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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻4号

1951年04月発行

雑誌目次

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ベネヂクト氏痙性小兒偏癱に対する一新療法

著者: 古森善五郞 ,   古森實 ,   立神高郞

ページ範囲:P.151 - P.152

緒言
 周知の如く小兒麻痺は之を脳性・脊髄性に二大別し,而してIbrahimは脳性小兒麻痺を更に分類して 1.主として錐体路の関與せるものとして.a.ベネヂクト氏痙性小兒偏癱 b.リットル氏痙性小兒截癱 2.主として錐体路系の関與するものとしてa.偏癱型 b.緊張減退性脳性小兒麻痺両側性錐体外路性小兒麻痺としたが此等両者は屡々混合型として現れるものであり錐体路性なりや錐体外路性なりやは主症状の相対的関係により決定する.即ち即に述べる二症例に於ても錐体路性刺戟症状を主とし乍らも一方錐体外路性症候として線状体症候に属すべきアテトーゼ樣運動及び脈管神経症--之は即ち自律神経中枢が線状体支配を受けている爲であるが--等の症状をも見遁す事は出来ない.茲に著者等はベネヂクト氏痙性小兒偏癱2例を経驗したので之等に対し脳脊髄液攪拌療法を施行したる所,著効を得たので茲に報告し江湖の御高判を仰がんとする次第である.

脊髄硬膜外注射療法—特に脊髄後根への刺戟作用に就て

著者: 河村謙二 ,   東平介

ページ範囲:P.153 - P.156

 脊髄硬膜外注射法は,麻醉珠としては硬膜外麻醉としてノボカインの注射が行われ,療法としては,カテラン注射(Cathelin.1907)として仙骨裂孔からの食塩水注射法が,既に古くから用いられている.殊に麻醉法としてはPages(1920),Dogliotti(1933),Harger(1941),Läwen(1943)等によりhohe epidurale Anästhesieとして唱導せられ,稍々大量のノボカイン液を任意脊髄々節高位に注入し断区的に支配下の麻醉を施し得るに至つた.然し,この硬膜外麻醉法を普通の腰髄麻醉と比較すると,血圧の下降を来すことが少いと云うことの他は何等特別な利点がなく簡便,確実な腰髄麻醉によつて手術の目的に應じて略々満足すべき麻醉を施す事が出来るので,現今多くの人は專ら腰髄麻醉を用いる結果硬膜外麻醉法は之を用いる人が尠い.
 然し硬膜外注射法はその後,神経痛,殊に坐骨神経痛,腰痛に対して食塩水,ノボカイン等の注入により良好な治療成績を挙げ得る事が瞭にされた.

手術患者の新陳代謝の研究—胃切除後の水分代謝,特に二重ゴム管使用時の血液性状の変動

著者: 濱口榮祐 ,   長洲光太郞 ,   加藤大助 ,   源明日出夫 ,   木村信良

ページ範囲:P.157 - P.160

 A.序 從来胃手術患者の食餌表は,総熱量,栄養素,水分量,何れの点からみても甚しく不満足なものであつた,吾々はMelchiorや,有光氏の「外科手術後療法」を参考にして,食餌表を作り,それを基準として各症例に於て多少斟酌していた.その食餌表に就てカロリーを計算すると,手術後1週間で合計2,400カロリー位となる1).これは僅かに1日分の所要カロリーに過ぎない.
 手術後の恢復に極めて大切なこの時期に攝取食物の総カロリーが,斯くも不足しているのに誰しも驚きと,不安とを感じていたことであろう.そればかりでなく,蛋白質と,脂肪の不足も亦甚しいものであつた.たとえ,非経口的に,葡萄糖液やリンゲル液を與えても,栄養の点では到底満足は得られなかつた.

放射性燐(P32)による循環血液量測定の研究(第1報)

著者: 澁澤喜守雄 ,   折茂英吉 ,   小出來一博

ページ範囲:P.161 - P.164

 エバンス青による循環血液量測定の経驗に就て,我々1)は既に発表する所があつた.今回は昭和25年7月米國から輪入せられた放射性燐P32による循環血液量測定の若干の経驗を報告して,大方の御教示を仰ぎたいと思う.
 今回教室に配分せられたP32の量は1mc(ミリキューリ)で,本研究にはそのうち0.6mc(600μc)を用いた.

三度の手術に依り確めたる頸椎骨性「メニンギオーマ」の1例

著者: 久保義信

ページ範囲:P.165 - P.168

緒語
 Gushing(1975)の命名した,「メニンギオーマ」の症例報告は,主として,脳髄に発生したもので,欧米に於ては,その例甚だ多きものとされているが,脊髄に発生したものは,遙かに少数で,吾國に於ては,私の渉獵文献の範囲では,僅々2例であり,近類例として,砂瘤腫2例があるのみである.
 「メニンギーオマ」が,瀰蔓性骨増生に依つて,しばしば頭蓋骨の膨隆を来し,成骨性「メニンギオーマ」(Osteoblastic Meningioma)として,Bailey及びBucyに依つて,明かにされているが,Rogers(1928)も又,脊髄「メニンギオーマ」に於ける,成骨性「メニンギオーマ」の脊椎骨への進展を述べている.

バセドウ氏病の嘔吐に関する「レ」線学的観察

著者: 伊藤尹 ,   山中太郞

ページ範囲:P.169 - P.170

 バ氏病は自律神経系の失調状態が最も顯著に現わるゝ疾病の代表的のものであろう.バ氏病に於ける胃腸症状として周知のことは,異常の食慾亢進による多食並に頻餓感,便通回数の頻数,腹鳴等で,又蠕動亢進による胃痛,蠕動不安感等に屡々と見らるゝ所で,更に甲状腺中毒症状め顯著なるもめでは嘔吐,下痢歯等に伴う頻渇等であるが,それ等の症状は副交感神経の刺戟に関するか或いは基礎新陳代謝の亢進にあると説明されている.
 從来バ氏病に於ける胃腸症状のレ線学的研究は余り見られない,山中は專門的立場から是に多大の興味を寄せ,その研究を試みつゝあるが,偶々嘔気,嘔吐を主要症状とする1例に於て,從来考えられなかつた特異の像を得たので,茲にその一考察を報告して諸家の御批判を乞う次第である.

創傷治癒に関する組織学的研究 —第3報 肉芽組織に於ける血管新生

著者: 日下邦夫

ページ範囲:P.171 - P.173

緒論
 余1),2)は第1及び第2報に於いて,創傷治癒に際しての肉芽組織り形成,換言すれば創の器質化は血液原假性エオヂン嗜好白血球(以下假エ白血球と略称する)から分化した纖維芽細胞の増殖によつて行われることを実驗したが,本報に於いては前2報で予報した血管新生の機序に就いて詳細に論じ度いと思う.
 肉芽組織の血管新生に関しては,Meyer3)に端を発しMarchand4)に到つて完成した既存血管からの芽生説がそれ以前に存在した局所発生説を圧倒して学会の定説となつていることは周知の通りである.然るに最近,本解剖学教室に於いて山崎又び協同研究者11)−17)により血管の局所発生が取上げられ,佐々木18)の研究も略々同一の方向を示しているが,余は創傷肉芽組織に於ける血管新生を中心として,こゝに詳細な檢討を行い度い.

高位脊髄硬膜外麻痺法について

著者: 星川信 ,   彥坂興忠

ページ範囲:P.174 - P.176

緒言
 麻痺藥を脊髄硬膜外腔に注入して無痛の目的を達しようとした最初の試みはCathelinに始まりStöckelの無痛分娩に対する應用があり,Läwenに至つて仙骨麻痺法が始めて外科手術に使用された.Schlimpertは臍高位迄の手術に本麻痺法を用いたが,実驗的臨床的に高位脊髄硬膜外麻痺法を完成したのはDogliotti(1930)であつて,以来欧州南米等においてはひろくこの方法が行われている.
 肺結核を初め胸部外科の進歩に伴ない胸部に対する手術が増加してきた今日,Dogliottiによつて完成され高髄脊位硬膜外麻痺法として発表された無痛法がわが國ではあまり普及されておらないように思われるので,少数例ではあるがわれわれが追試應用した胸部手術及び二三腹部手術とくに胸部手術における本麻痺法の満足すべき結果についてこゝに報告したいと思う.

末梢神経損傷の臨床経驗

著者: 羽田野茂

ページ範囲:P.177 - P.182

 著者は日支事変に際し臨時東京第一陸軍病院に於て故中村愛助氏の下に主として末梢神経損傷患者の治療を担任し,6ヵ年間に亘り3000余例の末梢神経手術に從事した.この間及び其の後に経驗調査し得た事の二,三事項に就て少しく記載し樣とするものであるが多少でも御参考になれば幸である.

圧搾空気ポンプ風圧による下顎骨々折の一例

著者: 蒲原宏

ページ範囲:P.183 - P.184

 下顎骨々折は,平時に於ては比較的頻度が少い。教室の小林氏による昭和21年より昭和23年迄の3ヵ年間の集計では骨折患者393例中5例1.2%にあたるにすぎぬ.
 本邦諸氏の報告によつても名倉氏0.3%から伊藤氏の夕張炭鉱における1.6%の頻度である.最近興味ある機轉により発生した下顎骨々折を得たので報告する.

集会

ページ範囲:P.189 - P.189

 495回 東京外科集談会 96.2.16.
 1)縱隔竇膿瘍の一治驗例
          立川中央病院 沼田公雄・他
 7歳男子 原発巣と考えらるゝものなき原発性の前縱隔竇膿瘍に対してHacker氏法により切開排膿を行える治驗例を述ぶ.

第51回日本外科学会総会

ページ範囲:P.190 - P.194

第13回日本医学会第24分科
 会期 昭和26年4月1,2,3日
 會場 東京大學法文經25番教室
 第1日(4月2日)(月)午前8時30分
 開会の辞 会長 前田 和三郞
1.慢性化膿性骨髄炎に対する同種保存骨移植療法に就いて(7分) 國立世田谷病院 木村 孝糖

第24回日本整形外科学会総会次第

ページ範囲:P.194 - P.197

(第13回日本医学会総会第25分科会)
 会期 昭却26年4月2日,3日,4日
 会場 東京都台東區上野公園内 國立博物館講堂
第1日(4月2日 月曜日)午前8時
開会の辞 會長 三木 威勇治
演  説
1.正規足を有する健康者の歩行時足圧痕について(10分) 東大整形 中村 季秋

今月の小外科・13

痔核と痔瘻の治療

著者: 工藤達之

ページ範囲:P.185 - P.186

 肛門の外科的疾患のなかには小外科の範囲に入れて取扱い得ない樣なものもあるが,工夫次第では可成りのところ迄外来的に処置が可能であり,又かなりよい成績を挙げることが出来る.然し外来的に取扱うためには,医師の目を離れた後に不測の事故の起らぬ樣に万全の考慮を拂つておかないととんだ失敗を演ずることゝなる.
 さて此処には從来から行れれている血栓性痔核の処置,肛囲膿瘍の切開,裂肛の小処置等の他に痔核の切除,痔瘻の切開迄を外来的に取扱うことゝし,著者の経驗を基として簡單に記して見る.

外科醫のノート

婦人科医より外科医への希望

著者: 秦淸三郞

ページ範囲:P.187 - P.187

外科というものを他科から眺めた場合,或は他科の醫者の意見や他科で行う手術等が外科醫にとつて大きな示唆を與うる場合があります.この欄はそう云う意味で新設しました.御寄稿を歡迎致します           (編集部)
 外科的診断及び治療の進行は目覚しい.それは甚だ結構な事で且つ嬉しい事ではあるが,外科医の中には好んで婦人科的疾患の手術をやる人や,又婦人科的疾患を外科的疾患と誤診をし無駄な手術を行う人も少なくない.婦人科專門医のおらない時は止むを得ないが,近所に或は病院内にいる時は一應相談をし診察をしてから行えば,より正確な診断と手術が出来,外科医,婦人医共に参考となり,又無駄な手術をせずにすむ事も稀でなく從つて患者には一層幸いである.婦人科專門医が若く診断が確実ではないからとて婦人科医の診察を省略してしまう事は妥当ではなく,忍耐強く協力してこそお互が進歩し,患者がより正しい治療を受ける事が出来ると思う.殊に妊娠の合併した場合,卵管炎の場合にその感が深い.
 今日まで,科が身近に経驗した印象的な症例を2,3記してみる事とする.

外科と生化学

その3

著者: 吉川春壽

ページ範囲:P.188 - P.188

 最近日本にも放射能をもつた同位元素が輪入されるようになつて,これを使う研究があちこちではじめられている.同位元素がどのように医学に應用されるかということはもはや多くの人は知つていることであろうが,こゝに念のため説明をしておころ.外科と生化学という表題とは少しそぐわないかも知れないが,外科領域での同位元素の應用例を一つ二つ記しておく.
 同位元素というのは元素の種類,たとえば水素,燐,沃度というものには変りはないが,原子の目方すなわち原子量がちがうものをいうので,天然の水素は原子量約1の普通の水素と,ごく微量の原子量約2の水素という2つの同位元素の混合物である.燐は天然のものは原子量31のものしかないが,人工的に原子量32の同位元素をつくり得るのであつて,このものはラヂウムやメゾトリウムのように放射能をもち,β線を出しながら他の元素へと轉換してゆく.この放射性燐は化学的には普通の燐と全く同じ性質をもつているから,放射性の燐がわれわれの体の中に入れば,普通の燐と全く同樣の行動をとり,骨の成分にもなるし,脳神経のリポイドにもなるし,尿中にも排泄される.しかも,これは放射能をもつているのであるから,放射能独立測定装置でそれがどこにどの位存在するかということを正しく知ることができる.つまり,体の中に入つた燐を放射能という目印をたよりにどこまでも追つてゆくことができる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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