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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科60巻10号

2005年10月発行

雑誌目次

特集 自動吻合器・縫合器による消化管再建の標準手技と応用

<エディトリアル>特集にあたって

著者: 大坪毅人

ページ範囲:P.1219 - P.1220

■■■

はじめに

 消化器外科領域において,自動吻合器・縫合器は目覚ましい発展を遂げた分野の1つに挙げられる.

 自動縫合器とは,直線型のもの(リニアステープラー)で,ナイフの付いているものと,付いていないものがある.歴史的には1924年にハンガリーのPetzが自動縫合器を発表したのが最初といわれている.その後わが国でもこれを改良し中山式,大槻式自動縫合器が広く使用されてきた.最近さらなる改良がなされ,内視鏡手術にも使用可能なものも開発されている.一方,自動吻合器は円形のもの(サーキュラーステープラー)を指す.歴史的には1958年に日本の峯が最初の器械吻合器について発表した.その後,ソ連,さらにアメリカで改良され今日に至っている.

頸部食道-胃管吻合―三角吻合法

著者: 東野正幸

ページ範囲:P.1221 - P.1225

要旨:食道癌切除後の頸部食道-胃管吻合にはほとんどの施設で器械吻合が行われるようになってきた.しかし,サーキュラーステイプラーを用いた吻合では術後吻合部狭窄が多いとされ,このため手縫い吻合を行っている施設もある.しかし,器械吻合はその手技に慣れれば手縫い吻合に比べてバイトとピッチが均一で,誰にでも簡単に行える安全かつ正確な吻合方法である.三角吻合は端々吻合で,縫合不全率も1.7%と少ない.また,サーキュラーステイプラーを用いた吻合で多いとされる吻合部狭窄も8.5%と手縫い吻合の10.3%と同程度である.今後ますます普及していくと思われるので,本稿ではリニアステイプラーを用いた三角吻合の手技と注意点を中心に述べた.

幽門側胃切除後Billroth-Ⅰ後壁器械吻合法

著者: 高金明典 ,   阿部薫 ,   大山健一 ,   藤原久貴 ,   高橋正統

ページ範囲:P.1227 - P.1231

要旨:自動吻合器・自動縫合器の信頼性が向上し,また2004年の保険点数改定により胃切除後再建を器械で行う施設が増加している.当科では2000年6月よりBillroth-Ⅰ法(B-Ⅰ)再建に器械を使用している.当科で施行しているB-Ⅰ後壁器械吻合は残胃大彎側断端を約1.5cm切離し,そこから自動吻合器(circular stapler)を挿入し,残胃後壁と十二指腸断端を器械吻合する方法である.この方法は,開腹のみならず腹腔鏡補助下幽門側胃切除後再建においても4~5cmの小さな創から施行可能である.合併症として127例中2例(1.6%)に狭窄を認めたが,縫合不全や出血などは認めなかった.B-Ⅰ後壁器械吻合は安全かつ確実な吻合が可能で,手術時間の短縮や合併症の減少が期待できる方法である.

幽門側胃切除後のhemi-double stapling methodによる再建

著者: 吉野茂文 ,   西村拓 ,   岡正朗

ページ範囲:P.1233 - P.1238

要旨:自動縫合器・吻合器を用いた幽門側胃切除後のhemi-double stapling methodによる再建について,実際の手術手技を詳細に解説した.本法はBillroth-Ⅰ法再建のみならずBillroth-Ⅱ法,Roux en-Y法にも施行でき,また腹腔鏡補助下幽門側胃切除術にも応用可能である.本術式の特徴は,残胃と十二指腸を手縫い吻合と同様に端々吻合すること,およびサーキュラーステイプラーを切除側の胃より挿入することで残胃に余分な創が残らないことである.現在までに215例施行したが,合併症は,縫合不全が1例,吻合部狭窄が4例,早期通過障害が8例,吻合部出血が1例と少なく,臨床成績は満足のいく結果であった.

デルタ吻合―腹腔鏡下幽門側胃切除における体内Billroth-Ⅰ器械吻合法

著者: 金谷誠一郎 ,   五味隆 ,   原田信子 ,   川田洋憲 ,   片山哲夫 ,   和田康雄 ,   大歳雅洋

ページ範囲:P.1239 - P.1244

要旨:筆者らの開発した腹腔鏡下幽門側胃切除における体内Billroth-Ⅰ器械吻合(デルタ吻合)を,手術手技を中心に概説した.胃・十二指腸の後壁にfunctional end-to-end anastomosisのテクニックを応用し,リニアステイプラー(ETS Flex(R)45,blue cartridge,Ethicon Endo-Surgery)のみを用いて行う吻合法である.現在まで計60例に施行し,吻合に要した時間は平均13分43秒であった.縫合不全を1例に認めた以外,術後早期の合併症は認めておらず,長期的にも満足すべき結果を得ている.安全,簡便かつ短時間に施行できる有用な吻合法と考える.

幽門側胃切除後の三角吻合法

著者: 藪崎裕 ,   梨本篤 ,   中川悟

ページ範囲:P.1245 - P.1251

要旨:当科では1995年以降,幽門側胃切除術後のBillrothⅠ法再建に三角吻合を導入し,2004年末までに約800症例に施行している.吻合手技のポイントとして小彎縫合線がtriple stapleにならないように吻合線と直角に交差させる方法を中心に解説する.また,当科での同一チームにおける三角吻合と手縫い吻合のretrospectiveな比較検討では,D1郭清で三角吻合群の手術時間が短く,D2郭清でも短い傾向を認めた.縫合不全はなく,吻合部狭窄に関してもCommon Terminology Criteria for Adverse Events v3.0(CTCAE v3.0)のGrade 3以上の重篤な合併症はなく,術後成績も良好であった.

幽門側胃切除後のUncut Roux-en Y吻合法

著者: 宇山一朗 ,   桜井洋一 ,   小森義之 ,   中村康子 ,   庄司光孝 ,   殿村周平 ,   吉田郁男 ,   稲葉一樹 ,   落合正宏

ページ範囲:P.1253 - P.1256

要旨:近年,幽門側胃切除後の再建法としてRoux-en Y残胃空腸吻合法が普及しつつあるが,この吻合法にはRoux-en Y stasis syndromeという特有の合併症があり,治療に難渋することがある.そこで,Billroth-Ⅱ法の輸入脚の管腔を遮断することにより,空腸を切断することなく空腸の神経筋伝達路を保持した状態で胆汁・膵液の残胃への逆流を防止するUncut Roux-en Y法が提唱された.われわれはこの再建法を2004年2月より導入しているので,その手技と短期成績について述べる.

胃全摘後のRoux-Y再建術―Circular staplerによる全器械吻合法

著者: 小林理 ,   吉川貴己 ,   円谷彰

ページ範囲:P.1257 - P.1262

要旨:吻合・縫合器が登場する以前の胃全摘術は食道空腸吻合に高度な技術が求められていた.しかし,現在では,吻合・縫合器の発展により胃全摘後の再建は安全かつ迅速に行われ,食道空腸吻合を手縫いで行う施設は皆無となっている.胃全摘後の再建法としては空腸間置法とRoux-Y法が一般的である.胃全摘後の愁訴としては胸焼け,つかえ感,食事摂取量や体重減少があり,QOLを考慮した再建法が各施設で試みられている.当科では空腸間置法とRoux-Y法の患者に術後のQOLをアンケート調査し,再建法の間に差を認めなかったことから,現在は全例Roux-Y法とし,全吻合をcircular staplerで行っているので紹介する.

腸切除後の機能的端々吻合法

著者: 長谷川博俊 ,   西堀英樹 ,   石井良幸 ,   遠藤高志 ,   似鳥修弘 ,   岡林剛史 ,   浅原史卓 ,   鶴田雅士 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1263 - P.1268

要旨:大腸外科においては,直腸・S状結腸切除術後の再建は,超低位での経肛門吻合を除いて,器械吻合を行う外科医が多数となった.さらに,より口側の結腸結腸吻合や結腸小腸,小腸小腸吻合でも自動縫合器を用いた機能的端々吻合(functional end to end anastomosis:FEEA)を行う外科医が増えている.器械吻合は,ちょっとしたコツさえ会得すれば誰にでも素早く簡単にできる安全な吻合法である.悪性疾患に対する腸切除術後のFEEAには,保険上最大4個の自動縫合器加算が認められており,今後ますます普及していくであろう.

結腸切除術後の端々三角吻合法

著者: 福長洋介 ,   東野正幸 ,   谷村愼哉

ページ範囲:P.1269 - P.1273

要旨:大腸切除後の端々三角吻合法の手技と結果を報告する.当院で大腸切除後に端々三角吻合を行ったのは344例である.手術手技は以下の通りである.後壁内翻縫合は3針の全層支持糸を吊り上げ,前壁をかみ込まないようにlinear staplerで縫合する.前壁はその中央と先に縫合した後壁の端の間を外翻するように同じくlinear staplerで縫合する.前壁の残り3分の1も同様に外翻縫合する.前壁外翻縫合から開始し,180度回転させることですべて外翻する場合もある.344例中,縫合不全は2例に発生したが,吻合部出血や狭窄は認められなかった.大腸切除後の端々三角吻合はきわめて簡便でかつ安全な吻合法であると考えられる.

直腸癌に対する低位前方切除術の器械吻合―Double stapling法(反転法を含む)

著者: 福永正氣 ,   木所昭夫 ,   射場敏明 ,   杉山和義 ,   永仮邦彦 ,   飯田義人 ,   須田健 ,   吉川征一郎 ,   勝野剛太郎

ページ範囲:P.1275 - P.1284

要旨:近年の直腸癌に対する低位前方切除術は技術の改良が進み,器械吻合が導入され,より安全に低位の吻合が可能となってきた.特に腹腔鏡下手術では多くの施設でdouble stapling technique(DST)が取り入れられている.しかし,実際の手術操作は術者を中心にスタッフの連携で行い,縫合不全の原因は器械に対する知識不足と手技に起因するものが多い.安全かつ確実な吻合を完遂するには吻合に対する基本を遵守した手技と器械に対する正しい知識,適正に使いこなす技量が求められ,さらに偶発症の対処法を身につけておく必要がある.

直腸癌に対する低位前方切除後のIO-DST吻合法

著者: 小出欣和 ,   前田耕太郎 ,   花井恒一 ,   佐藤美信 ,   升森宏次 ,   青山浩幸 ,   勝野秀稔

ページ範囲:P.1285 - P.1289

要旨:直腸癌に対して安全で確実な,より低位での括約筋温存術を行うには,手術手技の工夫が不可欠である.そのために水平大腿開脚体位,尾側への切開創の延長,膀胱圧排鉤を用いた視野展開,I式洗浄器による残存直腸洗浄,endo staplerを用いての直腸の垂直方向への縫合切離,K式開肛器を用いての自動縫合器の肛門からの挿入によるIO-DST(double stapling technique)を行う.本法は,直腸を垂直方向に閉鎖することによりI字型の縫合線ができ,これをO字型のサーキュラーステイプラーで打ち抜くためIO-DSTと命名した.IO-DSTは垂直方向に長い楕円形の吻合口となり,垂直方向に長い楕円形の肛門管付近の吻合ではより生理的な吻合法と考えられ,術後成績も良好である.

直腸低位前方切除後のべーカー法

著者: 三嶋秀行 ,   池永雅一 ,   吉川宣輝

ページ範囲:P.1291 - P.1296

要旨:低位前方切除後の再建法として,側端手縫い吻合であるベーカー法について述べた.Double stapling technique法による端々の器械吻合が標準となりつつある現在,1950年に発表された端々吻合に対して側端吻合であるベーカー法の利点として,(1)吻合孔が大きい,(2)確実に吻合できる,(3)手技が容易である,の3点が強調されている.縫合不全を起こさないための3つのキーワードは,(1)十分な血流,(2)緊張のない吻合,(3)良好な視野で均一なバイトとピッチによる確実な吻合,である.器械吻合に習熟することは基本であるが,手縫いによるリカバリーの技術も外科医の基本であることを忘れてはいけない.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・13

内視鏡下甲状腺切除術

著者: 佐々木章 ,   旭博史 ,   山本政秀 ,   小笠原聡 ,   中嶋潤 ,   大渕徹 ,   若林剛

ページ範囲:P.1213 - P.1218

◆◆◆

はじめに

 近年,内視鏡下手術の進歩によって,甲状腺疾患に対しても内視鏡下手術が行われるようになった1~7).筆者らは,前胸部アプローチ法による内視鏡下甲状腺切除術を施行している2,8~12).本術式が従来の開創手術と大きく異なる点は,(1)前胸部から前頸部皮下に手術操作腔を作製する必要があることと,(2)甲状腺下方から見上げる視野での手術操作になること,である.ここに本術式特有の新しいパラダイムが存在する.

 本稿では,前胸部アプローチ法による内視鏡下甲状腺切除術について手技と内視鏡下での解剖のポイントを述べる.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 21

手術後のCT検査は必要か

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.1300 - P.1301

癌患者の手術後は,転移や再発をチェックするため,外来で定期的にCT検査を行う.例えば,はじめの2年間は年に2~3回,2年経過したら年に1~2回などであり,再発が発見されれば手術や抗癌剤治療を行う.

 再発はできるだけ早く発見して早く治療したいのが外科医であるが,再発の治療が困難で患者が死亡するのであれば,治療を受ける時期が早くなり,治療に苦しむ期間が長くなるため,「ムダな検査」と非難されかねない.

臨床研修の現状―現場からの報告・3

亀田総合病院外科

著者: 加納宣康 ,   西野洋

ページ範囲:P.1302 - P.1305

1 はじめに

 昨年度から導入された新臨床研修制度の実施により,多くの施設ではかなりの混乱をきたしていると聞くが,幸い当院では,従来からわれわれが実施してきた研修制度とほぼ同様のシステムが全国的に実施されるようになっただけであると理解しているので,特に大きな変化,混乱は経験していない.

 本稿では,亀田総合病院での卒後研修制度を「外科教育」という視点から概説する.

病院めぐり

特定医療法人同心会 遠山病院外科

著者: 加藤俊夫

ページ範囲:P.1306 - P.1306

当院は,伊勢湾をはさんで中部国際空港セントレアを望む,静かな文教都市三重県津市に位置しています.昭和30年に当時の三重県立医科大学内科教授であった遠山豪初代院長によって,地域に根ざした市民のための病院と大学の分院たる資質を備えた病院を目指して創立されました.

 内科,外科,透析科からなる病床数200床足らずの民間病院ですが,特定医療法人として公益性の高い病院を目指すことを旨とし,16列マルチスライスCT,1.5テスラMRIをはじめ画像診断装置を充実させ,全例で採血後30分以内の報告を実現している検体検査室や病理検査室を完備したほか,人工透析室を充実するなど設備面の整備と,小回りが利く献身的な機動力で地域の急性期医療のニーズに応えています.日本医療機能評価機構の認定を受け,外科では日本消化器外科学会,日本大腸肛門病学会の修練施設,日本外科学会教育関連施設,日本消化器内視鏡学会の施設認定を受けています.

寺田病院外科

著者: 板野聡

ページ範囲:P.1307 - P.1307

当院は,紀伊半島のほぼ中央で三重県の中西部に位置する名張市にあります.名張は赤目四十八瀧や伊賀忍者,江戸川乱歩生誕の地として有名ですし,当院のすぐ傍には壬申の乱で有名な夏見廃寺もあり,少し足を伸ばせば奈良や京都といった歴史の宝庫まですぐという恵まれた環境にあります.

 当院はこのような地に昭和52年3月に現院長の寺田紀彦によって開院され,もうすぐ30周年を迎えようとしています.現在は胃腸科,外科,内科,肛門科を中心に,循環器科や泌尿器科も加えて診療を行っています.病床数は急性期病床が55床,医療型・介護型療養病床が各40床の計135床で運営されています.平成15年9月には日本医療機能評価機構の認定を受け,今後とも医療の質を高いレベルで維持・提供することが責務と考えています.最近はホームページを開設して,情報の公開やメールでのお問い合わせに対応しています(www.terada-hp.or.jp).

外科学温故知新 2

わが国における外科学の進展

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1309 - P.1316

1 はじめに

 わが国の文献に「外科」という言葉が登場してくるのは,宗田一(著)「図説・日本医療文化史」によれば,南北朝時代につくられた太平記であるという.すなわち,この太平記のなかに「和気・丹波ノ両流ノ博士,本道(内科のこと),外科一代ノ名医数十人……」とあり,これが「外科」という呼称の初出であるとしている.近世まで「医」は本道,すなわち内科のことであり,外科は外から治療する(外治)本道からはずれたものというような認識でしかなかった(図1).

 時代は前後するが,鎌倉時代になると盛んに宋や元の医学が輸入されるようになり,このなかに「外科精要」や「外科精義」というようにその表題に「外科」という言葉がみられる医学書が含まれていたことから,これらを受容する過程で日本にも「外科」という呼称が取り入れられるようになったものと思われる.それまでは今日的な意味での「外科」というものは,大宝律令の医疾令(いしつりょう)に記された「創科」というふうに呼ばれていた.また,982年に宮中の典薬寮医・鍼博士であった丹波康頼(912-995)が中国渡来の多くの医書から撰述してまとめた「医心方」には「創腫科」(筆者註:きず,腫れ物医者の意味か)という呼称がみられる(この丹波家は,和気清麻呂が出た和気家とともに宮中において代々典薬頭を世襲してきた由緒ある名門医家である).このように,その当時の「外科医(創傷や腫れ物のようないわゆる外科的疾患を扱う医者という意味)」は,切り傷(金創)を扱ったり体表面の腫れ物(腫瘍)を治療していたことから「腫れ物医者」,「きず医者」や「金創医」などと呼ばれていた.また,「室町安土桃山時代医学史の研究」を著した服部敏良氏は,室町時代のある日記文学のなかに,時宗(一遍上人が開いた浄土宗の一派)の僧侶らが従軍僧として従軍し,戦傷者の看護や切り創(金創)の治療に当たっていたことを示す記述があることから,彼ら時宗の従軍僧が「金創医」,すなわち「外科の専門医」の先駆けであったと考証している.昔の医師が剃髪して僧形をしていたのはこういう事情を反映したものとも考えられる.なお,戦乱に明け暮れた戦国時代になると,ますます専門的に戦傷を治療する医師が必要とされるようになり,武家出身の金創医が現れてきたのである.

臨床研究

小児外科領域の乳腺疾患―当科症例の検討から

著者: 末浩司 ,   中村晶俊

ページ範囲:P.1317 - P.1320

はじめに

 小児の乳腺疾患は成人に比べ少ないが,近年,成人乳癌への関心の高まりから母親が乳腺腫瘤を見つけ子供を連れ来院することが多い.小児外科医が乳腺疾患を診る機会は確実に増えている.今回,当科での小児乳腺良性疾患の検討およびわが国の小児乳腺悪性腫瘍性疾患報告症例について検討したので報告する.

臨床報告・1

胸腔鏡下手術を施行した横隔膜上巨大食道憩室の1例

著者: 竹林正孝 ,   若月俊郎 ,   豊田暢彦 ,   野坂仁愛 ,   鎌迫陽 ,   谷田理

ページ範囲:P.1321 - P.1324

はじめに

 近年,内視鏡下手術はめざましい発達を遂げ,食道疾患の分野でも種々の疾患に適応が拡大されている.今回,われわれは口腔内逆流を伴う巨大横隔膜上食道憩室に対し胸腔鏡下憩室切除術を施行した1例を経験したので,その手術手技を中心に報告する.

空腸腸間膜原発悪性リンパ腫に胆囊石灰乳胆汁を併存した1例

著者: 青木孝文 ,   原田英樹 ,   笹野満

ページ範囲:P.1325 - P.1328

はじめに

 悪性リンパ腫は全身性と臓器原発性に分けられる.臓器原発性の腸間膜原発例は遊離性の腸間膜に発生したもので,頻度は低く悪性リンパ腫の1.85%とされる1).胆囊石灰乳胆汁も比較的少ない疾患であるが,筆者らはこれを併存した腸間膜原発悪性リンパ腫症例を経験し2病変の同時切除を施行したので,自験例を呈示し若干の文献的考察とともに報告する.

腹腔鏡下切除術を行った虫垂憩室症の1例

著者: 鶴田豊 ,   杉原重哲 ,   外山栄一郎 ,   手島憲一 ,   田中睦郎 ,   瀬戸口美保子

ページ範囲:P.1329 - P.1331

はじめに

 虫垂憩室は比較的稀な疾患で,術前診断は困難である1).術前に虫垂憩室症と診断し腹腔鏡下に切除した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

腹部鈍的外傷後の遅発性上行結腸狭窄の1例

著者: 冨澤勇貴 ,   青木毅一 ,   中屋勉 ,   大山健一 ,   秋山有史 ,   斎藤和好

ページ範囲:P.1333 - P.1336

はじめに

 今回われわれは,術前検査において大腸腫瘍性病変との鑑別を要した,遅発性上行結腸狭窄の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臀部腫瘤を主訴とした直腸gastrointestinal stromal tumorの1例

著者: 田中達也 ,   西脇巨記 ,   丹羽傳

ページ範囲:P.1337 - P.1340

はじめに

 Gastrointestinal stromal tumor(GIST)の疾患概念は近年変遷してきたが,最近では消化管の間葉系腫瘍でCD 117陽性,すなわちKITレセプターを発現している腫瘍をGISTとして扱っていることが多い1).直腸に発生するGISTは近年報告例が増加しているが臀部腫瘤を主訴とするものは稀であるため,若干の文献的考察を加え報告する.

メッシュ除去を要した鼠径ヘルニア術後遅発性感染の2例

著者: 田畑智丈 ,   長谷川洋 ,   坂本英至 ,   小松俊一郎 ,   広松孝

ページ範囲:P.1341 - P.1344

はじめに

 1994年にMesh Plug法(以下,MP)による鼠径ヘルニア根治術がわが国に紹介されて以来,meshを使用した術式が急速に普及しており,現在ではmeshを用いたtension-free hernioplasty(以下,TFH)が鼠径ヘルニア手術の主流となっている.当院でも早期よりMPを導入し,現在までに1,090症例(両側同時手術51症例,片側手術1,039症例),1,141例を経験している.術後に創感染をきたしたのは5症例(両側同時手術2症例,片側手術3症例)(0.44%)で,そのうち3症例(両側同時手術1症例,片側手術2症例)は抗生剤投与,洗浄,ドレナージなどの保存的治療にて治癒,2症例(両側同時手術1症例,片側手術1症例)は保存的治療が奏効せずにmesh除去を要した.

 今回,われわれはMP施行後に遅発性感染のためmesh除去を要した2症例(0.18%)を検討し報告する.

座談会

術後栄養管理のトピックス―キット製剤の利点と問題点

著者: 遠藤昌夫 ,   鷲澤尚宏 ,   河野辰幸 ,   福島亮治 ,   中村卓郎

ページ範囲:P. - P.

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基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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