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外科進歩の跡・2
産婦人科手術の回顧
著者: 白木正博1
所属機関: 1元:東京大學婦人科
ページ範囲:P.141 - P.142
文献購入ページに移動 ○まえがき 筆者が東大医学部産婦人科学教室に入局したのは明治45年の1月であるから今から約40年の昔である.当時教室に於ける婦人科的手術は大小を問わず教授,助教授,高々講師,医局長等の独占物であつて,平医局員は麻醉乃至介助者としてのみ,精々赴任直前の短時日間だけ簡單なもの,例えば掻爬,アレキサンダー,卵巣剔出,奇蹟的に筋腫,子宮剔出術が申訳的,恩惠的に許された程度で,子宮癌剔出術の如き谷間の百合で手が届かなかつた.ためにこの方面に対する研究意欲は極めて低調であつたが,取りわけ筆者はレントゲン深部治療法を專攻していたのでなお更であつた.過去40年間の前半は我医学界も自他ともに許し得る長足の進歩をしたが,わが手術方面では以下述べるように麻醉,前後処置等には相当な躍進を見せているが,最も大切な手術々式については子宮癌剔出術式につきウェルトハイム術式の改良式につきわが学界と賑わしたのみ,その他の手術については二,三の小さな改良工夫は発表されているが根幹は欧米の模倣範囲を脱しておらず,殊に境界に属する泌尿器系,消化器系特に乳腺に関する術式が殆ど考究されておらぬことは申訳ないことであつたと今更ながら自責している.まえがきはこれ位にして以下麻醉,手術々式及び主要前後処置等につき既往を回顧しつゝ愚見を簡記することゝする.
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