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文献詳細

雑誌文献

臨床外科60巻7号

2005年07月発行

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 18

術前手洗いにブラシは必要か

著者: 山村義孝1

所属機関: 1愛知県がんセンター消化器外科

ページ範囲:P.898 - P.899

文献概要

筆者が外科医になりたての頃は,最初に清潔と不潔の違いを厳しく教えられ,手術手技を覚える以前に手指消毒(以下,手洗い)を徹底するよう教え込まれた.先輩に監視されながら,前腕の皮膚が真っ赤になるまでブラシで擦った記憶がある.現在においても,多くの施設でこれと似たようなことが行われていると思われるが,このようなブラシの使用についての医学的根拠は乏しい.多分に経験主義的あるいは徒弟制度的なものによる,先輩から後輩に受け継がれてきた一習慣に過ぎないと考えている.

 術後感染の防止のためには清潔な操作が重要であるということは,150年ほど前にSemmelweisによって証明された.彼は産婦人科の医師であり,手洗いをすることによって,当時,高率に発生していた産褥熱を防止することに成功した.以来,術前の手洗いが定着し,やがて術野のいっそうの無菌化をはかる目的で滅菌した手袋が用いられるようになり,現在に至っている.

参考文献

1)山村義孝,小寺泰弘,紀藤 毅,他:手術用手袋の術中損傷についての検討.臨外53:787-792,1998
2)樋口道雄,鈴木朝勝,新太喜治,他:手術時手洗い方の現状(アンケート調査による).手術部医学8:63-64,1987
3)厚生省保健医療局結核感染症課(監),小林寛伊(編):消毒と滅菌のガイドライン.へるす出版,1999,p25
4)山村義孝,清水泰博,小寺泰弘,他:手術時の手指消毒薬および手指ブラッシングについて.日臨外会誌60:884-892,1999
5)山村義孝,小寺泰弘,伊藤誠二:自験結果から推奨する術前の手洗い方法.臨外56:1185-1191,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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