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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科6巻9号

1951年09月発行

雑誌目次

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肺壞疽の化学的療法の限度と外科的療法の選択に就いて

著者: 篠井金吾 ,   永井純義 ,   江本俊秀 ,   氏家基 ,   岩田豊助

ページ範囲:P.399 - P.403

 肺壞疽の治療は化学的療法の発達によつて往時に比べると甚だ容易にはなつて来たが,其の反面には誤れる化学療法を固執して外科療法の適應すら等閑視するものも尠くないのである.特に最近我々の外科を訪れる患者の中には甚だ難治な症例があり,これ等の症例の中には不徹底なペニシリン療法によつて病状を慢性化させた例もあり,又症状が膠着しているにも拘らず無意味な化学療法を続けているものも尠くない.其処で,我々は過去5年間に於いて当教室で本格的にペニシリン療法を施行して来た65例の経驗から,化学療法の限度を吟味し,併せて最近得た2,3の新しい研究結果に基いて外科的療法を如何に選ぶべきか,或は亦,外科的療法に轉換すべき時期等について考究して見たいと思う.

再び血管縫合並に移植に就て—吾々の研究成績

著者: 木本誠二 ,   羽田野茂 ,   林周一 ,   鈴木忠彥 ,   杉江三郞 ,   角田正彥

ページ範囲:P.404 - P.408

 血管外科の1部として血管縫合並に血管移植に関し,詳細な文献的考察とともに吾々の成績の一端を総論的に本誌に紹介した1)2).その後研究を続行して相当多数例に就き数字的データを挙げ,その要旨は本年4月2日の日本外科学会総会席上の報告中にも述べた.本稿にはこれを含めて今日までに得られた成績を稍々詳しく敷衍檢討して見度いと思う.本問題に関して吾々は最終的結論に達した項目が多いのであるが,なお目下研究中の点も2,3あり,後の機会に発表する筈である.

十二指腸潰瘍に於ける胃液の酸度に就て

著者: 山近勝美

ページ範囲:P.409 - P.412

I.緒言
 十二指腸液の胃内逆流に関してはBoldyreffが胃液高酸度の時に生理的中和作用として幽門反射に依る逆流が生ずると報じて以来,一般的には十二指腸液胃内逆流に依つて胃液酸度の低下が起るとして怪まない.逆流十二指腸液に依る胃液酸度の一時的低下は化学的に当然の如く思考せらるるも,然し実際には十二指腸液は中性に近い弱いアルカリ性液であつて酸度中和能は左程著明なものではなく,酸度が低下するとせば量的に稀釈の意味に於てであるが,後述の実驗的推定に依れば通常みる逆流時に於ける中和及び稀釈の影響は論ずるに足らぬ程度のものである.即ち逆流十二指腸液の胃液酸度に及ぼす影響を詳細に観察するに,必ずしも酸度低下を招来するものではなく胃粘膜の健常と思われる症例に於てはむしろ酸度上昇的に作用する多数例を見る.即ち2次的反應に依る高酸度胃液の分泌の結果として寧ろ酸度は上昇する傾向があると考えるものである.
 元来潰瘍疾患は一般に高酸度の傾向を有するものである.併し詳細に檢すると十二指腸潰瘍の場合と胃潰瘍の場合とに於て分泌量,酸度共にかなりの相違がある.例えば十二指腸潰瘍に於ては過酸,過分泌の傾向が著明であるが胃潰瘍に於ては必ずしも然らずして比較的低酸度のものも多い.

急性化膿性骨髄炎の治療法—第1報:Penicillin療法と手術的介助

著者: 丹野俊男 ,   桝孔助

ページ範囲:P.413 - P.416

緒言
 Penicillin(以下Pと略記)が急性化膿性骨髄炎に対して甚だ驚異的な治療効果を示すことは逐次明らかにされつゝあるが,本症のP療法に関する具体的事項—即ちPの適当な1回量及び必要な全量はどれ程か,P療法開始時期と之等との関係はどうか,更に又手術的介助の如何等—に就ては未だ決定されていない.此具体的知識が充分でないために,例えば眞実の所はP量が不充分であるのにP使用による外見的所見の予想外の好轉に気を許しPの卓効を過信するの余り更にそれ以上の処置を加えなかつたために意外の失敗を嘗めるということも稀ではないと思われる.現に後記第1例の如き例がある.斯樣な失敗が繰返されぬためには如何にすべきか.又手術的介助なしに治癒した症例の報告が散見されるが,P療法が果して外科的介助を要しないか—換言すれば本症をより好状況下により早く治癒せしめるためには如何に処置すべきかの点は檢討を要する問題である.
 余等は以上の諸点に注目し種々檢討を加えつゝあるが自驗例も尠く且其観察期間も充分ではないので未だ決論には達していない.然し本症療法の具体的事項が確立されるためには多数症例の報告と,更に再発等の問題からも或年数を要すること勿論であるので,不充分乍ら現在迄の経驗に基く見解の一端を述べて御批判を仰ぎたいと考えると同時に多数の詳細な症例報告が続々と発表されんことを希う次第である.

2,3軟部組織の急性化膿性疾患に対するペニシリンによる非観血的局所療法

著者: 桝孔助

ページ範囲:P.417 - P.419

 現今のペニシリンの應用極めて盛んな時代に於ては,これまで外科の発達に大いなる貢献をしたところの切開,排膿管挿入,対孔造設,等の言葉もまた著しく從来の概念から変革せられ,而も或る場合には次第に過去のものとならんとしている傾向さえ見られる.さきに木本氏等により尿素による膿瘍の無切開療法の提唱があり,更に榊原氏等は"急性炎衝に対する單純吸引療法"の基礎的研究発表に於て,その著効を奏することが少くないことを述べ、最近北條氏はフェノールカンフルによる熱性膿瘍の非観血的療法の臨牀例の報告などあるが,これら諸氏がいずれも結局切開は可及的に避くべきものとの意見にあることは注目すべきことであり,この問題に対する関心の高まりつゝある傾向を示すものである.今こゝに述べる療法もさきにFlorey M. E., Mac VineG.S.諸氏により急性化膿性乳腺炎に対して行われなペニシリン局所注入療法より暗示を得たものであるが,之を実地外科医が日常遭遇する疾患の2,3に應用してその著しき効果を確認し,ペニシリンのかゝる領域に於ける適用に関する研究の1部としてその結果を報告する次第である.
 近年急性進行性感染に対しては直ちに手術的操作にうつることなく,先ず之を化学療法剤の系統的應用により症用を消失させるか,或いは頓挫させて限局性なものとなし,然るのち適切な外科的処置にうつるのが治療上一般の方向であつた.

仮性横隔膜ヘルニヤの1例

著者: 辻村敬藏

ページ範囲:P.420 - P.422

緒言
 Marrisonに依れば,胃疾患としてレ線檢査が行われた約3000例中,22例に横隔膜ヘルニヤを証明したと言う.Hedblomの378例中,先天性,後天性の比は,27:37となつている.Eppingerは,横隔膜ヘルニヤ685例に就て言及した所によると,313例の急性,慢性仮性横隔膜ヘルニヤ中,左304例,右4例である.先天性欠損に於ては,左側は213例で右の30例より遙かに多い.最近私は種々誤診された後に発見された小兒の左側仮性横隔膜ヘルニヤの1例を経驗したので報告する.

腸蜂窩織炎

著者: 高松正

ページ範囲:P.423 - P.426

緒言
 腸蜂窩織炎の最初の文献的記載はRokitansky(1842)に依りEnteritissubmuco suppuradvasaなる名称のもとに報告せられ,Bamherger(1855)により初めてEnteritis phlegmonoaと命名せられしもので,それ以来,非特異性炎症としての本症は人々により注目せられ,相次で報告され,統計的観察が行われている.然るに今尚原因及び療法に尚興味を有する疾患とされている.余も亦最近下部腸管に於ける腸蜂窩織炎の3例に遭遇せるを以て,その大要を報ぜんとす.

横行結腸内脂肪腫の1例

著者: 岸達郞

ページ範囲:P.426 - P.428

緒言
 腸管脂肪腫は比較的稀な疾患であり,1844年Huss氏が初めて報告して以来欧米及び我國に於て相踵いで報告されているが,我國に於ては結腸脂肪腫は小腸脂肪腫に比し極めて少く私は最近この1例を経驗したので敢えて報告し併せて文献により考按して見度い.

膀胱乳嘴腫の3例

著者: 広瀨延之

ページ範囲:P.428 - P.429

 昭和7年橋本氏は本症の5例を報告した.余も亦最近市立函館病院に於て其の3例を経驗せるを以て茲に之を追加報告する.

興味ある経過を取りし電撃傷の1例に就て

著者: 田坂巖

ページ範囲:P.430 - P.432

序文
 感電後恢復迄に7ヵ月を要し,興味ある経過を取りたる電撃傷の1例を経驗し報告する次第なり.

人事消息

ページ範囲:P.432 - P.432

高木 憲次氏 東大名誉教授の氏は九大天兒民和,慈大片山良亮東北大飯野三郎の三教授,國立東京第一病院整形外科医長堤直温の諸氏と共に厚生省に新設の小兒麻痺研究調査班委員に推された
 熊野御堂進氏 金沢大医学部外科教授の氏は日本医師会から文部省医学視察委員に推薦された.

集会

ページ範囲:P.446 - P.448

第196回整形外科集談会東京地方会
 昭和26.6.23
 (1)第2ケーラー民病の2例
  慈恵医大整形外科 鈴木健三郞 宗像朝雄
 定型的の変化を認めた2例に就て報告.之に対し,東邦(医大整形)西新助,慶大整形池田龜夫,横浜医大整形水町四郎,逓信病院整形渡辺正毅等が夫々追加した.

今月の小外科・17

破傷風の治療に就て

著者: 山本八洲夫

ページ範囲:P.433 - P.434

 化学療法の最近の進歩はまことに見覚ましきものであり全く應接にいとまなき有樣であるが破傷風はそれにも拘らず依然として難治であり根本的な治療法の確立されていない疾患の一つである.從つてその治療法に就ても万人百説で各人意見を異にするものゝ樣であるが簡略に大凡その治療に就て述べてみる.
 早期発見 本症の治療の第一として症状の詳細なる観察により早期発見と共に直に適切なる治療に移ることである.初期に極めて軽度の開口困難のみを訴えることが往々あるから注意を要する.又初発症状が軽いからといつて予後を軽視してはならぬことはいう迄もない,突如として激烈なる全身痙攣を惹起して症状が悪化する傾向がある.

外科と病理

原発性十二指腸癌の1剖檢例

著者: 黑羽武 ,   古川弘平 ,   斎藤信一

ページ範囲:P.435 - P.436

手術をしても納得のゆかぬ場合がありますが,病理解剖により始めて教えられる症例があると思います.この欄はそうした症例を掲載して墾ります.御寄稿を歡迎します.(編集部)(400字詰10行以内)
 膵臟の全摘出又は亞全切除は抜術上極めて困難視されていたが,Whipple,Brunschwig,Trimble,Priestley,Stevens,Dixon,Miller氏等の大胆な試みに依て膵臟頭部癌や十二指腸癌の根治手術が有望となり,吾國でも近時漸くこの方面に関心が寄せられている.臨床的に原発性十二指腸癌は最も診断の困難な疾病の一つに数えられるが,Egerは其の理由として固有症状の無いことと,頻度に乏しいことを挙げ,特に後者を重要視した.然し剖檢資料から見れば,さほど珍奇とするには足りないし長與,阿部哲),吾國の症例報告も既に50例の多きに達している.問題は症例の選択と早期発見の如何にあるのであつて,米國の成果をただ表面的にのみ観察しないことが望ましい.過去の経驗から1例を抽出して反省を試みる.

外科と生理

その5

著者: 須田勇

ページ範囲:P.437 - P.439

2:5 氣管枝喘息の問題—主として外科的療法に関して
 A.症状からの素材—研究示標
 発作時のpneumo tachogramその他の客観的方法によつて得られた症状を挙げると次の如くである.
 i)発作を起している場合には呼吸相が吸気相の3〜4倍に延びている(Englmann;Dtsch.Arch.klin.Med.157,280,1927).

米國外科

Current American Surgery

ページ範囲:P.440 - P.442

ARCHIVES OF SURGERY
 Vol. 62. No. 6, June. 1951.

最近の外国外科

Hirsehsprung氏病,他

著者:

ページ範囲:P.443 - P.445

 巨大結腸はこれを本来のヒルシスプルング氏病と特発性巨大結腸症とに区別される.最も普通に見られるものは後者の方で,この場合の巨大結腸は慢性の便秘に起因する.本来のヒ氏病は先天性畸形に属し.その病気の性質は顯微鏡檢査によつてのみ始めて証明し得る.即ち病理学的に腸管壁の筋層内神経節細胞の発育不全と自律神経纖維束の成形障碍とに因るもので,その機能的障碍としては患部に於ける調節された蠕動運動の欠如が現われる.そのために二次的にその上方の腸管部に能動型の巨大結腸症を発生するに至るものである.診断には巨大結腸部よりも下方の拡張しておちない部分或に狹窄している部分をバリウムの浣腸でレ線学的に証明することである.從つて現在ヒ氏病の合理的療法はこの蠕動しない腸管の部分をS字状結腸直腸切除術で切除することであると考えられている.著者たちのこの報告の根拠は総計40例(中37例は男兒)のヒ氏病患者の経驗によるものである.この37例の兒童の家族に就て,この疾患の遺傳的関係を調査研究した結果,本疾患に遺傳的関係のあると云う考えを支持する結果を得た.即ち本病を有する患者の男性血族者には大体5名中1名の割で見られたが,女子には少なかつた.
 S字状結腸直腸切除術を施した37名の患者中3名は手術中或は手術後に死亡し,2名は極めて最近手術したもので,その結果を未だ茲に述べられないものである.しかし他の32名の患兒は現在極めて良好な健康状態にある.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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