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文献詳細

雑誌文献

臨床外科61巻10号

2006年10月発行

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・34

開腹に正中切開は必要か

著者: 松股孝1

所属機関: 1中津市民病院外科

ページ範囲:P.1364 - P.1365

文献概要

 【知ったかぶりの横切開】

 その昔,アメリカ帰りの先輩が「女性はビキニがはけるようにしてやらなければダメ」と教えてくれた.大先輩のいる出張先の病院で,12歳の女の子の急性虫垂炎症例にbikini incisionといわれるファンネンスティール切開を行って苦労した.アッペが遠すぎた.知ったかぶりをする外科医は恐ろしい.その後,アッペの切開で苦労したことはないが,麻酔で苦労した.腰椎麻酔で何人苦しめたことか.患者の苦しみが術者に伝わり,焦燥感に襲われる.腰椎麻酔はよくない.

 いま,年間手術症例が1,000例に満たない地域中核病院に2名の麻酔科常勤医がいる.アッペの麻酔は必ず全身麻酔である.カタラーリスなどを切ることはまずないので,外科医も発想を変える必要がある.盲腸周囲膿瘍まで起こしていても経過観察すれば1週間程度で治癒するので,症状の安定している患者にあえて開腹する必要はないが,炎症の強い虫垂炎は大腸癌よりも手術が難しいのだから,「アッペは腰椎麻酔」という発想は変えたほうがよい.

参考文献

1)Kehlet H, Mogensen T:Hospital stay of 2 days after open sigmoidectomy with a multimodal rehabilitation programme. Br J Surg 86:227-230, 1999
2)Waldhausen JH, Davies L:Pediatric postoperative abodominal wound dehiscence:transverse versus vertical incisions. J Am Coll Surg 190:688-691, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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