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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科60巻13号

2005年12月発行

雑誌目次

特集 消化管機能温存を考えた外科手術最前線

―<エディトリアル>―消化管機能を念頭においた消化器外科

著者: 桑野博行

ページ範囲:P.1491 - P.1493

要旨:消化器外科手術は,安全性を重視した時代から根治性を重視した拡大郭清の時代を経て,術後のquality of life(QOL)に関係する機能温存を考慮する時代へと移ってきている.切除の対象となる臓器の温存など近年急速に進んでいる縮小手術の動きは,正確な術前診断に基づく個々の症例に応じた適正化手術への歩みとしてとらえることができる.根治性を損なうことなく術後のQOLを最大限に保持でき,かつ侵襲が最小となるような手術方法を個々の患者ごとに的確に選択する,治療法の個別化が重要である.

〔検査〕

24時間食道・胃pH検査

著者: 本郷道夫 ,   相模泰宏

ページ範囲:P.1495 - P.1498

要旨:上部消化管は生体のなかで最も極端なpH変動を示す部位であり,pH変動に病的な変動が起こることで様々な病態が出現する.最近の技術的進歩は長時間にわたる生体内のpH変動の観察記録を可能とし,様々な病態が明らかにされてきている.最も重要なpH変動は下部食道で認められる.本来は中性の食道に酸性胃内容物が逆流することによって起こる逆流性食道炎ならびに食道炎を伴わない逆流症状,すなわち胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は近年増加の傾向が著しい疾患・病態であり,研究者のみならず多くの臨床家の関心を集める領域でもある.

胃切除後患者に対する胃排出能検査

著者: 中田浩二 ,   川崎成郎 ,   仲吉朋子 ,   羽生信義 ,   柏木秀幸 ,   矢永勝彦

ページ範囲:P.1499 - P.1507

要旨:胃切除後にみられる胃運動能障害は胃術後障害の発生要因となる.胃癌術後のQOL(quality of life)が重視されるようになり多様な再建法が行われているが,胃術後障害の病態解明や機能温存・機能再建手術の有用性を評価するための消化管機能検査は確立しておらず,広く行われてはいないのが現状である.一方,わが国では胃排出能検査をはじめとする消化管機能検査について多施設共同検討のもとに標準化しようとする努力がなされてきた.なかでも近年急速に普及しつつある13C呼気ガス診断を応用した検査法は,簡便かつ非侵襲的で安全性,信頼性に優れていることから,より日常的な検査法として臨床の場に浸透し,胃切除後患者の病態解明や術式評価の共通の物差しとして利用されることが期待される.

消化管運動

著者: 持木彫人 ,   大野哲郎 ,   神山陽一 ,   藍原龍介 ,   桑野博行

ページ範囲:P.1509 - P.1514

要旨:消化管運動は空腹期と食後期に分類され,それぞれ特徴的な収縮パターンを示す.特に,空腹期は強い収縮力をもった収縮波群が90~100分間隔で周期的に胃から小腸へと肛門側に伝播しinterdigestive migrating motor complexと呼ばれている.消化管運動収縮は神経性,体液性に調節されており,空腹期収縮では消化管ホルモンのモチリンが重要である.消化器手術後は正常の消化管運動が障害され,様々な収縮障害が引き起こり,その回復には一定期間を要する.これらの消化管運動は消化管壁運動を直接に測定する方法と内腔から測定する方法があり,計測する目的により適時,測定方法を選択する.

〔機能性疾患の外科最前線〕

胃食道逆流症に対する低侵襲内視鏡的治療

著者: 小澤壯治 ,   吉田昌 ,   熊井浩一郎 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1515 - P.1523

要旨:胃食道逆流症に対する内視鏡的治療には現在6種類の方法が発表され,3つのカテゴリーに分類できる.第一のカテゴリーは噴門部に皺襞を形成する方法でEndoCinch(R)法(ELGP法),Full Thickness PlicatorTM法,Endoscopic Suturing Device(R)(ESD)法が,第二のカテゴリーはLES領域の筋層を変性させる方法でStrettaTM法が,第三のカテゴリーはLES領域に異物を挿入する方法でEnteryxTM法とGatekeeperTM法がある.治療成績については,症状と酸逆流の改善はほぼすべての方法で認められているが,食道内圧所見まで改善しているのは第三のカテゴリーのみである.PPI中止率は70%前後の成績が多い.耐久性については長期的な観察が必要であり,また重篤な合併症や合併症死については再発防止の対策をとる必要がある.

アカラシアに対する腹腔鏡下手術

著者: 柏木秀幸 ,   小村伸朗 ,   坪井一人 ,   矢野文章 ,   石橋由朗 ,   矢永勝彦

ページ範囲:P.1525 - P.1533

要旨:アカラシアに対する治療として,1990年代から内視鏡下手術が行われるようになってきた.胸腔鏡下Heller筋層切開術と腹腔鏡下Heller筋層切開術+噴門形成術である.特に腹腔鏡下Heller筋層切開術+噴門形成術は,確実な通過障害の改善効果と逆流防止効果を有するために,アカラシアに対する治療の第一選択となりつつある.一方,保存的治療として拡張治療が行われているが,若年者では再発が起こりやすいため,最初から腹腔鏡下手術の選択がある.また,拡張治療の既往は,内視鏡下手術の治療成績に影響を与える可能性はあるが,その影響は少ない.重症例や術後再発例に対しても内視鏡下手術が行われるようになってきたが,良好な成績を得るためにも,手術手技の習熟が必要である.

ヒルシュスプルング病

著者: 窪田正幸

ページ範囲:P.1535 - P.1540

要旨:ヒルシュスプルング病は機能性下部消化管通過障害を示す典型的疾患で,基本的な手術術式はSwenson法,Duhamel法,Soave法に大別でき,現在用いられているのはそれぞれの変法である.それぞれ異なるコンセプトで考案された優れた術式で,わが国ではDuhamel変法がよく用いられてきた.近年,経肛門的プルスルーと呼ばれる術式が考案され汎用されるようになった.経肛門的プルスルーは,short segment typeが適応となり,腹腔鏡補助下で行うこともあるが基本的には肛門部からの操作のみで可能である.乳児期早期から施行可能で,低侵襲のうえに腹部の術創がなく美容的にも優れている.短期的フォローでも,機能的に優れていることが報告されている.

〔癌手術における機能温存および機能再建術―食道癌〕

食道癌手術における喉頭温存および胃機能温存手術

著者: 塩崎均 ,   今本治彦 ,   重岡宏典 ,   今野元博 ,   平井紀彦 ,   新海政幸 ,   川西賢秀 ,   彭英峰

ページ範囲:P.1541 - P.1547

要旨:食道癌手術における機能温存(quality of lifeの向上)に向けての取り組みを,発声機能温存の観点からは頸部食道癌に対する喉頭温存手術を,胃機能温存の観点からは迷走神経温存食道抜去術を中心に紹介する.われわれは,頸部食道癌に対して術前化学放射線療法を行い腫瘍の縮小をはかったのち,気管,下咽頭への浸潤が認められない症例に対して咽頭輪状筋切開・喉頭挙上術を付加し,下咽頭直下から頸部食道を全摘する喉頭温存術式を行い良好な成績を挙げている.一方,秋山が開発した迷走神経温存食道抜去術は,内視鏡下手術の発達した現在,良好な視野で迷走神経を確実に温存できる術式と思われ,広範な食道粘膜病変を有する症例に対しては,新たな機能温存手術として再び脚光を浴びることが期待される.

〔癌手術における機能温存および機能再建術―胃癌〕

噴門側胃切除術

著者: 安達洋祐 ,   山口和也 ,   長尾成敏

ページ範囲:P.1549 - P.1556

要旨:噴門側胃切除は無症状の早期癌や元気な患者に行われるので,手術後も手術前のような食事や日常生活が期待される.外科医は食道と残胃を空腸で間置して逆流性食道炎を防ぎ,空腸を囊状にして食物貯留能を期待した.ところが,「パウチは小さいほどよい」「貯留と停滞は裏表」という意見もあり,多種多様な術式は甲乙つけがたい.独創性(originality)は研究には重要であるが診療には弊害であり,現場に求められるのは他人がやらない手術ではなく,誰にでもできる手術である.手術の質(quality)を評価するのは難しく,成績を比較するときの「共通の物差し」がない.今,食事摂取や生活状態などの患者QOLを評価するために「患者評価規則」が望まれる.

幽門保存胃切除

著者: 山口浩和 ,   上西紀夫

ページ範囲:P.1557 - P.1562

要旨:早期胃癌の長期予後が期待される現在,胃切除後の術後障害を軽減する手術が求められてきている.幽門保存胃切除は,幽門の機能を保存することで胃内容の墜落排出を防止し,ダンピング症候群などの術後障害を予防,さらに術後の十二指腸液逆流,鉄欠乏性貧血の予防,術後体重の回復に関して有利な術式と考えられる.術後の残胃内食物滞留や,噴門の開大のある症例での術後酸逆流型食道炎の問題があるものの,有利な点の多い術式であり,術前24時間pHモニターによる噴門機能の評価などにより適応を定め,神経温存や術後の消化管運動賦活剤の利用によって,安定した効果の得られる術式と考えられる.

〔癌手術における機能温存および機能再建術―直腸癌〕

直腸癌に対する自律神経温存手術

著者: 上野秀樹 ,   望月英隆 ,   橋口陽二郎 ,   石黒めぐみ

ページ範囲:P.1563 - P.1569

要旨:癌手術において機能温存手術が重視される近年,直腸癌に対しては自律神経温存手術が広く行われるようになっている.しかしながら,神経温存手技には施設ごとに少なからず差異が存在するのが現状である.本術式を行ううえでは,自律神経の解剖の熟知と,術者による視野展開が重要である.本稿では教室で行っている自律神経温存手技を中心にその要点を解説した.適応に関しては,本術式が,温存された自律神経周囲や郭清が不十分となる一部の側方領域に癌が遺残する危険性をはらんだものであることを認識し,慎重に決定する必要があると考えている.

新肛門―直腸癌手術における排便機能再建術

著者: 佐藤知行 ,   澁澤公行 ,   中村英美 ,   森嶋計 ,   五十嵐敦 ,   小西文雄

ページ範囲:P.1571 - P.1577

要旨:直腸癌で腹会陰式直腸切断術が施行される場合,肛門が切除されストーマが造設されるが,ストーマを回避する方法として「新肛門」がある.陰部神経は元来,肛門括約筋を支配し肛門の運動・感覚を司る.新肛門造設は,その陰部神経を再支配させた大殿筋を用いて括約筋を再建することを根幹とする術式であり,直腸,肛門,括約筋のすべてを再建する必要がある.便失禁は認められるが,ストーマとの比較で8割の満足度を得る.2期手術法に比較し3期手術法には利点が多く,現在では3期手術を選択することが多い.過去に直腸切断術を受けた患者にも2005年より新肛門造設を開始した.本術式は日本オリジナルで,いまだ他施設で追試されていない術式ではあるが,臨床開始から10年が経ち,新たな段階に入ったと言える.

〔癌手術における機能温存および機能再建術―肝胆膵癌領域〕

幽門輪温存膵頭十二指腸切除

著者: 山口幸二 ,   渡部雅人 ,   中村雅史 ,   許斐裕之 ,   杉谷篤 ,   水元一博 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.1579 - P.1582

要旨:膵頭部癌に対しては従来,2/3の胃切除を伴う膵頭十二指腸切除(pancreatoduodenectomy:PD)が広く行われてきた.臓器機能温存の考えの普及とともに幽門輪と胃を温存する幽門輪温存膵頭十二指腸切除(pylorus-preserving pancreatoduodenectomy:PPPD)を行う施設が多くなってきている.根治性と機能温存のバランスが重要である.根治性からは問題となる5,6番リンパ節転移は高頻度ではなく,PPPDでも郭清は可能なこと,さらに再発率,生存率ともにPDとPPPDで差はないとするものが多い.合併症の面ではPPPDは早期に胃排泄遅延が多いとする報告があり,長期にはPPPDが栄養状態や体重回復がよいとする報告がある.PD,PPPDを比較しまとめた.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・14

内視鏡下乳房温存手術

著者: 山形基夫

ページ範囲:P.1481 - P.1490

◆◆◆

はじめに

 乳房温存療法は早期乳癌におけるルーチンな治療法として普及し,年々その適応を拡大してきた.しかし,適応の拡大によって,本来,整容性の保持を目的として施行される術式であるべき本術式において,温存=乳房の形態が術前と同様に保持されるという用語のイメージとはほど遠い外観となってしまう症例も経験されるようになった1).すなわち,乳房温存に対する医師のイメージは乳腺を残存させる術式であるのに対し,乳房が術前と同様に残せるという患者の印象との間に格差が生じている.この点で,乳房温存に対する再建方法の開発と厳格な適応の決定が必要と考えられる.一方,内視鏡補助下乳房温存手術は乳房上に残る創を最小限にとどめる点では優れているが,乳腺切除後の再建については従来と同様の方法を用いていたため,切除体積の増加に伴う整容性の低下は否めなかった.

 それゆえ,乳房温存療法における整容性の保持には,縫合による再建を極力避け,充塡法などによって欠損部を補塡することが重要である.現在,われわれは酸化セルロース(サージセル(R):ジョンソン・エンド・ジョンソン社)を用いた充塡法を施行しており良好な結果を得ている.本稿では,これを含めて乳輪アプローチによる内視鏡下乳房温存手術の手技とコツについて述べる.

臨床外科交見室

連載企画「外科学温故知新」第1回に寄せられたご意見について

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1584 - P.1585

本誌の新連載「外科学温故知新」の開始にあたり,その第1回として「外科学の生い立ちとその進展」1)を執筆させていただいたところ,ある読者から貴重なご指摘をいただいた.具体的には,Billrothの偉業を紹介する部分で呈示した,現在はウィーン大学医学部附属医学博物館に展示されている胃標本の説明に関してである.この論文で筆者はLeskyの著書に載っていた標本写真を転載したのであるが,autopsyで得られた胃標本の中央部に弧状にみられる縫合線を,あまり深く考えることなしに,これまでどおりに「Lembert縫合でなされた完璧な残胃十二指腸吻合」と説明した(1159頁の第10図).

 さて,図1はこの医学博物館が発行しているガイドブックに載った胃標本写真であるが,Wölflerの報告によれば,残胃と十二指腸を“oralis superior”で吻合再建したのであるから,注意深く観察すればこれが吻合部であるわけがない.この写真では右側が食道で,左側の切開によりその内腔がみえているのが十二指腸である.はっきりとは確認できないが,十二指腸から胃へ移行するあたり(図1の矢印)が吻合部になるものと思われる.これに関して,その読者の方から貴重かつ重要な文献2,3)をご教示いただいたのである.図2として掲げたのが,Wangensteen論文2)に掲載された説明図であり,これでは吻合部が「→」でもって“(Anast.)”と示されている.また,図3はZiegler論文3)に掲載された図であり(コピーを重ねているのでわかりにくいかと思うが),標本の呈示方向がWangensteen2)のものと逆向きであるが,これでは残胃と十二指腸との吻合部が“(A)(=Anastomose)”として示されている.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 23

手術前の肺機能検査は必要か

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.1586 - P.1587

【素朴な疑問】

 私が研修医の頃(1983年),吐血や下血の救急患者が多く,どのような患者でも入院したら,すぐに病棟の検査室で「血液型,ヘマトクリット,総蛋白」を調べ,耳朶を穿刺して「出血時間」を計り,それらをカルテの1頁目に貼っていた.

 手術前の腎機能評価は「PSP排泄試験,クレアチニンクリアランス,Fishberg濃縮試験」がセットであったが,それぞれ腎血流量と近位尿細管機能,糸球体濾過率,遠位尿細管機能を反映するからであった.

臨床研修の現状―現場からの報告・4

福井県済生会病院外科

著者: 竹越靖夫

ページ範囲:P.1588 - P.1591

1 理念とプログラムの概要

 福井県済生会病院は「すべては患者さんのために」を基本理念として,つねに最新の医療設備を整え,高度にして質の高い医療の提供に努めている.このことは,有名新聞社のアンケート調査において癌治療では最高ランクAAAの5位,患者にやさしい病院などでは病院総合評価AAAAの5位,「患者力」で選ぶ病院ベスト100ではランキング3位と評価・反映されている.

 本院の特色は,第一に福井県で初めてのホスピス開設など,患者さんの心やQOL(quality of life)を重視した温もりのある医療サービスの提供,第二に北陸で初めての地域医療支援病院認定,福井県で最初の開放型病床などにみられるような病診連携の積極的推進,第三には福井県で最初の電子カルテシステムの導入などであり,本院は急性期病院として,また地域の基幹病院としてダイナミックに医療の新しいページを開いてきている.また,本院の設立母体である恩賜財団福井県済生会には,ホスピスや健診センターを備えた病院を中心に,乳児院,老人保健施設,特別養護老人ホームなども併設されており,医療だけでなく新生児から老人まで,すなわち保健,福祉,介護に至るまで包括的に研修できる場を持っていることも特徴である.

病院めぐり

JA岐阜厚生連 岐北厚生病院外科

著者: 竹内賢

ページ範囲:P.1592 - P.1592

岐北厚生病院は,1951年に岐阜県厚生連を母体として全31床のきわめて小規模な山県病院として開院されました.その後,1972年に岐北病院,1979年に岐北総合病院,2003年に岐北厚生病院と改称されるにつれて,地域の基幹病院として発展してきました.岐阜市北部から山県市を中心とした診療圏を形成し,現在では病床数は301床(うち療養病床45床)で,13診療科,医師38名(常勤25名,嘱託13名)の中規模病院となっています.

 病院の理念は「地域連携を積極的に推進することにより利用者にとって最良の医療を実践し,愛され信頼される病院を実現すること」です.地域連携においては地域医師会との合同カンファレンスの開催(毎月),また地元救命士との症例検討会の開催(年2回)など,地域密着性の高い連携体制をとっています.また,地域医療に根ざした急性期病院としての機能拡充をはかる目的で,外来と病棟の改修,健診センターの開設,将来の電子カルテ化を睨んだオーダリングシステムの導入が行われてきました.

羽島市民病院外科

著者: 辻本浩人

ページ範囲:P.1593 - P.1593

当院は昭和30年10月に羽島市国民健康保険直営羽島病院として開設されました.昭和53年に総合病院の指定を受け,昭和61年に現在の名称へ変更になりました.平成9年に自治大臣から優良病院と表彰され,平成16年には日本医療機能評価機構認定病院となりました.現在,当院は日本外科学会認定医および専門医制度の修練施設,日本消化器外科学会専門医修練施設でもあります.

 現在の病床数は303床(一般231床,精神科62床,結核10床)ですが,平成17年12月には329床(一般271床,精神科48床,結核10床)となる予定です.診療科は内科,神経内科,呼吸器内科,消化器科,循環器科,外科,小児科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,精神科,整形外科,脳神経外科,泌尿器科,皮膚科,麻酔科の16科です.このほか,中央検査室,放射線科,理学療法室,透析室,救急および健康管理センターを設けています.常勤の職員は461名で,うち医師43名,看護師241名となっています.

外科学温故知新 4

手術管理

著者: 久田友治

ページ範囲:P.1595 - P.1598

1 はじめに

 外科のほかの分野と同様に,手術室における感染対策などの手術管理についても新しいエビデンスが報告されてきている.外科医はこれらを手術に取り入れつつあるが,いまだ慣習的な方法で行っている外科医も存在すると思われる.外科医は医学生や研修医に対して新しいエビデンスを教育しなければならず,また,手術管理についての臨床研究も行う必要があると考えられる.

臨床研究

残胃の癌の臨床病理学的検討

著者: 宮本勝文 ,   楠本長正 ,   川畑康成

ページ範囲:P.1601 - P.1605

はじめに

 残胃の癌は,1953年に胃潰瘍手術後の噴門癌切除が報告されてから,現在まで多数の報告がある.過去に行われた胃十二指腸潰瘍切除症例の高齢化や早期胃癌切除症例の増加から,残胃の癌症例は今後も増加するものと考えられる.今回,われわれの施設で経験した残胃の癌症例20例を臨床病理学的に検討し,今後の治療上の対策を明らかにする.

臨床報告・1

乳房神経鞘腫(neurilemmoma)の1例

著者: 田坂健彦 ,   山崎徹 ,   佐藤裕 ,   岸川英樹

ページ範囲:P.1607 - P.1610

はじめに

 非Recklinghausen病患者において体表面に神経鞘腫(schwannoma or neurilemmoma)が生じることは稀であり,なかでも乳房ないし乳腺に関しては1973年のCollinsらの報告1)を嚆矢として,わが国において6例の良性神経鞘腫の報告2~5)がみられるのみである.今回,72歳女性の乳房(D領域の外側)に生じた神経鞘腫の1例を経験したので,わが国の報告例の集計とともに報告する.

大腸放線菌症の1例

著者: 松村富二夫 ,   松田貞士 ,   益山貞治 ,   荒木利卓 ,   神尾多喜浩 ,   瀬井圭起

ページ範囲:P.1611 - P.1614

はじめに

 放線菌症は口腔,気管,消化管の常在菌であり,抗生物質の発達した現在,その感染頻度は減少している1).腹部放線菌症は比較的稀な疾患であるが,今回,右下腹部の有痛性腫瘤を触知し,術前に腹腔内膿瘍の診断にて手術を行い,術後に大腸放線菌症と診断された1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

小腸腸管囊腫様気腫症の1例

著者: 西谷慶 ,   太田舞 ,   石井隆之 ,   大多和哲 ,   清水善明 ,   小川清

ページ範囲:P.1615 - P.1618

はじめに

 腸管囊腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:PCI)は消化管の粘膜下や漿腸膜下の含気性気腫を特徴とし,腹腔内遊離ガス像を呈した際には緊急手術を要する急性腹症との鑑別診断上問題となる比較的稀な疾患である.

腹会陰式直腸切断術後に発症した中毒性巨大結腸症を伴った偽膜性腸炎の1例

著者: 位藤俊一 ,   井手春樹 ,   水野均 ,   水島恒和 ,   相馬大人 ,   岩瀬和裕

ページ範囲:P.1619 - P.1622

Clostridium difficile(以下,CDと略記)は抗生剤投与中の菌交代に伴う腸炎の起炎菌としてよく知られている1).今回,われわれは直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術後に認めた中毒性巨大結腸症および急性腹症を伴うCD腸炎の1例を経験したので報告する.

冠動脈バイパス術後の抗血栓療法中に発症した非外傷性腹直筋血腫の1例

著者: 長磨美子 ,   今関隆雄 ,   入江嘉仁 ,   菅又嘉剛

ページ範囲:P.1623 - P.1626

はじめに

 非外傷性腹直筋血腫は外傷以外の機序で発症し,開腹手術を要する急性腹症との鑑別に難渋することもある比較的稀な疾患である1,2).しかし,本疾患についての認識があれば容易に診断できることも多い3).今回われわれは冠動脈バイパス術後の抗血栓療法中に発症し,その特徴的な臨床像と画像所見により早期に診断し,保存的治療を行った非外傷性腹直筋血腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

術前診断に難渋した慢性膵炎による十二指腸狭窄の1例

著者: 山田洋平 ,   桜井嘉彦 ,   徳原秀典 ,   柿崎徹 ,   加勢田静

ページ範囲:P.1627 - P.1631

はじめに

 膵炎による十二指腸狭窄の頻度は比較的稀とされる.近年,十二指腸狭窄を高頻度にきたす膵頭部の限局性慢性膵炎として,groove pancreatitisの報告が散見されており,狭搾のメカニズムが少しずつ明らかにされつつある.今回われわれは画像および臨床所見より,groove pancreatitis,結核性十二指腸狭搾などが鑑別診断として挙げられ,術前診断に難渋した1例を経験した.保存的治療に抵抗性であったため膵頭十二指腸切除術を施行し,良好な経過を得ている.自験例に関して文献的考察を含めて報告する.

臨床報告・2

小児に発症した腸石嵌頓によるイレウスの1例

著者: 郷右近祐司 ,   吉田きま子 ,   千田明紀 ,   八重樫定則 ,   関根義人

ページ範囲:P.1634 - P.1635

はじめに

 腸石によるイレウスは稀な疾患で小児における報告例は少ない.今回,われわれは8歳の男児に発症した仮性腸石によるイレウスの1例を経験したので報告する.

手術手技

閉鎖を前提とした腹腔鏡補助下人工肛門造設術

著者: 松村雅方 ,   妙中直之 ,   山本篤 ,   西村重彦 ,   榎本準 ,   吉川和彦

ページ範囲:P.1637 - P.1639

はじめに

 人工肛門閉鎖術は単純な手術と考えられているが,癒着などにより剝離層が不明瞭になっている場合もあり,難渋することも少なくない.そこで,人工肛門閉鎖術を前提に,腹腔鏡補助下人工肛門造設術を施行し,安全に人工肛門閉鎖術を施行し得た症例を経験したので手技の工夫として報告する.

臨床経験

新しい完全皮下埋め込み式カテーテル留置法―上腕ポートの管理成績

著者: 井上善文 ,   廣田昌紀 ,   阪尾淳 ,   野村昌哉 ,   藤田繁雄

ページ範囲:P.1641 - P.1646

はじめに

 在宅静脈栄養法(home parenteral nutrition:HPN)1)や化学療法施行症例2)に対する完全皮下埋め込み式カテーテル(totally implantable subcutaneous infusion port:ポート)の有用性が認識され,使用症例も増加している3).HPN症例においては,輸液を投与しない期間にはカテーテル管理から開放され,自由に活動できるようになるというQOLの維持・向上4),化学療法施行症例においては,輸液・薬剤投与経路としての信頼性および繰り返す穿刺に伴う苦痛からの解放という意味合いが大きい.

 ポートの留置経路としては,鎖骨下穿刺などによりカテーテルを挿入してリザーバーは前胸部に埋め込むという方法が一般的に行われているが,われわれは,上腕の静脈切開によりカテーテルを挿入し,リザーバーを上腕外側に埋め込むという方法(上腕ポート)を新たに考案して実施している.今回,過去3年間における上腕ポートの管理成績についてまとめ,有用性を示唆する成績が得られたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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