文献詳細
特集 癌治療のプロトコール2005-2006
Ⅶ.膵癌治療のプロトコール
杏林大学医学部外科
著者: 阿部展次1 杉山政則1 植木ひさよ1 柳田修1 正木忠彦1 森俊幸1 跡見裕1
所属機関: 1杏林大学医学部外科
ページ範囲:P.229 - P.234
文献概要
1.術前患者の評価
1)存在・質的診断
体外式超音波検査(US)やCT,MRIを用いて腫瘍の存在・質的診断を行っている.これらのうち,正常膵と膵癌のコントラストが最大になる造影ダイナミックCTでの膵実質相や脂肪抑制T1強調MRI,造影ダイナミックMRIでの膵実質相を特に重視している.MRCPは全例に行っている.質の高いMRCP像が得られており,胆管ドレナージが必要のない場合は,存在・質的診断のみを目的としたERCPは最近では行っていない.しかし,良性疾患との鑑別が問題となる限局性の膵管狭窄例などでは,鮮明な膵管像や細胞を得ることを目的としたERPは積極的に行っている.超音波内視鏡検査(EUS)は,小膵癌例や,ほかの画像診断で良性疾患との鑑別が困難な症例で意義が高いと考えている.EUS下穿刺は,EUSあるいはほかの画像診断で他疾患との鑑別に難渋する場合のみ行っている.
2)進展度評価
MDCTで第一段階の進展度評価を行う.MDCTはMRIより空間分解能に優れ,curved planar reformation法などの新しい画像表示法も可能とし,進展度評価を単独でほぼ完結させうる画像診断法として重視している.造影ダイナミック検査により,リンパ節腫大,肝腫瘤,腹水などの評価とともに,局所のresectabilityを決定する動脈・門脈系の浸潤,膵前・後方進展,他臓器浸潤などの評価を行っている.胆管浸潤の評価,膵管内進展の拡がりはMRCP,あるいはERCPで得られた画像を参考としている.また,全例に胸部CTを行い,肺転移の有無を検索している.骨シンチやPETは,現状では全例に行える態勢が整っていないため,施行しない場合がほとんどである.
参考文献
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