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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科60巻1号

2005年01月発行

雑誌目次

特集 手術のグッドタイミング 〔根治術のタイミング〕

食道癌のchemo-radiation後開胸・開腹食道手術

著者: 池部正彦 ,   馬場秀夫 ,   沖英次 ,   山本学 ,   掛地吉弘 ,   前原喜彦

ページ範囲:P.17 - P.22

要旨:食道癌に対して放射線化学療法後に手術を行う機会は依然多く,その影響を認識して周術期管理を行う必要がある.化学療法や放射線療法が全身に及ぼす影響については骨髄抑制が重要であり,結果として生じる免疫能の低下は術後合併症の発生や予後に影響する.切除可能例に対する術前治療では,現在の一般的な治療doseでは手術まで3週間程度の期間が必要である.他臓器浸潤例ではまず40 Gy程度の化学放射線療法を行い,切除が可能となれば手術を考慮すべきである.根治照射後のsalvage手術は安全性が確立しておらず,著効例の見極めが困難な現状では50 Gy以下の時点での手術が望ましい.

放射線・放射線化学療法後の直腸癌手術

著者: 渡邉聡明 ,   武藤徹一郎 ,   名川弘一

ページ範囲:P.23 - P.29

要旨:補助療法としての放射線療法による直腸癌術後の局所再発率の低下は大規模なRCT(randomized controlled trial)あるいはメタアナリシスによって報告されているが,術後生存率に関しては,有意な上昇が認められた報告がある一方,有意な差が認められないとする報告もあるのが現状である.手術を行う場合の照射のタイミングとしては,術前,術中,術後放射線療法があり,これらのうちでは術前放射線療法が有効であるとするRCTの結果が報告されている.術前放射線療法では,照射後の手術のタイミングが問題となるが,RCTによって照射直後よりも照射の6~8週間後に手術を行ったほうが良好な成績が報告されている.

胆道癌に対する経皮経肝門脈枝塞栓術(PTPE)後の広範囲肝切除術

著者: 小林聡 ,   梛野正人 ,   湯浅典博 ,   小田高司 ,   新井利幸 ,   西尾秀樹 ,   江畑智希 ,   二村雄次

ページ範囲:P.31 - P.37

要旨:経皮経肝門脈枝塞栓術(PTPE)の導入によって胆道癌に対する広範囲肝切除の適応は拡がり,安全性も増した.PTPEによって右葉,右3区域塞栓術で約10%,左3区域塞栓術で約7%の切除率の低下が期待できる.PTPE後約2週間をもって根治術のタイミングとしているが,それでも残肝機能が憂慮される症例に対しては,手術時期の延期や経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE),経皮経肝胆管枝ablation(PTBA)の併用を検討する.胆道癌は切除以外に有効な治療法がなく,これらの手技を用いて積極的に切除を検討すべきである.

胆石性膵炎における胆石に対する治療

著者: 杉山政則 ,   阿部展次 ,   柳田修 ,   正木忠彦 ,   森俊幸 ,   跡見裕

ページ範囲:P.39 - P.44

要旨:胆石性膵炎では,軽症例は胆石が乳頭から十二指腸へ自然排出することが多いが,重症膵炎では胆石の乳頭部嵌頓が持続したり胆石が総胆管内に長くとどまることが多い.したがって,重症膵炎や黄疸・急性胆管炎合併例では48~72時間以内のERCPや,内視鏡的乳頭切開による総胆管切石が必要である.胆囊結石に対しては膵炎が完全に改善したのちに胆囊摘出術を行う(通常は発症後3週目以降).軽症膵炎では胆石に対する早期の治療は不要であり,膵炎消退後すみやかに膵炎予防のために胆囊摘出術を行う(通常は発症後5~10日目以降).多くの症例では腹腔鏡下手術が可能である.

〔外科治療選択のタイミング〕

胃・十二指腸潰瘍穿孔

著者: 岩崎善毅 ,   荒井邦佳 ,   佐瀬善一郎 ,   高橋慶一 ,   山口達郎 ,   松本寛 ,   宮本英典

ページ範囲:P.45 - P.48

要旨:胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療の適応は,高齢者や重症併存疾患合併例を除いて,24時間以内の発症早期で,腹膜炎所見が上腹部に限局している症例である.6時間おきに白血球減少や腹部理学的所見の増悪,腹水の著明な増加などをwarning signとしてチェックし,改善傾向がみられない症例に対しては発症後6~24時間目をめどに外科治療への移行を判断する.保存的療法からの緊急手術移行例に対してもできるだけ低侵襲の腹腔鏡下手術で対応するが,急速に状態が増悪する症例や腹腔鏡下による操作が困難な症例に対しては,開腹による穿孔部単純閉鎖・大網充塡,部分切除を含めた胃切除術を考慮しておくことが必要である.

急性胆囊炎

著者: 炭山嘉伸 ,   渡邉学

ページ範囲:P.49 - P.54

要旨:急性胆囊炎の治療は,胆道ドレナージで減圧したのち待期的に手術することが主流であったが,最近では発症早期に腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)が積極的に行われている.しかし,手術時期や術式については意見の一致はみられていない.自験例では,早期LCは待期LCと比較して手術時間,入院期間,術後在院期間が有意に短縮しており,早期LCの有用性が示唆された.急性胆囊炎の治療法として,早期LCは今後ますます増加することが予想されるが,耐術不可症例や炎症高度で手術困難が予想される症例は胆囊ドレナージを行い,待期的に手術することも必要であると考えられる.全身状態と画像所見から重症度および手術難易度を評価し,適切な治療を選択することが重要である.

重症急性膵炎

著者: 上野富雄 ,   山本光太郎 ,   河岡徹 ,   高島元成 ,   岡正朗

ページ範囲:P.55 - P.60

要旨:感染性膵壊死を呈する症例を外科手術の適応とすることに対しては,おおむね国際的コンセンサスが得られるようになった.壊死性膵炎では壊死に感染を併発していることを見極めることが肝要であり,その手段としてはCTガイド下のfine-needle aspirationで採取した検体の培養検査が有用である.非感染性膵壊死に対してはいまだ統一された見解はないが,保存的治療のみでは治癒できない患者の一群がいることを念頭におき,治療を進める必要がある.手術を施行するタイミングは,手術時に壊死と非壊死部の境界が明確になってくるとされる発症後3週以降が理想的である.

重症潰瘍性大腸炎

著者: 杉田昭 ,   荒井勝彦 ,   木村英明 ,   小金井一隆 ,   山崎安信 ,   嶋田紘 ,   福島恒男

ページ範囲:P.61 - P.68

要旨:潰瘍性大腸炎の手術適応は「重症」,「難治」,「大腸癌」であり,そのうち「重症」は手術例の約30%を占める.重症例に対しては,従来のステロイド治療,新しい治療である白血球除去療法,シクロスポリン投与などの治療効果と位置づけを明らかにする必要がある.手術術式は原則として,合併症の防止のために結腸亜全摘出術,S状結腸粘液瘻造設術,またはHartmann手術を行う.直腸病変が高度の症例には重症例であっても直腸切除,回腸囊肛門吻合術,または回腸囊肛門管吻合術が必要なこともある.重症例では全身状態が不良な症例が多いことから,手術時期を遅らせることなく手術を行うことが重要である.

〔再手術のタイミング〕

人工肛門閉鎖術

著者: 飯合恒夫 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.69 - P.73

要旨:回腸囊肛門吻合術や結腸囊肛門吻合術のfecal diversionを目的として,一時的人工肛門が造設されることがある.しかし,閉鎖術は侵襲が小さいわりに合併症が多いとされる.また,閉鎖時期については早期の閉鎖が合併症が多いとの報告が多いが,一定の見解がないのが現状である.われわれは一時的人工肛門造設時に工夫を加え,患者のquality of life(QOL)の向上のため早期の閉鎖を実践し,良好な結果を得ている.

腹壁創の哆開と再縫合

著者: 高済峯 ,   中島祥介

ページ範囲:P.75 - P.79

要旨:開腹術後の創哆開は重篤かつ緊急の処置を要する術後合併症の1つであり,肥満,低栄養,創感染,ステロイドの長期使用などを誘因として発生する.再縫合のタイミングを考える際には,創自体が一時的な縫合閉鎖が可能な状態であるかに加え,感染傾向の有無を見極めることが必要である.腹部内臓の完全な腹壁外脱出を伴う場合は,腹腔内臓器の保護や患者の心理的ダメージを考え,ただちに再縫合を行うべきである.創局所や腹腔内の感染が存在する場合は,開放創としたまま被覆剤などによって腹部内臓を保護したうえで,感染の消退と哆開部の上皮化を待ち,待機的に筋層の再縫合あるいは修復を考慮する.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・4

腹腔鏡下結腸右半切除術

著者: 奥田準二 ,   山本哲久 ,   田中慶太朗 ,   川崎浩資 ,   谷川允彦

ページ範囲:P.5 - P.15

はじめに

 進行大腸癌に対する腹腔鏡下手術では,腹腔鏡下での外科解剖を熟知し,癌手術の原則を遵守した合理的なアプローチのもとで的確な手技と適切な器具を用いる必要がある.

 本稿では,腹腔鏡下結腸右半切除術(D3郭清)のポイントを腹腔鏡下の外科解剖,アプローチ,器具,手技,ピットフォールと予防策などの点から述べる.

臨床外科交見室

わが国における痔核,粘膜脱に対するPPH(Longo法)の行く末は?

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.80 - P.80

1998年,Longo1)が痔核手術において器械で直腸粘膜を環状に切除する画期的な方法を発表した.この方法で痔核あるいは粘膜脱に対する手術は大きく変わるのではないかと期待された.長年にわたって施行されてきたいわゆる結紮切除法(Milligan-Morgan法)とのRCTにおいてもいわゆるLongo法の有用性が報告されている2)

 筆者は32歳,女性の脱肛に第一例目を行い,従来法との術後疼痛や経過があまりにも違いすぎるので(PPHが優れている),その後25例程度行い,痔核治療がいずれこの方法に取って代わるのではないかと考えた3)

目で見る外科標準術式・55

肛門狭窄を合併する慢性裂肛に対する皮膚弁移動術(SSG法)

著者: 松島誠

ページ範囲:P.81 - P.85

はじめに

 慢性裂肛における肛門狭窄症状は程度に差はあるがほぼ必ず認められる症状である.慢性裂肛潰瘍部の肛門管上皮と潰瘍底に露出した内括約筋が線維化し,伸展性を失って狭窄症状を呈するようになる.この狭窄はさらに裂肛増悪因子として働き,症状を悪化させる.通常,裂肛はそのほとんどの症例が排便のコントロールを中心とした生活指導と保存的な方法で治療可能である.仮に保存的治療に抵抗して急性裂肛が潰瘍化した症例でも側方皮下内括約筋切開術(LSIS)や,用手的肛門拡張術などで治療可能なものがほとんどである.しかし,さらに症状が進行し,強度の狭窄症状を呈するようになった慢性裂肛の治療では,伸展性を失った潰瘍部切除を含めた根本的な手術治療が必要となる.

 本稿では,慢性裂肛の治癒を阻害する因子である狭窄を解除し,同時に潰瘍切除部を正常な肛門周囲皮膚で覆う皮膚弁移動術(SSG法)について述べる.

海外医療事情

モンゴルの医療事情

著者: 松股孝

ページ範囲:P.86 - P.89

はじめに

 新医師臨床研修制度が始まった.「夏の暑さに不平を言い,空青きことに気づかぬ者が多い」のが兎角の世の中であるが,最近のわが国の卒後医学教育の優れている点は医療技術の伝授である.技術偏重と批判もされるが,技術の伝授とともにプライマリ・ケアにおける医療面接と身体所見の取り方をマスターすれば,これからの医師は鬼に金棒である.

 今年はたった1人しかいない「管理型」研修医を伴いモンゴルに行った.検査機器もほとんど整備されていないモンゴルで医療面接と身体所見によって診断に迫るモンゴルの医師がいかに優秀であるかを見せたいためである.

病院めぐり

防治会いずみの病院外科

著者: 長田裕典

ページ範囲:P.90 - P.90

いずみの病院は高知自動車道の高知ICを下ってすぐの高知市北部地区に位置しており,近年は商業,住宅地域として発展著しい地域にあります.

 当院は平成13年7月1日に新設され開院しました.夕部冨三院長(昭和53年自治医大卒)以下常勤医は19名で,診療科目には内科,消化器科,循環器科,外科,整形外科,脳神経外科,泌尿器科,眼科,放射線科,麻酔科,リハビリテーション科,健康管理科があります.病床は238床で,内訳は急性期118,緩和ケア12,回復期リハ48,療養型60で,地域医療連携病院および救急指定病院となっています.病院屋上(7F)にはサンルームや展望所,食堂,多目的ホールがあり,患者さんの憩いの場となっています.ここからは高知市街が一望でき,夏の風物詩である鏡川の花火も見物できます.

飯田市立病院外科

著者: 千賀脩

ページ範囲:P.91 - P.91

飯田市は長野県の南部に位置しており,南アルプスと中央アルプスに抱かれています.諏訪湖を源に遠州へ流れ下る天竜川に貫かれた山の都で,小京都とも呼ばれる風光明媚な町です.

 飯田市立病院は昭和26年に創立され,平成4年に現在の八幡地区に新病院を新築し,移転しました.当時の病床数は354床で,平成10年の第二期増築によって病床数は49床増床して403床になりました.病院の基本理念は「私たちは,地域の皆さんの健康と快適な生活を支える病院を目指します」で,地域に信頼される病院を目指しています.

日米で異なる外科レジデント教育・医療事情・7

医学生の外科クラークシップ(外科臨床実習)

著者: 十川博

ページ範囲:P.92 - P.93

◇米国の外科クラークシップ(ストーニーブルック校の状況)◇

 今回は米国医学生への外科教育について検討していく.筆者が日本で医学生だった頃は盛んに“米国の医学生はインターンのように働いていて,実際的なことを学んでいる.しかるに日本の医学生は臨床実習でお客さん扱いで,何にもできない”と言われていた.その批判をもとに日本でも医学生に実際的なこと(スカットワーク・病棟の仕事)をさせるようになってきた.レジデント教育については文句なしに米国のほうが充実していると感じているが,こと医学生教育について言うと必ずしも同意できないというのが率直なところである.

 筆者が米国でインターンだった頃とレジデント4年目の現在を比べて,大きな変化が少なくともニューヨーク州立大学ストーニーブルック校ではあった.家庭医およびプライマリーケアの重要性が叫ばれ,スカットワークの多い外科のローテーションは一般の医学生(つまり外科に行かないほとんどの医学生)にとって重要ではないのではないかという議論がなされたようである.よって外科クラークシップの8週間はスカットワーク中心から小人数講義(スモールグループティーチング)中心に比重を移した.とは言っても,朝はインターン達と同様に割り当て患者を診て,ラウンド(回診)の時はチーフレジデントにプレゼンテーションをして,入院があると入院時の問診をし,入院時指示を出しということはレジデントの指導のもとで行う.手術にも毎日手洗いし,その患者をその後フォローする.しかしながら,講義時間が増えたので,手術中でもそれを抜け出し講義に出ねばならなかったり,通常,講義は午後なので午後の回診には現れなかったりと,チームメンバーの一員というには少し不十分な感じを受けている.これは,4,5年前には考えられなかったことである.昔の外科クラークシップへの批判は朝早くから夜遅くまでスカットワークばかりさせられ,何も学べないというものであった.よって,医学生に甘くなり,講義時間がもっと増えた.別にこれ自体が悪いことはない.単にバランスの問題で,振り子が振れ過ぎたのではないだろうか.日本のようにスカットワーク全くなし,医学生はお客様というのも問題だし,スカットワークだけで何の知識も身につかないのもきっと問題なのだろう.やはり中庸が良いのではないだろうか.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 12

胃腸切離断端の消毒は必要か

著者: 松股孝

ページ範囲:P.94 - P.95

【消毒剤】

 イソジンは手術部位の粘膜の消毒も用法として認められているが,外用消毒剤であるので体腔内に使用してはいけない.ヨウ素過敏症が発生する恐れがあるのでせいぜい健常皮膚の消毒に使うのが無難であろう.

 粘膜面に接触する器具をヒビテン消毒した場合には,滅菌水でよく洗い流した後に使用することとなっており,粘膜面への使用は禁止されている.ヒビテンショックに細心の注意が必要である.

 そもそも粘膜面は感染に強いので消毒は必要ない.逆に,吸収力が強いのでヨウ素過敏症やヒビテンショックが起こりやすい.しかし,消化管の縫合不全の一因が,吻合部の感染である1)とするならば,吻合部に異物があってはよくないだろう.異物を除去するという意味では,術者の運針の合いの手のようにして粘膜面を拭き取るような操作は必要かも知れない.

臨床研究

50歳未満の若年者における重複癌の検討

著者: 田中恒夫 ,   真次康弘 ,   石本達郎 ,   中原英樹 ,   香川直樹 ,   福田康彦

ページ範囲:P.97 - P.100

はじめに

 近年,平均寿命が延びていることや診断技術や治療法が進歩してきたことから,重複癌の症例を経験することが多くなってきた.当然のことながら,重複癌は高齢になるほど高頻度となることが知られている.

 一方で,検診の普及やハイリスクグループの選定,診断法の進歩などによって,若年者で発見される悪性腫瘍が増加している.若年者の定義は定まったものはないが,悪性腫瘍の検討では一般に40歳未満とするものが多い.しかし,これまでに40歳未満の若年者の重複癌の報告は症例報告しかなく,若年者の重複癌を集計して検討した報告はみられない.重複癌では2回以上の発癌となるので,今回の検討では50歳未満を若年者として扱った.

 若年者で悪性腫瘍を発症した場合,他臓器癌を合併することが高いものと予想され,その臨床像を明らかにすることには日常診療上も意義深いことであると考え,以下の検討を行った.

臨床報告・1

虫垂粘液囊腫による腸重積の1例

著者: 田中夏美 ,   岩瀬和裕 ,   檜垣淳 ,   三方彰喜 ,   宮崎実 ,   上池渉

ページ範囲:P.101 - P.104

はじめに

 腸重積を合併した虫垂粘液囊腫は稀であり,過去,わが国においては51例が報告されているにすぎない1~8).最近の画像診断の進歩によって腸重積の存在診断は容易となりつつあるが,虫垂粘液囊腫の術前診断はいまだ困難であり,開腹時あるいは切除標本の病理組織検査から診断される症例が多い.

 今回,腸重積を合併した虫垂粘液囊腫に対し,保存的治療ののちに内視鏡下整復が可能であり,腸重積整復後の画像診断を考慮したうえで低侵襲手術を施行し得た1例を経験したので報告する.

膵の悪性solid-pseudopapillary tumorと乳癌の同時性重複癌の1例

著者: 牧本伸一郎 ,   坂本一喜 ,   新保雅也 ,   林部章 ,   仲本剛 ,   園村哲郎

ページ範囲:P.105 - P.109

はじめに

 膵のsolid-pseudopapillary tumor(以下,SPT)は若年女性に好発し,比較的稀で予後良好な腫瘍である1).今回,組織学的に悪性と診断されたSPTと乳癌の同時性重複癌の1例を経験したので報告する.

Weekly low dose肝動注療法によってCRを得た異時性大腸癌肝転移の2例

著者: 阿久津泰典 ,   遠藤正人 ,   吉永有信 ,   星野敏彦 ,   太田義人 ,   落合武徳

ページ範囲:P.111 - P.115

はじめに

 近年,大腸癌肝転移症例の治療成績が向上し,切除可能例の5年生存率は20~50%程度となっている1,2).しかし,肝転移症例の約40%は発見時にはすでに切除不能で3),治療は化学療法に頼らざるを得ない.肝動注化学療法は副作用が少なく4),栄養血管の観点からは理論的であるが5),ハイリスク症例での適応は依然慎重にならざるを得ない.

 今回,われわれはweekly low dose肝動注療法を考案し,CRを得た2例を経験したので報告する.

盲腸部分切除術の1年後に根治的手術を施行した虫垂粘液囊胞腺癌の1例

著者: 岡田富朗 ,   國政賢哉 ,   竹内龍三 ,   森本接夫

ページ範囲:P.117 - P.121

はじめに

 原発性虫垂癌は稀な腫瘍であり,高齢者に好発する1).今回,急性虫垂炎症状で発症し,虫垂を含む盲腸部分切除術を行って,その1年後に盲腸切除断端付近に局所再発をきたし根治的手術を施行した虫垂粘液囊胞腺癌の1例を経験したので報告する.

Bilobed筋膜皮弁によって再建を行った巨大な毛巣洞炎の1例

著者: 千々和剛 ,   菅沼利行 ,   滝川利通 ,   江戸川誠司

ページ範囲:P.123 - P.126

はじめに

 毛巣洞は仙骨部に発生する毛髪を含んだ肉芽腫性病変である1).しばしば再発を認め,治療に難渋することが多い2)

 今回,われわれは慢性膿皮症を合併した巨大な毛巣洞炎に対してbilobed筋膜皮弁を用いて再建し,良好な結果が得られたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

症候に乏しい虫垂炎に合併した小児多発脾膿瘍の1例

著者: 生田真一 ,   安井智明 ,   相原司 ,   北浦達也 ,   光信正夫 ,   山中若樹

ページ範囲:P.127 - P.131

はじめに

 脾膿瘍は,その多くが身体各部からの細菌の血行性波及によって発症するとされているが1),文献的にも剖検例や散発的な症例報告をみるにすぎず,特に小児ではきわめて稀な疾患である.

 今回,われわれは,原因不明の脾膿瘍に対して脾摘術を施行したところ,虫垂炎の予防目的で同時に切除した虫垂に偶然炎症所見を認め,結果的に虫垂炎に起因した脾膿瘍であったと考えられた14歳男児の症例を経験したので報告する.

臨床報告・2

経肛門的イレウスチューブが有用であったOgilvie症候群の1例

著者: 藤田真司 ,   山口久 ,   四方敦 ,   酒井和加奈

ページ範囲:P.135 - P.137

はじめに

 Ogilvie症候群とは,器質的な狭窄の認められない結腸の急性仮性閉塞で,機械的イレウス症状を呈する疾患である.今回,われわれは経肛門的イレウスチューブが有用であったOgilvie症候群の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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