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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科61巻1号

2006年01月発行

雑誌目次

特集 GIST―診断と治療の最前線

特集にあたって

著者: 北島政樹

ページ範囲:P.14 - P.15

消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:以下,GIST)が,それまでの平滑筋腫瘍と一線を画して分類されるようになってから,数年が経過した1~3).消化管に発生する粘膜下腫瘍のうち,GISTを含む間葉系腫瘍は形態的に肉腫に分類されるが,上皮性腫瘍である癌と比較すると,過去においてはあまり関心が寄せられてこなかった.罹患率が癌の約1/100という症例数の少なさが大いに影響しているであろう.しかしながら,1980年後半から進歩した分子生物学的研究手法は,それより少し前に脚光を浴びるようになった免疫組織学的手法と相俟って,消化管間葉系腫瘍の基礎研究を大いに推進した.GISTという術語は医学生のtext bookにも解説が載るようになり,一般診療においても定着しつつある.

 治療法はどう変わったであろうか.GISTは切除が第一選択であり,初回治療としての外科手術に関しては,これまでの治療方針とあまり変わっていない.癌のような定型的リンパ節郭清が必要ないこともこれまでと同様である,一方,手術不能例や再発転移例に対する治療は,メシル酸イマチニブ(以下,イマチニブ)の登場によって,大きな変遷を遂げた.それまで抗癌剤や放射線にきわめて感受性が低かった消化管肉腫に対し,限られたKIT陽性腫瘍に対してではあるが,イマチニブが80%の奏効率を示したことは驚異的であり,大いに歓迎すべきことである4).わが国では2003年7月からイマチニブが保険適用となり,今日におけるGISTの治療法は手術とイマチニブの2本立てになっている.

GISTの定義と診断

著者: 礒崎耕次 ,   廣田誠一

ページ範囲:P.17 - P.23

要旨:消化管間葉系腫瘍の大半は平滑筋腫ではなく,gastrointestinal stromal tumor(GIST)である.GISTはKIT受容体型チロシンキナーゼやCD34を発現するなどカハールの介在細胞(interstitial cell of Cajal:ICC)と類似点が多く,ICCを細胞起源としていると考えられる.GISTの発生機構にはKITをコードするc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異によるKITの恒常的な活性化が関与しているが,一部のGISTではPDGF受容体α遺伝子の機能獲得性突然変異が関与することも明らかとなっている.すべてのGISTを基本的に悪性のポテンシャルを有した腫瘍として扱うことが推奨されており,GISTの的確な診断が治療方針決定に重要である.GISTの病理診断にはKITやCD34の免疫染色が必要で,術前診断のために超音波内視鏡下穿刺生検が有用な場合がある.

GISTの画像診断―消化管粘膜下腫瘍の鑑別

著者: 立石宇貴秀

ページ範囲:P.25 - P.31

要旨:画像診断をもとに消化管に発生する粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)を正確に診断することは容易ではない.CT, MRI, FDG PETなどのcross-sectional imagingによるSMTの鑑別診断は少なからず肉眼組織所見を反映し,診断に重要な付加的情報を与える手段と考えられ,病理学的特徴の比較検討を通じて,画像の綿密な解釈が可能となる.SMTの鑑別診断では,これらの画像診断はその主軸となるため,検査の特徴を十分に理解し有意義に活用することが重要である.

GISTに対する外科手術―適応と方法

著者: 大谷吉秀 ,   小山勇 ,   村上三郎

ページ範囲:P.33 - P.38

要旨:従来,平滑筋由来の腫瘍と考えられていた粘膜下腫瘍の多くは,今日では消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)に分類される.本稿ではGISTのなかでも頻度の高い胃GISTを中心に,外科手術の適応と方法を欧米での動向を踏まえながら概説した.また,近年は腹腔鏡下手術も積極的に行われており,その方法と注意点についても述べた.GISTの生物学的特性をきちんと理解して治療にあたることが重要である.

GIST(gastrointestinal stromal tumor)に対する分子標的治療の現状と展望

著者: 三輪重治 ,   中嶋隆彦 ,   工藤俊彦 ,   杉山敏郎

ページ範囲:P.39 - P.43

要旨:GIST(gastrointestinal stromal tumor)症例のうち,進行・再発例ではイマチニブによる分子標的治療が第一選択となり,高い臨床効果が得られている.ただし,イマチニブによって根治はほぼ望めず,根治切除が可能と思われる症例では手術が優先される.イマチニブを術前・術後の補助療法に用いることには現在のところ明確なエビデンスはないが,術後再発の高リスク群に対する術後の補助療法に関しては有効性が期待され,臨床試験が進行している.イマチニブの長期投与に伴って2次耐性例の存在が臨床上の問題となってきた.2次耐性例では,耐性病変が限局性であればイマチニブを継続したうえで手術やRFAなどによって耐性病変に対する局所コントロールを試み,局所コントロールが不能な場合はイマチニブの増量やSU11248など新規分子標的薬の使用が検討される.SU11248は海外で有効性が示され,現在,わが国においても臨床試験が進行している.

欧米のGIST診断治療ガイドラインとわが国における現状

著者: 西田俊朗 ,   長谷川順一

ページ範囲:P.45 - P.51

要旨:米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)とEuropean Society of Medical Oncology(ESMO)からGISTの診療治療ガイドラインが示された.これらのガイドラインは多くの点で日本でもGISTの指針として大いに役に立つものである.しかし,欧米と日本のGISTの発見と診断,そしてその治療における薬剤の適応に部差があるため,注意して参考にしなければならない点もある.特に,検診で見つかることの多い上部消化管の無症状粘膜下腫瘍の手術適応や,これらの小さい腫瘍への腹腔鏡(補助)下手術の適応,イマチニブ耐性GISTの治療指針などには,欧米と日本でのGIST治療指針に相違があるのが現状である.

カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・1

食道良性疾患

著者: 加藤広行 ,   宮崎達也 ,   斉藤加奈 ,   桑野博行

ページ範囲:P.5 - P.13

はじめに

 近年,診断学の進歩は著しく,なかでも光学医療や画像診断学は消化器疾患の診療に欠かすことのできない検査法として広く普及している.食道疾患では,色素内視鏡や超音波内視鏡の進歩による早期食道癌症例の著しい増加に伴い,内視鏡的粘膜切除術や粘膜下層剝離術が一般的になりつつある.さらには,拡大内視鏡検査などによる質的診断能の向上を認めている.それに比べて食道良性腫瘍の発生頻度は低く,Suzukiら1)の全国集計の報告によると11,932例中149例で1.2%に過ぎない.そのなかで平滑筋腫が約60~70%と最も頻度が高い.良性腫瘍の診断は,一度見たら忘れないような特徴的な疾患もあるが,内視鏡形態学的に鑑別に難渋する場合も少なくない.悪性腫瘍に類似する良性の疾患,なかでも粘膜下腫瘍の形態をとるものでは,ほかの画像診断として超音波内視鏡やCT検査,FDG-PET検査などと組み合わせて腫瘍の質的診断を行うことが必要である.

 本稿では,食道良性疾患の内視鏡検査による肉眼所見とその組織像を中心に症例を呈示し,その病態を含めて概説する.また,悪性腫瘍のなかでも非常に稀であり低悪性度を示すMALTリンパ腫の症例も呈示する.

臨床外科交見室

メッシュを用いた成人鼠径ヘルニアの術式における最近の動向

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.52 - P.52

以前に本誌でメッシュを用いた成人(鼠径)ヘルニア修復術の功罪について書いた1).それでは今後,その種々のメッシュに対しヘルニア外科医はどう対処すべきなのか.これについて私見を述べてみたい.

 約10年前にメッシュプラグ法によって急速にわが国に拡がったtension freeの術式はその後PHS(PROLENE hernia system)法からKugel法,そして2004年年末にDirect Kugel法が導入された.Direct Kugel法で使用するDirect Kugel patchは,under lay patchとして形状が円形で形状記憶リングの入った2層のポリプロピレン素材のパッチと,onlay patchとして船型の1層のメッシュがセットになっている.

外科学温故知新・5

人工臓器

著者: 末田泰二郎

ページ範囲:P.53 - P.58

1 はじめに

 人工臓器とは,機能が荒廃した臓器の代用を果たすために人工的に作製した代替医療機器である.体内に植え込んで使用する場合もあるし,体外で一時的に使用して臓器機能を代行するものもある.人工臓器は,人工腎臓などの代謝系人工臓器,人工弁,ペースメーカーなどの循環器系人工臓器,人工骨頭などの運動器系人工臓器,眼内レンズ,人工内耳などの感覚器系人工臓器に分類される.

 1950年代に高分子材料の開発が進み,腎不全に対する人工透析を手始めとして人工臓器研究が飛躍的に進歩した.外科学の分野においては,人工臓器は治療機器として多数使用されている.本稿では,人工臓器が最も多く治療に用いられている心臓血管外科分野で,人工心臓,人工弁,ペースメーカー,除細動器の開発研究を中心に,(1)人工臓器の開発の経過,(2)現在開発が進んでいる人工臓器,(3)人工臓器の将来展望について概説する.

臨床研修の現状―現場からの報告・5

天理よろづ相談所病院腹部一般外科

著者: 松末智

ページ範囲:P.60 - P.63

1 はじめに

 天理よろづ相談所病院では,1976年より全国に先駆け総合診療とレジデント制を基盤とする卒後臨床研修が始まった.当初から総合病棟勤務,麻酔科勤務,小児科勤務を必須とした研修体制がとられ,レジデント総合病棟で,専門内科6科と腹部一般外科の患者を各科のスタッフと受け持つ方式で研修を行ってきた.したがって,このたびの新医師臨床研修制度の発足に当たっても,ほとんど体制変更を行う必要がなかった.そのような状況で,このたびの制度改正下での当院研修体制と外科研修の実情を報告する.

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・24

乳癌手術は生検後2週間以内か

著者: 上尾裕昭 ,   渋田健二 ,   三森功士

ページ範囲:P.64 - P.65

 筆者が外科医としてスタートを切った1970年代は局所麻酔下の乳腺腫瘤の外科的生検が頻繁に行われ,乳癌の組織診断が確定した場合には「生検から2週間以内に根治手術(当時は乳房切除)を」と先輩に教えられ,手術予定の調整に走り回った.その後,全身麻酔下に術中病理診断をして直後に根治手術を行う直前生検(一期的手術)もたびたび経験したが,現在はそのような機会は激減している.

 「外科的生検(biopsy)から根治手術(operation)までの期間(interval)」(以下,B-O Interval)は,乳癌の予後に影響を与えるのだろうか.乳癌の場合は,なぜ2週間以内なのだろうか.これらの古くて新しいテーマに文献的考察を加えてみたい.

病院めぐり

同愛会博愛病院外科

著者: 蘆田啓吾

ページ範囲:P.66 - P.66

米子市は鳥取県の西側,山陰のほぼ中央に位置し,人口約15万人を有する市です.東には伯耆富士とよばれる大山の裾野が広がり,西には中海という汽水湖,北は白砂青松の日本海という大自然に囲まれていて,恵まれた環境にあります.

 当院は大正10年に設立された米子市内で最も歴史のある病院で,市民病院的な役割を担っています.平成14年に改築され,現在の建物となりました.デイルームからは秀峰大山が一望でき,憩いの場所となっています.病床数は247床で,15の診療科を標榜しています.予防,検診からリハビリテーション施設,訪問看護,介護老人保健施設などを含めた病院・後方施設との連携の強化など,高齢化社会に適応した一貫した医療・福祉サービスを提供できるよう心がけています.

博愛会相良病院

著者: 相良吉厚

ページ範囲:P.67 - P.67

当院は鹿児島市の中心地に位置し,甲状腺科,婦人科,緩和ケア科を併設する乳癌専門病院です.戦後間もない1949年に一般外科病院として開設されました.1973年には乳癌診療を開始し,九州ではじめて乳房X線撮影装置マンモグラフィを導入し,さらに1978年に西日本で第一号となる電子写真法X線撮影装置ゼロラジオグラフィを設置して次第に乳腺専門へと診療体制を変容させていきました.あわせて診療環境の整備のために,女性専門病院にふさわしいアメニティを心がけて,数回の増改築を行いました.

 建物の老朽化に伴い,1995年に全面的なリニューアルを決定し,医療施設近代化施設整備事業の補助金の支援を受け,病床を100床から81床に減らし,量から質へと診療機能を優先したダウンサイジングを行うことになりました.そして1997年からは,乳癌を中心とする専門病棟60床,県下初の緩和ケア病棟21床の病棟編成で新たなスタートを切りました.リニューアルを機に,診療の質の向上のために,診断,治療,再発治療,終末期治療の各部門の診療体制を整備し,設備の整ったカンファレンスルームを新設しました.週3回の早朝,治療に関わるすべての職種のスタッフが出席して,術前,術後,再発症例について治療方針を検討する合同カンファレンスを行うようになりました.これによって各職種間の連携が良好となり,診療の効率化がはかられ,職員のモチベーションが向上しました.

臨床研究

乳癌手術におけるクリニカルパス導入の効果

著者: 柿原康晴 ,   多賀谷信美 ,   中川彩 ,   森昭三 ,   濱田清誠 ,   窪田敬一

ページ範囲:P.69 - P.74

はじめに

 医療におけるクリニカルパス(以下,CP)は本来,在院日数の短縮化に伴う医療費の削減と経営効率の向上を目的としたものであるが,わが国の臨床現場では主に医療の標準化,チーム医療の確立,医療に対する患者満足度の向上を目的とした有益な手法として位置づけられており1▲,CPを実践するうえで,今までの経験主義の医療から脱却し,科学的根拠に基づいた医療に転換する必要がある2)

 CPは現在,日本の多くの医療機関で採用されており,当科でも様々な疾患に導入して運用している.乳癌手術症例においても2002年1月より運用を開始した.本稿では,CP導入前後における成績を比較し,CP導入の効果について検討したので報告する.

魚骨による消化管穿孔の臨床的検討

著者: 池田宏国 ,   辻和宏 ,   斉藤誠

ページ範囲:P.75 - P.79

はじめに

 消化管異物の多くは自然に排出され,消化管損傷を起こすことは稀である.わが国では消化管穿孔の原因となる異物として魚骨が最も多い1~3).今回,われわれは当院において経験した魚骨による消化管穿孔6例について臨床的検討を行ったので報告する.

治癒切除が可能であった原発性虫垂癌7例の検討

著者: 水沼和之 ,   中塚博文 ,   藤高嗣生 ,   中島真太郎

ページ範囲:P.81 - P.83

はじめに

 原発性虫垂癌は稀な疾患であり,術前に確定診断を得ることは困難とされている.大部分は虫垂炎,虫垂周囲膿瘍,回盲部腫瘍などの診断で手術が施行され,術中所見および術後の病理学的検索によって虫垂癌と確定診断されることが多い1)

 今回,われわれは治癒切除が可能であった原発性虫垂癌7例を経験し,その臨床的特徴を検討したので,文献的考察を加えて報告する.

上腹部開腹手術既往症例に対する腹腔鏡下胆囊摘出術の検討

著者: 矢島和人 ,   小林孝 ,   野上仁 ,   黒﨑功 ,   松尾仁之 ,   田宮洋一 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.85 - P.88

はじめに

 胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術(以下,LC)は,現在では胆囊摘出術の第一選択の治療法として定着している1).導入初期には,上腹部に開腹手術既往のある症例に対して手術困難症例の1つとして挙げられ,その適応はかなり限られていた.しかしながら,その後の技術の進歩や関連器具の開発・改良によって,上腹部に開腹手術既往のある症例に対しても積極的にLCが行われるようになってきている▲2~10)

 従来からLCの検討に関する報告は認めるものの,手技や症例の集計に重きが置かれていた.今回,われわれは当院で施行した上腹部開腹手術既往症例へのLCの成績を過去の報告と比較しながら報告し,その適応について考察した.

臨床報告・1

多発性囊胞腎・肝囊胞,維持透析中の特発性食道破裂に対する経腹アプローチによる救命例

著者: 森脇義弘 ,   高橋航 ,   豊田洋 ,   小菅宇之 ,   杉山貢

ページ範囲:P.93 - P.97

はじめに

 維持透析中の慢性腎不全症例の予後は機器や管理技術の進歩によって改善されてきたが,今日でも出血や感染は致命的合併症で,外科手術の成績も不良である1~4).一方,特発性食道破裂も予後が改善されてきたが,胸膜炎合併例や発症から時間経過した症例や重篤な併存疾患を有する症例の予後はいまだに不良である5.胸膜炎に対し左開胸開腹術という過大侵襲手術を余技なくされると,術後合併症から在院死することも少なくない.

 筆者らは,胸膜炎合併症例や発症後長時間経過例,肝硬変併存例に対しても,横隔膜縦切開・迷走神経切離を伴う経腹的アプローチによる破裂部単純閉鎖および噴門パッチを行い,良好な成績を報告してきた6).本法の要点の1つに,肝左三角靱帯を切離し左葉外側区域を折り畳み,強力な筋鉤で肋弓を開大し食道裂孔を展開し直視下の操作を行うことがある.今回,維持透析中の多発性囊胞腎による慢性腎不全併存特発性食道破裂および左胸膜炎症例に対し,多発肝囊胞のため左葉の折り畳みが困難ではあったが,本法を行い救命し得たので報告する.

広範囲なリンパ節転移を認めた横行結腸(肝彎曲部)mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫の1例

著者: 花井雅志 ,   井垣啓 ,   青野景也 ,   津金恭司

ページ範囲:P.99 - P.103

はじめに

 大腸原発の悪性腫瘍のうち悪性リンパ腫は稀である1,2).そのなかで,mucosa-associated lymphoid tissue(以下,MALT)リンパ腫という新しい概念が発表され3),1993年には胃のlow grade MALTリンパ腫に対して,Helicobacter pylori(以下,H. pylori)除菌療法の有用性が報告された4).近年では耳下腺,十二指腸,小腸,大腸のlow grade MALTリンパ腫に対してもH. pylori除菌療法の有用性が報告されるようになった5~8)

 今回,われわれは広範囲なリンパ節転移を認めた横行結腸(肝彎曲部)MALTリンパ腫を経験した.補助療法としてH. pylori除菌療法を施行したので報告する.

大腿ヘルニア根治術後のメッシュ感染の1例

著者: 松田俊太郎 ,   峯一彦 ,   河野文彰 ,   小谷幸生 ,   市成秀樹 ,   柴田紘一郎

ページ範囲:P.105 - P.107

はじめに

 以前に一般的に行われてきた鼠径ヘルニアおよび大腿ヘルニアの手術方法にはMcVay法やIliopubic tract repair法など多数が存在するが,これらの手術では周囲組織を利用して後壁を補強するため緊張が強く,再発の一因となっていた.最近では各種メッシュを使用して緊張を軽減したヘルニア根治術が施行されるようになり,現在の標準術式となっている1).しかし,合併症の中で術後のメッシュ感染は治療に難渋することが報告されている2~5)

 今回,術後3か月目に創部感染を発症し,保存的治療を行っても寛解しない症例に,最終的には初回手術の1年4か月後にメッシュ除去術を施行して軽快した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

腹壁膿瘍を契機に診断された遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の1例

著者: 吉山繁幸 ,   井上靖浩 ,   小西尚巳 ,   西川隆太郎 ,   三木誓雄 ,   楠正人

ページ範囲:P.109 - P.112

はじめに

 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(hereditary non-polyposis colorectal cancer:以下,HNPCC)は,家系内に大腸,子宮体部,卵巣,小腸,胃,上部尿路など由来の悪性腫瘍が好発する常染色体優性遺伝疾患であり,その頻度は全大腸癌の2~5%程度を占めるものと考えられている1).今回われわれは,腹壁膿瘍を契機に診断された遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の1例を経験したので報告する.

腹部CT検査で偶発的に発見された腸間膜原発悪性リンパ腫の1例

著者: 茶谷成 ,   竹末芳生 ,   大毛宏喜 ,   香山茂平 ,   坂下充 ,   末田泰二郎

ページ範囲:P.113 - P.116

はじめに

 腸間膜原発の悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の0.12%と比較的稀な病態である1).また,その多くは腹部腫瘤の自覚で発見される.

 今回,われわれは他疾患に対する検査中に腹部CT検査で発見し得た,比較的早期の腸間膜悪性リンパ腫を経験した.組織型診断のための生検を行う過程で興味深い知見が得られたので,文献的考察を加えて報告する.

原発性硬化性胆管炎に胆管結石症がみられた1例

著者: 星野誠一郎 ,   山本稀治 ,   山下裕一 ,   前川隆文 ,   白日高歩

ページ範囲:P.117 - P.120

はじめに

 硬化性胆管炎は,胆道系手術後などに発症する続発性と誘発原因のない原発性に分けられる1).LaRussoら2)の示した診断基準では胆管結石を認めないものとされているが,硬化性胆管炎による胆汁うっ滞が胆管結石の原因と報告がみられるようになった3)

 今回,原発性硬化性胆管炎に総胆管結石症がみられた症例を経験したので,若干の文献的考察を踏まえ報告する.

回盲部を内容とし膿瘍を伴う大腿嵌頓ヘルニアの1例

著者: 中山隆盛 ,   新谷恒弘 ,   白石好 ,   森俊治 ,   磯部潔

ページ範囲:P.121 - P.124

はじめに

 大腿ヘルニアは嵌頓を起こしやすく,多産の女性高齢者に多い.また,高齢者はヘルニアを自覚しても放置することが少なくなく,ヘルニアが大きいことが多い.

 今回,われわれは回盲部を内容とし膿瘍を伴う大腿嵌頓ヘルニアの1例を経験し,治療方針を決定するうえで貴重な症例と考えられたので報告する.

S状結腸腺腫に起因した成人逆行性大腸腸重積症の1例

著者: 東崇明 ,   藤川裕之 ,   大井正貴 ,   大澤亨 ,   小池宏 ,   三宅哲也

ページ範囲:P.125 - P.129

はじめに

 成人の腸重積症は小児と比べて稀な疾患であり,何らかの器質的疾患を認めることが多いのが特徴である1,2).今回,成人腸重積症のなかでもきわめて稀な大腸の逆行性腸重積症の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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