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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻1号

1951年01月発行

雑誌目次

移植・成形・1

関節癒著術(Arthrodesis)の経驗

著者: 神中正一

ページ範囲:P.1 - P.7

 嘗てWeilが関節癒著術と関節制動術に就て詳細な綜説を書いた(Die Arthrodese und Arthrorise, Erg. Chir. Orth. 24, 1931, 385).その頃は関節の此両手術法がまだ一般化していなかつたけれども,近年漸次其効果が認識されて来たようである.一体関節の機能的手術成績は,手術後数年或は十数年後に始めて確定されるものであるから,此手術が優れた成績を示すことが一般に認められるには相当長い月日を要した.
 関節癒著術(Arthrodesis)は,関節の可動性を犠牲とする代りに,関節支持力の再生,疼痛の除去,病患の再発防止等の利益をもたらし,他の療法では求めることが出来ない活動力を患者に賦與するのを目的とする.時には腱手術や関節制動術(Arthrorisis)を合併して,一層機能的効果を高めようとする.又関節の癒著は所謂関節の機能的肢位に於て,最も癒著の確実な骨性強直を要求するから,屡々骨移植術が應用され,骨性連絡を関節内(intra-articular),関節外(extra-articular),関節内外(intra-and extra-articular)に造るのである.

末梢神経移植に就て

著者: 今永一

ページ範囲:P.8 - P.12

1.緒 言
 余が先任者故桐原教授は,昭和14年以降昭和24年61歳の生涯を終る迄.末梢神経移植術の研究に從事し,多大の成果を收められた.余も亦その業を継ぎ,研究を続行しつゝある.
 末梢神経移植法は戰時に於ては特に必要なものであるが,平時に於ても亦時として必要なことは申す迄もない.時恰も朝鮮事変勃発し,益々本研究の必要が痛感されている.依つて余は茲に当教室の研究を中心として,末梢神経移植術の最近の趨勢を述べようとするものである.臨床医家に多少共参考になれば幸である.

腱形成術

著者: 飯野三郞

ページ範囲:P.13 - P.19

 まえがき 腱形成術と云うと,腱切り術,腱縫合術,腱延長術,腱短縮術等も広い意味でこの中に包含されるしその方法論や実際的手技は腱手術における基本としてきわめて大切であるが,これはあたえられたスペースの関係上省略して,主として腱移植術,腱移所術,腱移向術,人工腱について申しのべたい.

血管縫合に就て

著者: 木本誠二

ページ範囲:P.20 - P.25

 血管の外科は非常に古い問題であるが,又同時に最も新しい問題の一つである.他の一般の外科学と同樣,19世紀末から1910年前後にかけて血管外科に就ても多数の業績が発表され一應の結論に導かれたかの観があつたが,実地上は余り広く行われないまゝに,研究も長い間殆ど中絶されていた.所がごく最近,米國に於て心臟大血管の外科的治療や門脈系の手術が盛に実施されるに至つた関係上その必要に迫られたことゝ,又一つには化学療法の発達によつて往時の成績に再檢討が加えらるべき時期に達したこと,などによつて,又改めて根本問題に遡つて研究が開始されつゝある状況である.私達も現在の困難な情勢下に教室の諸君と共に広い範囲に亘つて血管外科に就ての研究に着手している所であるが,設備の不足や飼料の不足のため仲々思う幾分の一も進捗しない.しかし緩漫ではあるが一定の成績を得つゝあるので,何れ詳細を報告する機会はあると思う.今回編集者から血管移植に就ての総括的記述を要請されたのであるが,当然その重要な前提となるべき血管縫合がまだ一般には充分認識されていないようであるし,今後吾國にも広く普及されると思われる血管外科臨床の上にも必要と考えられるので,一應先人の貴重な努力の跡を回顧しつゝ吾々の経驗を加味して総括的に血管縫合の問題を取上げ,次号の血管移植の前書きとし度いと思う.

皮膚移植術

著者: 兒玉俊夫 ,   濱田辨次

ページ範囲:P.26 - P.30

はしがき
 植皮に関する研究は古くから行おれ,多数の術式が発表されている.なかでもThiersch法,Krause法,Reverdin法が有名で日常最も用いられる.このほか近来アメリカにおいて厚いThiersch法あるいは中間層植皮Intermediate split thickness graftと称して,Thiersch法とKrause法との中間の厚さの移植皮片を用いる植皮法が盛んに行われていることは著者の一人兒玉は先に水町教授と共著紹介した1).我々も日常この方法を多く用い,且つ基礎的実驗も行つているので,こゝでは主としてこの中間層植皮法を中心に筆をすゝめ,さらに從来の諸法に言及したいと思う.

植皮術に於ける動脈注射の効果

著者: 今井五郞

ページ範囲:P.33 - P.35

 植皮術は臨床上古くから行われ之が成功の万全を期する爲その時と場所による適應の選択に対して種々の工夫がなされてきたのである.
 而して植皮術中最も利用の広いのは遊離植皮術であつてその移植皮片の厚さによつて上皮移植術と皮膚移植術に分け,前者に属するものはチールシュ氏法及びルヴェルダン氏法であつで,後者に属するものはクラウゼ氏法デヴィス氏法及びマンゴルト氏法等があるが,之等を通じて一般に植皮術の根本目的は皮膚欠損部の完全なる補綴と美容整形的方面をできるだけ満足すべきことゝ,術後の機能の完全をはかることであることは論を俟たないのである.

移植皮膚の知覚恢復に就て

著者: 寺崎平 ,   十九浦照夫

ページ範囲:P.36 - P.39

 植皮は古くから行われ,その方法には種々あるが,第一次大戰以来急速に発達した.Davis1)は一程度以上の皮膚欠損を埋めるには有茎皮弁及び皮下組織が必要であると述べ,H. Gillies(1917)2),Filatov(1916),J. S. Davis3)等が管状皮弁の應用範囲を広めた.植皮の代表的なものを挙げれば次の如くである.

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アメリカに於ける二,三の外科臨床(その2)

著者: 濱光治

ページ範囲:P.31 - P.32

 前回は麻醉及び肺結核外科に就いて報告した.
 3)心臟及び胸部血管外科
 之は小兒外科に属するものであると云つても過言はあるまい.其れ程多く先天性心臟畸形及び大動脈附近の大血管の先天性畸形として診断され且つ今日多く手術されている.

集会

ページ範囲:P.47 - P.48

第190回東京整形外科集談会昭和25.10.28
 1)所謂進行性多発性化骨性筋炎の1例
 東京医大整形外科 池田 靜哉
 初診当時(昭24.8)9歳の女兒で,4歳頃から項部に初発し,極めて除々に進行.初診時両側性筋性剽頸と思われる症状を呈し,斜頸と診断手術した処が,頸部並びに腰部に爆発的増悪を示し,その後,試驗的切除切片の組織檢査で,後藤教授の進行性化骨性筋膜増殖症と全く同樣所見を認めた1例を報告した.本症に合併として最も多い手足の拇指矯小と,両手拇指指関節強直,第1,2頸椎椎体癒合,第3以下頸椎後部脊椎骨癒合症を認めた.

ハガキ囘答

消毒法?

著者: N生

ページ範囲:P.35 - P.35

1.手の消毒法 2.手術野の消毒法
◇どんな方法をお用いですか◇
 消毒ということは外科的操作の上では最も根本的なことであることは勿論であるが実地医家が其の経驗上どの程度で日常の用を弁じておらるゝかという事を知つて御互の参考にす可く問合せを行つたが回答が余り多くなかつた(23)ことは稍々残念であつた.然し一般の状態に関して大体の傾向は察し得ると思つて感謝している.分類すると次の樣である.

今月の小外科・10

骨前移植應用下顎骨連続切除術

著者: 中村平藏

ページ範囲:P.40 - P.41

 下顎骨の切除は術後顔貌,咀嚼,言語機能の恢復を計れる樣な手術操作を行わねばならない.手術の種類としては下顎全摘出,半側関節離断,部分切除(連続切除)があるが茲には比較的瘻々行われる骨前移植(Vortransplantation nach Axhausen)を應用する連続切除術(Kontinuitätsresektion)に就て述べよう.
 下顎骨切除をすれば何れにしても物質欠損を招来するので,其の補填を考えねばならない,それには人工的物質(義顎)を用いる場合と,骨移植を行う場合とあり,骨移植の方法も切除前に切除すべき部分の近辺に前以つて骨移植を行つて置く骨前移植法と,手術後創の治癒した後に行う方法とあるが,前以つて骨移植を行つて置いてから切除手術を行い骨欠損を直ちに移植骨で補うのが一番都合がよい.次に此方法によつた症例を引用して実施方法を説明して行う.

外科醫のノート

小兒の急性腸間膜リンパ腺炎

著者: 木田文夫

ページ範囲:P.42 - P.42

外科というものを他科から眺めた場合,或は他科の醫者の意見や他科で行う手術等が外科醫にとつて大きな示唆を與うる場合があります.この欄はそう云う意味で新設しました.御寄稿を歡迎致します(編集部)
 乳幼兒の急性腹部病変のとき開腹手術をしてみて,しばしば急性腸間膜リンパ腺炎Adénites mésentériques にぶつつかると,パリ大学のM.Champeauが発表している(Presse Médicale,n.56,1950).
 この所見は今日まで注意されなかつたわけではないが,病名が今までほとんど成書にとりあげられないのは不思議であるとして,これを独立の一疾患とみなすことを提唱した.

米國外科

Current American Surgery

ページ範囲:P.43 - P.44

JOURNAL OF THORACIC SURGERY
 Vol.19.No.5., May.1950.

最近の外国外科

外科的黄疸の診斷法に於ける肝臟穿刺檢鏡法,他

著者: ,  

ページ範囲:P.45 - P.46

 ウエブ及びウエルトハンマーの両氏は,この論文の材料が70回の生体肝臟切片檢鏡からなつていることを述べている.著者たちは先ず最初にこの檢鏡法を肝臟疾患,肝臟腫大,或は肝臟機能障碍を有する多くの患者の肝臟組織学的像の標準を得るため行つた.
 その理由は,病理学者にこの樣な小さい円柱形の組織から,顯微鏡切片を作つて,それに正確な解釈を下させるのには,先ず生体肝臟の穿刺檢鏡法に特別の経驗を持たせることが必要と感じたからである.此の点は黄疸の場合に特にその樣に感ぜられた.しかし,最近はこの方法は肝臟病診断上に於て疑問のある患者にのみ行つている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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