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連載企画「外科学温故知新」によせて・6
癌化学療法(1)―化学療法(chemotherapie)の開拓者:Paul EhrlichとGerhard Domagk
著者: 佐藤裕12
所属機関: 1北九州市立若松病院外科 2日本医史学会
ページ範囲:P.1376 - P.1377
文献購入ページに移動長年にわたって組織や細胞の合成化学染料(色素)に対する選択的な染色性の研究に取り組んできたエールリッヒは,日本からの留学生である秦佐八郎の助力を得て,梅毒の特効薬として砒素を含む合成化学薬剤「サルバルサン」を開発するに至り,秦と連名で1910年に「Die experimentelle Chemotherapie der Spirillösen」と題した論文を発表した.大きな期待を寄せられて魔法の銃弾とまで呼ばれたサルバルサンを用いた化学療法(chemotherapie)がここから始まり,歴史的にはこれをもって化学療法(chemotherapy)の嚆矢とする.ちなみに,世界初の化学療法剤として期待されたこの薬剤は,「salvare」が「preserve」ないし「save」を意味し「sanitas」が「health」を表すことから,「health preserver」すなわち「健康を守護する者」,言い換えれば「感染症(梅毒)からヒトを守る者」という意味で,「サルバルサン(salvarsan)」と名づけられた.
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