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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻12号

1951年12月発行

雑誌目次

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急性化膿性骨髄炎のペニシリン療法

著者: 宍戶仙太郞 ,   佐々木敬助

ページ範囲:P.555 - P.558

 急性化膿性骨髄炎に対し,從来まで,種々の化学療法が,或は單独に,或は種々の手術法と併用し試みられたが,仲々其の目的を達せず,サルファ剤も本症に対しては,若干の効果しか期待出来なかつた,然るに,P剤の出現は,本症治療に於ても,一大光明を與えたもので,その適切なる使用によつて,本症の頓挫的療法は,一應確立された感がある.Altmeier及びWadsworth両氏は,最近4年間の急性化膿性骨髄炎,71例に行つたペニシリン療法の効果に就て述べ,本症に対しては,P剤の早期治療により,順調の経過をとり,骨の破壊変形は,皆無か最小にとどまり,再発や腐骨の形成も,稀なる事を力説しているが,余等は,P剤の入手困難な,昭和22年12月より,昭和24年5月に至る迄,約1年5ヵ月間急性化膿性骨髄炎の患者に,P剤は,種々の條件のもとに使用,その効果を観察してきたが,症例を茲に一括し簡單に報告する.

肺結核手術における循環障碍—傾斜試験成績について

著者: 大出忠之

ページ範囲:P.559 - P.562

I.緒言
 患者の体位を変換した際に起る血圧,脈搏等の変化より,その循環の状態を知らんとする試みは古くから行われている(Hill,1895).臨床的に潜在性末梢循環障碍或はlatent shockといわれる状態の檢査に,この様な観点から,起立試驗(Bickenbach1))或は傾斜試驗(Shenkin2))が行われた.私は肺結核手術が患者の循環に及ぼす影響を檢討する目的とGreen and Metheny3)の行つた傾斜試驗を,術直後の患者にも容易に実施し得る如く改変しその74例に用い,実際臨床上に應用して患者の治療上の有力なる根拠を與うるものなるを認めたので,その結果を報告する次第である.

脊髄損傷麻痺膀胱感染の治療

著者: 永井隆

ページ範囲:P.563 - P.565

いとぐち
 衆知の如く脊髄損傷に於いて膀胱感染は好発する合併後遺症の1つで,或は再然し或は上部尿路炎に発展して遂には患者に死の轉帰を取らしめるものである.著者の研究に拠れば91例中74例81.32%に膀胱感染を証明し然もその感染は極めて重度であり且執拗である.更に尿路感染の消長と全身状態とは相併行するものであつて,実に膀胱感染こそ脊髄損傷患者の予後を決定する重要なる合併後遺症である.感染の重度且執拗である所以は全く麻痺に基因するものであるから,感染に対する麻痺の意義を認識して適切なる治療対策が講ぜられる必要がある.

整形外科的疾患に対するテブロンRの効果に就て

著者: 山本浩

ページ範囲:P.566 - P.572

1)緒言
 最近TEABに関する発表は相当に多くみられるが,吾人にとつては興味の深い腰痛に関してはその分類に少しく靴下掻痒の感があるので,今回はその背腰痛を中心にして試驗してみたものである.つまり背腰痛といわれる中にでも,例えば当科の昨年5月中の新患でみると,1,026人のうち背腰痛は137名もあり,その分類をしてみると第1表の如くであつて,神経痛と一般に記されているものもこの原病因を衝いていないものが相当に含まれていると考える.それで一般の背腰痛とか坐骨神経痛とかいう分類を少しく詳しく考えて,その本態に差のあるものに効力も何か異なつた点がみられるのではないかという考え方から出発したのである.

農村に於ける骨折

著者: 小林繁

ページ範囲:P.573 - P.575

 骨折の統計的観察に就いて古来より多数の文献を認めるが屡々其の間に大なる相違を見出すのは其の時代並に地産業等よりして当然なる事である.
 余は当教室に於て過去3年間の骨折患者の統計的観察よりして諸家の統計と著しく異れる結果殊に其の原因が農村に於ける骨折に依れるを認めた.

急性及び慢性廻腸末端炎の2例

著者: 奥島團四郞

ページ範囲:P.576 - P.579

緒言
 所謂Crohn氏病と云われるものは,現在廻腸末端炎,限局性廻腸炎,或は限局性腸炎等と呼ばれているが,之は1932年Crohn,Ginzburg,Oppenheimerが從来小腸の良性グラヌロームと云われていたものゝ中から一定の性状を有するもの14例をとり出し,始めて,terminalileitisと命名発表して以来多くの人々の注目を浴び,報告例もその数を増したが,我國に於ては外國の報告数に比較して少い様である.最前別子病院外科に於て,急性廻腸末端炎と,二次的に廻盲部摘出に成功した慢性廻腸末端炎の計2例を相衣いで経驗したので之を報告する次第である.

脊髄癆性関節症の1手術例

著者: 奧田浩三 ,   木下公吾

ページ範囲:P.579 - P.581

緒言
 脊髄癆性関節症は差程稀でなく,神経性関節疾患中,最も多き疾患であるが,是に手術的侵襲を加えた報告は尠く,而も成積概ね不良であつて,治癒遷延し,瘻孔形成を見る事が多いと云われている.
 余等は最近周桑病院に於て,その左膝関節症の例を経驗し,関節切除術に依りやゝ満足すべき成積を得たので茲に報告する.

大網膜畸形腫の1例

著者: 中根英夫 ,   萬谷嘉

ページ範囲:P.581 - P.582

 私達が日常腹腔外科で経験する疾病の中で大網膜原発性疾病は稀有なものゝ1つであるとされている.Heitz—lerが大綱膜はgood samaritenであると述べている様に他臓器の疾病に対しては保護的に働くが其自身が病的となる事は,比較的稀である.大網膜疾病中炎症性腫瘍軸捻轉,外傷等が主なもので眞の原発性の大網膜腫瘍は少い.更に腹腔内臓の関係が複雜な事,臨床上腫瘍とされるものが可成り多い事などは,術前の正確な診断を困難ならしめている.即ち術後に確診がつけられる事が極めて多い.
 Samonは1934年までの大網膜原発性は75例であると云う.本邦文献で私達の見た範囲では68例で其種別は肉腫,嚢腫,皮様嚢腫などで惡性腫瘍である畸形腫の報告は未だなされていない.

下肢動脈切除術に就て

著者: 白石淸秋

ページ範囲:P.582 - P.584

緒言
 外傷,動脈瘤,腫瘍,其の他の疾患に際し,主要血管を除去し,又は血管結紮を行わねばならぬ場合,末梢部に発生する壞疽の頻度,又は血液循環障碍により諸種の合併症の発すべきや否や,更に生命の危險に関する重大なる結果を招来することの有無は,手術に際し先ず考慮させらるゝ問題である.
 從つて壞疽の発生率の減少に対し予防対策を樹立し,並に之が発症の際治療法を如何にすべきやは臨床家にとつて甚だ重大なる事である.

岡山大学医学部第1外科教室に於ける死亡症例(1950年)の統計的観察

著者: 赤松雅彥 ,   永井宏一

ページ範囲:P.585 - P.589

第1章 緒言
 外科臨床に於て,各種疾患に対する新治驗例や一般統計は相次いで報告せられ枚挙に遑もないが,之に反して不幸死の轉帰を辿つた症例に関する統計的檢討をなせるものは,本邦に於ては深井,高山を初め東西を併せても僅に数人の報告を数えるに過ぎない.よつて私共は敢て吾岡山大学第1外科教室に於ける1950年の1年間死亡統計を試み,聊かなり共将来の臨床成績に益する所あらばと思い,茲に報告して諸彦の御批判を仰ぐ次第である.

Current American Surgery

ページ範囲:P.593 - P.594

ANNALS OF SURGERY
 Vol.134.No.3.September,1951.

集談会

ページ範囲:P.598 - P.599

第2回 西日本整形災害外科集談会
 (九州医学会第九分科会)
1.幅岡縣下身体障碍者巡廻相談の報告
     福岡済生会病院 香月正紀
        九大整形 和田博夫

外科と生理

その7

著者: 須田勇

ページ範囲:P.590 - P.592

4.肺循環
4:1循環系の一般原理
 原則1 循環系は閉鎖系で何処にも血液の停滯はない.系は左心→体循環→右心→肺循環→左心で一環をなし,一般臓器はこの環に対し左心と右心との間に並列に挿入されているが,肺はこれと異り環に対して直列に入つているから,肺循環の分時血流量は体循環のそれに等しい.從つて肺循環の変化は臓器循環の障害のみに止らず,循環系全体へ影響を及ぼすものである.
 原則2 血流速度iは平均動脈血圧Pmに比例する.その比例常数Rが末梢血管での血流に対する抵抗である.即ちPm=iR……(1)併し,血液の粘性を考慮すれば(1)はPm-P′=iRと補正を行う必要があるが,P′は正常血液成分では20mmHg程度で,P′=Oと見做しても(1)式は充分実用となる.又,Vsを博出量,Tを博動時間とすれば,i=Vs/Tであるから,毎秒博出量をVtとすれば,R=Pm/Vt……(2)で與えられる.尚,抵抗と血管の形態の間にはR=8μl/πr2……(3)(μ=粘度係数,l=長さ,r=内径なる関係が成立している.

最近の外国外科

胃組織内膵臓の診断学的形態,他

著者:

ページ範囲:P.595 - P.597

著者は3年間に観察した5例の胃組織内迷入膵臓に就て報告をしている.この5例中の2例は外科手術で発見され,他の3例は剖檢の際に偶然に発見されたものである。この病変は胃粘膜の僞性憩室の形態を取り,その粘膜層内によく分化した膵臓組織及び膵管様構造を以て存在するのが見られる.一般普通に見られる形態は粘膜の丘状隆起であるが,それは又直径1〜5mmの孔を有している.その孔は粘膜によつて連続的の円周状の或は舌状の突起を以て囲まれている.この開孔は小嚢或はポケット状の陥凹部に通じている.この僞憩室の深さは0.5〜1cmであつて,大約粘膜と粘膜下組織との境界線まで達している.この小嚢状形態物の下にある粘膜下組織中には膵臓組織が見出される.この様な胃粘膜の僞憩室には必ず膵臓組織が随伴している.この肉眼的形態所見は胃の迷入膵臓を認識する場合に非常に重要なことである.その理由はこれが屡々惡性腫瘍と誤認されて不必要な胃の大手術が施されることがあるからである.迷入膵臓は屡々一生涯を通じて何等の症状を起さずに存在し得るが,時としては幽門或は腸管の閉塞を起す場合もあり得る.又本来の膵臓を侵す凡ての疾患は矢張この膵臓組織を侵す可能性がある.(Surgery. 29:p. 170. Feb. 1951)

アメリカ便り

American College of Surgeons 第37回Congressに出席して

著者: 佐野圭司

ページ範囲:P.600 - P.601

 11月5日から9日までこのSanFranciscoでAmerican College ofSurgeonsの第37回のCongressがありました.日本の外科学会総会というところですが,このSurgeonsの意味はおよそメスをもつて治療する人といち程の意味で,したがって眼科も耳鼻科も産婦人科も整形外科も脳外科もすべて含まれています.詳しいプログラムは後便にてお送り致しますから御覽下さい.
 会長はH.W.Caveで次会会長はAlton Ochsnerです.

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「臨床外科」第6巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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