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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻7号

1951年07月発行

雑誌目次

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胃癌の血清学的診断法の創案

著者: 友田正信 ,   池口正巳 ,   犬塚貞光 ,   滝原哲一 ,   辻秀男 ,   芥川光男

ページ範囲:P.297 - P.300

1)緒言
 友田は曩に脾性中毒症(友田)患者に於て,脾靜脈から未梢血に達している本症に特異的な催貧血性因子の存在を明かにする爲に患者血清を家兎に注射して貧血の出現を檢査し,本症の早期診断法を確立せしめ得た所であるが,之にヒントを得,同じ樣な考えを胃癌の場合に及ぼして独自の着想を得,教室員と共に研究を続けて胃癌の血清学的診断法に就て極めて優秀な成績を收め得る新しい方法を創案したので茲に其の大要を報告する次第である.
 而して本診断法の要点は胃癌組織に対する免疫血清と,被檢者の胃液との間に於ける沈降反應にあり,抗原並に抗血清から類似反應惹起因子を成る可く除去している点にある.

手術とシヨック

著者: 澁澤喜守雄

ページ範囲:P.301 - P.309

1
 ショックという状態は,外科侵襲に対して"無防備"か,あるいは,十分に"適應しえない"病態とも考えられる(Selye)1).個体のこうした"防備"のうすいような事情を,ふつう,ショック準備状態とよんでいる.外科臨床でとりあつかわれるシヨック準備状態では,血液または血液成分の欠乏が最もふつうである.
 全血液または何れかの血液成分の欠乏は,同じ体成分の欠乏によることはいうまでもないが,まさに,シヨック準備状態であるばかりでなく,その欠乏が高度になれば,それ自体,すでにショックまたはショック樣の状態である.全血液の欠乏はすなわち一義的なショック性の過程であり,血液の何れかひとつ,または数個の成分の欠乏は,それぞれ個有の臨床症状を以て修飾されはしても,循環病態生理からいつて,ショックに近いのであろう.たとえば血清カルシウムの欠乏,ビタミンB1の欠乏,糖の欠乏など,いずれもそれぞれ著明な特異の臨床所見を呈し,それによつて蔽われてはいるが,末梢循環にはショック樣の障碍がみられるのである.最近とくに注目を浴びているカリウムの欠乏も,つぎの症例のように,あきらかにショック準備状態,あるいはショック性の循環障碍を示すのである.

グロームス腫瘍について

著者: 吉田信夫 ,   柴拓

ページ範囲:P.310 - P.312

1.意義
 良性腫瘍の手術適應は色々挙げられているが,それ自体疼痛という主訴を持つならば,最も良き手術対照である.これから述べんとするグロームス腫瘍はこの意味で外科的にも興味ある疾患である.一体グロームスとは,顯微鏡下に認められる微小の動靜脈吻合で,手足の爪床,指趾末端部皮下等に存し,形態学的にも機能的にも特殊なものと解されている..第1図の示す如く,皮下に於て終末動脈が毛細管に移行する前で,細い動脈を出し枝吻合血管を形成し靜脈に移行して行く.この血管は一層の内被層があり,その中膜層に相当する厚い所にばグロームス細胞があり,更にその外周には豊富な神経網が糸卷のように取卷いている.グロームス細胞ば平滑筋細胞の変態したものであるといわれるが,神経の作用と協調して恰も心臟の樣に内腔を挾くしたり広くしたりして,血流及び体温調節作用に與るものとされている.

轉移性甲状腺腫について

著者: 斎藤純夫

ページ範囲:P.313 - P.317

 甲状腺の上皮性腫瘍中には,局所的にも組織学的にも,何等惡性腫瘍の所見がなく,しかも血行性に甲状腺の組織像を呈する轉移を殊に骨に形成するものがある.その本態に関しては,Cohnheim1)以来種々論議されて,Metastasierende Kolloidstruma(Langhans)2)3),Strumacolloides maligna(TH. Kocher)4),maligne Adenom,Struma colloides maligna(Aschoff)5),metastasierende Gallert-kröpfe等の名称があたえられている.我國に於ては古く住田氏29)(佐藤外科),金森氏21)の報告があり今日迄17例の症例があるが,最近我々は,前額骨,頭頂骨,肋骨,及び腰椎に轉移を惹起した1例を経驗したのでここに報告し,文献的考察をなす次第である.

バセドウ氏病に対する頸動脈毬剔出術に就て

著者: 末岡千秋

ページ範囲:P.318 - P.319

緒言
 昭和17年11月瀬尾・中山教授により「頸動脈毬の外科」が提唱されてより6ヵ年を経過し,其の間各方面より多数の追試成績,基礎的業蹟が発表せられ,其の全貌が明らかにされつつあるのは欣快に堪えない,私も昭和18年9月以降僅少乍ら気管支喘息11例,特発性脱疽2例,レイノー氏病2例,眞性癩癇2例,ハイネメヂン氏病1例,バセドウ氏病4例計22例の自家例を得,最近は当教室にて多数の喘息患者に接しつつあるが,特にバセドウ氏病に就ては,昭和19年9月桐原外科在局中偶々中西助教授の御指導に依り,本病の甲状腺腫欠如例の治療に本手術を著想して著効を認めた症例を,同年11月名古屋外科集談会で発表し,併せて本病に対する應用を示唆した.其の後地方の病院勤務中軽症2例,当教室にて重症1例を経驗する機会を得たので,茲に自家症例を報告して聊か考按を試みたいと思う.

食道下部及び胃噴門部に分布する動脈管系就中左下横隔膜動脈の外科的意義

著者: 土屋定敏

ページ範囲:P.320 - P.324

緒論
 人胃の全剔手術が1884年初めてConnerに依つて行われて以来,同法は内外の外科学者から試みられているが,胃全剔手術の危險性が従来兎角過大に評價され,爲に開腹時明らかに胃全剔手術が適應すると考えられる症例に於てすらも,胃亞全剔手術に止められておく傾向にあつた.
 然し乍ら輓近の医学進歩,特に手術手技の向上に伴いて,胃全剔手術の直接成績は次第に良好となりつゝある.我が教室に於ても,胃全剔手術に関し友田教授は優秀な直接並に遠隔成績を收め,特に胃全剔手術の適應範囲拡大が友田教授に依り強く提唱されている状況である.

軟骨性関節遊離体に就いて

著者: 岩崎高介

ページ範囲:P.325 - P.326

緒言
 最近膝及び肘の軟骨性関節遊離体の症例に遭遇したので,その概要を報告する次第である.

胆嚢の二重形成に就て

著者: 森渉

ページ範囲:P.327 - P.328

 胆嚢の先天的畸型たる二重形成は稀なものであり,是に関する報告はBlasius(1674)が最初で以来その報告は僅に60例にすぎない.最近私は手術時偶然胆嚢炎を合併した,胆嚢二重形成の一型たる重複胆嚢の症例を経驗したので茲に報告する次第である.

右腎臟を随伴せる先天性両側腰ヘルニアの1例

著者: 高橋新吾

ページ範囲:P.329 - P.332

 最近吾々の教室に於て,表題の如き症例を経驗し,レヂンプロンベを應用してこれを治癒せしめたので,ここに報告する次第である.

人事消息

ページ範囲:P.338 - P.338

 ◇宇山 理雄氏 京都第二赤十字病院外科部長の氏は京都府医大教授会を通過した学位論文「視状下部刺戟による実驗的ショックに関する研究」は文部省より授與を認可さる.
 ◇齋藤 純一氏 平塚済生会外科勤務の氏は慈大教授会を通過した学位論文「過度訓練の白鼡創傷治癒に及ぼす影響」は文部省より授與を認可さる.

最近のアメリカ便り

著者: 卜部美代志

ページ範囲:P.344 - P.344

 その後全く御無沙汰いたしました.あまり通信しなかつたのでどうしたのかと心配してくれている方々もある由噂をきいて恐縮している次第です.度々雜誌や通信をいたゞきその度に大変なつかしく拜見しました.New Yorkを3月に去つてPhiladelphiaを中心とする約3カ月間に亘る勉学は内容もあつて愉快なものでした.その間Baltimore(Johns-Hopkins大学)も訪れたり,休日を利用して,Washingtonに赤毛布をきめこんだりしたことでした.6月初めからはBostonに移つています.ここで2-3カ月を過す予定です.新緑のBostonは何とも云われない風情です.Harvard医学校にそう遠くない素人下宿に泊つています.学校の紹介によつたのですが,曾て厚生省の小谷氏や高部氏が代を重ねていたところの由,氏等がきいたら恐らくなつかしく思い出されることでしよう.アメリカの医者の間にも"Boston is wonderful place"というのが通り言葉になつている程で殊に外科医にとつてはまことにWonderful placeであります.Overholt,Sweet,Gross等夫々の分野の第一線の外科医がその学識と技を競つている状態です.この大家連の手術は夫々Deaconess Hosp. Mass General Hosp. Children Hosp.(Harvard大学)等でみられます.

集会

ページ範囲:P.345 - P.345

第498回東京外科集談会 36.6.15
 1・肺肋膜剥皮術を併用せる肺葉切除術の1例
         慶應大学外科 江草賢次
 28歳男子,下葉空洞結核に対し人工気胸療法中滲出液瀦溜し遂に胸廓切開術を行えるものに肺肋膜剥皮術を加えたことにより其の肺葉切除が可能となつた.局所の滲出液消失までには170日の長期間を要したが切除の補助的手技として剥皮術の役立つ場合がある.

外科進歩の跡・3

我が國の交感神経外科の進歩の跡について

著者: 伊藤弘

ページ範囲:P.333 - P.334

 我が國に於て交感神経系統に対して外科的侵襲を試みられた事は比較的新しい事で先ず1920年(大正10年)前後より始まつたものと考えて差支えない.
 1914年佛医Lericheが動脈外囲交感神経切除なる其当時としては斬新なる手術法を発表し神経損傷後の栄養障碍性潰瘍に向つて該手術を行い更にレノー氏病にも之を應用した.其後独國に於てBrüningが始めて之を追試して以来世界各國に於て追試者日に増加し其適應範囲も次第に拡大せられレノー氏病,特発脱疽,間歇性跛行,骨関節結核,靜脈留,痙攣性筋攣縮乃至筋強直,骨折治癒遅延,鞏皮症乃至象皮病及び浮腫其他諸種の皮膚疾患,切断端疼痛及び一般神経痛等殆んど四肢に於ける疾病の総てに應用せらるゝに至る交感神経系統の外科は恰もLericheによりて始めて創立せられたるが如き観を呈する樣になつた.

外科醫のノート

精神科医より外科医への希望

著者: 塩入圓袷

ページ範囲:P.335 - P.335

外科というものを他科から眺めた場合,或は他科の醫者の意見や他科で行う手術等が外科醫にとつて大きな示唆を興うる場合があります.この欄はそう云う意味で新設しました.御寄稿を歡迎致します         (編集部)
 昔は外科と精神科の間には余り密接な関係はなかつた.然るに近年に至つて,この2つの分科程緊密な関係を持つに至つた領域は他に多くないであろう.それは云う迄もなく脳外科の発達に基くものであり,脳腫瘍,脳外傷等に対する手術の進歩から,更にロボトミーの発見に至つて,外科的侵襲は精神科に於ける必須不可欠の治療となつた.それと共に外科医が神経病学より更に精神医学の理解を必要とするに至つたことも又当然である.
 併しこゝでは最も肝要な問題として意識障碍について述べたいと思う.

外科と生理

その3

著者: 須田勇

ページ範囲:P.336 - P.338

1:3形態学的可能性に対する機能的制約
 A.呼吸運動の型を決める因子
 形態学的には肋骨を上に挙げる筋は前に述べたように沢山あるが,実際に普通の安靜呼吸で働作電流が認められるものは少い.これは呼吸中枢からの興奮が脊髄から末梢の運動神経へ傳達される所に閾があることを示唆する.一般に最も閾の低いのはi)外肋間筋,内肋間筋軟骨部,横隔膜を支配する神経で,これについで ii)斜角筋,後上鋸筋等の肋骨上挙筋,iii)内肋間筋骨質部の支配神経である.(Gessel, R.:Am. Jour. Physiol. 115,168;116,228.1936).これらの閾値の順位の組合せは個人によつて異り,それが各人の呼吸の型を決定するととになる訳である.
 又,中枢からの神経衝撃が異常に多くなると,閾の高い普通なら呼吸運動には関與しない筋にも(例えば,鼻翼筋,顔面筋,咀嚼筋)運動が現われ,更に窒息のような場合には四肢筋にも運動が現われてくる.

米國外科

Current American Surgery

ページ範囲:P.339 - P.340

ANNALS OF SURGERY
 Vol.132.No.4,Oct.1950.

最近の外国外科

胸腺腫瘍(Thymoma)に就て,他

著者:

ページ範囲:P.341 - P.343

 シーボルド氏たちは胸腺腫(Thymoma)を有する45名の患者(男子17名 女子28名)で,年齢16歳から68歳までの者に就て報告している.腫瘍組織の檢査は手術又は剖檢によつて得たものに就て行い,Thymomaなる腫瘍としては,その組織成分の数量的関係に於ては差異があつても胸腺上皮細胞と胸腺細胞とから成つているものを胸腺の特殊腫瘍即ち胸腺腫と定義している.この胸腺腫は34名に於て重症筋無力症を合併していた(75.6%)その中22名は40歳以上で,11名(25%)には手術時にも手術後にも,筋無力症の症状は認めなかつた.
 凡て重症筋無力症の患者或はその既往症のある者には一應胸部をレ線で後方から前方に或は一側から他側に檢査をする必要があるのを認めた.又この胸腺腫に特異な点として見られることは必ず前縱隔洞中で大動脈弓及び心臟基底の前方に位しておることである.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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