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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻8号

1951年08月発行

雑誌目次

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肝左葉切除に就て

著者: 森田浩

ページ範囲:P.347 - P.348

緒言
 近時内臓外科の発達顯著なるに拘らず,独り肝臓外科に於ては立遅れの感無しとしないのであつて,肝葉切除治癒報告例は誠に寥々たるものである.抑々肝臓外科の対象となるものは,肝臓癌,肉腫の如き惡性腫瘍を始め良性腫瘍,慢性炎症性腫瘤及び災害外科に於ける肝臓外傷等であるが,余は最近外傷による肝臓破裂の患者に於て,その左葉亞全剔出を行い治癒せしめ得たので之を報告する.

癌の骨轉移につき2,3の統計的観察

著者: 鳥取秋彥

ページ範囲:P.349 - P.352

緒言
 癌腫の骨轉移を最初に報告したのはSamson(1831)であつて,その後,癌の骨轉移の報告は少くない.癌の骨轉移の頻度を諸家の文献より拾つてみると第1表の通りである.我が津田外科教室23年間の入院患者総数は14,277例で癌患者は1,549例(10.8%)である.其の中,癌骨轉移は20例で全癌腫の1.29%に当つている(第2表).余は津田外科教室の20例と今日(昭和23年9月)迄の本邦に於ける癌骨轉移報告の188例,計208例を統計的に考察してここに報告する.本論文に於いて教室例とあるのは津田外科教室の,本邦例とあるのは今日迄の本邦に於ける癌骨轉移報告例の統計である.本邦例には教室例が含まれている.「不明」と云うのは文献に記載が無いのか不明と記載しているのを云う.図表の()内の数値は教室例を示している.

頸動脈体摘出術の危險性に就いて

著者: 神谷喜作 ,   田中敏

ページ範囲:P.353 - P.354

 我々は「臨牀外科』の頸部外科症例集(昭和23年11月)にて,頸動脈体摘出後約1ヵ月にして,心臓衰弱で死亡した2例を報告して,此の手術には手術中又は手術直後の死亡(術後早期死)と1ヵ月位たつて死亡する術後晩期死の危險がある事を指摘しておいた.
 其の後,我々は更に2例此の様な症例を経驗した.從つて我々の手術例112例中4例と成つた釈である.勿論その原因は我々にはまだ分らないが,一度総括して考察してみたいと思う.

頸動脈毬剔出術による偶発症1例

著者: 渡邊蛟

ページ範囲:P.355 - P.356

 近時気管支喘息,特発性脱疽等種々の疾患に対し頸動脈毬剔出術が盛に行われる様になつたが,この手術による死亡例も亦時々見られる.私は臨港病院外科に於て最近本手術による死亡例を経驗したので御報告し考察を加えてみたいと思う.

頭部外傷による発汗過多症の2例

著者: 中村壽一 ,   米倉茂孝

ページ範囲:P.357 - P.358

緒言
 頭部外傷と発汗過多症との関係を文献によつて檢べるに,Karplus(1916),Böwing(1922),Hoff(1931)等はそれぞれ発汗過多症を来した症例の剖檢所見として,内嚢部或は視丘,視丘下部に変化を認めたが孰れも死に至らしめた重篤な頭部外傷の場合である.最近米國の医学雜誌に於て今次大戰中の頭部外傷後の苦訴としての植物神経障碍が記載せられているが,その中で発汗異常の事に触れている.然し症例報告ではない.本邦に於ても勿論その症例こ発見し難い.從つて茲に比較的軽度の頭部外傷により招致せられた発汗過多症の2例を報告したい.

Plombierung後にあらわれた奇異なる半側発汗の1例

著者: 櫻井達男

ページ範囲:P.359 - P.360

I)まえがき
 躯幹体側部の圧迫が,半側発汗,或は,皮温変動を惹起するという奇異なる反射現象存在に対して,高木1)2)及び著者達が,旆行せる種々の実驗から,皮膚圧点に於て,体側部圧迫の刺戟が感受せられる結果として,かゝる反射が惹起せられるものであろうと推測しているが,’たまたま,Resin-Plombierungを行つた患者に於て,術後,半側発汗を訴えるという事実を聞き,この患者について興味のある事実を確認することが出来た。こゝに,一例報告として述べる.

異物殊に針等の摘出時の指標に就いて

著者: 中根英夫

ページ範囲:P.360 - P.360

 外科医ならずとも日常診療に際して,異物(以下一般軟部組織殊に四肢軟部に於ける異物を云う)特に注射針,縫針等の迷入した症例に遭遇する事は少くない.斯る場合,時に予期以上に摘出に困難を感ずる場合が少くない.殊に迷入場所が比較的浅く且つ外部から触れない様な場合に誤つて深く診断する事が多いように思う.同様な事は戰時中,小彈片等の摘出時に体驗した.
 異物摘出に於て所謂必要にして充分な切開をなす事が大切で,先ずレ線写眞によつて異物の迷入局所に対する立体的位置を正確に定める事が第一條件である.それには正確な指標を與える事が第一條件である.今日一般に長針2本を指標に用いて互に直角の二方向のレンドゲン線撮影をなして切開の指標としている.然し時には迷入した異物は—特に針では—予想以上に移動している事があり,又從来の方法では皮膚面よりの深さが誤診され易い憾みがあり,無駄な切開をなす事が少くない.指標針を位置,深さ等を変えて多数用いればよいわけではあるが繁雜さや患者の苦痛などの点から自然制限される。又レ線透視により指標を迷入異物に成るべく近くおくのが有効であるが,時には透視で明確に像を認めない様な細い注射針が迷入している場合もある.

極めて珍しい硝子嚥下症の1例

著者: 宮野敏治

ページ範囲:P.361 - P.361

緒言
 この症例は子供の時に惡食競爭で硝子を食べ,数十年後にその硝子の一部が大腿部に排出された1症例であり,あまりにも珍らしいので,このように経口的に嚥下した異物の一部が如何なる過程を経てこのような部位に排出されるかの基礎的研究の一資料と考えたのと,患者の希望により硝子片の摘出と試驗的開腹術とを行う機会を得たので敢て報告する次第です.

精系捻轉症の2例

著者: 山本幹一 ,   河田富政

ページ範囲:P.368 - P.369

 最近吾々は当地にて,続いて2例の精系捻轉症を経驗したのでこゝに御報告する次第なり.本症は比較的稀な疾患とされ,本邦では30数例の報告例あり.
 本症の発生には先天的畸形即ち陰嚢靱帶の欠如,鞘膜腔の開存,睾丸の固定欠如,停留睾丸等が必要條件とせられ,吾々の2例共に鞘膜腔は上部にまで及び,且つ広く,固定を欠き,睾丸の下降不充分であつた.これに外力・激動・力仕事等の誘因が加わり成立するものとされている.この誘因と発病との時間的関係について直後発病する場合と,相当時間経過後(吾々の第1例は1〜2時間後,第2例は約2日後)発生する場合とあり.症状としては一般症状と局所症状を呈し,一般に一般症状に始まり局所症状に終る.即ち始めは下腹部痛,或は嘔吐を起し,激しき時は虚脱に陷り,その他惡心・眩暈・腹部膨満・瓦斯排出停止・中等度の発熱等なり.局所症状としては睾丸は腫大し,圧痛著明挙上せられ,陰嚢の発赤腫脹等あり,即ち先天的に睾丸の位置異常があつたものに激動等後に下腹痛あり,且つ睾丸に圧痛ある場合には本症を疑うべきであり,最も誤診され易いのは鼡蹊ヘルニア嵌頓及急牲副睾丸炎等なり.已に壞死に陥つたものは剔出を行い,尚生存可能のものは整復後睾丸を総鞘膜及陰嚢に縫合固定するを可とす.次に症例を示せば,

外脳水腫手術治驗例

著者: 北村勝俊

ページ範囲:P.370 - P.372

 私は最近臨床的に外脳水腫と診断した1例に,一側側脳室脈絡叢剔出を施し,約5ヵ月の観察では再発を見ていないので報告する.

丹毒のHeilwirkungに就て

著者: 杉山精一

ページ範囲:P.373 - P.374

1.緒言
 丹毒の医治作用に就ては余程古くから知られておりMüllederの先生であるEiselsbergの講義の中に前世紀の初め既に多くの病院で丹毒に罹患の後同時に存在しておつた癌例えば乳癌等が非常に好くなると云う観察が確められ,此の様な疾患を有する患者は丹毒患者が寝ておつた病床に寝かされたと云うことである.1866年Bonner ChirurgのBuschが初めて肉腫の際に丹毒の医治作用を観察しその後屡々確証された.然し残念ながら丹毒の此の作用は極めて不確実であり又屡々一過性である.且つ有効な結果より不成功の方が遙かに多い.又丹毒の人工的の接種はその他に患に重大なる危險をもたらすから手術不可能の症例又は助かる見込の無い様な症例に許さる可きものである.医治作用は一般に癌よりも肉腫に効果があると言つている.
 Coleyは長い間此の問題に就て理論的並に実驗的の研究を爲し,接種後6例の死亡例を報告している.総て手術不可能の症例を取扱い現在では連鎖状球菌そのものを接種しないでErysipelokokkenとProdigiosus(奇異桿菌)の混合トキシンを注射している.168例の手術不可能なる淋巴肉腫の中で26例の治癒を観ている.手術せる腫瘍の後療法及び照射によつて軽快せるホヂキン症例にColeyはParke,Davis会社が発賣せるトキシンを系統的に應用して予後を著しく良好にする事が出来たと称している.

乳兒腹部外科2題

著者: 阿部達次 ,   大場直人

ページ範囲:P.375 - P.377

其1,乳兒胃破裂症の1例
 乳兒急性腹膜炎は比較的に少く,胃が自然に破裂して急性腹膜炎を起した例は殆んど文献上に表われぬものと思われる.

特発性腹腔内膀胱破裂

著者: 廣瀨延之

ページ範囲:P.377 - P.377

 余は首題の1症例を経験したので之を報告する.
 症例
 〔患者〕潰,イ,49歳女
 〔家族歴並に既往症〕特記事項なく特に花柳病を否定す.
 〔現症〕昭和23年12月6日午後1時,列車に乘車中膀胱充満したが混雜のため排尿出来ず下車後排尿せんとして駅の石段を昇る際下腹部に激痛を突発し,某医の加療を受けたが鎭痛せず.尿意頻数あつて6回の導尿を受けたが,その都度少量宛排除するのみで次第に下腹部が膨満し来つた爲,同日午後11時即ち発病後10時間にして送院された.

下腿の慢性骨髄炎に続発した皮膚癌の1例

著者: 米光眞一

ページ範囲:P.378 - P.379

緒言
 皮膚癌の発生には種々の持続的刺戟が重要な因子と見做されている。余は最近約25年の久しきに渉り存在していた足関節部慢性骨髄炎に続発したと思われる比較的稀有なる皮膚癌の例を経驗したので報告する.

廻腸細網内皮肉腫の1例

著者: 眞鍋茂良 ,   町田正司

ページ範囲:P.380 - P.383

I 緒言
 腸管に発生する肉腫はSmoler,Nothnagel,Staem—mler氏等の報告に依りても明らかなる如く,比較的稀にして殊に細網内皮系に由来する腸管肉腫の報告は更に稀有なり.抑々細網内皮系腫瘍に就き初めて記載せるはGohn-Romanにして,以来Ewing,Goldschmidt ŭIsaac,Ewald,Letterer,Oberling,Sternberg,Roulet,緒方,志茂,赤崎氏等諸家の研究報告あるも,陽管に原発せるは甚だ稀有にして吾が國にて余等の蒐集し得たるは6例にすぎず.余等は最近廻腸末端部に原発せる細網内皮肉腫と考えらるる一例を経驗せるを以て茲に追加報告せんとす.

集会

ページ範囲:P.394 - P.395

第48回北陸外科集談会昭和25.6.25
 1.胆道炎に続発した胆毒症の1例
         熊埜御堂外科 丸山英夫
 31歳女子胆管炎後の胆毒症により起れる出血性素困に対し從来の止血的処摩に加うるにビタミンKの大量使用が効果があると認められた.

特別寄稿

肺結核に対する肺切除術の概念—外科医の常識

著者: 都築正男

ページ範囲:P.362 - P.367

 外科診療を標榜して開業しておられる実地医家が内科專門で開業している友達から『近頃肺結核に対して肺の切除手術部研究せられているようであるが,時々診療している患者から聞かれることがあるので,その適應,手技,成績等に就て,わかり易く説明してもらえないか』と頼まれたら,とう云う風に答えたら良いだろうか.

今月の小外科・16

シュラッテル病と脛骨粗面剥離骨折

著者: 石原佑

ページ範囲:P.384 - P.385

(1)
 シュラッテル病と一般に言われている疾患は,X線発見前既にLannelongue(1878)が認め,発育期に於ける脛骨々端線の骨炎としたが,Osgood(米),Schlatter(独)が同時に(1903)X線による所見に基き,外傷による脛骨粗面の剥離として記載したものでOsgood-Schlatter病ともいわれる.
 本症は12〜16歳の健康な男子に殊に多く,片側にも両側にも起り,膝下部即ち脛骨粗面部に限局する圧痛と運動時疼痛,局所の軽度の腫脹に始まり,最初は歩行障碍も殆どないが,増惡すると,局所腫脹も増強,歩行障碍即運動時疼痛の増加があり,更に局所熱感浮腫,発赤を見るに至る.而も膝関節自体の運動には殆ど影響がないが,最終屈曲に疼痛を感ずる.

外科と生理

その4

著者: 須田勇

ページ範囲:P.386 - P.388

2:2觀察された肺の擴大と縮小
 以上述べた胸腔及び肺の構造と運動に対する制約とから,肺の動きは各部位で異ることは容易に理解出来る.今,肺の運動を具体的に考えるならば,呼吸の本質から,気管支系の容積の変化を運動の目標とすることは一應妥当と考える.左右の気管支は各肺葉への総計5本の主幹気管支に分れ,それが上下,内外,前後に分岐展開しながら,夫々の分岐点を頂点とした円錐形の分布領域を形成する.從つて,肋骨及び横隔膜の運動により,気管支系は肺門を固定点として,伸ばされながら,振子運動と上下への平行移動運動を行うことになる.形態学的な構造より考えれば,III,VI,V肋骨の運動による肺門附近を固定点とした上葉前面及び側面での振子運動と,横隔膜による腱中心附近に固定点を持つ下葉の横隔膜周辺部の振子運動と上下への平行運動が最も著るしい筈である.
 この点に関する実際の測定成績は佐藤・篠井のBronchoky—mographyによる研究が明にしている(佐藤・篠井:肺臓外科,1950平凡社)2:2図に示す如く,実際の肺—気管支の運動は構造から予想された動きと略々一致しているが,2つの点で量的な補正を要する.第1は,上葉に於ける矢状運動が案外に弱いことで,第2は,横隔膜による上下運動の影響が充分上葉に達する程強力(横隔膜振幅の1/3〜1/4)であることである.

米國外科

Current American Surgery

ページ範囲:P.389 - P.390

THE AMERICAN JOURNAL OF SURGERY
 Vol. LXXXI. No.5, May.1951.

最近の外国外科

脳血管撮影法の偶発的合併症に就て,他

著者:

ページ範囲:P.391 - P.393

 著者たちは脳血管撮影法に危險な偶発的合併症の起り得る可能性に関して注意を喚起している.この研究報告は1946〜1950年間に著者たちが108名の患者にdiodrast(iodopyratの35%液)を用いで頸動脈から147回注射撮影した経驗に基いているのである.それ等の患者の種類は,脳腫瘍30例,動脈瘤17例,蜘蛛膜下出血19例,脳血管血栓症12例,脳変性疾患7例,硬脳膜下血腫4例,診断不定19例であつた.この108例中の14例に偶発的合併症が発生した.著者たちはこの檢査後の晩発的に発生したものも合算すると,前記の偶発的合併症の発生率が從来の文献に示めされたものよりも遙に大であるのを感じている.著者の1人は1940年から1946年迄に動脈瘤の疑ある患者にのみ限定して,22例に脳血管撮影を施したが,その場合には何等の偶発症も経驗しなかつた.しかし第二次世界大戰以来患者の年齢,状態等を余り顧慮せず,凡ての脳疾患診断に應用したところ約10%に偶発症が起つた.即ち108例及び147回の血管撮影法に於て14回の偶発症が見られた.その内容は,死亡3名,永続的半身不随4名,一渦性半身不随2名,痙攣2名,頸動脈血栓形成1名,頸部交感神経損傷1名,ヨード造影剤に対する皮膚過敏症1名であつた.
 この偶発的合併症の原因が血管撮影法を行つた際の技術的熟練の程度,造影剤の量,術式,其他投藥した藥剤などには余り重要な関係を持つておらない様であつた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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