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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科60巻4号

2005年04月発行

雑誌目次

特集 Surgical Site Infection(SSI)の現状と対策

<Editorial>Surgical Site Infection(SSI)

著者: 炭山嘉伸

ページ範囲:P.420 - P.421

外科の歴史は感染症との戦いの歴史であり,無菌法や抗菌薬などの医療技術が発達した現代でも,なお外科と感染症とは切っても切れない関係にある.本特集のテーマは最も頻度の高い術後合併症である術後感染症の,中でもきわめてポピュラーなsurgical site infection(SSI)であり,その現状と問題点そして対策について,SSIサーベイランスやCDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国疾病管理予防センター)のガイドラインの紹介も交じえ,各エキスパートの先生方に論じていただいている.

 SSIはCDCのガイドライン1)で定義された概念であり,すでに定着している感がある.本邦では「手術部位感染」と訳され2),「術野感染」あるいは広い意味での「創感染」に該当する.

SSIサーベイランス研究の現状

著者: 針原康 ,   小西敏郎

ページ範囲:P.423 - P.428

要旨:SSIサーベイランスとはSSIの実態を調査してその原因を明らかにし,SSI防止のために必要な情報を担当者に報告する,SSI発生率を低下させるための活動である.

 SSIサーベイランスの重要性が近年広く認識され,2002年7月からは厚生労働省の事業としてSSIサーベイランスが行われている.SSIサーベイランス研究会は厚生労働省の事業をサポートし,SSIサーベイランスの普及と質の向上を目指して活動している.

 外科診療の場で安全で,質が高く,かつ適正なコストの医療を提供するためにはSSIサーベイランスを行い,SSI発生率を低下させる努力を続けて行くことが必要不可欠な時代となっている.

CDCのSSI防止ガイドラインを外科臨床に導入して

著者: 大久保憲 ,   大原永子

ページ範囲:P.429 - P.433

要旨:米国CDC「手術部位感染防止ガイドライン」に示された勧告事項に基づいて外科臨床における日常の感染対策を見直した.エビデンスに基づく対応として術前の日常的な除毛の廃止,対象を限定した鼻腔のMRSA監視培養の実施,禁煙期間の延長および術前のシャワー浴の奨励など,新しい基準を作成して実施してきた.手術室では手術時手洗いへのラビング法の導入,確実な術野の消毒ならびに術直前の予防的抗菌薬投与などを実施している.術後では手術創部の日常的な消毒を廃止して早期離床に努めている.その結果SSIサーベイランスのベンチマークと比較してSSI発生率において良好な結果が示されている.

SSIの術前の予防と対策

著者: 小林美奈子 ,   毛利靖彦 ,   登内仁 ,   楠正人

ページ範囲:P.435 - P.439

要旨:手術部位感染(surgical site infection:SSI)は院内感染の1つで,アメリカのNNIS(National Nosocomial Infections Surveillance System)の最近の報告によれば尿路感染に次いで2番目に多く発症している.

 SSIを防止することは手術を受ける人々にとって術後順調に経過し,早期に社会復帰できることが最大のメリットと考えられ,また在院日数も短縮され経済効果もあり,今後の医療において必要不可欠である.ここでは特に術前のSSI対策について述べる.

SSIの術中における予防と対策

著者: 竹末芳生 ,   大毛宏喜

ページ範囲:P.441 - P.444

要旨:①除毛は手術室で麻酔導入後に行う.②手術時手洗いは5分以内とし,ブラシは爪,指の間のみに使用する.擦式アルコール手指消毒薬の単独使用も行われる.③予防抗菌薬は手術直前に投与し,長時間手術では再投与を行う.④術中保温は感染対策である.⑤待機手術では必要な輸血を術後感染予防目的で控える根拠はないが,ICU重症患者において輸血制限は予後を良好にする.⑥ドレーンはルーチンに使用しない.必要なときは閉鎖式を用い,短期間で抜去する.⑦消毒薬は正常皮膚に用いるべきで創面には直接用いない.⑧創閉鎖には絹糸は用いない.⑨汎発性腹膜炎手術ではdelayed primary closureを考慮する.

術後,病棟におけるSSI対策

著者: 草地信也 ,   炭山嘉伸

ページ範囲:P.445 - P.450

要旨:術後におけるSSI対策は交差感染対策が主であり,手指消毒,ドレーン管理,病室の配置が重要なポイントである.手指消毒は単に教育・啓蒙だけでは不確実であり,手順を明確に示したマニュアルの作成が有効である.また,感染創の管理ではドレーンの扱い,消化管瘻の対処,創面の保護に工夫が必要である.一方で従来軽視されがちであった患者の配置はその適応は狭いが,今後徹底されるべき問題である.交差感染対策の要点は現場の医療従事者の教育・啓蒙だけでは不十分であり,万一1つの清潔操作に破綻が起きても,それを援護するシステム作りが必要である.

Superficial/Deep incisional SSIの治療

著者: 小山勇

ページ範囲:P.451 - P.457

要旨:表在・深部SSIは従来からいわれてきた手術後の創感染にあたる.創から菌が培養されることはその診断に必須ではないが,起因菌はどの菌で,菌数はどのくらいかを知ることはSSI創の治療上大切なことである.基本的には,1)創の開放を完全に行い,壊死組織や異物を除去し,創を洗浄することにより創の菌数を減少させ,感染創を汚染創あるいは滲出創に移行させること,2)ドレッシング材を用いて良好な肉芽を積極的に形成させること,3)創を縫合させるか,あるいは創幅を短縮させて瘢痕収縮による治癒を助けるという3段階の過程を経て治癒させる.それぞれの過程を適切に行うことにより治癒期間が短縮でき,少しでもきれいな創になることが期待される.

Organ/Space SSIの診断と治療

著者: 小野聡 ,   高畑りさ ,   望月英隆

ページ範囲:P.459 - P.463

要旨:SSI(surgical site infection,手術部位感染)とは手術操作を直接加えた部位に発生する術後感染症のことであるが,これには手術創の感染(表層superficial SSI,深部deep SSI)だけではなく縫合不全や遺残膿瘍などの腹腔内感染も含まれ,これらを臓器・体腔感染症(organ/space SSI)と呼んでいる.Organ/Space SSIは早期診断,早期治療が重要であり,早期診断には超音波,CT検査が有用である.治療手段としては適切な抗菌薬の投与と超音波あるいはCTガイド下ドレナージ術を速やかに行うこと,さらには栄養管理が重要である.

SSIの医療経済とリスクマネジメント

著者: 吉田順一 ,   平田紀子 ,   松原伸夫

ページ範囲:P.465 - P.471

要旨:手術部位感染(SSI)は包括支払い制度が進展する医療経済とリスクマネジメントの観点から重要である.さらに両観点からクリニカルパスは有用である.当院で2,416例中SSIは105例(4.3%),米国データから標準化した感染比は0.99であった.横断的対策でバンコマイシンの総使用量はS. aureusにおけるメチシリン耐性(MRSA)率の減少とともに年間1,100万円減り,総括的に収入は約1,500万円の増,支出は約3,000万円の減となった.文献的に400床規模でSSI 1%毎に年間約5,000万円の負担となり,裁判となると膨大な費用と信用失墜をきたす.今後SSI対策は医療経済と危機管理から重要度を増すと思われる.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・7

腹腔鏡下肝切除術

著者: 金子弘真 ,   前田徹也 ,   片桐敏雄

ページ範囲:P.415 - P.419

はじめに

 近年の機器の開発・改良によって内視鏡下手術の適応疾患は急速に拡大された.しかしながら,肝疾患に対する腹腔鏡下肝切除術も多くの施設で行われるようになってきているものの,現状ではいまだ普及し定着した手術とは言えない.その最大の原因として,肝臓の内視鏡下手術における位置関係と,きわめて豊富な脈管構築からなる実質臓器という解剖学的特殊性が挙げられる.このため,minimal invasionを特徴とした腹腔鏡下手術の応用は他分野に比べて制限されているが,その解剖を熟知し,安全性の高い手術手技を確立することによって新たな展開が期待される分野でもある1~3)

 本稿では,腹腔鏡下肝切除術における解剖のパラダイムシフトについて概説する.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 15

虫垂切除の断端埋没は必要か

著者: 中川国利

ページ範囲:P.472 - P.473

【素朴な疑問】

 急性虫垂炎の手術では,虫垂を切除したのちの断端を埋没するのが常識である.壁が薄い盲腸にタバコ縫合をかけることは案外難しく,初心者が虫垂断端の埋没にてこずることもある.ところが,最近の腹腔鏡下虫垂切除術では虫垂の断端は単に結紮されたままであり,埋没されてはいない.虫垂の断端は腹腔内に露出していても問題はないのだろうか.また,自動切離縫合器を用いて切離したときの断端も漿膜筋層縫合を行って埋没させる必要はないのだろうか.

病院めぐり

八戸市立市民病院外科

著者: 澤直哉

ページ範囲:P.474 - P.474

八戸市は青森県東南の太平洋岸に位置しており,平成14年の東北新幹線盛岡~八戸間の開業により北のターミナル駅として全国的に知られるようになりました.人口約24万8千人で,イカの水揚げ日本一の漁港を有しています.景勝地としては,ウミネコの繁殖地蕪島(国指定天然記念物)や風光明媚な種差海岸(国指定名勝地)が有名です.代表的な祭りには,国の重要無形文化財に指定されている春の豊年祈願である「えんぶり」と,日本一の山車祭りと言われている夏の「三社大祭」があります.

 八戸市立市民病院は青森県南から岩手県北の中核基幹病院で,病床数は609床(一般528床,精神50床,結核25床,感染6床)です.26診療科,24時間体制の救命救急センター,周産期センター,熱傷センターを有しています.平成12年には日本医療機能評価機構の認定を受け,臨床研修指定病院であるとともに,平成14年には地域医療支援病院の認定も受けました.平成16年11月現在,常勤医66名,研修医35名の計101名の医師が勤務しています.

医療法人健心会えんどうクリニック

著者: 遠藤剛

ページ範囲:P.475 - P.475

地元の竹田綜合病院外科・肛門科に6年間勤務したのち本院を立ち上げ,2004年11月で開業10周年となった.10床の有床診療所として産声をあげた当時は事務員2名,看護師5名,厨房2名,医師1名であった.当初は肛門科単科でとの考えもあったが,会津という土地の特異性も含め,社会保険中央総合病院・大腸肛門病センターおよび竹田病院外科・消化器科で研修した胃・大腸内視鏡と外科・肛門科の手術(開腹はしないと決めた)を中心に,地域に根ざした「まごころと安心の医療をあなたに」のキャッチフレーズのもと開業に踏み切った.

 開業初日は何と患者が9名(うち親戚5名)と散々たる初日であった.大病院に勤めていたなどというプライドは初日から音をたてて崩れていくのを実感した.地元の人間でもあり,そして父や兄が近くで開業している(亡き祖父も以前は開業していた)環境などまったく関係のないことなのだと思い知らされた.とにかく毎日が死に物狂いであった.人と同じことをやっていては潰れると思った.

日米で異なる外科レジデント教育・医療事情・10

小児外科および移植外科の実際

著者: 十川博

ページ範囲:P.476 - P.477

はじめに

 今月は筆者は小児外科ローテーションのチーフレジデントであり,米国の小児外科の現状を知ることができたので,今回は小児外科の実際を述べる.また後半ではハーバード大学・マサチューセッツ総合病院(MGH)で移植外科のリサーチフェローをし,かつ移植外科の臨床フェローシップの面接のためにいくつかの病院をまわったので,米国の移植現場の差について述べてみたい.

臨床研究

腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術の検討

著者: 堀野敬 ,   木村正美 ,   井上光弘 ,   久原浩史 ,   西村卓祐 ,   上村邦紀

ページ範囲:P.479 - P.482

はじめに

 腹腔鏡下の腹壁瘢痕ヘルニア修復術は1993年にLeBlancら1)が報告して以来欧米を中心に広く行われている術式である.腹部手術後3~20%の症例に何らかの腹壁瘢痕ヘルニアを認めるとの報告2)もあり,高度肥満症例の頻度が高い欧米で特に本術式の需要が高まったと推察されるが,本邦では未だ保険適用となっておらず,一般術式として普及していないのが現状である.筆者らは2001年から本術式を採用し,良好な成績を得ているのでここに報告する.

臨床報告・1

腸重積で発症し腹腔鏡補助下に切除しえたvon Recklinghausen病に合併した小腸脂肪腫の1例

著者: 川口正春 ,   砂山健一 ,   山崎将典 ,   谷口正美 ,   松田巌 ,   米川甫

ページ範囲:P.483 - P.486

はじめに

 von Recklinghausen病(以下,R病)は皮膚のカフェオレ斑,神経線維腫,紅彩結節を主要症状とする遺伝性疾患である.消化管病変の合併については非上皮性腫瘍,特に神経原性腫瘍が多いとされる1,2)

 今回,筆者らは腸重積で発症したR病に合併した小腸脂肪腫に対して腹腔鏡補助下に切除しえた症例を経験したので報告する.

乳癌による癌性心囊炎加療後長期生存の1例

著者: 長田啓嗣 ,   田代圭太郎 ,   米田浩二 ,   大村秦 ,   清田誠志 ,   北村彰英 ,   磯田幸太郎

ページ範囲:P.487 - P.490

はじめに

 癌性心囊炎は臨床で時々みられるが,その予後はきわめて不良である.今回,筆者らは癌性心囊炎にて入院加療後治療が奏効し,比較的長期に再発なく経過している症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Irinotecan/Cisplatin併用療法が奏効した胃癌術後肝転移の3症例

著者: 須賀一普 ,   畑中利弘 ,   太田祥彦 ,   中野克俊

ページ範囲:P.491 - P.494

はじめに

 胃癌術後肝転移(肝再発)の抗癌剤治療については評価の定まった治療法はない.今回,筆者らは胃癌術後肝転移の3症例にIrinotecan/Cisplatin併用療法(以下,CPT-11/CDDP療法)を行い,3症例全例に若干の知見を得たので報告する

稀な経過を辿った胃カルチノイド多発性肝転移長期生存の1例

著者: 花井雅志 ,   鷹尾博司 ,   山田成寿 ,   足立尊仁 ,   青木幹根

ページ範囲:P.495 - P.498

はじめに
 消化管カルチノイドの中には早期から脈管侵襲と遠隔転移をきたす悪性度の高い腫瘍が存在し,一般に肝転移例の予後は不良である1)

 今回,筆者らは稀な経過を辿った胃カルチノイド多発性肝転移長期生存の1例を経験したので文献的考察を含め報告する.

直腸多発性管状絨毛腺腫の1例

著者: 甲谷孝史 ,   岡祐一郎 ,   吉田素平 ,   堀内淳 ,   宮内勝敏 ,   河内寛治

ページ範囲:P.499 - P.502

はじめに

 直腸絨毛腫瘍は比較的稀な疾患である1,2).今回,直腸多発性管状絨毛腺腫を経験したので文献的考察を加えて報告する.

イレウス管が原因となった小腸腸重積症の1例

著者: 唐澤幸彦 ,   谷内田真一 ,   清家愛幹 ,   岡田節雄 ,   臼杵尚志 ,   前田肇

ページ範囲:P.503 - P.506

はじめに

 イレウス管は消化管内の減圧手段としてきわめて有用な手段であり,また,イレウス手術時のsplint用としての有用性も指摘されている1,2)ことから,今日臨床現場で多用されている.しかし,一方でイレウス管留置により消化管穿孔や出血,肺炎などの合併症が生じることがあり,稀なものとして腸重積の合併が報告されている.今回,1手術例を経験したので報告する.

術前に診断しえた虫垂癌の1例

著者: 稲荷均 ,   熊本吉一 ,   片山清文 ,   白石龍二 ,   田辺浩悌 ,   谷和行

ページ範囲:P.507 - P.509

はじめに

 虫垂癌は稀な疾患で,術前に診断することは困難である.また虫垂炎様の症状をきたすことがあるので,虫垂炎と診断し手術したが開腹所見または病理標本所見で虫垂癌と診断し,追加切除を余儀なくされたという報告は多い.

 今回,筆者らは大腸内視鏡検査で確定診断した虫垂癌の1例を経験したので報告する.

von Recklinghausen病を合併した非浸潤性乳癌の1例

著者: 阿久津泰典 ,   宮澤幸正 ,   松原久裕 ,   坂田治人 ,   川島太一 ,   落合武徳

ページ範囲:P.511 - P.514

はじめに

 von Recklinghausen病(以下,R病)は皮膚の神経線維腫やcafe au lait spotなどの特徴的な症状を呈する遺伝性疾患として知られている.悪性腫瘍との合併がしばしばみられるが,多くが非上皮性腫瘍で,上皮性腫瘍との合併は比較的少ないとされている1).これまで乳癌との合併も稀とされていたが,近年のR病の疾患認識とともに報告数が増加の傾向にある.しかし,多くが進行癌で,早期で治療しえた症例は少ない.今回,筆者らはR病合併非浸潤性乳癌(DCIS)の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

フィブリン糊注入により治癒した術後難治性瘻孔の2例

著者: 花井雅志 ,   鷹尾博司 ,   山田成寿 ,   足立尊仁 ,   青木幹根

ページ範囲:P.515 - P.519

はじめに

 瘻孔は外科手術後の縫合不全などに伴い発生することが多い.通常保存的な治療が実施され,治癒することが多いものの,時に難治化する症例を経験する.

 今回,筆者らは胃全摘術後の出血を伴った難治性瘻孔と脾摘術後の難治性瘻孔を経験した.症例1には止血と瘻孔閉鎖目的で,症例2には瘻孔閉鎖目的でフィブリン糊注入を行い,奏効したので報告する.

胆管内ガス像を呈した急性気腫性胆囊炎の2例

著者: 櫻井丈 ,   朝倉武士 ,   諏訪敏之 ,   瀬田真一 ,   中野浩 ,   大坪毅人

ページ範囲:P.521 - P.525

はじめに

 急性気腫性胆囊炎(acute emphysematous cholecystitis)はガス産生菌を起因菌として胆囊内,胆囊周囲組織内に特徴的なガス像を示す比較的稀な急性胆囊炎の一亜型である1).なかでも胆管内にガス像を認めた本邦報告例は自験例を含め30例と稀である.

臨床報告・2

直腸静脈瘤に対するPPH(R)の使用経験

著者: 河原秀次郎 ,   良元和久 ,   伊藤隆介 ,   柏木秀幸 ,   平井勝也 ,   矢永勝彦

ページ範囲:P.526 - P.527

はじめに

 直腸静脈瘤は肝硬変などの門脈圧の亢進に伴う上直腸静脈,あるいは中下直腸静脈との側副血行路として肛門管口側に連続した静脈の怒張として出現する1~3).その発生頻度は門脈圧亢進症の16~89%とされ,報告にかなりの差がみられる.合併症としての出血の頻度は直腸静脈瘤の0.45~3.6%4,5)とされ,比較的稀ではあるが,ひとたび出血が生じると出血量が多く,止血に難渋し,致死的な疾患になりうることもある.治療法としてはこれまで根治的なものはなく,内視鏡的静脈瘤結紮術や内視鏡的硬化療法が広く用いられてきた.今回,筆者らは直腸静脈瘤に対しprocedure for prolapse and hemorrhoids(PPH(R))を用いて粘膜下層の血流を遮断し,静脈瘤自体を切除した.本治療法は今後直腸静脈瘤に対する有効な治療法の1つとなりうると考えられたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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