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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻3号

1951年03月発行

雑誌目次

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虚脱肺への肋骨移植縫縮術

著者: 河村謙二 ,   杉山フカシ ,   東平介 ,   根本浩介

ページ範囲:P.101 - P.103

 この手術の目的は結核肺殊に空洞ある結核肺に対して現今行われている種々の手術法—胸廓成形術,肋膜外充填術,肺縫縮術等と同樣に空洞を圧縮,閉鎖せしめ,病竈を沈靜せしめて之が治癒を促進せんとして考えたものであつて,先づ結核病竈の結合織化を能動的に盛んならしめ,併せて從来行われている手術法による病肺に対する機械的作用,形態面からの治癒條件を兼ね満そうと云うのがその主眼点である.
 その根拠とする所は,その一部は本年の外科学会総会で述べた所であるが,主として東等の実驗の結果を基礎とするものである.

肺切除の実際

著者: 赤倉一郞

ページ範囲:P.104 - P.108

緒言
 肺切除は從来わが國では至難の手術と目され,嘗て関口教授,小沢教授等の少数例が報告されたに止つていた.その後わが國の胸部外科の進展とアメリカ医学の紹介と相俟つて最近その樣相を新らたにして肺切除が盛んに,殊に肺結核の外科に於て各方面で行われるようになつてきた.その成績も昔日の面目を一新した感があるが,それには胸部外科に於ける習熟と肺切除の手技の向上のほかに麻醉の進歩並にストレプトマイシン及びペニシリンの力に與るところが多い点を見逃せない.
 肺切除の適應症としては肺の惡性腫瘍及び良性腫瘍,肺嚢腫,気管支拡張症,肺結核が挙げられアメリカに於て肺結核よりも肺腫瘍と気管支拡張症がより多く肺切除の対象となつているようである.わが國では事情が異り,肺癌に対する早期診断が未だ不充分であり,気管支拡張症も肺切除の適應として登場すること少く現状は主に肺結核に対し肺切除が行われている.また文献や,話に聞くアメリカに於ける肺切除の実状はあらゆる点で現在われわれが行つている肺切除とはかなりの距りがある.

非結核性疾患に対する肺切除例

著者: 幕內精一 ,   島峰達二 ,   眞行寺敏彥 ,   靑木秀夫 ,   河野正賢 ,   菅良三

ページ範囲:P.109 - P.115

I.緒言
 余等は昭和23年以来今日迄38例の肺切除を実施し其内非結核性疾患に対する肺切除は第1表に示す如く7例である.
 肺結核に対して始められた肺切除が次第に一般肺疾患に対しても行われようとする機運にある今日,これに就いて2,3の知見を得たので茲に報告する.

両側開胸の臨床経驗

著者: 石川義信 ,   米沢利英 ,   鴇田尚彥

ページ範囲:P.116 - P.118

 鳥潟先生の平圧開胸説以来,日本に於ては,開胸に際して,通常平圧開胸を使用し,且つ日本の胸部外科は主として,肺を対称として来たので,陽圧の必要に迫られることが少く,從つて,両側開胸の臨床的経驗としての報告は少く,著者等の知れる範囲では,僅に,大沢1),が下部食道癌で,両側開胸を惹起した症例を報告しているが,之とても,平圧開胸のため,直ちに閉鎖している.然るに,外國では,古くはKüttner2)が,両側開胸のもとで,食道癌手術を実施してゐ,其の後,多くの両側開胸の報告があり,近時Sweet3)は,36例中13例の食道癌手術に,両側開胸の必要があつたと云うている.偏側開胸時は,通常平圧開胸でもよいが,両側開胸の場合には,陽圧装置なしでは,開胸は不可能である.一方,Finberg4)は,不知不識の間に,縱隔竇を破り,反対側の肺の萎縮を来した例を報告,Kergin5)は,一側開胸で,次第に動脈血酸素飽和度の減少を来す場合のあることを指摘し,之の防止に,陽圧を使用するとしている.吾々も通常平圧開胸で,食道癌の手術を,実施しているが,4例で,両側開胸の必要があり,陽圧により,手術を続行した例を経驗したので,其の術中の所見を述べ,陽圧の使用法について,檢討して見ようと思う.
 症例1.(第1表参照)予め左側気胸を実施,ナル,スコ前注射,右側臥位で 左胸腔に入る.左肺は,約小兒頭大に萎縮していた.

閉鎖式気管内麻醉の研究

著者: 林周一 ,   綿貫喆

ページ範囲:P.119 - P.121

1.緒言
 わが國では,胸部手術の際の麻醉は,局所麻醉が主として用いられているが,局麻の効果には自ら限界があり,疼痛や咳嗽反射を完全に消失せしめて,手術操作を安全容易にし,より大きな侵襲をも安心して加えられるようにする爲には,どうしても全身麻醉を改めて取上げて檢討してみる必要がある.更に又,最近の胸部外科の進歩は,その手術侵襲の拡大と共に,「ショック」予防の見地から,十分な酸素供給が要求され,同時に気管内加庄による呼吸の人工的調節を絶体に必要とするにいたつた.欧米では,これらの要求を満足する麻醉装置が既に古くから実用に供されており,麻醉藥の進歩とあいまつて,殆んど完璧の域に達しつゝある.所が本邦では,麻藥からみても,裝置からみても,麻醉の研究は極めて立ちおくれている.著者等は「麻醉の進歩なくして,胸部外科の進歩はあり得ない.」との年来の見解にもとづいて,約1年半前から,特に気管内麻醉の研究をつゞけているものであるが,こゝには先ずわれわれの試作した裝置とその使用法を簡單に紹介する.

結核性膿胸に対する肋膜剥皮術(Decortication)の経驗

著者: 道躰祐二郞

ページ範囲:P.122 - P.125

はしがき
 肋膜剥皮術は始めDelormeによつて陳旧性膿胸の治療に用いられたが,時に危險や手術後の合併症を伴うことがあり1920年の独逸外科学会に於てはSauerbruch教授等の反対する所となつた.米國に於ては1921年にGurdにより25例の陳旧性膿胸に対し本術式を行つた報告があり,其の後第二次大戦中は慢性の外傷性血胸と膿胸の治療に應用し1946年の米國胸部外科学会で其の成績が報告された.更にGurd1)等により結核性膿胸に対しても本術式が有効である事が始めて主張された.1948年の同学会では,結核性膿胸及び人工気胸によつて生じた膨張不能の肺に対する症例が相次いで報告討論され2,3,4),之等結核性疾患に対する本術式の價値は新に注目されるに至つた.
 私は結核性膿胸の手術を行うに当り偶々其の3例に肋膜剥皮術を試みたが,3例共に手術所見を異にし興昧ある点もあつたので,敢えて乏しい経驗を述べ御批判御教示を仰ぎ度いと思う.

肺結核手術に於ける循環障碍—出血の影響に就て

著者: 大出忠之

ページ範囲:P.126 - P.129

I.緒言
 肺結核手術に際しては一般に相当量の出血をまぬがれぬものとされ1),本手術の循環に及ぼす影響を論ずるに当り,出血量を無視しては,その原因を明かにすることは出来ない.
 本手術の出血の重要さは既にWhite and Buxton2)により示され林田等3)もそのショック状態に出血の演ずる役割の大なるを指摘した.茲に私は胸廓成形術を主要対照として本手術の出血が循環に及ぼす影響を檢討した.

膿胸134例の治療成績殊に剥皮術に就て

著者: 關口一雄 ,   杉內正信 ,   橫山克明

ページ範囲:P.130 - P.135

 膿胸の治療方針並に其治療成績に関しては古来多数の発表1-17)がある.膿胸殊に結核性膿胸に対する各術式の綜説的解読は既に諸家の5),8),13)に依り述べられているから茲には省略し,自驗例の檢討と二三術式殊に剥皮術の適應に就て述べる.
 結核性膿胸の定義に関しては,肋水中に結核菌ある場合を凡て結核性膿胸とする者4,結核菌のみで惹起された化膿性肋水ある場合或は他菌の二次感菌を伴う場合を然りとする者2),17)あり,一定しない.

肋膜外合成樹脂球充填術後急速に生じた鎖骨萎縮と腕神経叢麻痺の経驗

著者: 飯倉重常 ,   吉村衞

ページ範囲:P.136 - P.137

 肺結核症に対する外科的虚脱療法の一つとして,長石氏等によつて創められた肋膜外合成樹脂球充填術は,その多くの利点のため,短期間に広く各方面に普及した.しかし漸くその適應,手技,遠隔威績更に合併症に就て檢討されつゝある樣である.
 合成樹脂球は異物刺戟極めて軽微で,また耐久性に富むが,その硬さのため持続的圧迫によつて気管支瘻,化膿,空洞穿孔,その他の重症合併症を起す危險もあることが経驗されて来た.

アメリカに於ける制腐法の現況

著者: 濱光治

ページ範囲:P.138 - P.140

 生体の殺菌作用を高め或は細菌の発育阻止の目的で近年色々と研究の変遷があつた.即ちワクチン時代(1930〜1937),アゾ色素並びにズルフオンアミッド時代(1938〜1943)を経て将にペニシリン時代(1944〜1948)に入り今日では抗微生物剤として糸状菌,放射状菌其の他の微生物に産生する抗菌物質の偉大なる化学療法が風靡している.從つて外科的感染のみならず無菌手術に於ける化膿に対しても大いに貢献していることは周知のことで防腐外科の発達は実に顯著なものである.
 之れに対し制腐外科状ち無菌手術の基礎を作り不朽の功績を残したのは有名なShimmelbusch(1860〜1895)の努力に依るもので1892年蒸気滅菌器の発明より更にNeuber(1850〜1932),Landerer(1854〜1904)は蒸沸消毒を発表し手術用器械器具,ガーゼ,手術衣,手術蔽布等すべての手術材料の滅菌消毒により今日制腐外科の確立を見たのである.私ほアメリカの制腐法に関し2,3の見学し得た注目事項について敢えてこゝに報告し外科医諸家の一暼に値すれば幸いとする.

集会

ページ範囲:P.147 - P.148

第494回東京外科集談会 昭和26.1.19
 1)内臓逆轉症虫垂炎
         國際親善病院 東 都  宏
 28歳 男子 右下腹部疼痛,マ氏点圧痛,右側腹壁緊張等の定型的急性虫垂炎症状に対し右下腹部切開を行ったが内臓逆轉症にて虫垂は左側にあった.丈献的考察を行った.

外科進歩の跡・2

産婦人科手術の回顧

著者: 白木正博

ページ範囲:P.141 - P.142

 ○まえがき 筆者が東大医学部産婦人科学教室に入局したのは明治45年の1月であるから今から約40年の昔である.当時教室に於ける婦人科的手術は大小を問わず教授,助教授,高々講師,医局長等の独占物であつて,平医局員は麻醉乃至介助者としてのみ,精々赴任直前の短時日間だけ簡單なもの,例えば掻爬,アレキサンダー,卵巣剔出,奇蹟的に筋腫,子宮剔出術が申訳的,恩惠的に許された程度で,子宮癌剔出術の如き谷間の百合で手が届かなかつた.ためにこの方面に対する研究意欲は極めて低調であつたが,取りわけ筆者はレントゲン深部治療法を專攻していたのでなお更であつた.過去40年間の前半は我医学界も自他ともに許し得る長足の進歩をしたが,わが手術方面では以下述べるように麻醉,前後処置等には相当な躍進を見せているが,最も大切な手術々式については子宮癌剔出術式につきウェルトハイム術式の改良式につきわが学界と賑わしたのみ,その他の手術については二,三の小さな改良工夫は発表されているが根幹は欧米の模倣範囲を脱しておらず,殊に境界に属する泌尿器系,消化器系特に乳腺に関する術式が殆ど考究されておらぬことは申訳ないことであつたと今更ながら自責している.まえがきはこれ位にして以下麻醉,手術々式及び主要前後処置等につき既往を回顧しつゝ愚見を簡記することゝする.

今月の小外科・12

急性化膿性淋巴腺炎

著者: 高田善

ページ範囲:P.143 - P.144

 急性化膿性淋巴腺炎はわれわれ外科領域にたづさわるものゝ日常最も多く取扱う疾患の一つであつて,今さらこゝに更めて取上げるほどのこともないように思われるのであるが,前々から編集者からの依頼もありまた日頃多くの患者に接して時に考えさせられることもないわけではないのであえてペンを取ることにした.なおこの疾患は單純性淋巴腺炎に引続いて起るものであり,また漿液性蜂窠織炎性淋巴腺炎の形をとることもあるからこれらについても併せて述べることにする.
 周知のように,淋巴腺はその支配下にある根源領域から絶えず組織液たるリンパを受入れると共に輪出管を通じてそれを更に上位の淋巴腺に或いは血管に送るのであるが,その間喰細胞や抗体の作用によつてリンパ中の細菌や毒素を濾過してそれらを無毒ならしめるか或いは毒力を減弱せしめる作用がある,いわば生体防衞器官の一つである.從つてその根源領域の炎症竈から細菌や毒素の侵襲を受ける場合があつでも淋巴腺の生体防衞作用によつて実際には臨床症状を起さないか或いは炎症を起しても原発した炎症竈に適当な処置を加えれば淋巴腺の炎症も自然に消退する程度のことが多い.しかし原発竈が適当に治療せられない時は急性單純性淋巴腺炎を起して,局所に腫大した淋巴腺を触れ,彈力性硬で圧痛があり時に自発痛又は運動痛がある.淋巴腺周囲炎はないから皮膚,下床共に癒着なくよく移動する.時に輸入淋巴管炎を件うことがある.

外科と生化学

その2

著者: 吉川春壽

ページ範囲:P.145 - P.145

 外科でしばしば遭遇し,生化学的にいろいろの問題を提供するのは,前回に述べたように,ショックであろう.外傷によるショック,火傷によるショック,大手術後のショック,といろいろの原因はあるが,ショックに共通の生化学的変化というものがあつて,之をよく理解することが,ショックの防止乃至治療に大きな助けになると思う.
 ショックの原発的な基本障碍として発現するのは靜脈血還流の量が激滅し,したがつて有効循環血液量が減ずるという現象であるが,それにともなって種々の生化学的変化がおこり,之が特異な臨床所見の根底をなしている.

米國外科

Current American Surgery

ページ範囲:P.146 - P.146

AMERICAN JOURNAL OF SURGERY
 Vol. 80. No. 3., Sept. 1950.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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