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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科60巻9号

2005年09月発行

雑誌目次

特集 癌告知とインフォームド・コンセント

わが国における癌告知とインフォームド・コンセントの現状

著者: 斎藤和好

ページ範囲:P.1087 - P.1090

要旨:癌による死亡者は年々増加の傾向にあり,年間30万人を超えて,全死亡者の3人に1人は癌で亡くなる時代になった.癌は不治の病で,「癌告知」は即「死の宣告」であった時代は過ぎ去った.「癌である」という事実を知らせることの是非については古くから医学界などで賛否両論があったが,次第に患者・家族の間でもいわゆる「告知」を希望する率が高くなってきている.「インフォームド・コンセント(IC)」のなかでも病名告知,なかんずく「癌告知」は最も難しい問題の1つであるが,告知は医療行為の一部であり,診療をスムーズに行うための一治療法であるともいえる.癌医療を行うに当たって,告知やICの意味と意義をよく理解し,個々の患者に対応する姿勢が必要である.

法的重要性からみた癌告知とインフォームド・コンセント

著者: 桑原博道 ,   加藤済仁

ページ範囲:P.1093 - P.1097

要旨:インフォームド・コンセントや医師の説明義務は万能ではない.特に癌の告知については,患者に対する精神的打撃というデメリットがあるため,医師には合理的な裁量がある.もっとも告知には,患者が残された時間を有意義に過ごすことと,患者が診療に積極的に協力するようになるというメリットもある.そのため,告知をしない場合には,それらのメリットを告知以外の方法で確保すべきであるというのが裁判所の判断である.しかし,その方法はあまりに高度であり,実施が難しい.したがって,裁判所の判断を前提にすると,告知をしないという選択は取りづらくなる.これでは,告知に対する医師の裁量は否定されるに等しくなり,患者のための医療という点からして,かえって疑問が残る.

がん告知とインフォームド・コンセントにおける一般的留意点

著者: 阪眞 ,   笹子三津留 ,   森田信司 ,   深川剛生 ,   片井均 ,   佐野武

ページ範囲:P.1099 - P.1103

要旨:がん告知は,患者の治療法選択における自己決定権を保障するために行われるので,最初の告知対象は原則として患者本人である.患者より先に家族に告知することは,患者・家族・医師間のコミュニケーションを乱し,不信感につながるので勧められない.家族が患者へのがん告知を拒否する場合には,患者が精神的に孤立してしまうこと,副反応などを受け入れられずに治療が中断する危険性など,告知しない不利益を示し説得する.がん告知は「いかに告知し,その後どのようにサポートしていくか」が重要であり,面談についての技術的方法論とがん告知に伴う患者心理の変化に関する知識の習得が要求される.

がん手術のインフォームド・コンセントを目的とした手術アニメーション「オペアニメ」の開発と使用経験

著者: 中郡聡夫 ,   河合隆史 ,   伊藤朝香 ,   小西大 ,   高橋進一郎 ,   後藤田直人 ,   木下平

ページ範囲:P.1105 - P.1108

要旨:がんに対する外科手術のインフォームド・コンセント(以下,IC)において,手術内容をよく理解してもらうことはきわめて重要である.しかし,口頭での説明や専門的な資料を呈示するだけでは,複雑な手術内容を十分に理解してもらうことは困難である.そこでわれわれは,がん手術のICに役立つ立体的な手術アニメーション「オペアニメ」を作製した.この手術アニメーションにより,手術による臓器の変化の明確な視覚的イメージを持つことが可能となった.アンケート集計の結果,手術の内容が立体的でわかりやすかった,自分の受けた手術内容がやっと理解できたなどという感想が多く,開発者としては「わかりやすさ」には手応えを感じている.

癌告知とインフォームド・コンセントにおけるnarrative based medicine

著者: 大野真司 ,   内田陽子 ,   山口博志 ,   井上博道 ,   片岡明美 ,   大谷弘行 ,   大島彰

ページ範囲:P.1109 - P.1116

要旨:「医師・疾患中心主義から患者・問題中心主義へ」,すなわち「DOSからPOS」へのパラダイムシフトに際して,生物学的側面のみならず,心理的・社会的・倫理的・経済的側面を含めた「病を患う患者をまるごと診る」全人的医療が注目されるようになってきた.この全人的医療の根幹をなすものは,良好なコミュニケーションによる患者と医療者の信頼関係にほかならない.その出発点となる癌告知とインフォームド・コンセントにおいては,科学的根拠に基づくEBMとともに,患者が語る物語りを重視する臨床技術であるNBM(narrative based medicine)が重要な柱となる.

終末期癌患者に対する告知とインフォームド・コンセント―癌縮小治療から緩和医療への移行を伝えるには

著者: 藤本肇 ,   望月英隆

ページ範囲:P.1119 - P.1125

要旨:治癒不能や転移再発を伝え,インフォームド・コンセントを得るためには,癌の初回診断から病名と病状に関する告知が十分になされていることが前提となる.事実,過去の癌死患者の遺族を対象とした調査から,告知がなされている患者のほうが終末期の病状の変化に対する受容が有意に良好であったことが示されている.今後は,バッドニュースを伝えた後の医療者のかかわり方について,(1)癌縮小治療が選択肢に残されている場合には,治療効果を含めた予後に関する説明を行うこと,(2)緩和医療を治療の選択肢に含めて,具体的な説明を行うこと,の2点に留意し,いずれの方法でも医療者が積極的に癌患者を支援する態度を明確に示すことが望まれる.そのためには,癌診療に携わる医師が癌縮小治療の正確な評価方法と緩和医療の導入方法について広い知識を持つように努めなければならない.

乳癌告知の在り方と問題点

著者: 大村東生 ,   本間敏男 ,   平田公一

ページ範囲:P.1127 - P.1130

要旨:近年,乳癌に罹患する女性が増えている.欧米の女性ほど多くないが,約40人に1人の日本人女性が乳癌を発症しており,今後ますます増える傾向にある.周囲を見渡すと,家族,親戚,友人,知人の女性のなかに乳癌に罹患した方が1人はいるはずである.そのような状況であっても,まさか自分が乳癌になるとは多くの女性は思っていない.何かの契機で自分の胸にしこりを発見したとき,または乳癌検診で腫瘤を指摘されたとき,そのショックは計り知れない.病院を受診し,担当医による診察・検査の結果が出るまで不安な時間を過ごす乳癌患者への告知の在り方と問題点を考える.

癌告知とインフォームド・コンセントに際しての医師およびナースの協調性

著者: 炭山嘉伸 ,   長尾二郎

ページ範囲:P.1131 - P.1134

要旨:癌告知は患者の人生において大きな分岐点であり,そこにかかわる医師を中心としたチーム医療の充実,特に医師と看護師の連携がきわめて重要となっている.本稿では,癌治療における癌告知と,インフォームド・コンセントにおける医師とナースのチームワークの現状についてアンケートを行い検討した.医師とナースでは,告知の基本姿勢,告知の理由,告知に際してのナースの同席の必要性において認識に差を認めた.癌専門看護師の重要性を感じている医師,看護師は多く,この制度の普及が望まれる.

癌告知後の精神的ケア

著者: 角田明良

ページ範囲:P.1135 - P.1138

要旨:癌告知後の精神的ケアは必要であるが,告知とケアは乖離したものではない.告知自体が精神的ケアをもって行われるべきである.告知は患者の意思を把握したうえで,家族と看護師の同席のもとに行うのが最良である.告知の際に重要なことは,段階的,そして共感的なコミュニケーションである.これにより患者の精神的負担を最小限にすることができる.一方,告知後の長期的ケアも必要であるが,その基本は初診時より培った患者・医師の信頼関係を維持する努力である.再発癌患者でさえ,この信頼関係を基に真実を伝え,緩和ケアチームとともに真摯に対応することの積み重ねにより,症状を受容し,終の住処を自己決定することも可能になる.

カラーグラフ 内視鏡外科手術に必要な局所解剖のパラダイムシフト・12

腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP法)

著者: 鈴木憲次 ,   木村泰三

ページ範囲:P.1081 - P.1084

◆◆◆

はじめに

 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は,腹腔鏡下にメッシュによる腹壁の修復を行う手術であり,術野への到達経路により経腹的到達法(transabdominal approach)と腹膜外到達法(extraperitoneal approach)の2つに大別されている.いずれの方法も前方到達法によるメッシュ修復法の普及により,どちらかといえば特殊な術式として認識されている.腹腔鏡下手術施行に当たっては,日常行っている前方到達法とは術野(視野)が異なるため,ヘルニア修復術における局所解剖の知識もシフトさせる必要が生じる.

 本稿では,男性の外鼠径ヘルニア症例を中心に,経腹的到達法による腹腔鏡下ヘルニア修復術における局所解剖を概説する.

臨床外科交見室

創傷治療の歴史

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1142 - P.1143

最近,外傷や熱傷に対して消毒やガーゼを用いず,適切な創被覆材を用いた閉鎖療法が提唱されている.一方,わが国では大病院から小さな診療所に至るまで,長い間いわゆる「消毒・ガーゼ」を用いた創処置が行われている.果たして,わが国や諸外国では創傷治療の歴史はどうなのであろうか.

 1955年発行の「日本外科全書」の柳1)によると,(1)創傷の自然治癒の障害となるべきものを除去し,(2)一方,何らかの方法をもってその治癒を促進せしめることに主眼を置かねばならない,と記されている.また,創面からは「創液」なるものが滲出することも記されている.創液が創口内に貯留することは必ずしも創傷の治癒を妨げるものではない.しかし,この創液が細菌のよき培養基となりえるため「ドレナージ」が考慮されねばならないと記されており,この考え方は従来の外科治療の基礎となっている.また,消毒剤に関しては,程度の差はあれ蛋白質に対し有害な作用があり濫用は厳に慎むべきと記されており,やみくもに消毒を奨励はしていない.

外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 20

鼠径ヘルニアの手術は必要か

著者: 安達洋佑

ページ範囲:P.1144 - P.1145

鼠径ヘルニアの手術は3つある.(1)嵌頓や絞扼に対する緊急手術,(2)疼痛や不快感などの症状に対する緩和手術,(3)嵌頓や絞扼などの合併症を避けるための予防手術,である.(1)は必要であり,(2)は有用であるが,(3)はどうであろうか.救急外来や外科病棟では嵌頓や絞扼をみることが多く,鼠径ヘルニアは「嵌頓や絞扼の危険性が高い」,「緊急手術になる可能性が高い」と錯覚してしまう.

 鼠径ヘルニアはわが国では「脱腸」と呼ばれ,ありふれた疾患(common disease)である.人口の高齢化に伴って,巷には鼠径ヘルニアを持った人がたくさんいる.もしかすると,鼠径ヘルニアは病気ではなく,年寄りになると耳が遠くなり肛門がゆるむのと同じような「老化現象」かもしれない.

臨床研修の現状―現場からの報告・2

中通総合病院外科

著者: 田中雄一

ページ範囲:P.1146 - P.1148

1 はじめに

 今年は当院創立50周年にあたる.当院の病床数は一般病床491床,療養病床48床で,高齢者医療,救急医療,地域医療に力を入れている.1997年に臨床研修病院の指定を受けたが,以前から秋田大学附属病院,東京女子医科大学附属第二病院と連携し,研修医の育成を行っている.

 昨年からいわゆるスーパーローテイト研修が始まり6名の新卒医師を迎え,今年度はさらに7名の新卒医師が加わり,院内は大変にぎやかになった.

病院めぐり

能代山本医師会病院外科

著者: 加藤裕治郎

ページ範囲:P.1150 - P.1150

当院は秋田県北西部の能代市にあり,前方にブナの原生林を持つ世界遺産白神山地を望み,後方には白鳥や雁などの渡り鳥の飛来地である小友沼が目の前に広がる自然環境に恵まれたロケーションにあります.昭和59年に能代市山本郡医師会が設立した開放型病院で,入院設備や手術室のない診療所や病医院の医師が患者さんを紹介して,当院の病室や手術室を利用して患者さんに治療を行うことができます.ほかの医療機関からの紹介患者さんが8割以上であることや,医師を含む地域の医療従事者を対象とした研修会を定期的に行って医療の質の向上に努めていることなどが評価され,全国で12番目の地域医療支援病院として承認されました.病床数は200床で,平成16年には外来棟を増築し,外来化学療法室を新設して抗癌剤治療にも力を入れています.臨床研修指定病院で,日本外科学会,日本消化器外科学会,日本呼吸器外科学会の研修関連施設となっています.

 外科は秋田大学第1外科および第2外科から医師の派遣を受け,消化器外科4人(高橋貞二院長,加藤裕治郎副院長,杉本和歌子医師,工藤高志医師),呼吸器外科1人(三井匡史科長)が常勤医師として勤務しており,小児外科からも非常勤医師の派遣があり手術を行っています.平成16年の手術症例数は全身麻酔212例,腰椎麻酔14例で,その内訳は胃癌31例,大腸癌34例(腹腔鏡補助下6例),食道癌3例,肝胆膵癌5例,乳癌5例,肺癌13例(胸腔鏡補助下8例),甲状腺7例,胆石30例(腹腔鏡下22例),ヘルニア32例(子供22例)などとなっています.

多摩南部地域病院外科

著者: 菊池友允

ページ範囲:P.1151 - P.1151

当院は東京都が建設し,東京都と東京都医師会が設立した東京都保健医療公社が開設・運営する公設民営の病院で,平成5年7月に開設されました.同系列の病院が東部地域病院です.また,都立病院の再編に伴い,平成16年4月から都立大久保病院が公社病院となりました.

 当院は多摩ニュータウン地域内にあり,多摩センター駅が最寄駅になっています.病床数は300床で,15診療科を有しています.多摩南部5市(多摩市,日野市,八王子市,町田市,稲城市)の中核病院として,紹介予約制,共同診療,地域医師の研修などを通して地域医療機関と連携し,一貫性のある医療を地域に提供することを目的として運営されています.開設12年目と歴史は浅いのですが,開設以来,地域医療機関との連携を一貫して進めており,地域医療支援病院,東京都災害時後方医療施設,エイズ拠点病院に認定されています.また,教育施設として平成10年4月には臨床研修病院に指定され,年に3~4人の研修医を受け入れています.そのほか,日本外科学会専門医制度認定施設,日本消化器外科学会専門医修練施設,日本消化器内視鏡学会指導施設になっています.

外科学温故知新 1

外科学の生い立ちとその進展

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1153 - P.1161

1 はじめに

 「外科(Chirurgie,Surgery)=ヒルルギー,サージェリー」は,ギリシア語の「cheiro=hand(手)」と「ergon=work(作業,技,仕事)」が合わさってできた言葉であり,これが意味するところは「手作業,手仕事」である.また,外科が創傷(wound)とその管理と不可分の関係にあることは言うまでもないところで,昔から特に戦傷の取り扱い(軍陣外科)を中心に,なかには間違った方法論もあったようであるが,先人達によってさまざまな創意工夫や改良が加えられることで,外科学は進歩してきたと言える.

 中世,西洋ではキリスト教の教義に基づいて僧侶が医療者となり,主として僧院で医療が行われていたのであるが,宗教上の理由から人体解剖は禁止されていた.さらに1163年のトゥールの宗教会議において「教会は血を忌む」と決せられて以降は,常日頃は理髪(床屋仕事)を生業としていた輩がその手先の器用さを買われ,大学においてラテン語でGalenusらの医学古典を学んだ医師の指示のもとに,医術の代行者として種々の医学的処置(創の縫合,瀉血,浣腸など)を行っていた.そういうところから,彼らは「理髪(床屋)外科医=barber surgeon」と呼ばれた(図1).現在,床屋の店先で回っているサインは,一説ではこの理髪外科医としての名残りで,「赤・青・白」でおのおの「動脈血・静脈血・包帯」を表すものとされる.しかし,病気に関する考え方として体液病理学(Hippocratesやその後継者であるGalenusによって打ち立てられた学説で,粘液・血液・黄胆汁・黒胆汁という四つの体液の乱れによって病気が発症するというもの)が受け入れられていた当時は,医師は尿検査(“uroscopy”と言い,患者から得た尿の色や臭い,味などを診ること)を参考にして,金科玉条となっていたGalenusらの古典医学書に基づいて診断を下すだけであった.そして,治療としては病気の原因である体液のアンバランスの是正をはかるために,代行者であった彼ら理髪外科医に瀉血や浣腸などの医療行為を行わせていた(図2).また,戦傷を扱うことも多く,ドイツでは戦傷をはじめとする色々な創傷の処置や治療を行ったり,四肢の切断を行う者をWundarztney(強いて訳せば“きず医者”)と呼んでいた.

 わずかに阿片やマリファナなどが手術時の痛み止め(麻酔薬)として使われていたこともあったようであるが,今日的な意味での麻酔や抗生物質などの感染制御がなかったこの時代に,理髪外科医に要求されたのは手術遂行の迅速さと,患者の悲鳴にひるまない無慈悲なまでの冷静さと物事に動じない胆力を持つことであった(図3).

臨床研究

左側型大腸憩室症の臨床的検討

著者: 藤田昌久 ,   松本潤 ,   高西喜重郎

ページ範囲:P.1163 - P.1168

はじめに

 大腸憩室症は,本邦では右側型が多いとされる1,2),近年の高齢化および食生活の欧米化により,左側型大腸憩室症(下行結腸から直腸)に接する機会も増えている.今回われわれは,入院治療を要した左側型大腸憩室症(以下,本症)の合併症別の臨床的特徴を検討した.

臨床報告・1

壁外発育型巨大S状結腸癌の1例

著者: 久留宮康浩 ,   亀岡伸樹 ,   小川明男 ,   朴哲浩 ,   日比野正幸 ,   千木良晴ひこ

ページ範囲:P.1169 - P.1173

はじめに

 壁外発育型大腸癌は比較的稀な疾患である1~9).われわれが検索しえた範囲では,現在までに23例の本邦報告例がある.大腸癌が進行すれば通常はイレウスを生じるが10),本症例では壁外に発育したため症状が出にくく発見が遅れ,巨大化した可能性が考えられた.本疾患の診断および治療上の問題点を含め報告する.

腹腔鏡補助下に切除した十二指腸重複症の1例

著者: 花井雅志 ,   鷹尾博司 ,   山田成寿 ,   足立尊仁 ,   青木幹根

ページ範囲:P.1175 - P.1178

はじめに

 消化管重複症は比較的稀な疾患で,全消化管にみられる先天性囊胞性奇形病変であり,小児期に症状の出現を認めることが多い1).今回われわれは,腹腔鏡補助下に切除した成人の十二指腸重複症の1例を経験したので報告する.

膵癌切除後早期に発生し肝転移との鑑別を要した肝inflammatory pseudotumorの1例

著者: 奈賀卓司 ,   角賢一 ,   村田陽子 ,   浜副隆一

ページ範囲:P.1179 - P.1182

はじめに

 Inflammatory pseudotumor(以下,IPT)は原因不明の肉芽組織からなる腫瘤性病変で,肺,眼窩,耳下腺などに発生することが多い1,2).肝臓での発生は稀であるが,近年の画像診断法の普及により肝IPTの報告例が増加する傾向にある.肝IPTは良性ではあるが,画像所見に特徴像を欠き,肝悪性腫瘍,特に転移性肝癌との鑑別は困難であり2,3),多くの症例では切除標本で病理学的に診断されている.

 今回われわれは,膵癌肝転移の診断で肝切除を施行し,切除標本の病理組織検査で肝IPTと診断された症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

自然破裂で発症した横行結腸のmesothelial cystの1例

著者: 河西秀 ,   岸本浩史 ,   小松誠 ,   田内克典 ,   小池秀夫 ,   福島万奈

ページ範囲:P.1183 - P.1185

はじめに

 自然破裂で発症した横行結腸由来のmesothelial cystの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

乳腺乳頭部腺腫の1例

著者: 杉本健樹 ,   甫喜本憲弘 ,   小林道也 ,   岡林雄大 ,   荒木京二郎 ,   森木利昭

ページ範囲:P.1187 - P.1189

はじめに

 乳腺乳頭部腺腫は,乳癌取扱い規約において乳頭内または乳輪直下乳管内に発生する乳頭状ないし充実性の腺腫と定義され,上皮性良性腫瘍に分類される比較的稀な疾患である1~4).乳頭部のびらん,潰瘍,血性乳頭分泌などの症状がPaget病と酷似しており,病理組織学的にも浸潤性乳管癌との鑑別が問題になる3~5).このため,乳房切除を受けた症例もあり,過剰診断・過剰治療に対する注意が必要な疾患である.

 今回われわれは,乳頭内に発生し,摘出生検のみで高い整容性を保ちながら根治し得た本症の1例を経験したので報告する.

乳腺myoid hamartomaの1症例

著者: 鈴木規之

ページ範囲:P.1191 - P.1195

はじめに

 乳腺の過誤腫は,腺組織,脂肪組織,間質組織といった正常乳腺の組織成分が一部欠損,ないしは正常とは異なる割合で混合した腫瘤形成性病変であり,1971年にArrigoniら1)がはじめて報告した比較的稀な疾患である.また,上記の乳腺構成成分に加え,平滑筋成分を有するmyoid hamartomaはきわめて稀な過誤腫の一型であり,Daviesら2)の報告以来30余例の報告例をみるに過ぎない.

 今回,このmyoid hamartomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

増大傾向を示し内部不均一であった胸膜脂肪腫の1切除例

著者: 片岡大輔 ,   野中誠 ,   山本滋 ,   大野正裕 ,   手取屋岳夫 ,   国村利明

ページ範囲:P.1197 - P.1199

はじめに

 脂肪腫は皮下軟部組織に発生する腫瘍としてしばしばみられるものであるが,胸膜に発生するものは稀である1~3).今回われわれは,壁側胸膜から発生し急速に増大傾向を示した内部不均一な良性の脂肪腫を経験したので報告する.

胃切除後49年目に発症したBraun吻合部逆行性空腸重積症の1手術例

著者: 高嶋成輝 ,   大橋龍一郎 ,   泉貞言 ,   小野田裕士 ,   鈴鹿伊智雄 ,   塩田邦彦

ページ範囲:P.1201 - P.1204

はじめに

 胃切除後逆行性空腸重積症は比較的稀な疾患である1~10).今回,われわれは胃切除後49年目に発症したBraun吻合部逆行性空腸重積症の1手術例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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