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文献詳細

雑誌文献

臨床外科6巻2号

1951年02月発行

文献概要

移植・成形・2

胸廓成形術に依り切除せられた肋骨の利用

著者: 黑木健夫1

所属機関: 1國立別府病院整形外科

ページ範囲:P.70 - P.72

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 一方の手術台にて苦心慘胆して腸骨或は脛骨から移植骨片を採取していると隣の手術台では胸廓成形術で次々,に肋骨が捨てられている.此の矛盾した行爲の同時に行われている本院の手術場で何とか此の肋骨が利用出来ないものかと考え,乏しい文献の中を満つて見たが未だ此の肋骨を利用した人はないようである.
 此の肋骨を利用するに当り先づ危惧せられる問題は重症肺結核患者の肋骨であるからその中に結核菌が存し,結核傳染の懸念がある事である.之を解決するものとして余の念頭に浮んだのは余が年来神中教授御指導のもとにやつて来た骨長径成長帶遊離移植の研究中に散見した煮沸骨移植である.云う迄もなく骨遊離移植は鉱物質と生きた細胞成分との移植であるが此の内,煮沸骨移植は鉱物質移植の目的を達し得るのではないかと考えるに至つたのである.Groves & Lond(1939)は造骨細胞や血管等の生きた要素は身体の生きた組織及び造骨組織からかり出されねばならないが鉱物質は如何なる他の骨例えば死んだ動物骨でもいゝ筈であると述べている.然し彼等も後で述べている如く自家移植,同種移植及び異種移植の間には大なる差のある事は既に幾多の報告の示す所である.亦Reynolds & Oliver(1950)の実驗的研究の結果が明確に示す通り,煮沸骨移植は決して自家骨移植に勝るものではないが後述の如く多数の著者が骨癒命に成功する事を記載しているのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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