文献詳細
特集 イラストレイテッド外科標準術式
Ⅰ.食道の手術
文献概要
はじめに
実験的に縦隔鏡を用いて鏡視下に食道切除が試みられたのは比較的早く,1989年Kipfmullerら1)は羊を用い行っている.しかし,最初に臨床例で胸腔鏡下に食道を切除したのは1992年のCuschieriら2)とされる.わが国では川原ら3)の反転抜去との組み合わせによる臨床例への応用に始まり,その後,井上4)や赤石5)らによって通常の開胸術と同様の手順で鏡視下に食道切除が行われるようになってきた.しかし,現在においても胸部食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の適応や位置づけに関しては,施設により相違がみられる.筆者らは,以前から鏡視下においても右開胸下の術式と同等の郭清が可能であり,さらに呼吸機能の温存が可能であることを報告してきた6).本稿では筆者らが行っている,完全鏡視下の胸腔鏡下食道切除術,ならびに縦隔リンパ節郭清の手術手技と工夫について述べる.
実験的に縦隔鏡を用いて鏡視下に食道切除が試みられたのは比較的早く,1989年Kipfmullerら1)は羊を用い行っている.しかし,最初に臨床例で胸腔鏡下に食道を切除したのは1992年のCuschieriら2)とされる.わが国では川原ら3)の反転抜去との組み合わせによる臨床例への応用に始まり,その後,井上4)や赤石5)らによって通常の開胸術と同様の手順で鏡視下に食道切除が行われるようになってきた.しかし,現在においても胸部食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の適応や位置づけに関しては,施設により相違がみられる.筆者らは,以前から鏡視下においても右開胸下の術式と同等の郭清が可能であり,さらに呼吸機能の温存が可能であることを報告してきた6).本稿では筆者らが行っている,完全鏡視下の胸腔鏡下食道切除術,ならびに縦隔リンパ節郭清の手術手技と工夫について述べる.
参考文献
1)Kipfmuller K, Naruhn M, Melzer A et al:Endoscopic microsurgical dissection of the esophagus. Results in an animal model. Surg Endosc 3:63-69, 1989
2)Cuschieri A, Shimi S, Banting S:Thoracoscopic subtotal oesophagectomy through a right thoracoscopic approach. J R Coll Surg Edinb 37:7-11, 1992
3)川原英之,桜井考志,捨田利外茂夫,他:食道癌に対する胸腔鏡下食道亜全摘術 手術48:790-794,1994
4)井上 洋,河野辰幸,永井 鑑,他:胸部食道癌に対する胸腔鏡下手術 消外19:539-552,1996
5)赤石 隆,金田 巌,樋口則男,他:胸部食道癌手術―胸腔鏡下食道切除ならびにリンパ節郭清法.臨外50:1401-1404,1995
6)東野正幸,谷村愼哉,福長洋介:食道癌に対する鏡視下手術―食道切除とリンパ節郭清.消外27:655-667,2004
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