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特集 癌告知とインフォームド・コンセント
文献概要
要旨:インフォームド・コンセントや医師の説明義務は万能ではない.特に癌の告知については,患者に対する精神的打撃というデメリットがあるため,医師には合理的な裁量がある.もっとも告知には,患者が残された時間を有意義に過ごすことと,患者が診療に積極的に協力するようになるというメリットもある.そのため,告知をしない場合には,それらのメリットを告知以外の方法で確保すべきであるというのが裁判所の判断である.しかし,その方法はあまりに高度であり,実施が難しい.したがって,裁判所の判断を前提にすると,告知をしないという選択は取りづらくなる.これでは,告知に対する医師の裁量は否定されるに等しくなり,患者のための医療という点からして,かえって疑問が残る.
参考文献
1)平成6年3月30日東京地方裁判所判決〔平成4年(ワ)第3517号〕:判例時報1522号104-111頁
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5)平成8年4月22日大阪地方裁判所判決〔平成6年(ワ)第7602号〕:判例時報1585号66-68頁
6)厚生省・日本医師会(編):がん末期医療に関するケアのマニュアル.1989
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