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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科61巻12号

2006年11月発行

雑誌目次

特集 生活習慣病および代謝性疾患と外科

特集に寄せて

著者: 桑野博行

ページ範囲:P.1441 - P.1441

 世界保健機関(WHO)が先頃発表した2005年版の「世界保健報告」によると,日本人の平均寿命は82歳となり,前年度に続いて世界一となった.しかし,一方では長寿国日本にかげりが見え始めている.最近,「生活習慣病」という言葉を聞かない日がない.特に肥満,耐糖能異常(高血糖),高中性脂肪血症,低HDLコレステロール血症,高血圧のうち3つが揃うことで診断される「メタボリック症候群」は国民の4人に1人が相当すると言われ,まさに国民病と呼んでも差し支えない事態を迎えている.

 「体の負担になる生活習慣」を続けることによって引き起こされる病気,すなわち生活習慣病がこのように増加の一途をたどっている原因は,生活習慣,特に食習慣の欧風化に負うところが大きい.かつて長寿の県として有名であった沖縄は食や生活の欧米化が急速に進行した結果,男性の平均寿命は77.64歳と全国平均(77.71歳)を下回り,5年前の調査の4位から一気に26位まで落ちた(二六ショック).特に中年の男性の死亡率が高いことが注目され,45~59歳の死亡率は脳血管疾患や脳出血,肝疾患,糖尿病などで全国ワースト10に入っている.今,急速に日本人の疾病体系が変化している.

生活習慣病とNST

著者: 清水弘行 ,   森昌朋

ページ範囲:P.1467 - P.1471

 要旨:生活習慣病の増加に伴い,生活習慣病を有する入院症例に対する栄養サポートチーム(nutrition support team:以下,NST)の介入症例も増加してきているものと考えられ,このような面に配慮した活動が必要とされている.本稿では,糖尿病,肥満,高脂血症,高血圧や肺気腫といった代表的な生活習慣病を伴う症例に対するNSTの介入のポイントについて解説する.今後は,生活習慣病を有する各症例の退院後の日常生活にも配慮したNSTの活動が求められていくものと思われる.

肥満患者に対する腹腔鏡下手術

著者: 遠山信幸 ,   河村裕 ,   清崎浩一 ,   小西文雄

ページ範囲:P.1473 - P.1478

 要旨:腹腔鏡下手術から発展した内視鏡下手術の普及はめざましく,現在ではあらゆる疾患・領域へ適応が拡大されている.しかしながら,未熟な内視鏡下手術による医療事故も後を絶たず,「内視鏡下手術は簡単・安全」という認識は誤りである.特に肥満患者に対しては,腹腔鏡下手術手技そのものに対する習熟とともに,腹腔鏡下手術に伴う一般的合併症のほか,メタボリックシンドロームとしての周術期全身合併症対策が必要となる.内視鏡下手術のトレーニングは重要であり,日本内視鏡外科学会による内視鏡外科専門医の技術認定制度も発足している.肥満患者に対する腹腔鏡下手術に対しては十分なインフォームド・コンセントとともに,ときには開腹手術への移行を躊躇しない決断も必要である.

〔生活習慣病および代謝性疾患を有する症例の術前・術後管理〕

高血圧および心疾患を有する患者の術前・術後管理

著者: 松宮護郎 ,   澤芳樹

ページ範囲:P.1443 - P.1447

 要旨:生活習慣病の増加と高齢化社会の進行に伴い,非心臓手術症例に虚血性心疾患をはじめとする心疾患を合併する場合が増加している.術前スクリーニングから心疾患が疑われる場合は,手術の緊急度や手術自体のリスクなどと心疾患の重症度,心臓合併症の危険性を勘案して対策を立てる.術前冠血行再建の適応は不安定狭心症,左冠動脈主幹部病変,重症三枝病変などに限られる.カテーテルインターベンションは低侵襲であるが,周術期の急性ステント内血栓症の危険があり,4~6週間の待機が必要である.近年,冠動脈バイパス術は体外循環を用いない低侵襲術式が可能となり,非心臓手術との同時および分割手術の有用性が報告されている.

糖尿病患者の術前・術後管理

著者: 長尾玄 ,   杉山政則 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1449 - P.1452

 要旨:糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて様々な危険因子(虚血性心疾患,脳血管障害,腎症,神経障害,易感染性など)を有することが多く,手術の際は術後合併症〔ケトアシドーシス,高血糖性高浸透圧性(非ケトン性)症候群,低血糖性昏睡,脱水,電解質異常,創感染,肺炎などの感染症,縫合不全〕の頻度も高い.糖尿病を有する患者を手術する場合は全身の評価が不可欠であり,また,術中・術後管理においても高血糖や低血糖に十分に注意する必要がある.術前血糖コントロールの目標としては,空腹時血糖値140mg/dl以下,食後血糖値200mg/dl以下,1日尿糖10g以下,尿ケトン体陰性が目安である.術後の血糖管理の目標には様々な意見があるが,血糖値が150~200mg以下,1日尿糖10g以下,尿ケトン体陰性になるように調節する.術前の血糖コントロールが良好な患者に対しては経口血糖降下薬の継続でもよいが,内服治療で空腹時血糖200mg/dl以上の場合には積極的にインスリンを導入する.また,インスリン導入が困難な場合や,術中・術後の血糖管理においては,速効型インスリンを用いたスライディングスケールも有効な方法である.糖尿病患者の周術期管理においては,すべての医療スタッフがその病態と合併症を理解することが重要である.

脳血管障害を有する患者の術前・術後管理

著者: 鎌田恭輔 ,   斉藤延人

ページ範囲:P.1453 - P.1460

 要旨:現在,世界一長い平均寿命を誇るわが国はまた,極端な高齢化社会を迎えている.患者の高齢化に伴い,高血圧や動脈硬化に起因した脳血管障害(脳卒中)に罹患する割合も増え,脳卒中後に抜歯や悪性腫瘍,外傷などのために外科手術が必要となる症例も多くなった.このため,外科処置と脳卒中の再発のリスクを客観的に評価し,予期していくことがきわめて重要になっている.本稿では,虚血性・出血性脳疾患などの脳卒中,また脳卒中後てんかんなどの概要を述べる.さらに,それらを有する患者の術前精査とその病態の評価,脳卒中治療薬の調整,術後管理についても解説した.

肥満患者の周術期管理

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.1461 - P.1466

 要旨:海外ではBMI≧30が肥満,BMI≧40が病的肥満である.肥満者の併存疾患には睡眠時無呼吸,気管支喘息,高血圧,不整脈,心不全,糖尿病,高脂血症,胃食道逆流症,脂肪性肝炎,静脈うっ滞がある.周術期の合併症には挿管困難,麻酔遷延,低換気,深部静脈血栓症,肺塞栓症,心筋虚血,創感染があり,高齢者や男性,糖尿病患者に多い.複数の危険因子を持つ高リスク患者として慎重な手術適応と周術期管理が重要である.

〔生活習慣病および代謝性疾患に対する外科〕

肥満に対する外科療法

著者: 太田正之 ,   甲斐成一郎 ,   遠藤裕一 ,   北野正剛

ページ範囲:P.1481 - P.1486

 要旨:高度の肥満患者に対する内科的治療は,長期的にみれば不成功に終わることが多いとされ,海外ではより積極的な肥満に対する外科療法が行われている.そこで,われわれは肥満に対する新たな治療法として内視鏡的胃内バルーン留置術および腹腔鏡下調節性胃バンディング術をわが国に導入した.両治療法ともに半年間で10kg以上の体重減少が得られ,過剰体重減少率も20%以上と効果は良好であった.体重の減少に伴い,肥満に関連する健康障害も改善した.今後,両治療法がわが国の肥満に対する外科療法の中心的役割を担うものと考えられる.

糖尿病―膵島移植の現状と将来展望

著者: 佐藤佳宏 ,   斎籐拓朗 ,   伊勢一哉 ,   見城明 ,   木村隆 ,   後藤満一

ページ範囲:P.1487 - P.1492

 要旨:わが国におけるⅠ型糖尿病患者への膵島移植は,2003年9月から2006年6月30日までに48回の膵島分離が施行され,23回の移植が13名に行われた.そのうち複数回の移植を受けた3名がインスリンを離脱した.インスリン離脱に至らない患者でも,全例がインスリン投与量の減少と無自覚性低血糖発作からの解放が得られている.わが国で開始された主として心停止ドナーによる膵島移植の成績は,観察期間は短いものの,Ⅰ型糖尿病に対する治療法として可能であることが確認された.今後は長期間の経過観察による良好な成績が期待される.

糖尿病―膵臓移植,膵腎同時移植

著者: 杉谷篤 ,   北田秀久 ,   岡部安博 ,   大田守仁 ,   吉田淳一 ,   土井篤 ,   岩瀬正典 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.1493 - P.1503

 要旨:膵臓移植には脳死・心停止ドナーから膵臓を十二指腸とともに移植する場合と生体から膵体尾部を移植する場合があるが,いずれも適正なインスリン分泌によって糖代謝を正常化し,二次性合併症の進展阻止,QOLの改善,さらには救命・延命効果を期待する治療法であり,欧米では糖尿病に対する治療法の1つとして定着している.わが国でも1997年10月の臓器移植法制定後,2006年6月末現在,1型糖尿病で腎不全を合併した患者に対して脳死・心停止ドナーから29例の膵腎同時移植あるいは腎移植後膵移植が,生体ドナーから6例の膵腎同時移植が施行されている.膵臓移植は,内科的治療が困難な1型糖尿病患者のQOLを著明に改善し,人生の最良のときに健康人と同様な充実した日々を提供し,できるだけ長生きしてもらうための,現時点では最も効果的な治療法である.

糖尿病―末梢動脈閉塞症(PAD)と糖尿病

著者: 杉本昌之 ,   古森公浩

ページ範囲:P.1505 - P.1510

 要旨:末梢動脈閉塞症(peripheral arterial disease:PAD)は動脈硬化症によって生じ,糖尿病患者において高頻度にみられる血管合併症(macroangiopathy)の1つである.糖尿病は喫煙と並ぶPADの強力なリスクファクターであり,下肢のPADの相対危険度が約2~4倍に高くなる.また,動脈硬化性変化は全身の動脈に及ぶため,PADの存在は冠動脈や脳動脈においても動脈硬化性病変が存在している可能性が高いことを意味する.実際,糖尿病合併PAD患者では非合併患者と比較して虚血性心疾患,脳血管障害のリスクが高いことが知られており,PADの早期診断と適切な治療は壊死・感染・肢切断といった重篤な状況への進展を防ぐのみならず,心血管イベントや脳血管障害の予防の面からも重要である.本稿ではPADの診断,治療ならびに糖尿病を合併したPADの特徴について解説した.

カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・11

食道悪性疾患

著者: 門馬久美子 ,   藤原純子 ,   根本哲生 ,   吉田操

ページ範囲:P.1427 - P.1434

はじめに

 食道の悪性腫瘍には上皮性の悪性腫瘍と非上皮性の悪性腫瘍があり,非上皮性の悪性腫瘍には悪性黒色腫や悪性リンパ腫,平滑筋肉腫などが含まれる.非上皮性の悪性腫瘍は稀な疾患である,一方,食道癌においては多数の早期食道癌が発見されるようになった.治療法としても内視鏡的粘膜切除術1~3)や粘膜下層剝離術4)が開発・普及し,現在では食道を温存した低侵襲な内視鏡治療が早期癌の治療に第一選択とされている.さらに,最近では狭帯域内視鏡システム(narrow band imaging:以下,NBI)の併用が可能となり,患者にヨード染色の苦痛を与えることなく早期癌が発見できるようになった.また,拡大観察を併用することで微小浸潤部の診断が実現し5,6),内視鏡治療の適応がより正確に判断できるようになるなど,内視鏡検査は新しい展開をみている.

 本稿では,食道表在癌を中心に内視鏡診断と病理所見を対比して述べる.

元外科医,スーダン奮闘記・7

失恋ではないけれど……

著者: 川原尚行

ページ範囲:P.1511 - P.1513

あるスーダン人女性の結婚

 その女性は,日本にいる兄弟を頼って日本の大学で修士をとっており,大変な親日家である.私がスーダンで活動を始めたときから,何かと助けてくれた.彼女は目がぱちりと大きく,いわゆるスーダン的な美人である.少しぽっちゃりとしているが,スーダンでは,またそれが男性を魅了するのである.実際,彼女はもてた.何人ものスーダン人男性が言い寄ってくるのを見てきた.彼女には意中の男性がいた.出身地も同じで親同士は結婚させたがっている.しかし,彼は別の女性に思いを寄せていた.その女性は彼とは出身地が違い,彼の両親は反対であった.彼女は,彼は両親思いだから,きっと彼女と別れて自分と一緒になると思っていたようだ.スーダンは婚姻に関して保守的な面がある.特に北部地方では顕著である.また,いとこ同士の結婚が多い.血の濃さによる弊害も指摘されるが,ここでは述べない.彼にも会ったことがあるが,長身でとても美男子であった.しかし,彼は結局,彼女には振り向かなかった.彼女はもう適齢期を過ぎており,「私はキャリアウーマンとして生きるわ」などと話していたこともあった.そして,われわれの活動もよく手伝ってくれた.NGOの活動はなにかと役人ともめることが多い.また,役所の各部署をたらい回しにされ,簡単な処理が何日,何週間とかかることが多々ある.そんなとき,彼女に登場願う.彼女は,われわれ側についてスーダンの役人とタフな交渉をしてくれた.彼女の美貌にスーダンの役人は翻弄されているようであった.ロシナンテスの資金が集まり,スーダン人スタッフを雇うことができるようになれば,真っ先に彼女を雇おうと考えていた.

 そんな時,彼女から突然電話があり,「結婚する」と言われた.新しい彼ができたのは知っていたが,突然である.彼はUAE(アラブ首長国連邦)の大学の先生である.スーダンの優秀な人はこのように海外に職を得る人が多い.彼女は結婚してUAEに行くらしい.結婚式は大勢の招待客と生バンドと優秀な歌手を呼び盛大に行われた.数多くいた男友達は顔を見せていない.スーダンでは,そういうものか.花嫁姿の彼女は確かに美しく,光り輝いているが,もう昔の彼女ではなく,遠くへ行ってしまったようで,なんとなく寂しい思いで,きらびやかな結婚式場を後にした.別に彼女に恋心を抱いていたわけではありません,あしからず.

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・35

成人鼠径ヘルニア手術でヘルニア囊の切除は必要か

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1514 - P.1515

 【素朴な疑問】

 最近,成人の鼠径ヘルニアの手術は,人工物であるメッシュを用いた手術が標準的になっているのは周知のとおりである.メッシュにも種々のものが出現し,術式も多様になっている.学会や研究会でも,メッシュを使用するときはヘルニアのタイプにかかわらずヘルニア囊の切除は必要ないという発表もみられ,やや混乱がみられる.このへんのところを少し詳しく検証してみる.

 【メッシュを使用しなかった時代での検証】

 20年以上前にヘルニアの手術を習ったとき,ヘルニアの手術はヘルニア囊,いわゆるヘルニアサックを見つけ,それをできるだけヘルニア門の根部あるいは腹膜前脂肪組織近くまで剝離し(ヘルニア囊の高位剝離),根部で切除するのがヘルニア手術の一番大事なポイントであると教わった.だから,まだヘルニア手術に自信がないときは,ヘルニア囊あるいはそれらしきものを見出すとほっとしたものである.外鼠径ヘルニア(あるいは間接ヘルニア)のときはこれでいいのであるが,内鼠径ヘルニア(直接ヘルニア)のときはさまざまな意見があり,この場合もヘルニア囊を見出し切除すべきという意見と,ヘルニア囊が不明なときは補強のみでいいという意見に分かれていた.

連載企画「外科学温故知新」によせて・7

癌化学療法(2)―抗癌剤は毒ガスから生まれた!

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1516 - P.1517

 1943年12月,イタリア南部のアドリア海に面したバリ港で,係留していたタンカーが空爆を受けて大爆発するという事故が起こった.最初から余談になるが,最初に発見されたアントラサイクリン系抗癌性抗生物質である一般名ダウノルビシン(商品名ダウノマイシン)は,アドリア海に面した南イタリアプーリア州のダウニア(Daunia)という小さな町の土壌中の放線菌(Streptococcus peucetius)の培養液から発見されたために,Daunomycinと命名された.また,ドキソルビンの商品名であるアドリアシンという呼称も,この菌を含んだ土壌の産地がアドリア海に面していたことに因んで命名された.トリビアな話であるが,この抗癌剤を作る細菌を含んだ土壌の産地は,のちに抗癌剤の創薬につながる毒ガス流出事故があった港町バリを含むプーリア州のアドリア海に面した地方であったのである.

 閑話休題,その際にタンカーに積載されていた大量のイペリットという毒ガスが流出し,その処理にあたった多くの連合軍側兵士が被災した.そして,600余名の兵士がこの毒ガスによって重度の皮膚熱傷を負ったり,高度の骨髄障害などの重篤な合併症をきたして,ついには83名が死亡するという大惨事に発展したのである.ところが,このイペリットという毒ガスによって引き起こされた事故が,皮肉なことに抗癌性化学療法剤の開発につながっていった.すなわち,健常者において白血球を減らす作用があるならば,これを白血病の治療に応用できるのではないかという考えが生まれたのである.

病院めぐり

医療法人社団東郷会 恵愛堂病院外科

著者: 山田勲

ページ範囲:P.1518 - P.1518

 大間々町は上毛三山の1つである赤城山の東南で,桐生市の西側に位置しています.足尾山地にその源を持つ渡良瀬川の流域に発達し,町の面積の約70%が美しい緑に覆われています.古くから足尾銅山で採掘された銅を運ぶ「銅山(あかがね)街道」の宿場町として,さらにまた絹や農作物を扱う市場として栄えてきました.2006年3月27日に周辺町村と合併し,新たにみどり市となりました.東京からは,東武浅草駅から特急りょうもう号に乗り約1時間50分の終点赤城駅が大間々町となります.

 そのような地に当院は,東郷院長が「豊かな愛を持って患者本位の医療を提供しよう」を医療理念として,群馬大学第2外科の仲間を誘い,昭和59年に開院しました.当初は44床でしたが,増床を重ねて現在は270床(一般病床172床,療養病床98床)となり,桐生広域圏の医療を桐生厚生総合病院とともに担っていると自負しています.

萩市民病院外科

著者: 中村丘

ページ範囲:P.1519 - P.1519

 当院は大正時代から続いた結核中心の療養型病院を新築・移転し,115床の急性期一般病院として平成12年4月にオープンしました.当院の標榜科は内科,神経内科,呼吸器科,消化器科,循環器科,小児科,外科,整形外科,放射線科で,現在では常勤医師15名,非常勤医師13名の規模となっています.

 当院の特徴は,開院と同時に診療情報と画像情報を一気に電子化したことです.平成11年10月に三菱電機株式会社と統合型病院情報システム導入の契約を締結しました.新病院に設置する主な医療診断機器はMRI,CT,DR,DSA,RI,CRなどで,これに対して病院情報システムは核となる電子カルテおよび看護支援システムと,放射線画像,検査,健診,医事,調剤,給食などの部門システムを導入することにしました.手術室は2室で,主たる手術機器は内視鏡下手術機器,ABC,超音波メス,セルセーバー,PCPS,IABPなどです.手術に関してもIT化を進め,業務系LANを使用して手術申し込みを行い,業務の効率化をはかっています.

胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・9

Mikuliczの胃癌外科とその時代(3)―実践での展開

著者: 高橋孝

ページ範囲:P.1521 - P.1528

 【Pólya, Navratilから何処へ―リンパ節郭清の本道と逸脱】

 Pólya, Navratilは1903年,Gerota液の発明によるリンパ流研究の革新を逸早く取り入れ,胃のリンパ流に多くの新知見を加えたことは前回述べたとおりであります.それは前項でみたPoirier, Cunéoの研究よりはより臨床的であり,実践応用に向いたものでした.その成果は必ずや,当時行き詰まっていた胃癌リンパ節郭清に1つの突破口を与えるものとして期待されていました.当時の外科医達のなかで最も期待されていたMikuliczは,その2年後胃癌のためにこの世を去りました.Mikuliczに代わって誰がPólyaらの研究成果を臨床の実践のなかに引き継ぎ,胃癌リンパ節郭清に新しい展開をもたらしたのでしょうか.まさに,このことをみていくのが本連載の課題であります.

 本連載第6回でリンパ節郭清の発展の過程には1つの図式があることを述べました.それは,リンパ流研究という理論と臨床での実践という2つの事柄の均衡を表現するもので,体表の癌と体内・内臓の癌の場合とではその釣り合いが異なっているというものでした.

臨床研究

胃切除後の胆石症に対する腹腔鏡下手術

著者: 中川国利 ,   藪内伸一 ,   村上泰介 ,   遠藤公人 ,   鈴木幸正

ページ範囲:P.1529 - P.1533

はじめに

 胆囊結石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術は低侵襲手技として広く普及し,いまや胆囊摘出術の標準術式となっている1,2).さらに,導入初期には適応外とされていた胃切除既往例に対しても,手技の習熟に伴って積極的に行われつつある3~8)

 今回,われわれは胃切除後の胆石症に対する腹腔鏡下手術について検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・1

落下胃石による小腸イレウスの1例

著者: 環正文 ,   大下和司 ,   宇山正

ページ範囲:P.1535 - P.1539

はじめに

 上部消化管検査の進歩・普及によって胃石の発見される頻度は増加し,現在は年間25例前後の報告がある1).しかし,胃石が小腸に落下してイレウスを引き起こすことは比較的稀である.

 今回,落下胃石による小腸イレウスの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

限局型胆囊腺筋腫症部に発症した胆囊粘膜癌の1例

著者: 間中大 ,   野口雅滋 ,   松谷泰男 ,   王子裕東 ,   鳥井恵雄 ,   水田直美

ページ範囲:P.1541 - P.1545

はじめに

 胆囊腺筋腫症〔胆囊アデノミオマトージス(adenomyomatosis):以下,ADM〕は胆囊の良性増殖性疾患と考えられ,日常診療において比較的多く遭遇する疾患である.腫瘍性疾患との鑑別が問題となる場合も多く,手術適応に関してもいまだ一定の見解をみないのが現状である1)

 今回,胆囊頸部の限局性ADM粘膜上皮に発症した胆囊早期癌(粘膜癌)の1例を経験した.癌病巣部はADM粘膜上皮を置換するかたちで粘膜表層部に観察され,ADMと胆囊癌発症の関連について考えさせられる1例であった.本稿では,ADMと胆囊癌発生の関連性を中心に,文献的考察を加えて報告する.

横行結腸癌による腸閉塞によって呼吸困難をきたした成人Bochdalek孔ヘルニアの1例

著者: 池田光憲 ,   黒川英司 ,   三宅泰裕 ,   加藤健志 ,   飯島正平 ,   吉川宣輝

ページ範囲:P.1547 - P.1550

はじめに

 Bochdalek孔ヘルニアは最も頻度の高い横隔膜へルニアであり,その多くは先天性である.新生児期に重篤な呼吸・循環障害を呈し,治療されることが大部分であり,成人になってから処置が必要となることは稀である1,2)

 今回,われわれは横行結腸癌による腸閉塞が原因で呼吸困難を呈した成人Bochdalek孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.

MD-CTによる術前門脈側副血行路確認が門脈切除・再建に有用であった門脈浸潤膵頭部癌の1例

著者: 藤元治朗 ,   大西誠 ,   杉本貴昭 ,   吉田康彦 ,   斉藤慎一 ,   黒田暢一

ページ範囲:P.1551 - P.1554

はじめに

 膵頭十二指腸切除手術を施行する際の門脈合併切除・再建はしばしば経験される.通常はバイパスなしで門脈再建が可能であるが,手術手技が複雑になる場合などは抗血栓性門脈バイパスカテーテルの使用が必要になることもある1~3)

 今回,筆者らは術前multi detectable computer tomography(以下,MD-CT)で同定された門脈側副血行路を門脈合併切除・再建するまで温存することによって,安全に手術することが可能であった門脈浸潤膵頭部癌の1例を経験したので報告する.

臨床報告・2

結核性脊椎炎治療中にイレウスを発症した結核性腹膜炎の1例

著者: 玉木雅人 ,   小林泰三 ,   嶋田貞博 ,   今村好章

ページ範囲:P.1555 - P.1557

はじめに

 結核性腹膜炎は各種臓器結核から続発する腹膜炎で,近年は抗結核療法の進歩によって著しく減少している1,2)

 今回,われわれは結核性脊椎炎に対して抗結核療法施行中に,索状物による絞扼性イレウスを発症した結核性腹膜炎の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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