臨床外科60巻2号

2005年02月発行

臨床報告・1

膀胱が滑脱した大腿ヘルニアの1例

著者： 金子和弘¹ 田中修二² 塚原明弘¹ 畠山勝義¹

所属機関： ¹新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野 ²新潟県立小出病院外科

ページ範囲：P.245 - P.247

はじめに

　鼠径部ヘルニアは外科診療上頻度の高い疾患の1つであり，一般に大腿ヘルニアはヘルニア門が狭いため鼠径ヘルニアと比べて嵌頓率が高い^1）．鼠径部ヘルニアにおける嵌頓臓器の大半は小腸と大網である^1）が，稀な例として虫垂^2），子宮^3），膀胱^4～11）などが報告されている．膀胱壁の一部が下部腹壁のヘルニア門から外方皮下に滑脱するものを膀胱ヘルニアと呼ぶが，鼠径輪から脱出することが多く大腿輪経由の脱出はきわめて稀である^4）．今回，筆者らはきわめて稀な膀胱が滑脱した大腿ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する．

参考文献

1）竹内邦夫，都築　靖，安藤　哲，他：大腿ヘルニア嵌頓の臨床的特徴―成人外鼠径ヘルニア嵌頓と比較して．臨外54：1215-1219，1999

2）齋藤　心，小島正幸，清水　敦，他：膿瘍を形成した大腿ヘルニア内虫垂嵌頓の1例．臨外59：371-374，2004

3）東　崇明，久保宏幸：子宮および右卵巣が嵌頓した右大腿ヘルニアの1例．臨外58：859-861，2003

4）鈴木浩司，宮本康二，栗本昌明，他：膀胱ヘルニアの1例．泌外15：55-58，2002

5）神原常仁，辻井俊彦，吉田謙一郎：右鼠径ヘルニア根治術後に発生した鼠径部膀胱ヘルニアの1例．臨泌55：579-581，2001

6）児玉雅治，板野　聡，寺田紀彦，他：膀胱ヘルニアの一例．日消外会誌31：2288-2291，1998

7）坂野祐司，成田充弘，小西　平，他：メッシュを用いて修復した女性膀胱ヘルニアの1例．泌外11：833-835，1998

8）金井優博，奥野利幸，米村重則，他：陰囊内膀胱ヘルニアの1例．臨泌51：955-957，1997

9）石津和彦，瀬山厚司，中山富太，他：鼠径ヘルニア根治術3日後に発症した膀胱ヘルニアの1例．泌尿紀要38：455-458，1992

10）新田智之，池原康人，吉岡晋吾，他：腹臥位造影CTが診断に有用であった膀胱ヘルニアの1例．日臨外会誌65：214-217，2004

11）橋都正洋，齋藤　学，久米田茂喜：膀胱が嵌頓した大腿ヘルニアの1例．長野県医学会雑誌32：46-47，2002

12）Iason AH：Repair of urinary bladder herniation. Am J Surg 63：69-77, 1944

13）Watson LF：Hernia. 3rd ed, CV Mosby Co, St Louis, 1948, pp555-575

14）Thompson JE, Taylor JB, Nazarian N, et al：Massive inguinal scrotal bladder hernias；a review of the literature with 2 new cases. J Urol 136：1299-1301, 1986