文献詳細
カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・1
文献概要
はじめに
近年,診断学の進歩は著しく,なかでも光学医療や画像診断学は消化器疾患の診療に欠かすことのできない検査法として広く普及している.食道疾患では,色素内視鏡や超音波内視鏡の進歩による早期食道癌症例の著しい増加に伴い,内視鏡的粘膜切除術や粘膜下層剝離術が一般的になりつつある.さらには,拡大内視鏡検査などによる質的診断能の向上を認めている.それに比べて食道良性腫瘍の発生頻度は低く,Suzukiら1)の全国集計の報告によると11,932例中149例で1.2%に過ぎない.そのなかで平滑筋腫が約60~70%と最も頻度が高い.良性腫瘍の診断は,一度見たら忘れないような特徴的な疾患もあるが,内視鏡形態学的に鑑別に難渋する場合も少なくない.悪性腫瘍に類似する良性の疾患,なかでも粘膜下腫瘍の形態をとるものでは,ほかの画像診断として超音波内視鏡やCT検査,FDG-PET検査などと組み合わせて腫瘍の質的診断を行うことが必要である.
本稿では,食道良性疾患の内視鏡検査による肉眼所見とその組織像を中心に症例を呈示し,その病態を含めて概説する.また,悪性腫瘍のなかでも非常に稀であり低悪性度を示すMALTリンパ腫の症例も呈示する.
近年,診断学の進歩は著しく,なかでも光学医療や画像診断学は消化器疾患の診療に欠かすことのできない検査法として広く普及している.食道疾患では,色素内視鏡や超音波内視鏡の進歩による早期食道癌症例の著しい増加に伴い,内視鏡的粘膜切除術や粘膜下層剝離術が一般的になりつつある.さらには,拡大内視鏡検査などによる質的診断能の向上を認めている.それに比べて食道良性腫瘍の発生頻度は低く,Suzukiら1)の全国集計の報告によると11,932例中149例で1.2%に過ぎない.そのなかで平滑筋腫が約60~70%と最も頻度が高い.良性腫瘍の診断は,一度見たら忘れないような特徴的な疾患もあるが,内視鏡形態学的に鑑別に難渋する場合も少なくない.悪性腫瘍に類似する良性の疾患,なかでも粘膜下腫瘍の形態をとるものでは,ほかの画像診断として超音波内視鏡やCT検査,FDG-PET検査などと組み合わせて腫瘍の質的診断を行うことが必要である.
本稿では,食道良性疾患の内視鏡検査による肉眼所見とその組織像を中心に症例を呈示し,その病態を含めて概説する.また,悪性腫瘍のなかでも非常に稀であり低悪性度を示すMALTリンパ腫の症例も呈示する.
参考文献
1)Suzuki H, Nagayo T:Primary tumors of the esophagus other than squamous cell carcinoma. International Advances in Surgical Oncology 3:73-109, 1980
2)田久保海誉:食道の病理.第2版.総合医学社,1996,pp160-171
3)Odze R, Antonioli D, Shocket D, et al:Esophageal squamous papillomas. A clinicopathologic study of 38 lesions and analysis for human papillomavirus by the polymerase chain reaction. Am J Surg Pathol 17:803-812, 1993
4)内田信之,長町幸雄,竹之下誠一,他:内視鏡的に切除しえた食道血管腫の1例.日臨外医会誌58:1018-1022,1997
5)大沢秀信,橋爪立雄,加藤広行,他:食道平滑筋腫上に併存した早期食道癌の1例.胃と腸27:1217-1221,1992
6)Kuwano H, Sadanaga N, Watanabe M, et al:Esophageal squamous cell carcinoma occurring in the surface epithelium over a being tumor. J Surg Oncol 59:268-272, 1995
7)桑野博行,宮崎達也,加藤広行:その他の食道腫瘍と内視鏡所見.消化器外科26:495-506,2003
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