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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科59巻8号

2004年08月発行

雑誌目次

特集 肛門疾患診断・治療の実際

肛門疾患診療に必要な肛門管の解剖と生理

著者: 升森宏次 ,   丸田守人 ,   前田耕太郎 ,   岡本規博 ,   勝野秀稔

ページ範囲:P.957 - P.963

 要旨:肛門管は直腸と肛門外口とを結ぶ3~4cmの管状構造であり,種々の疾患が多様に発生する.肛門疾患の診断と手術に際しては肛門管の解剖・生理について熟知しなければならない.肛門管は非常に鋭敏・繊細で,複雑な構造をしているので誤った治療を行うと障害を残してしまう可能性がある.

 肛門管の筋組織,組織間隙,血管,リンパ管,神経,排便機能などについて述べた.

肛門疾患診断のコツ・テクニック

著者: 松田直樹 ,   武藤功

ページ範囲:P.965 - P.970

 要旨:最近の肛門外科は従来の結紮切除法に加え,痔核の上方環状粘膜切除(PPH法),超音波フックメスによる経皮的粘膜下痔核手術1),ICG法など,そして裂肛にはニトログリセリンやボツリヌス毒素などによる化学的裂肛手術など新しい治療法が行われている.そのため術式の決定に迷いかねない.しかし,どの術式を選ぶにしても,その基となるのはしっかりと順を追った診察と診断であると思う.そこで肛門科医が日常行っている診察・診断法をまず問診に始まり,視診,肛門指診,肛門鏡診の順で詳しく述べる.

痔核の診断・治療の実際

著者: 浅野道雄 ,   松田保秀

ページ範囲:P.971 - P.977

はじめに

 従来,痔核の成因は肛門部の静脈瘤や血管過形成であるとする考えが主流であったが,最近では肛門部のcushion組織の滑脱であるとする考え方が広く受け入れられるようになってきた1).Cushion組織はTreitz靱帯,動静脈,弾性線維などを含む元来正常な構造物であり,その「滑脱」も生理的な程度との境界は必ずしも明瞭ではない.他覚的所見と自覚症状が必ずしも一致せず,また,生活の質を左右することはあっても,生命を脅かすものではないというのが痔核の特徴といえよう.近年,治療方法も多彩になってきており,患者の症状やライフスタイルに合わせた治療法の選択が求められている.

PPHによる痔核手術―環状自動縫合器を用いた痔核吊り上げ固定術

著者: 辻仲康伸 ,   松尾恵五 ,   浜畑幸弘 ,   堤修

ページ範囲:P.979 - P.983

 要旨:PPHは痔核脱肛手術の手術法の一つとして選択しうる方法となった.痔核組織自体は病的ではなく肛門機能を保つクッションとして不可欠なものと理解されつつある.脱肛症状は肛門クッションの肛門管外への滑脱の結果であるため,肛門クッションを吊り上げ固定する本法に適した痔核脱肛症例を正しく選択することが重要である.しかし直腸穿孔や骨盤膿瘍などの重篤な合併症も起こりうるため,習熟した術者が慎重に手技を行うことが最大の予防策と考えられる.

直腸肛門周囲膿瘍の診断・治療

著者: 日高久光

ページ範囲:P.985 - P.990

 要旨:直腸肛門周囲膿瘍の大部分は肛門腺の感染によるものである.臨床経過は急速かつ進行性のことが多く,即座の診断,治療が求められる.診断は問診と直腸肛門指診が基本であるが,広範囲かつ深部の膿瘍では超音波検査やMRI,CTによる画像診断を併用すると詳細な診断が可能である.治療は時機を逸せずに適切で十分な切開排膿を行うことであるが,切開の際不用意に括約筋を損傷したり,かえって膿瘍を広げることのないように注意が必要である.膿瘍期における一期的根治術についてはその時の状況によるが切開のみで長期におさまる例も多く,とくに深部膿瘍に対する一期的根治術は肛門機能保全の意味からも避けるべきである.

痔瘻の診断・治療の実際

著者: 岩垂純一

ページ範囲:P.991 - P.998

 要旨:痔瘻の診断は視診や指診を基本として行うが,骨盤直腸窩痔瘻などの深部痔瘻に対しては病変の把握が困難なため,病変部をコントラスト良く描出でき各種断像が自由に得られ,瘻管や膿瘍腔の広がりを立体的に評価することが可能なMRIを応用し,病変の広がり,程度を確認する.

 痔瘻の手術の基本は切開開放術であるが,瘻管の貫く部位,位置によって肛門機能に障害をきたすため括約筋を温存する術式が適応となる.しかし括約筋温存術は根治性の点で劣るため,痔瘻の程度によっては,より侵襲はあるが,より根治性の高い術式や方法を臨機応変に選択して行う.

裂肛の診断・治療の実際

著者: 高野正博

ページ範囲:P.999 - P.1005

 要旨:裂肛は三大肛門疾患の1つで,若い女性に多い.病態は狭窄型,脱出型,混合型,脆弱型,症候型の5つに分類される.病態をよく見て,どの型に属するか的確に見極める.病悩期間からは急性,亜急性,慢性に分けられ1),それぞれは保存療法,外来処置,手術の3つに対応する.しかし治療のベースとして肛門の衛生,便通の調整が必要である.いずれにせよ,それぞれの患者で病態,病悩期間,症状,訴えを見極め,適切な治療を行うことが治癒率を高める.

肛門機能不全の診断・治療の実際

著者: 吉岡和彦 ,   岩本慈能 ,   森田美佳 ,   米倉康博

ページ範囲:P.1007 - P.1011

 要旨:肛門機能不全は便失禁と便秘に大別される.病態の把握には身体所見のほかに生理学的検査,経肛門的超音波検査,defecographyなどが用いられてきた.便失禁の原因は女性で出産時の肛門括約筋の損傷による場合が多く,括約筋の損傷部位が明らかな時は括約筋修復術が行われる.いわゆる特発性便失禁に対してはpostanal repairが行われてきたが,手術成績についての評価は一定していない.肛門疾患が関係する便秘には器質的病変を認めないいわゆるoutlet obstructionと呼ばれる疾患群と手術後の障害として起こる肛門狭窄による場合があり,各病態に対する治療が必要となる.

肛門周囲疾患の診断・治療の実際

著者: 杉田昭

ページ範囲:P.1013 - P.1019

はじめに

 肛門は解剖学的には肛門管と肛門周囲の皮膚から成り立ち,炎症性病変,感染性病変,腫瘍性病変など多種の病変が存在する.これらの疾患は患者のQOL(生活の質)を低下させることが多く,正確な診断と治療が必要である.今回は感染性疾患のうち,Fournier症候群,毛巣洞,尖形コンジローマ,悪性腫瘍のうち,Bowen病,Paget病の診断,治療について述べる.

肛門部悪性腫瘍の診断・治療

著者: 大谷剛正 ,   井原厚 ,   國場幸均 ,   佐藤武郎 ,   根本一彦 ,   小澤平太 ,   中村隆俊 ,   渡邊昌彦

ページ範囲:P.1021 - P.1027

 要旨:肛門部の悪性腫瘍の頻度は稀であるが,肉眼型や組織型は多彩である.組織型によっては化学放射線療法のみで良好な予後も期待できるため早期発見と適切な診断が求められる.確定診断後は内科的治療を含めた集学的治療も必要である.手術術式は直腸切断術+永久的人工肛門が一般的であるが,近年,内肛門括約筋切除,結腸肛門吻合を行うことにより自然肛門温存も可能となってきた.

カラーグラフ 肝・膵・脾内視鏡下治療最前線・5

胆囊癌に対する腹腔鏡下根治的胆囊摘出術

著者: 白部多可史 ,   清水芳政 ,   今井達郎 ,   川上真未 ,   北島政樹

ページ範囲:P.951 - P.956

はじめに

 胆囊摘出術から始まった消化器疾患に対する腹腔鏡下手術は,手術器械や器具の新たな開発と内視鏡外科医の技量の進歩に伴い,その対象を急速に拡大しつつある.肝胆膵外科領域も例外ではなく,内視鏡下手術の持つ低侵襲性,拡大視効果を最大限に活かした新たな手術手技が提唱されてきている.

 われわれは比較的早期の胆囊癌症例に対する根治手術として腹腔鏡下に胆囊床肝切除とリンパ節郭清を行っているので,その手技の実際を解説する.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・20―Billrothに師事した日本人医師

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1028 - P.1031

 以前,本誌に堺哲郎氏が連載された「Theodor Billrothの生涯」(28巻11号~29巻4号)によれば,留学のため欧州に渡りウィーンにおいてBillrothから直接指導を受けた日本人は佐藤進,橋本綱常,難波一(はじめ)の3人であるという.なかでも佐藤進と橋本綱常は,幕末から明治期にかけて日本の外科学の近代化に大きく貢献した先駆者である.そこで,本稿ではこの2人を中心にその人物像を紹介していく.

 日本人としてはじめてBillrohに師事した佐藤進(図1)は,佐倉に医塾順天堂を興した佐藤泰然の遠縁にあたり,弘化元年(1845年)に常陸の国久慈郡太田に生まれた.母方の遠縁にあたるこの佐藤泰然のもとで医学修養を積み,二代目佐藤尚中の婿養子となった(図2).

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 5

胃腸手術後の経鼻胃管は必要か

著者: 松股孝

ページ範囲:P.1032 - P.1033

【経鼻胃管の思い出】

 アニサキスで腸閉塞になった先輩は,経鼻胃管とIVHカテーテルを挿入されたが,タバコがやめられずに病棟医局にタバコを吸いにやって来た.病状の心配な人がベッドに閉じこもらずに喫煙所にやってくると安心する.病状が好転するのが速いような気がするので,リハビリタバコと名付けている.先輩は某大学の呼吸器外科の教授になった.

 肝臓切除の翌日,経鼻胃管を大きな注射器で吸引しながら抜くと,経鼻胃管の先端で何か動いていた.生きた回虫を初めてみた.無農薬有機栽培の野菜を食べているとのことであった.今回も内容が散文調になってきたが,臨床は実に面白い.

病院めぐり

川崎市立川崎病院外科

著者: 石井誠一郎

ページ範囲:P.1034 - P.1034

 川崎市立川崎病院は昭和11年に伝染病院として21名の医師と病床数96床でスタートし,昭和20年に総合病院となって外科が設置されました.平成9年から3年の歳月をかけて新病院を建設し,現在は病床数733床(一般床683床,感染床12床,精神床38床)を有し,約129万の人口を有する川崎市の基幹病院として機能しています.平成14年度には救急部や小児急病センターなどを増設し,精神科救急の24時間体制も開始しております.平成16年4月現在,診療25科,常勤医師88名,非常勤医師11名の構成で,各種学会の教育研修施設に認定されており,初期研修医12名,専修医(総合診療科:卒後3年目以上)16名が研修しています.

 当院は,JRと京浜急行の川崎駅から徒歩圏内(15分)にあり,平日は100円バスも駅前から運行され,患者さんの便利な足となっています.また,首都高速神奈川線や国道1,15号線からも容易にアクセスできる至便な位置にあります.地上15階,地下1階建ての独特な建物の外観は川崎市のランドマークとして遠望することができます.

山近記念総合病院外科

著者: 杉田輝地

ページ範囲:P.1035 - P.1035

 山近記念総合病院は初代理事長の山近勝美先生が昭和31年に小田原市国府津の現在地に有床診療所を開設したのが始まりです.現在は病床数152床,外来患者数600名前後で,内科,循環器科,外科,脳外科,整形外科,産婦人科,泌尿器科,眼科,耳鼻科,形成外科を標榜し,常勤医師22名で平均在院日数16日を維持しつつ地域の中核病院の1つとして成長してまいりました.平成12年には日本医療機能評価機構の認定を受け,「親切,笑顔,挨拶,気配り」を基本に患者さま中心の医療を展開しております.

 小田原市は小田原城で有名な古い城下町であるとともに,観光地箱根の入り口として新幹線,JR,小田急線など5つの鉄道が交差しており交通の便に恵まれております.当院は小田原市の東に位置する国府津駅近くの国道1号線海岸沿いにあり,南に相模湾,北に富士山を望むすばらしい景観の地です.

海外医療事情

デンマークの医療事情―コペンハーゲン大学病院Rigshospitaletでの経験から

著者: 俵藤正信

ページ範囲:P.1036 - P.1039

はじめに

 デンマークは北欧の小国で面積は九州くらい,人口は530万人で日本の約1/20に過ぎない.ご存知のように社会保障の進んだ国であり,生活レベルとともに物価・税金も高い国として知られている.首都コペンハーゲンは人口約50万人,デンマーク最大の都市であるとともに交通の要所で北欧の玄関口と言われている.童話作家アンデルセンにちなんだ名所,公園,古城がある美しい観光都市で,日本の医療においてはインスリンのノボ社が有名である.

 当科とコペンハーゲン大学病院,Rigshospitaletの消化器・肝移植外科は留学生を介した20数年来の交流があり,最近では互いの留学生が手術に参加する臨床留学のシステムをとっている.当科から今日まで4人の消化器外科医が臨床留学で同病院を訪れ,肝胆膵外科,肝移植手術を中心にデンマークの外科医療を直接体験する貴重な経験を得ている.4人とも1年間の家族同伴の滞在で,デンマークの医療と実情についても身を持って体験してきた.今回,日本人にとって比較的馴染みの薄い北欧デンマークの医療制度,外科教育,外科医療の現況について紹介する.

日米で異なる外科レジデント教育・医療事情(第2回)

スタンダードな治療

著者: 十川博

ページ範囲:P.1040 - P.1041

均一化されたレジデント教育の背景

 米国でのレジデント教育は均一化されている.言い換えれば,ハーバード大学で研修をしようが,ブロンクスにある市中病院で研修しようが,一応,米国でのスタンダードな医療を施す外科医ができあがるシステムができている.これは,ひとつはACGME(The Accreditation Council for Graduate Medical Education)が細部にわたり外科レジデントプログラムに必要なもの,症例数やローテーション,講義内容などを一律に定めているせいもあるが,さらに米国にある“スタンダードな治療”という共通概念が大いに役割を果たしているように思われる.これはしばしば“board answer”という言葉でも置きかえられる.つまり専門医試験の際に聞かれたときに答える模範解答という意味である.たとえばincidental non-functional adre-nal tumorの外科的切除適応のスタンダードあるいはboard answerは3cm以上である.

私の工夫 手術・処置・手順

小さなメッケル憩室の処置

著者: 安達洋祐 ,   棚橋利行 ,   坂下文夫 ,   山口和也

ページ範囲:P.1042 - P.1042

 メッケル憩室の頻度はおよそ2%である1,2).小児に出血や穿孔を生じることがあるが,大部分は無症状のままである.成人の開腹手術でたまたま見つかったメッケル憩室は,どう対処すべきだろうか.教科書には「controversial」と記載されている1,2).文献では「切除したほうがよい」という意見や「放置したほうがよい」という意見があり3~5),エビデンスやスタンダードはなさそうである.

 われわれは胃癌の手術中に,長径1.5cmの小さなメッケル憩室に遭遇した.「切除するほどではないが,放置して破れたら怖い」と思い,憩室をそっと埋め込み,漿膜筋層縫合を2針掛けて閉鎖した.

臨床研究

アルギン酸系創傷被覆材を用いた褥瘡100例の治療経験

著者: 小坂正明 ,   中澤學 ,   諸富公昭 ,   上石弘

ページ範囲:P.1043 - P.1049

はじめに

 アルギン酸はコンブなどの褐藻(かっそう)類から抽出された多糖類で,水に溶けると粘稠になる性質から食品添加物(増粘多糖類)として利用されている1).最近その粘稠な湿潤環境による創傷治癒促進効果が注目され,アルギン酸を主成分とした種々の創傷被覆材が市販されている.これらアルギン酸系創傷被覆材の保険適用症は「皮下組織にいたる創傷用」とされ,褥瘡ではgradeⅢに適応がある.しかし報告者によってその有効性は一致しておらず2~5),単独使用で治癒が期待できるか否か,検討の余地がある.

 そこで今回褥瘡100例(gradeⅡ50例,gradeⅢ50例)に対してアルギン酸系創傷被覆材を使用し,「褥瘡深度」「褥瘡面積」「治癒日数」の3項目の関連性について検討したので報告する.

臨床報告・1

両側水腎症を契機に発見された大腸癌腹膜転移の1例

著者: 五井孝憲 ,   西尾慶子 ,   本多桂 ,   片山寛次 ,   山口明夫

ページ範囲:P.1051 - P.1055

はじめに

 大腸癌のなかで腹膜転移症例は4~10%と言われている1).来院時は腹膜転移に起因する症状は稀で,原発巣が関与する出血,閉塞症状などがほとんどである.したがって,腹膜転移の診断は術前CT,MRIまたは腹部超音波検査などで癌性腹水,腹腔内腫瘤が確認されるか,または開腹時に初めて診断されることがほとんどである.今回,筆者らは両側水腎症を契機に発見された大腸癌腹膜転移症例を経験したので報告する.

上腰ヘルニアの1例

著者: 寺岡均 ,   竹内一浩 ,   櫻井克宣 ,   松永伸郎 ,   竹村哲

ページ範囲:P.1057 - P.1060

はじめに

 腰背部に発生する腹壁ヘルニアは解剖学的抵抗減弱部に生じる稀な疾患である1).今回,筆者らは左上腰三角部に発生した上腰ヘルニアの1例を経験したので報告する.

胃壁外性発育を示した巨大GISTの1例

著者: 竹林正孝 ,   豊田暢彦 ,   野坂仁愛 ,   若月俊郎 ,   鎌迫陽 ,   谷田理

ページ範囲:P.1061 - P.1064

はじめに

 消化管に発生する間葉系腫瘍の中で神経や平滑筋への明瞭な分化を示さず,免疫組織学的染色でCD34,c-kit(CD117)が陽性である腫瘍はgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と呼ばれている1).今回,筆者らは胃壁外性発育を示した巨大胃GIST(uncommitted type)の1例を経験したので報告する.

結腸間膜内に糞便性腫瘤を形成したS状結腸穿孔の2例

著者: 西山徹 ,   加藤紘之 ,   高橋亮 ,   平岡圭

ページ範囲:P.1065 - P.1068

はじめに

 S状結腸穿孔は腸間膜対側に好発し,糞便性腹膜炎を伴い重篤な経過をとることが多い1).今回,筆者らはS状結腸間膜内への穿通により糞便性腫瘤を形成した2例を経験したので報告する.

胃前庭部に発生し十二指腸に嵌入した巨大過形成性ポリープの1例

著者: 池田宏国 ,   辻和宏 ,   三谷英信 ,   斉藤誠 ,   安藤隆史 ,   羽場礼次

ページ範囲:P.1069 - P.1072

はじめに

 胃過形成性ポリープは決して稀な疾患ではない.しかし,2cm以下のものが大部分を占め,大きなものは比較的稀であるとされる1).今回,筆者らは胃前庭部から発生し十二指腸に嵌入する巨大過形成性ポリープの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

イレウスが初発症状となった特発性小腸穿孔の1例

著者: 東崇明 ,   久保宏幸 ,   村田哲也

ページ範囲:P.1073 - P.1078

はじめに

 小腸穿孔のなかでも器質的疾患や異物が存在しない特発性小腸穿孔は非常に稀である1,2).今回,イレウスにて発症した特発性小腸穿孔の1例を経験したので報告する.

総胆管原発悪性リンパ腫の1例

著者: 上坂邦夫 ,   塩谷雅文 ,   具英成 ,   田原徹 ,   保坂直樹

ページ範囲:P.1079 - P.1083

はじめに

 胃,小腸,大腸などの消化管における原発性悪性リンパ腫は時々経験されるが,胆管に原発する悪性リンパ腫はきわめて稀である.今回,筆者らは閉塞性黄疸で発症し,総胆管に腫瘍性の狭窄像を認め,胆管癌と術前診断し手術を行ったが,術後の病理組織検査で胆管悪性リンパ腫と判明した1例を経験した.診断上,治療上のいくつかの問題点を有すると考えられたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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