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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科60巻8号

2005年08月発行

雑誌目次

特集 肝切除のコツを知る―出血を少なくするために

肝切除術における出血のコントロール―術前3D-CTによる脈管切離部位の同定を中心に

著者: 渡會伸治 ,   杉田光隆 ,   田中邦哉 ,   菅江貞亨 ,   上田倫夫 ,   松尾憲一 ,   関戸仁 ,   遠藤格 ,   ,   嶋田紘

ページ範囲:P.955 - P.960

要旨:肝切除術は消化器外科のなかでは最も出血のリスクが高い手術である.肝切除の際の出血部位の多くは肝静脈であり,これは中心静脈圧(CVP)に相関する.したがって,阻血法として,著しい硬変肝の場合は通常Pringle法で片葉阻血法を用い,CVP:3mmHgを目標に肝切離中は1回換気量を30%減らしている.しかし,これでもCVPが低下しない場合は肝下部下大静脈を遮断している.肝切離は超音波外科吸引装置(CUSATM)と滴下式双極電気メスを用いて行っている.さらに,肝切除術前に門脈3次分枝の分岐パターンならびに肝亜亜区域単位でのドレナージ静脈の分枝を把握することが術中の大出血を防ぐうえで重要であり,例えばS8亜区域切除の際はP8の分岐パターン,RV8,MV8の本数・分岐点などを3D-CTを用いて把握しておかなければならない.

出血を減らす術中管理の要点

著者: 藤井努 ,   中尾昭公

ページ範囲:P.961 - P.963

要旨:肝臓は血流に非常に富む臓器であるため,その切除手術に当たっては,出血コントロールがきわめて重要である.Pringle法もしくは片葉阻血法により,門脈および肝動脈からの出血はある程度抑えることが可能である.よって肝静脈圧,すなわち中心静脈圧を低く抑えることが,術中管理の要点の1つであるといえる.肝切除手術時の出血に対する濃厚赤血球液輸血は,肝臓への負担を増加させビリルビン値の上昇につながるため,その使用には十分な配慮が必要である.

Pringle法の要点

著者: 竹内幹也 ,   近藤哲 ,   平野聡 ,   田中栄一 ,   原敬志 ,   斉藤克憲 ,   七戸俊明 ,   川原田陽 ,   宮本正樹 ,   森川利昭

ページ範囲:P.965 - P.970

要旨:肝切除に際し,出血を少なくする工夫の1つとしてPringle法が知られている.本法は肝十二指腸間膜で血流を一括遮断することにより,肝切離時の出血を減少させることを目的としているが,さらに肝阻血域の選択性をもたせた血行遮断も可能である.具体的には,肝門部でGlisson左枝,右枝をそれぞれテーピングし,右枝についてはさらに右前枝,右後枝を遊離してテーピングする.肝切離の際には,これらのテープを用いて切離面に隣接する領域を選択的に阻血することで,出血をコントロールしつつ温存すべき肝実質の阻血による障害と門脈あるいは腸管のうっ血を予防することができる.またGlisson枝を末梢に追求することで,さらに細かい領域での選択的肝切除が可能となる.本稿では,Pringle法と,より選択的な血行遮断のための手技(portal pedicle isolation technique)の実際について述べ,さらに術後の肝障害を軽減するための工夫についても考察する.

肝下部下大静脈血行遮断

著者: 桂川秀雄 ,   高崎健 ,   大坪毅人 ,   山本雅一

ページ範囲:P.971 - P.974

要旨:肝切離面からの出血は,動脈・門脈のinflow system,肝静脈のoutflow systemの2系統があり,動脈・門脈のinflow systemに対してはPringle法が確立されている.一方,肝静脈からの出血に対してはこれまでは全肝血流遮断が施行されてきたが,肝切離面からの出血量を減らすという意味では手技が煩雑で適当でない.当科の検討では,肝静脈のoutflow systemからの出血は肝静脈の逆流によるものであり,肝下部下大静脈を遮断することで中心静脈圧をコントロールし,肝静脈からの出血を減少させられるとの結論を得た.

Total hepatic vascular exclusion(THVE)法による肝切除術

著者: 清水宏明 ,   伊藤博 ,   木村文夫 ,   宮崎勝

ページ範囲:P.975 - P.981

要旨:肝部下大静脈への癌の直接浸潤,あるいは肝静脈から下大静脈内に進展する腫瘍栓など肝部下大静脈から肝静脈根部の血管処理を要する手術では,肝部下大静脈および肝を一時的に全身血行から完全に遮断するtotal hepatic vascular exclusion(THVE)法は術中出血量を抑え,air embolismなどの合併症を防止し得る有用な方法であるとともに,このような難易度の高い外科切除を確実に施行するための必要不可欠な手技でもある.一方,最近のMRI,MD-CTなど画像診断法の発達により,術前に下大静脈への腫瘍の浸潤範囲あるいは腫瘍栓の先進部位も正確に診断することが可能となっており,その進展範囲に応じた適切なTHVE法を選択することにより,安全かつ根治的な手術が可能となる.本稿では,THVEを併用した肝切除術の具体的な手技とその要点について解説する.

Liver hanging maneuver法による肝切除

著者: 長島郁雄 ,   高田忠敬 ,   天野穂高 ,   吉田雅博 ,   三浦文彦 ,   井坂太洋 ,   豊田真之 ,   高木健司 ,   加藤賢一郎 ,   熊沢慶吾 ,   冲永功太

ページ範囲:P.983 - P.986

要旨:Liver hanging maneuverは,フランス外科医のJacques Belghitiにより紹介され,以後その有用性が広く認識され,今や下大静脈を露出させるような肝切除術式において必須の手技となっている.本稿では,われわれの経験から学んだこの手技施行におけるコツと,さらにこれを応用した肝切除の実際について詳述する.

Arantius管牽引法による左肝静脈の肝外処理

著者: 杉山政則 ,   阿部展次 ,   森俊幸 ,   跡見裕

ページ範囲:P.987 - P.991

要旨:従来,左肝静脈を単独に肝外処理することは困難とされてきた.教室ではArantius管を切離・牽引することにより左肝静脈を肝外でテーピングしている.これは,(1)Arantius管は門脈左枝から左・中肝静脈合流部または左肝静脈根部の背側面へ向かう,(2)左肝静脈の根部は肝外に存在する,という解剖学的知見に基づいている.実際には,まず左・中肝静脈共通幹の腹側面を露出する.つぎにArantius管を上中1/3の部位で結紮切離し,切離端を頭側左側へ強く牽引する.左・中肝静脈の股の部分の線維性間隙の背側面が明瞭となり,ケリー鉗子を背側から腹側へ通し,左肝静脈をテーピングする.本法は安全かつ容易で有用な手技である.

肝切除におけるコツ―出血を少なくするために

著者: 塚田一博 ,   山岸文範 ,   坂東正

ページ範囲:P.993 - P.997

要旨:肝切除手術では術後に必要な肝機能の温存が至上命令であり,これには残存肝体積と侵襲を最小限にするために出血量を減らすことが必要である.本稿では出血量をいかに少なくするかという観点で,外科解剖学的特徴,特に肝静脈域分水嶺,肝切離器械,血行遮断法,hanging maneuverなどを取り上げ,さらに実際の肝切離のうえで出血を減じるコツについて述べる.肝切離での困難な止血の多くは,遮断しやすい肝門からの流入血流ではなく,肝静脈枝からである.解剖学的には肝静脈域分水嶺理論に基づく切離面の選択が必要であり,肝切離では種々の肝切離器具を駆使してグリソン系脈管をまず処置し,ついで下大静脈圧を考慮した肝の挙上や下大静脈側からのback flowを抑えるhanging methodなどを適宜用いることが重要である.

超音波吸引装置(CUSATM)の使い方のコツ

著者: 長尾美津男 ,   中島祥介

ページ範囲:P.999 - P.1002

要旨:超音波吸引装置は一般にCUSATMと呼ばれており,多くの施設で肝切除に使用されている.CUSATMを用いた肝切除時の出血量を減らすために,注意すべき点を概説した.CUSATM操作は,できる限りドライな術野で,ていねいかつ繊細に行い,深部に差し入れるようなことは慎まなければならない.CUSATMを使用していても,操作を誤れば脈管を損傷することを銘記し,その原理と特性を理解して使用することが重要である.

バイポーラー・シザースを用いた肝切除術―肝切除術におけるバイポーラー・シザースの活用法

著者: 星野高伸 ,   橋本大定

ページ範囲:P.1003 - P.1013

要旨:バイポーラー・シザースを用いて肝切除術(肝実質離断)を行う場合,(1)まずCUSATM/Crush Methodで肝実質を“割り”,索状物(脈管)を露出・認識したのち,(2)直径1mm未満の肝静脈枝および直径2mm未満のGlisson系脈管にバイポーラー・シザースを用いる.(3)肝静脈本幹近くでは使用を控えるが,いったん肝静脈の走向を認識したあとはバイポーラー・シザースを使用してもよい.(4)メッツェンバウム型のものが使いやすく,出力30~45Wが有効である.バイポーラー・シザースは万能ではないが,その特性をわきまえて使用すれば,操作性・安全性にすぐれ,結紮回数を減らし,術者や助手の疲労軽減,手術時間短縮,出血量減少に寄与する有用な手術器械である.

TissueLink Dissecting Sealerを用いた肝切除術―DS3.0TMとDS3.5CTMの使用方法

著者: 水口徹 ,   桂巻正 ,   平田公一

ページ範囲:P.1015 - P.1020

要旨:近年,高精度の手術機器の開発が急速に進んだ結果,肝切除術は比較的安全な手術との認識が高まっている.その手術機器の1つとして,肝切離機器として開発されたTissueLink社のDissecting Sealer(DSTM)は肝切離に際しては高い止血効果を有し,胆汁瘻などの術後合併症の減少にも寄与していると考えられる.その先端形状には球形のDS3.0TMと鋭的な円錐形のDS3.5CTM Cone Tipがあり,電極と切離肝実質に介在する生理食塩水を沸騰させての使用が原則である.DS3.0TMにおいてはハンドピースの支持軸を立てたままでも焼灼可能であるが,DS3.5CTMはそれを倒して焼灼することがコツであり,肝切離には鋭的な先端を利用して通電せずに肝実質を破砕させるように使用する.これらの使用方法の相違と原理を理解し,より安全な肝切除術の施行に努力されることを期待したい.

へら型マイクロ波メスを用いた肝切除

著者: 中井博章 ,   那須亨 ,   玉川孝治 ,   谷島裕之 ,   松浦一郎 ,   庄野嘉治 ,   椿原秀明 ,   井上正也 ,   堀内哲也 ,   田伏克惇

ページ範囲:P.1021 - P.1027

要旨:肝切除においては,術中の出血をコントロールすることが,安全に手術を進めるうえでも,術後の合併症を予防するうえでも非常に重要な課題である.そのために,手術手技の工夫や手術機器の開発が多くなされてきた.われわれもマイクロ波凝固装置を開発して以来,肝切除のためにいろいろな形状のマイクロ波メスを考案し,臨床に応用してきた.本稿では,従来の針状型マイクロ波メスと新たに考案したへら型マイクロ波メスを使用することにより,Pringle法や間欠的遮断を用いることによるタイムロスや阻血再還流障害の影響を小さくし,controlled methodを併用し,より安全に肝切除を行う手法を拡大肝左葉切除術を例に述べた.

腹腔鏡下肝切除の要点

著者: 黒川剛 ,   稲垣均 ,   野浪敏明

ページ範囲:P.1029 - P.1033

要旨:腹腔鏡下肝切除はいまだ発展途上な治療手段とはいえ,近年の手術機器の発達により,技術に習熟した術者が適応を限って施行すれば,低侵襲で安全な方法である.手術のポイントは,(1)小範囲の切除にとどめること,(2)切離面ができるだけ平面になるように設定すること,(3)切離線を頭に描いてポートの位置を工夫すること,(4)肝切離線に沿ってあらかじめマイクロ波によって肝実質を凝固すること,(5)切離面が広くなる場合はPringle法や片葉のグリソンを一括処理でテーピングし,流入血行の遮断ができるようにすること,(6)症例によってはハンドアシスト法を用いることなどである.一方,大量肝切除における腹腔鏡下手術の是非は今後の検討を要する.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・11

腹膜外腔アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術

著者: 池田正仁

ページ範囲:P.947 - P.953

◆◆◆

はじめに

 腹膜外腔アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(以下,TEPP)1,2)は,鼠径ヘルニアの手術に重要な解剖学的構造物を手にとるように観察しながら診断と治療を同時に行うtension-freeの合理的術式である.

 本稿では,TEPPを行ううえで重要な解剖のポイントを図や写真を用いてわかりやすく解説する.TEPPの術野を通して,はじめて難解な鼠径床解剖や各種鼠径ヘルニアの真の病態が理解できることを読者諸賢に伝えたい.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 19

胃癌手術に網囊切除は有用か

著者: 白石憲男

ページ範囲:P.1034 - P.1035

わが国で出版されている手術書を開くと,「胃癌の手術」の項に網囊切除の手技が掲載されている.研修医の頃,私も先輩から網囊切除は標準的な手術手技の1つだと教わってきた.

 網囊は胃の後面に接する腹膜で構成され,Winslow孔に開口している.網囊切除は,横行結腸間膜の前面にある腹膜を膵臓や後腹膜を被覆する腹膜とともに切除する術式である.最近出版された多くの書物にも,「癌が胃後壁に露出しているときには網囊切除を行うことが手技上のポイントである」と強調している.その理論的根拠は,漿膜浸潤を認める胃癌の場合,網囊内に微小な腹膜転移が生じている可能性があるためというものである.2004年4月に改定された胃癌治療ガイドラインには,網囊切除を省略する手術を「縮小手術」と位置づけ,その適応を漿膜浸潤のない症例とした1).しかし,「S(+)症例を含めて網囊切除の延命効果を示すエビデンスはない」とも記載している.面白いことに,有名な外国の教科書の索引を調べてみても網囊切除に対応する言葉は見つからない.もちろん,1回のRCTもない.

臨床研修の現状―現場からの報告・1

勤医協中央病院外科

著者: 原隆志

ページ範囲:P.1036 - P.1038

1 はじめに

 2004年度から新臨床研修制度が実施され,当院でも新制度に基づいた研修が開始されている.現在,1年目研修医14名と2年目研修医10名の計24名が元気に研修を行っているが,特に新臨床研修初期の2年間に行われる外科研修を中心に,その現状と問題点,課題について報告する.

病院めぐり

尾道市立市民病院外科

著者: 森雅信

ページ範囲:P.1040 - P.1040

尾道市立市民病院は,昭和5年7月に尾道市役所前の民家を借りて市立尾道診療所として開設されたのが始まりで,昭和11年9月に尾道市立尾道厚生病院(17床)として発足しました.昭和32年4月に尾道市立市民病院に改称し,昭和58年4月に現在地に新築・移転して新市民病院(240床)として生まれ変わりました.同時に病院建物内に市立夜間救急診療所(内科,外科,小児科)も開所されました.その後,様々な医療ニーズに応えるためその機能を順次高めつつ,平成11年12月には新棟が完成し,現在は23診療科,330床となっています.平成14年10月には地域医療連携室を設置し,平成15年4月には臨床研修病院の指定を受け,平成16年3月から電子カルテを含む総合情報システムが稼働し始めています.

 外科は市立尾道厚生病院の開設と同時に発足しました.昭和42年8月まで長崎大学の関連病院であり,その後は岡山大学旧第1外科から医師が派遣されています.日本外科学会,日本消化器外科学会,日本胸部外科学会,日本呼吸器外科学会などの認定医・専門医修練施設,関連施設になっています.現在のスタッフは太田保院長を筆頭に,中井肇,森雅信,川真田修,宇田征史,上塚大一,近藤喜太の7人で,消化器外科,肝胆膵外科,呼吸器外科の診療に邁進しています.

桑名市民病院外科

著者: 木下恒材

ページ範囲:P.1041 - P.1041

桑名市は三重県の北方に位置し,平成16年12月6日に桑名市と桑名郡多度町,長島町が合併して人口約13万5千人の新「桑名市」として誕生しました.桑名市は古くは東海道の宿場町と七里の渡しの港町であり,伊勢路の玄関口として賑わいました.名古屋から25km圏に位置しており,ベッドタウンとして宅地開発が進み,旧長島町には全国的に有名な総合レジャーランドがあります.

 桑名市民病院は昭和41年4月25日に開院し,現在は16診療科,234床の総合病院で地域の基幹病院の1つとして診療に励んでいます.当院は日本外科学会専門医制度修練施設,日本消化器外科学会専門医修練施設,日本大腸肛門病学会専門医修練施設,日本静脈経腸栄養学会栄養サポートチーム専門療法士認定教育施設ならびに栄養サポートチーム(NST)稼動施設,マンモグラフィー(乳房撮影)検診認定施設となっています.当院の病院理念として,(1)医療は「患者様とともに始まり,患者様とともにあって,患者様とともに終わる」という行動理念を持つべし,(2)いかにして良質の医療が提供できるかについて研鑽を重ねる知的集団であるべし,(3)公務員として,医療を通じて地域に貢献することに情熱を抱く集団であるべし,を挙げています.

臨床研究

甲状腺髄様癌手術症例の臨床検討

著者: 犬飼道雄 ,   臼井由行 ,   江口香

ページ範囲:P.1043 - P.1047

はじめに

 甲状腺髄様癌(medullary thyroid carcinoma:以下,MTC)は甲状腺癌のなかでも比較的稀な組織型である.濾胞細胞から発生しないため,ほかの分化癌とは臨床的に異なる経過をとることが知られている.MTCは散発性と遺伝性に分けられ,遺伝性のものはさらに多発内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:以下,MEN)2A型,2B型,家族性甲状腺髄様癌familial medullary thyroid carcinoma:以下,FMTC),そのほかに分けられている1)

 今回,当科で経験した甲状腺髄様癌6例について臨床検討を行った.

臨床報告・1

術前診断し得た胃小細胞癌の1例

著者: 早稲田龍一 ,   魚津幸蔵 ,   黒川勝 ,   芝原一繁 ,   八木真悟 ,   長谷川洋 ,   前田宜延

ページ範囲:P.1049 - P.1052

はじめに

 胃原発小細胞癌は比較的稀で,予後は不良である2~14).また,術前から診断のついた報告はきわめて少ない13,14).今回,術前から診断し得た胃小細胞癌の1例を経験したので報告する.

十二指腸gastrointestinal stromal tumorの1例

著者: 櫻井克宣 ,   寺岡均 ,   松永伸郎 ,   竹内一浩

ページ範囲:P.1053 - P.1056

はじめに

 近年,消化管の非上皮性腫瘍に対して免疫組織化学の進歩によってgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)の概念が提唱されている.GISTの発生部位は胃が60~70%,小腸が20~30%で,ほかの部位は少なく十二指腸は稀である1).今回われわれは,検診にて発見された十二指腸GISTの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

囊胞内CEA,CA19-9が異常高値を示した虫垂粘液囊胞腺腫の1例

著者: 池田宏国 ,   辻和宏 ,   斉藤誠 ,   平川栄一郎

ページ範囲:P.1057 - P.1060

はじめに

 虫垂粘液囊胞腺腫は,虫垂内腔に粘液が充満し囊胞状に拡張した状態で,比較的稀な疾患である1).今回われわれは,囊胞内CEA,CA19-9が異常高値を示した虫垂粘液囊胞腺腫の1例を経験したので報告する.

好酸球性胃腸炎と両側肺気胸と診断,治療したウェステルマン肺吸虫症の1例

著者: 山本紀彦 ,   飴本完二 ,   辻慶久 ,   島田守 ,   李喬遠 ,   岡博史

ページ範囲:P.1061 - P.1065

はじめに

 ウェステルマン肺吸虫症は,川カニや猪肉などの生食や,それらの不十分な調理から感染する寄生虫症と考えられている1,2,5).今回われわれは,初診にて好酸球性大腸炎と診断し,さらに両側気胸を生じ胸腔鏡下手術を行ったのち,結果的にウェステルマン肺吸虫症であるとわかった反省すべき症例を経験したので報告する.

臨床報告・2

特殊な症状を呈した高齢者気胸の1例

著者: 長尾茂人 ,   木下真一郎 ,   森田一郎 ,   光野正人

ページ範囲:P.1066 - P.1068

はじめに

 肺気腫に続発した,特殊な形状を呈したブラの穿孔によって,仰臥位になるとエアリークが認められないが,立位になるとエアリークが持続的に出現するという特異な臨床所見を示す高齢者気胸の1例を経験したので報告する.

Prolene(R) Hernia Systemを用いて修復したSpigelヘルニアの1手術例

著者: 甲斐沼尚 ,   水島恒和 ,   山東勤弥 ,   位藤俊一 ,   水野均 ,   岩瀬和裕

ページ範囲:P.1070 - P.1072

はじめに

 Spigelヘルニアは,全腹壁ヘルニアのなかで約2%を占めると報告されており1)稀な疾患である.Prolene(R) Hernia System(以下,PHS)により修復し,良好な結果を得たSpigelヘルニアの1例を報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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