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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻5号

1951年05月発行

雑誌目次

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ペントザール,ソヂアム及びアミタール,ソヂアムによる麻醉

著者: 澁澤喜守雄 ,   飯田文良 ,   黑田英男 ,   腰塚浩 ,   垣內直樹 ,   鍵谷德男 ,   穴澤雄作 ,   小谷彥藏

ページ範囲:P.199 - P.204

いとぐち
 アミタール,ソヂアムSodium iso-amyl ethyl bar—biturateは1929年Zerfas1)同年Lundy2)により,又ペントザール,ソヂアムSodium ethyl methyl butylthio-barbiturate, Thiopenthal,は1934年Lundy3)により靜脈麻醉に應用され,殊に後者は極めて優秀な麻醉剤として現今欧米で広く用いられている.周知のように靜脈麻醉に用いられるバルビタール誘導体は作用の上からheavyとlightの2群に分けられ前者に属するものはアミタール,ネムブタール等体内処理おそく主に基礎麻醉に用いられ,後者はエビパン,ペントザールなど体内処理極めて早い.殊にペントザールは種々の点でエビパンに較べ優れておるといわれ,又持続的分割注入法により1時間半位の手術にも應用されているらしい.本教室ではアミタールの邦製品イソミタール(日本新藥),ペントザールの邦製品ラボナール(田辺)を試用し,又ペントザールを中心として種々実驗的檢索を行つた.
 尚お,アミタールは日本新藥会社の好意により提供され,またペントザールは恩師福田教授の賛意をうけ,著者等の1人澁澤が東大藥学科菅沢教授に依頼し1年有半の後安定な純品を完成,次いで田辺製藥会社によりにじめて製品化されたものである.

Little氏病に対するSelig氏手術の効果

著者: 原勇 ,   中邑哲郞

ページ範囲:P.205 - P.207

緒言
 Little氏病は1861年Littleにより"On the influ—ence of abnormal parturition, difficult labours, prema—ture birth and asphixia neonatorum, on the mentaland physical condition of the child, especially inrelation to deformities."として36例報告された.此の内には今日のL.民病に属しないものも含まれていた.其の後Strümpell, Erb, Rupprecht, Naef, Feer Freund等によりその本態が明にされ,Lorenz, Förster, Stoffel,Selig等により手術々式が次々と発表された.
 我國では明治45年,田代教授がFörster氏手術例を報告し,続いて河林,木村,三宅,赤岩,泉,東氏等により手術報告がなされている.然し之等はFörster或いはStoffel氏手術例で,Selig氏手術は我々の調べた範囲では昭和15年竹林,秋山両氏による2例の報告のみである.

第51囘日本外科學医會總會傍聽記

著者: 小澤凱夫

ページ範囲:P.216 - P.217

 本年は第13回日本医学会総会の中の,第24分科会として開かれ,東京大学法文経25番教室を会場とし,会長前田和三郞教授司会の下に,4月2.3.4.日の3日間にわたつて開催された.
 4月1日,日本医学会総会開会にあたつては,天皇陛下の御臨幸を辱うし,文化國家再建の衝に当る医学者の大会合が錦上更に花を添え得たこと,誠に深い感銘を覺えざるをえない.

頸髄硬膜外腫瘍の1治驗例

著者: 水野種一 ,   上松茂雄

ページ範囲:P.218 - P.221

緒言
 1887Gowers & Horsley両氏に依り脊髄腫瘍治驗の1例が挙げられてから脊髄腫瘍の手術治驗例が増加し,日本に於ても昭和10年前田,岩原両氏に依る日本整形外科学会の宿題報告発表(65例)以来,可成,その手術報告例が増加した.著者等も最近頸髓硬膜外に発生した腫瘍の1例に椎弓截除術を施行し著しく軽快したので此処に追加報告し,且宿題報告以後昭和23年9月迄の期間の調査では,脊髄腫瘍の手術例は141例に達するので合せて2,3の統計を述べようと思う.

膝関節伸筋脱力患者に見られた内飜足状跛行並に之に装著した余の考案になる歩行補助器に就て

著者: 坂堂兵庫

ページ範囲:P.222 - P.224

 余は戰時中臨時大津陸軍病院に召集せられ軍医として勤務中人工補装々置の研究をし,先に軍医團雜誌(第339号)にそれに関する論文を掲載したが,やはりその勤務中に膝関節伸筋に脱力を貽した戰傷者が何とかして歩行しようと苦心努力した挙句内飜足跛行をする樣になつたと思われる者に余の考案した膝関節部撥條付補助器を裝著することで,跛行を著しく矯正することが出来た経驗があつて,興味を覚えているので,茲に其の症例の大略を述べ,聊か考察を試みて置こうと思う.

急性膵臟壞死16例に就て

著者: 加藤五郞

ページ範囲:P.225 - P.228

緒言
 急性脾臟壞死なる疾患は現今左程稀有なる疾患ではなく,本邦に於てもその研究は詳細に互り報告されているが.尚お我々は現在この疾患に遭遇する機会は少いのみならず爾余の急性腹部炎症性疾患との鑑別診断は屡々困難で,一般には術後に至つて始めてその診断を確定する場合が多い.術前に於て凡そ如何なる程度に本疾患の確実なる診断を爲し得るものなるかを諸家の報告に依つて参照するに,外國に於ては55%,本邦に於ては70%に過ぎない状態である.又その治療方針に関しては之を保存的療法に待つか,或は手術的療法に依るかは論議せられる処であつて現在尚ほ甲論乙駁の状態である.
 余は佐世保共済病院外科に於て終戰後より昭和23年5月迄の比較的短期間に本症例の16例に遭遇する機会を得たので,その概要を報告し諸賢の御教示を得たいと思うのである.

多発性進行性皮膚壞疽

著者: 天野尹 ,   嵯峨龜太郞

ページ範囲:P.229 - P.230

 癤から進行性皮膚壞疽が発生して,その患者にTuberculin皮内反應を行つたところ,そこからも進行性皮膚壞疽が起つた例の報告である.

アメリカに於ける2,3の外科臨床(其の3)

著者: 濱光治

ページ範囲:P.231 - P.233

4)腹部内臟外科
 腹部内臟外科領域に於て特別に記載すべく新しい分野は尠いようである.最も注目さるべきは内臟各部癌腫の根治手術であろう.就中最近アメリカで進歩したと思われる代表的な膵臟癌の外科的療法に就いて摘録し内臟外科見学の責とする.

いわゆる頸動脈毬摘出術の慢性多発性関節ロイマチスに対する治療成績—(附)頸動脈毬摘出による月経障碍の治驗例

著者: 森田信

ページ範囲:P.234 - P.235

 われわれは昭和21年12月以来,慢性多発性関節ロイマチスに対して頸動脈毬摘出術を追試してきたのであるが,現在までに術後1年を経過せる症例は18例である.したがつてまだ決定的のことは申されないが,大体の見当はついたものと考えるので,こゝに一應の成績を発表する次第である.結論からいうと,この手術が提唱されているほどしばしば有効であるとは申されないが驚くべき著効を得ることがあるのは確かである.なおわれわれは,ロイマチンに著効を得ると同時に,この数年間殆んどなかつた月経が手術に引続いて始まり,以来極めて順調となつた1例を経驗した.いわゆる頸動脈毬摘出術に関する報告は枚挙にいとまないほどであるが,今日までかゝる事実の報告には一度も接し得ないようである.いまにわかに,これを解明することはできないが,この事実から,ロイマチスに対するこの手術の作用機序を解くヒントが得られるかもしれない.

頸動脈毬摘出後の偶発症例3例に就て

著者: 開誠

ページ範囲:P.236 - P.237

緒言
 気管枝喘息,特発性脱疽,レノー氏病,其の他の種々の植物神経系統失調疾患等に対し頸動脈毬及び該附近部に手術的操作が加えられる樣になつて以来諸家に依り多数の手術例が報告せられる樣になつた.而して時に頸動脈毬状並びに其の附近操作後に起つた偶発症例の報告に接する事がある.柳教授も診断と治療誌上(36卷,11号昭23)に,中山教授は現今迄1000例以上の頸動脈毬摘出を行い,1例の死亡例もないと云われるに反し,近時本手術による死亡例を散見するのは一考を要する問題であると述べているが,頸動脈毬並びに洞神経手術理論の解説に猶不充分の点のある今日,余は期かる偶発症例に就て考察する事も亦頸動脈毬外科の進歩のために必要な事ではないかと考え,偶々本手術後の偶発症例3例を経驗したので,之を敢て報告し識者の御参考に供する次第である.

慢性鎖骨々髄炎に於ける鎖骨全剔出一期治癒の1例

著者: 渡邊龍五 ,   外田六郞

ページ範囲:P.238 - P.238

 我々は四肢の慢性骨髄炎の数例に対し,腐骨除去及び病的肉芽を掻爬し創面を期に縫合する事に限り,その一期治療に成功しているが,最近,骨髄炎の中でも稀有と称せられる鎖骨の慢性骨髄炎に際し,その全剔出を行いその一期治癒に成功したので,その大略を報告する.

集会

ページ範囲:P.245 - P.245

第194回整形外科集談会東京地方会
               昭和26.2.24
 1)先天性股関節腕臼を伴つた脊椎畸型の1例
          日本医犬整形 守川 勝
 17歳女子,頭部運動制限,頸椎の癒合頸椎々弓披裂,胸廓上昇,円背,胸腰椎全般に畸形,(胸腰椎に半椎楔状推多数)を有し且先天股脱を伴つたKlippeFei1症候群に稍々類似しているが,以上の諸点に相違のある1例.

座談會 宿題報告のすぐあとで・1

1.電撃症を中心に

著者: 島田信勝 ,   工藤s達之 ,   森文雄 ,   荒木千里 ,   中谷隼男 ,   齊藤淏

ページ範囲:P.208 - P.210

 中谷 お疲れでしよう.今日の宿題報告はいつごろからお始めですか.
 島田 後できいたことですが,そもそもの起りは森博土が関東配電病院にゆかれた時から茂木先生に云われていたとのことですね.

2.食道外科を中心に

著者: 中山恒明 ,   島田信勝 ,   齊藤淏

ページ範囲:P.211 - P.215

 島田 今日は不断から顔を合わせている惡童と思つていろいろ伺いますから,そのつもりで何でも腹藏なく話していただきます.僕はね,昨日の宿題報告を聽いて非常に感心させられたことはね,—感心より痛感したことはね,これは仕事の上で非常に苦労してやられたことは勿論だけれども,あの発表の方法が今迄の中山流とは非常に変つていると思つたんだよ.僕は一言にしてゆうと可成り愼重という言葉か適当かね,そんな感じです.特に感じたのは死亡例を出されたことで,あれは非常に聽衆の感銘を深めたと思うんです.あゝゆうことについては僕達も相当感じていることがあるんです.おそらくこれから数を沢山重ねられたらいろいろとあゝゆう死亡例が出ると思うんですがね,あゝゆうことはかえつて詳しく話してもらつた方がわれわれに非常にためになると思う.まあ,そうゆう点で僕は今迄の中山流とは非常に変つていると,こう思うんだ.
 齊藤 だけれども医局員をやつつけたとゆう点は少しも変つていないように思うんだ.(笑声)

今月の小外科・14

粉癌,皮樣嚢腫等に対する『ラーピス』療法

著者: 中谷隼男

ページ範囲:P.239 - P.239

 アテローム,デルモイドは外科臨床に於て日常屡々みるものである.頭部,顔面のものは美容上殊に面白くない.のみならず一と度炎症を起して腫脹,発赤,疼痛を起せば厄介であり切開を行つて排膿しても一度は急性症状が去るが早晩再発を起すものである.殊に背部の粉瘤は炎症を起し易い.斯る嚢腫が單なる切開や内容の一時的排除で治癒し難いことは周知の如く当然のことであつて,裂嚢が残れる限りそれより分泌が起るためであるから被嚢の除去を行わねば根治は起らぬとされる訳である。然し手術的に摘出を行うに当つては腫瘤の辺縁を越える可成り長い皮切を必要とし粉瘤であれば紡錘状皮切を以て皮膚の一部と共に腫留を摘出することになる.一次的治癒を期待出来る場合は線状の瘢痕であるが顔面殊に妙齢の女子等ではそれさえも余り好ましくない.炎症を起せる場合は摘出手術は常識上出来ない.敢て行えば化膿,哆開,二次的治癒となり瘢痕は目立つ.
 ここに述べる「ラーピス」療法は外面に殆ど瘢痕という程のものを残さない小切開で被嚢の自然排除を図つて根治せしめ他方炎症の有無に関らず行い得る利点がある.即ち可及的小切開も加えて其の内容を軽く圧出し,其の腔に「ラーピス」即ち硝酸銀棒ら挫碎小片をおし込むことにより,内面より被嚢の腐蝕,壞死が起り同時に其の外側に細胞浸潤が起つて薄い肉芽層が形成され被嚢との間が弛緩して容易に除去し得るに至る.

外科と生理

その1

著者: 須田勇

ページ範囲:P.240 - P.240

呼吸の生理
 「外科と生理」という表題は「外科領域でよく出あう状態を生理学から説明するのでもなく,まして「外科医に必要な生理学の知識を與えようと」いう不遜な考えでもないと,私は理解する.生体の機能を実証的に体系ずけるという点では両者は共通でなければならない.たゞ「外科」の立場では主題が「疾病」に強制され易く,「生理」の立場では「最も取扱い易い実驗條件」でことが運ばれるという違いはある.從つて,原理の把握,具体の提出という同じ目的を達するのに,実驗の困難は前者に多いと考えられている.併し,実際の困難というより,「疾病」が極めて巧みに行われた精緻な自然の実驗系列であるために観察が困難であり,ともすると主系列から離れ,更に困つたことには,反應の記載,説明に終り,実証性を欠き易いことである.そこから独創と独断の混乱を招き,惡い意味での「臨床生理学」が生れる危險がある.
 「臨床だからこれ位でよい」という言訳を設備の面からも考えの上からも,先ず,捨てねばならぬ.臨床であり,限られた條件下であれば測定も取扱いも多岐に亘り,優れた裝備と熟練を要し,「これ位でよい」という科学はどこにも存在しない.「それは自分の專門でないから…」という基礎側の逃げ口上も決して謙讓から出た言葉ではない.これは博識が学問であると考え違いをしている者の不遜な遁辞である.現在までの知見を原理的に把握し,その原理から條飾された臨床像を先ず解析する.

米國外科

Current American Surgery

ページ範囲:P.241 - P.242

SURGERY
 Vol.28.No.2.,Aug.1950.

最近の外国外科

胸腺剔出術,他

著者: ,  

ページ範囲:P.243 - P.244

 著者たちは重症筋無力症の3例即ち26歳の女子,24歳の女子及び18歳の男女を胸腺剔出によつて治療した.著者たちは手術前にNeostigmin及びAtropinで治療することの重要性を強調している.胸腺剔出のため,胸腺に到達する経路としては胸骨を第二肋間の高さで横に骨を切断して入つている.これによつて胸腺の露出が十分出来且つ胸膜腔を開放するのを避け得られる.手術操作としては困難ではない.その予後も良好である.前記2名の女子は術後,それぞれ6ヵ月及び3ヵ月追求調査されたが,両人共に一般状態は佳良であつた.体重も第一の患者は15キログラム,第二の患者は6キログラム増加した.第三の男子患者は最近手術されたばかりであつた.しかし手術後10日目に病状が既に可成改善していた.
 要するに,或る症例では手術直後から満足すべき結果が得られたが,他の症例では術後相当長い期間後,しかもその期間中にNeostigminの投與を継続し且つ量を漸次減量しながら,やつと軽快する場合もあることを認めた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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