆者らの行っていた手技と現在のこの術式に対する現状を解説する.

特別寄稿

その後の外科専門医制度改革

著者: 青木照明

ページ範囲:P.713 - P.719

はじめに

 新しい外科専門医認定制度が2002年(平成14年)4月10日から施行され,第1回専門医認定予備試験(筆記)が2006年(平成18年)8月には実施される予定となっている.1996年(平成8年)に創立された外科関連専門医認定委員会〔1996年(平成8年)6月18日第1回委員会開催〕における日本外科学会関連専門医制度の調整・統合が外科サブスペシャルティ学会(消化器外科,小児外科,胸部外科:心臓血管・呼吸器外科)を対象に検討され始めたのを契機として,それらサブスペシャルティ学会の基盤学会として,日本外科学会の認定医制度を抜本的に見直すべく,1998年(平成10年)5月29日付けで正式に『日本外科学会専門医修練カリキュラム改正委員会(当時仮称)』が設置された.1994年(平成6年)5月10日付け以来,日本外科学会認定医資格認定委員会委員長を務め,先の外科関連専門医認定委員会(古瀬彰委員長・胸部外科学会)の外科学会メンバーとしてすでに第1回外科関連専門医委員会において,1階部分の構築を担当することになっていた筆者がその委員長を担当した.カリキュラム改正に先立ち,学会認定医制協議会,三者懇談会(日本医師会,日本医学会,学会認定医制協議会)における議論,当時の厚生労働省,文部科学省,政府与党,日本学術会議関連などの検討委員会から提言された種々の「21世紀の医療のあり方」などを踏まえ,外科学会の資格認定委員長として,かねてより種々の問題点の改善を試みてきた従前の日本外科学会認定医制度の現状と問題点を先ず明らかにし,本誌に「外科専門医制度の現状と将来」の概要を発表した〔臨外53(8):1055-1061,1998〕1).今回はそれを受けた経過報告である.

私の工夫 手術・処置・手順

腹腔鏡補助下大腸切除での直針付きナイロン糸を利用した腸管吊り上げ

著者: 森浦滋明 ,   小林一郎 ,   服部弘太郎 ,   吉岡裕一郎 ,   大城泰平 ,   川原真理

ページ範囲:P.720 - P.721

 腹腔鏡補助下大腸切除術において血管処理を行う際,助手が腸管を把持して腸間膜を伸展させるのが一般的である.筆者らは直針付きナイロン糸の先端にループをつくったものを用いて腸管を腹壁外より直接牽引し,腸間膜を展開する方法を考案した.安価で安全に行えて便利であるので紹介する.

用具

 60mm直針付きの2-0ナイロンモノフィラメント糸の糸の先端に直径2~3cmのループをつくり,糸の長さ約15cmとする.ループは「もやい結び」でつくると緩みにくい.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 3

胃腸手術後のドレーンは必要か

著者: 松股孝

ページ範囲:P.722 - P.723

【ドレナージの意義】

 手術局所ではサイトカインの上昇が術後72時間続くため,肝切除術などでは肝切除断端などで産生されたサイトカインを積極的に排泄させる意義はあるかもしれないが,消化管縫合不全の防止に関してはさまざまな点でネガティブな報告が多い.骨盤腔内ドレーンさえ留置する意義はないという1,2).ドレナージによって貴重な体液が喪失するのは,サイトカインの排泄効果を上回る悪影響があるのかもしれない.

 21世紀になり,胃腸手術後のドレーンは必要か否かの臨床研究は一流雑誌から姿を消し,膵切除後のドレーンが話題となっている.

病院めぐり

福島県立会津総合病院外科

著者: 阿部幹

ページ範囲:P.724 - P.724

 当院の歴史は古く,明治40年に若松衛戌病院として発足し,現在まで96年の歴史があります.当院は,戊辰戦争の白虎隊でその名が知られた会津若松市にあります.会津若松市は福島県の西北部に位置し,会津地域の中心地です.福島県立病院9病院のうち5病院が会津地域にあり,福島県立会津総合病院はその中核病院となっています.院内標榜科は18科で,一般病床,精神病床のほか,公立病院の役割としての結核病床およびSARSも含めた感染病床を兼ね備えた,病床数401床の病院です.今年から臨床研修指定病院の指定を受け,現在卒後臨床研修医を募集しています.

 当院の各診療科の出身大学のほとんどは福島県立医科大学で,外科も現在は全員福島県立医科大学出身です.消化器外科・一般外科と心臓血管外科はそれぞれ福島県立医科大学の第1外科および心臓血管外科から医師派遣を受けています.現在,日本外科学会,日本消化器外科学会,日本胸部外科学会などの専門医認定施設となっています.診療は,消化器外科・一般外科として阿部 幹副院長(消化管・肝胆膵・移植・内視鏡外科・乳腺),竹重俊幸(消化管・肝胆膵・移植・内視鏡外科・乳腺),遠藤豪一(食道・呼吸器・甲状腺・乳腺・大腸肛門)と研修医1名,心臓血管外科として渡邊正明外科部長(心・血管)と派遣医1名の計6名で担当しています.今年の4月からは心臓血管外科に東北大学出身の者が常勤医師として加わり,計7名となる予定です.

芳賀赤十字病院一般消化器外科

著者: 田村光

ページ範囲:P.725 - P.725

 真岡市は栃木県の南東部に位置し,東に八溝山地,西に鬼怒川を抱える,人口約66,000人の自然環境豊かな都市です.芳賀赤十字病院は,真岡市の中心部にあり,現在まで芳賀郡1市5町を中心とする地域の人々の中核的医療を担う病院として歩んで来ました.もともと当院は,大正11年4月に地域篤志家の方々により株式会社芳賀病院(職員数20名,病床数30床)として設立されましたが,昭和20年7月,戦災に遭い病院が全焼しました.その後,昭和22年木造2階建てを竣工し,昭和24年7月に日本赤十字社栃木県支部芳賀赤十字病院として発足しました.

 現在,病床数は,410床で,診療科目は内科・循環器科・小児科・外科・整形外科・脳神経外科・皮膚科・泌尿器科・産婦人科・眼科・耳鼻咽喉科・放射線科・歯科・歯科口腔外科・麻酔科の15科,常勤医師数45名です.平成15年5月には財団法人日本医療機能評価機構により,病院機能評価(一般病院種別B)として認定されました.外科関連学会の施設認定としては,日本外科学会,日本乳癌学会の認定医・専門医修練施設となっています.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・18―Billrothと災害救助医療と看護婦育成

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.726 - P.728

 Billroth(図1)は普仏戦争(1870~1871年)に従軍した経験をもとに,長年の友人でウィーン医師会で重きをなしていたJaromir Freiher von Mundyと連名で1874年に「Ueber den Transport der im Felde Verwundeten und Kranken:Historische und kritische Studien uber den Transport der im Felde Verwundeten und Kranken auf Eisenbahnen(戦時傷病者の鉄道輸送について)」という論文を発表し,戦時ばかりではなく平時での災害救助医療の重要性とその必要性を説いた.さらに,これに先立つ1873年には,ウィーン万国博覧会において戦時傷病者の搬送用列車を展示している(図2).そして,盟友Mundyの周旋によりウィーンに「災害救援協会」が創設され,これが後にオーストリア赤十字社へと発展していったのである.

 また,Billrothは1870年代後半このMundyの勧めで「ルドルフ協会(Rudolfiner Verein)」に入会している.「ルドルフ協会」はBillrothがウィーンに赴任する1年前の1866年に設立されたもので,その当時はオーストリア-ハンガリー二重帝国を統治していたハプスブルグ王家のRudolf皇太子(図3)が主宰していた.この協会は「ウィーンに看護婦養成機関を併設した病院を造る」ことを目的とした奉仕協会であったが,Billrothが入会した頃は開店休業といった状況であり,ほとんど活動らしい活動はしていなかったのである.しかし,協会活動にかかわりながらRudolf皇太子と親しくなるにしたがって,Billrothはこの協会に一段と肩入れするようになり,「平時の災害救護医療を行う病院を建設するとともに,それに付属する看護婦養成機関を設立する」というルドルフ協会の基本理念の実現に向け,足らざるところには私財を投じるなどして一方ならぬ情熱を傾けるようになった(このことは,1892年に弟子達によって開催されたBillroth教授就任25周年記念祝賀会の席上,Billrothがこの病院の竣工が間近に迫ったことを喜ぶ演説をしていることからも十分に窺える).

目で見る外科標準術式・49

痔核に対する結紮切除開放術式

著者: 栗原浩幸 ,   金井忠男 ,   石川徹 ,   小澤広太郎 ,   金武良憲

ページ範囲:P.729 - P.735

はじめに

 痔核手術は脱出や出血の原因となる病変を治癒させるために行われるが,当院では良好な肛門機能をもつ“きれいな”肛門に整え,再発を起こさせないことを目標としている1).そのためには肛門上皮を最大限に温存しながら,痔核組織すなわち平滑筋(Treitz's muscle)や弾性線維,結合組織などを含めた静脈瘤2,3)を十分に郭清することが必要である.

 筆者らは肛門手術の原則であるドレナージ創を適切にとることができること,すべての痔核を同様な良視野で切除することができるという理由から,開創器を用いて開放式結紮切除術を行っている.開放式結紮切除術はWhitehead肛門や粘膜脱,あるいは痔瘻や裂肛などを伴う痔核手術にも適応が可能である.

 以下に当院で行っている開放式結紮切除術を解説する.

臨床経験

肝エキノコックス症に対する血行再建併施肝切除例を含む手術治療成績

著者: 信岡隆幸 ,   桂巻正 ,   水口徹 ,   木村康利 ,   向谷充宏 ,   平田公一

ページ範囲:P.737 - P.742

はじめに

 肝エキノコックス症は肝の寄生虫性囊胞性疾患で,発症するまでに5~15年と長期にわたるが,発見時にすでに高度な脈管・胆管浸潤により門脈圧亢進症状や閉塞性黄疸を呈することがある1).したがって,切除可能症例でも大量肝切除や血行再建を必要とする場合も少なくない.筆者らは過去8年間に区域切除以上の肝切除を行った肝エキノコックス症7例を経験した.そのうち2例は門脈もしくは肝動脈の再建を伴う肝切除ができた.この7例について臨床的検討を行ったので報告する.

臨床報告・1

3D-CTが肝切除に有用であった右側門脈臍部,左側胆囊を伴う肝エキノコックス症の1例

著者: 舩越徹 ,   神山俊哉 ,   中川隆公 ,   佐藤直樹 ,   松下通明 ,   藤堂省

ページ範囲:P.743 - P.746

はじめに

 肝内の門脈分岐異常は超音波(US)・CT・血管造影などにより診断が可能であるが,腫瘤性病変による圧排・偏位のあるときにはその評価が困難なことがある.今回,筆者らはボリュームレンダリング法による3D-CT再構築画像7,8)が術前の門脈分岐異常の診断とその術式決定に有用であった肝エキノコックス症の1切除例を経験したので報告する.

超高齢者頸部食道癌の1切除例

著者: 佐藤弘 ,   坪佐恭宏 ,   鵜久森徹 ,   中川雅裕 ,   近藤晴彦

ページ範囲:P.747 - P.749

はじめに

 近年,周術期の管理法の進歩などにより,超高齢者(85歳以上)においても安全に手術が施行されるようになってきている.超高齢者の頸部食道癌に手術治療を施行し,良好な経過とQOLを得たので報告する.

腹膜再発の切除にて長期生存が得られた胆管細胞癌の1例

著者: 中井肇 ,   吉岡孝 ,   井口利仁 ,   五味慎也 ,   森谷卓也

ページ範囲:P.751 - P.754

はじめに

 肝の原発性悪性腫瘍のなかでも,胆管細胞癌は肝細胞癌に比べて治療成績が不良であり1),5年以上の長期生存例の報告もいまだ少ない.とくに腹膜再発をきたした症例の予後は一般的にはきわめて不良で,肝細胞癌術後に発生した腹膜再発症例に対して切除を含めた集学的治療により長期生存した症例の報告は散見されるが2,3),胆管細胞癌においては同様の症例は文献的には1例認められるのみである4).今回,筆者らは胆管細胞癌切除後3年目に発症した腹膜再発の切除により長期生存が得られた1症例を経験したので報告する.

腸腰筋膿瘍を合併した下行結腸癌の1例

著者: 山本寛斉 ,   白川和豊 ,   徳毛誠樹 ,   宇高徹総 ,   水田稔 ,   大屋崇

ページ範囲:P.755 - P.758

はじめに

 腸腰筋膿瘍は現在では比較的稀な疾患であり,なかでも結腸癌に続発するものは報告例が少ない1,2).今回,筆者らは結腸癌から腸腰筋膿瘍を合併した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

原発性早期十二指腸癌の1切除例

著者: 中川智和 ,   木村俊久 ,   片山寛次 ,   山口明夫 ,   村井アトム

ページ範囲:P.759 - P.761

はじめに

 早期十二指腸癌の切除報告例は稀であり,その治療も内視鏡的切除から膵頭十二指腸切除までさまざまである1).今回,筆者らはⅠp型の早期十二指腸癌に対し,幽門側胃切除術を施行した1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

金属片飛入による貫通性気管損傷に伴って発生した皮下・縦隔気腫の1例

著者: 梶浦由香 ,   和泉裕一 ,   眞岸克明 ,   石川訓行

ページ範囲:P.763 - P.765

はじめに

 今回,筆者らは微小金属片飛入による貫通性頸部気管損傷に伴って発生した皮下・縦隔気腫の1例を経験した.きわめて稀であると考えられたので,若干の考察を加えて報告する.

穿孔性腹膜炎を契機に発見された甲状腺癌小腸転移の1例

著者: 犬塚和徳 ,   藤崎真人 ,   戸倉英之 ,   清水和彦

ページ範囲:P.767 - P.771

はじめに

 転移性小腸腫瘍は比較的稀な疾患であり,中でも甲状腺が原発の報告は少ない1~4).今回,筆者らは甲状腺乳頭癌のリンパ節転移巣が未分化転化後,小腸転移をきたし,穿孔した1例を経験したので報告する.

長期生存した異時性三重複癌の2例

著者: 田中恒夫 ,   真次康弘 ,   石本達郎 ,   香川直樹 ,   福田康彦 ,   西阪隆

ページ範囲:P.773 - P.776

はじめに

 近年,平均寿命の延びや診断技術の向上により重複癌や三重複癌の報告が増加している.また,悪性腫瘍における治療法の改善などによりその長期成績も徐々に向上している.しかし,重複癌,三重複癌の治療成績は必ずしも良好とは言えず,三重複癌の最終癌が診断されたのち5年以上長期生存した報告1~5)はこれまでに5例のみである.今回,筆者らは三重複癌の最後の手術により5年以上の長期生存した2症例を経験したので報告する.

Basedow病を呈した橋本病に生じた甲状腺MALTリンパ腫の1例

著者: 安友紀幸 ,   川端幹夫 ,   古口健一 ,   近藤信夫

ページ範囲:P.777 - P.780

はじめに

 近年,慢性炎症から発生する悪性リンパ腫に注目が集まっており,慢性甲状腺炎(橋本病)にも悪性リンパ腫が高頻度に合併するといわれている1).また,橋本病にBasedow病を発症することも報告されている2).筆者らはBasedow病を呈した橋本病に生じたmucosa-associated lymphoid tissue lymphoma(MALTリンパ腫)を経験したので報告する.

直腸後方(経仙骨的)切除術後8年目に再発した直腸原発gastrointestinal stromal tumor(GIST)の再切除例

著者: 岡田喜克 ,   町支秀樹 ,   宗行毅 ,   野田直哉 ,   岸和田昌之

ページ範囲:P.781 - P.785

はじめに

 消化管に発生する間葉系腫瘍のなかで筋原性および神経原性のいずれの方向にも分化を明確に示さないものに対し,狭義のGISTという概念が導入され1),さらにc-kit抗体陽性の有無にてGIST(gastrointestinal stromal tumor)と診断し2),報告される症例が増加している.今回,筆者らは初回手術にて直腸後方からのアプローチによる切除を施行し,組織学的に低悪性度平滑筋肉腫と診断され,術後8年目に同部位に多発再発した直腸GISTの再切除例を経験したので報告する.

虫垂Crohn病の1例

著者: 平沼知加志 ,   永里敦 ,   橋爪泰夫 ,   小林雅子

ページ範囲:P.787 - P.790

はじめに

 虫垂の肉芽腫性炎症は稀であり,種々の原因により引き起こされる1).最近筆者らは急性虫垂炎の症状を示した虫垂Crohn病の1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍の1例

著者: 田崎達也 ,   水流重樹 ,   山崎力 ,   熊谷元 ,   植田秀雄 ,   谷本康信

ページ範囲:P.791 - P.794

はじめに

 小腸憩室は比較的稀な疾患である1).今回筆者らは急性腹症にて緊急手術したきわめて稀な回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?