icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科61巻2号

2006年02月発行

雑誌目次

特集 外科医に求められる緩和医療の知識

緩和ケアチーム

著者: 梅田恵

ページ範囲:P.147 - P.151

要旨:英国では300か所以上の一般病院で緩和ケアチーム活動が定着し,(1)症状コントロール,(2)診断や進行についての説明理解の促進,(3)患者療養の場の適切な提案,が役割となっている.わが国では,緩和ケア診療加算新設に伴い緩和ケアチームの活動は広がりをみせているものの,加算申請基準の問題や混乱もあり,緩和ケアチームがどうあるべきか検討が重ねられている.昭和大学病院では,緩和ケアコンサルテーションとして約170件/年の依頼を受け,委員会活動などに支えられ,緩和ケアチーム体制は安定してきている.患者・家族にとって有益な活動として,緩和ケアチームが成熟とともに広まっていくことを願っている.

外科医に伝えたい在宅医療―在宅緩和ケアを中心に

著者: 英裕雄

ページ範囲:P.153 - P.156

要旨:担癌患者の病状は安定しているが,通院困難となり,栄養療法,疼痛緩和療法を自宅でサポートしてほしいという理由で在宅療養が開始されることが多い.しかし,実際にはその後,非常に短期間に病状変化が進み,いったん確立した療法や処置内容をすみやかに変更せざるを得ない.麻薬を含めた各種疼痛緩和薬は,ほぼすべて自宅での使用が可能であり,様々な処置を病状に合わせて行うことは可能である.しかし,在宅では検査能力が乏しいため,病状把握や処置方法を外科医と連携を取りながら構築することが必須である.また,悪性腫瘍患者自らも自宅療養を強く希望することが多いが,家族がある種の達成感をもてることが多いのも在宅療養の意義の1つである.

癌性疼痛緩和のための薬物療法―最近の知見とオピオイドローテーション

著者: 堀夏樹 ,   寶田潤子 ,   小西敏郎

ページ範囲:P.157 - P.161

要旨:WHOの疼痛緩和ラダーに則ることで90%程度の癌性疼痛が緩和される.このガイドライン使用に当たっては,非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)単独で長期に管理せず,早めのオピオイド導入が望ましい.オピオイド投与は,経口摂取可能であればオキシコドン徐放製剤とNSAIDsから開始するのが簡便で容易である.この際,突発痛に対してレスキュー用即効性モルヒネと緩下剤を必ず併用する.レスキュー回数が1日あたり3回以上,あるいは定時内服時刻前に疼痛が出現したら1日量の30~50%の増量を行う.有効な鎮痛が得られないときや副作用管理が困難なときは,ほかのオピオイドへのローテーションを検討する.日々の症状評価に応じてオキシコドン,フェンタニル,モルヒネを使い分けることが必要であり,十分なオピオイドが投与されているのに疼痛が残存するときは補助薬の併用を検討する.

オピオイドが効き難い疼痛と鎮痛補助薬

著者: 大西幸

ページ範囲:P.163 - P.168

要旨:鎮痛補助薬には,高頻度で副作用を生じる薬剤が多く含まれる.オピオイドが効きにくいとされる疼痛であっても,適応外でなければまずオピオイドを含む十分量の鎮痛薬を投与し,効果が認められない場合に鎮痛補助薬を検討する.鎮痛補助薬に対する反応は個人差が大きく,有効な薬剤やその至適投与量を予測することは困難なため,低用量から開始し,効果,副作用を十分確認しながら漸増していく.無効であれば多くの場合漸減中止し,他剤を試行する.効果発現までに時間を要することや,投与目的,生じ得る副作用について患者の十分な理解を得たうえで,リスク対効果の最適な薬剤をみつけることが重要である.

緩和医療における統合医療

著者: 今西二郎

ページ範囲:P.169 - P.172

要旨:補完・代替医療は現代西洋医学以外の医学を指し,緩和医療において有用である.なかでも漢方,鍼灸,マッサージ,健康食品,イメージ療法をはじめとする心理療法などが,疼痛や癌に伴う様々な症状の緩和に,あるいはQOLの改善に使用されている.また,アロマセラピーは,乳癌患者における再発に対する不安感軽減に有効である.現代西洋医学を中心に補完・代替医療を組み合わせた統合医療が緩和医療を行っていくうえで重要である.

緩和医療におけるサイコオンコロジー

著者: 保坂隆

ページ範囲:P.173 - P.175

要旨:外科医にとっての緩和医療に関して,外科的な根治手術はCureを意味し,それができなくなった時点からがCareであると誤解されることが多い.正しくは,根治手術ができる段階からすでにCareが始まっていて,病気の進展にしたがって,徐々にCureからCareの割合が高くなっていく.そのため,告知や手術の説明をする段階から緩和医療が始まり,患者や家族の情緒的な面を考えていく必要がある.サイコオンコロジーの対象は多岐にわたるが,一般的には不安や抑うつ,せん妄などの精神症状が主流となる.癌患者の30~40%にうつ病や適応障害(軽いうつ病)が合併しているので,精神療法的アプローチや薬物療法は外科医にとっても必要である.

家族に必要なケア

著者: 須山郁子

ページ範囲:P.177 - P.180

要旨:癌患者の家族は,患者と同様の衝撃を受け,様々な問題を抱えている.緩和ケアでは,患者と家族を1つの単位と捉え,家族全体を積極的にケアしていくことが重要である.家族を理解するためには,患者の健康問題が家族に与えている影響,家族の問題に対応する能力などをみていくことが必要である.緩和ケアにおける家族ケアとしては,予期悲嘆への援助や家族の患者ケアへの参加,家族メンバー内の調整,意思決定への支援などが挙げられる.予期悲嘆への援助では,悲嘆のプロセスを理解し,それぞれの時期に応じた援助を行うことが重要である.患者・家族の意思決定においては,十分な情報提供とコミュニケーションをはかって支援し,患者・家族の選択を尊重し支持することが必要である.

緩和医療におけるコミュニケーションの重要性

著者: 蘆野吉和

ページ範囲:P.181 - P.184

要旨:緩和医療は特別な医療ではなく,癌医療の基礎となる理念である.そのなかで最も大事なことは患者,家族,医療従事者のコミュニケーションが確立されていることである.コミュニケーションを確立するために重要なことは,患者に真実を話すこと(嘘のない情報を提供すること)である.日本においては,患者を差し置いて,最初に家族に医療情報を提供する習慣があるが,これは個人の尊厳を無視するものであり,改める必要がある.癌患者と向き合う外科医は手術のスキルを磨くと同時に,コミュニケーションスキルを磨く努力が必要である.

再発乳癌患者の緩和ケアの留意点

著者: 植木浜一 ,   田枝督教

ページ範囲:P.185 - P.187

要旨:再発乳癌の治療目標は,第一に症状緩和とQOLの向上である.したがって,早期から緩和ケアの考えを念頭において治療することが大切である.再発乳癌患者に多大な苦痛を与える疼痛や呼吸困難感,また局所再発病巣の出血と悪臭について,その具体的対処法と留意点を症例に即してわれわれの経験を中心に述べる.疼痛では乳癌に多い骨転移と患側上肢の神経障害性疼痛について詳述した.呼吸困難感ではその原因を明らかにし,速やかに対処する重要性を述べる.局所再発病巣の処置では腫瘍を放射線や手術にて極力コントロールする重要性について述べる.また,コントロールできなかった場合の出血,感染による悪臭対策についても述べる.

外科医と緩和医療―当院の取り組みと外科における実践

著者: 吉田雅行 ,   諏訪香 ,   戸田央 ,   中山理 ,   青木茂 ,   堀雅博 ,   宮下真理子 ,   番匠千佳子

ページ範囲:P.189 - P.193

要旨:わが国の一般病院の外科医の多くは悪性腫瘍の治療に携わり,術後補助療法ばかりでなく再発後の治療・ケアや終末期の緩和ケアを担当している.多忙を極める外科医が,質のよい緩和ケアのすべてにかかわることは現実的ではない.そこで,患者・家族を中心に,病棟・外来看護師,他科医師(ペインクリニック,精神科など),リエゾンナース,薬剤師,栄養士,リハビリ部門,MSW,緩和ケアチーム,かかりつけ医,訪問看護師などとの連携,すなわちチーム医療の実践が必要となる.本稿では,当院の緩和医療委員会の活動内容,外科,特に乳腺外科における緩和ケアの実際について,症例を紹介しながら解説する.

一般病院における緩和ケア―チーム医療の観点から

著者: 冨田尚裕 ,   中田健 ,   岡村修 ,   大里浩樹 ,   田村茂行 ,   杉本圭司 ,   相原智彦 ,   三木宏文 ,   高塚雄一

ページ範囲:P.195 - P.199

要旨:近年,患者のQOL向上に対するニーズの高まりなどもあり,緩和医療の重要性が大きくクローズアップされてきた.わが国において癌死亡者数は増加の一途をたどっているが,その多くは病院死であり,ホスピス・緩和ケア病棟の数を考えると癌患者の看取りのほとんどは一般病院で行われていると考えられる.一般病院において外科医が緩和ケアを行うことには利点と欠点があるが,それまで行ってきた治療や人間関係が継続できることや専門科への紹介の利便性など利点は大きい.しかしながら,多くの診療業務に多忙な一般病院において質の高い緩和ケアを提供するためにはチーム医療が必須であり,そのなかでのコーディネーターとして外科医の果たす役割は大きいと考えられる.

カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・2

胃:良性疾患―非腫瘍性病変

著者: 星野美奈 ,   小野祐子 ,   平石秀幸 ,   藤盛孝博

ページ範囲:P.141 - P.146

胃の良性疾患として,形成異常,急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion)および胃炎(急性・慢性),胃潰瘍,特異性炎症(結核・サルコイドーシスなど),良性腫瘍(上皮性・非上皮性),腫瘍類似病変(過形成性ポリープや反応性濾胞過形成など)が挙げられる.

 本稿では非腫瘍性疾患について,また61巻4号に掲載予定の回では腫瘍性疾患と腫瘍類似病変について概説し,典型的な肉眼像と組織像を提示する.

病院めぐり

芳珠記念病院外科

著者: 佐久間寛

ページ範囲:P.204 - P.204

【病院の沿革】

 当院は,昭和58年に石川県南部の能美郡辰口町(現 能美市)の丘陵地に「ホテルのような明るく快適な病院」を目指して医療法人「和楽仁」の中心病院として設立された.設立当時は病床数240床,7診療科,常勤医師数9名であったが,その後,数回の増築と増床,診療科の増加を経て,現在は21診療科,常勤医師28名,急性期200床・療養病床120床となり,地域の基幹病院としての地位を確立しつつある.また,平成9年に200床以上の基幹病院としては北陸地域では2番目,全国でも62番目に財団法人医療機能評価機構の認定病院となり,昨年,認定の更新を受けた.

三豊総合病院外科

著者: 白川和豊

ページ範囲:P.205 - P.205

当院は香川県西端の観音寺市に位置する,その周辺地域を含む約15万人が対象の地域中核病院である.病床は519床あり,地域の急性期医療を担当している.外科医はスタッフ7名と2~3名の研修医からなり,救急から消化器,呼吸器,心臓血管などの外科領域全般と,さらには緩和ケアも担当している.1日あたりの患者数は入院50~60名,外来60~80名で,年間の総手術件数は900例程度である.地域の救急車搬送の半数強を受け入れており,救急手術件数が200例前後ある.

 当院は昭和26年に開設され,昭和43年までは京都大学の関連病院であり,その頃の職員名簿には山岡前京都大学教授の名前もあった.以降は岡山大学から医師が派遣されてきたが,現在,総医師数は80名を超え,出身大学も多彩である.新臨床研修制度のもとで,毎年5名の研修医を募集するが,幸い多くの応募者がいて定員枠を満たしている.職員総数は700余名で,チームワークはよく,全体のモチベーションは高い.夏にはビアパーティー,冬には忘年会が全職員一緒で催され,400名前後の参加があって圧巻である.

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問

25.傷に消毒は必要か

著者: 夏井睦

ページ範囲:P.206 - P.207

 傷に消毒は必要ない,と言うべきか,消毒薬は本来,傷のなかに入れてはいけない物質であり,このことは欧米の外科の教科書には以前から明記されていて,いわば普遍的事実である.「傷に消毒は必要か」という質問自体,すでに時代遅れなのである.

 傷の消毒は1870年代に始まった.近代外科の祖と言われるリスターの業績である.当時はちょっとした外傷や手術後の傷も高い頻度で化膿し,敗血症になることも稀ではなかった.このとき,リスターは傷を消毒することでそれらが劇的に減少することを示した.具体的には石炭酸という消毒薬で傷を洗い,石炭酸に浸したリント布で傷を覆う方法だった.これだけをみれば,「傷を消毒すると傷が化膿しなくなる」ように思われる.しかし,当時すでに,リスターが使用した石炭酸はあまり殺菌力が強くなく,多くの細菌が死なずに生き残っていることが指摘されていた.リスターが石炭酸消毒で創感染(敗血症)を減らしたのは事実であるが,その石炭酸の殺菌力は弱いというのも事実なのである.つまり,創感染の減少と石炭酸の殺菌力は無関係だったのである.

26.消毒剤による術野消毒は必要か

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.208 - P.209

【素朴な疑問】

 最近,手術術後の創部や外傷の創部に消毒剤を用いずに処置を行い,非常によい結果を得ている.では,果たして手術前に術野の消毒は必要なのであろうか.また,従来から強調されていた術野の消毒は,本当に感染の防止に役に立っているのであろうか.少なくとも肛門の手術前の消毒は,理論的にみて術中に術野が便で汚染することが必発のため,まったく意味がないと思われる.現在は,術前・術後とも消毒剤による処置はしていないが,感染が生じた例はない.

外科学温故知新・6

外科侵襲

著者: 井上雅智

ページ範囲:P.211 - P.216

1 はじめに

 侵襲とは外部からの生体に対する攻撃のことであり,この攻撃に対し生体は防御機構を作動し,生体反応が惹起されるのである.侵襲が大きくなればなるほど生体反応は強くなるであろうから,われわれ外科医が最も精力を注がなくてはならないことは,侵襲を軽減することである.この認識から臨床面で様々な工夫がなされているが,近年開発され広く普及してきた内視鏡下手術は,生体に対する機械的侵襲を軽減することに多大な役割を果たしている.また,SSI(surgical site infection)のサーベイランスは感染予防に貢献しているのである.一方,侵襲に対する生体反応システムの解析はサイトカインの発見を契機に飛躍的に発展させており,病態の原因が詳細に究明されてきている.また,臨床的にもSIRS(systemic inflammatory response syndrome)の概念が導入され,今まで曖昧であった敗血症(sepsis)の定義がこれによって明確になった.

 本稿では,「外科学温故知新」ということで,侵襲に対する生体反応に限定して過去,現在,未来を筆者なりにまとめてみた.

臨床研修の現状―現場からの報告・6

トヨタ記念病院外科

著者: 辻秀樹

ページ範囲:P.217 - P.220

1 はじめに

 トヨタ記念病院は1938年に発足した,現在病床数513床を数える中堅病院で,トヨタ自動車が経営母体となる企業病院である.「トヨタにふさわしいトップ水準の急性期病院を目指す」というコンセプトのもと,2003年から2004年にかけて電子カルテ導入をはじめ院内の全面改装を行い,現在はソフトウェアの充実すなわち種々の臨床指標の設定とその結果の抽出,CQIチーム(緩和ケア,電子カルテ改善,感染対策,医療機器運用など)の活動などを行いながら病院機能評価ver. 5の合格を目指している.また,1995年から臨床研修指定病院の認定を受け,2004年からはマッチングに参加しスーパーローテート研修で12名の研修医を,2005年は当院研修医12名プラス他大学からの1年目研修医を3名受け入れている.

臨床外科交見室

いわゆる外科的清潔・不潔の概念の見直しについて

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.222 - P.222

1.はじめに

 外科系の医師や外科に勤務する看護師達は,初心者のときに清潔,不潔の概念を徹底的に教えられる.特に手術時の手洗いから傷のガーゼ交換,あるいは穿刺や切開などの処置の仕方,そして介助時の注意点などである.しかし,最近,これらの概念の一部が果たして本当であろうかという疑問が提唱されるようになってきた.創の処置法,あるいは手術前の手洗い法などを含め,あれほどうるさく言われた清潔,不潔の概念も変化してきている.

 本稿では,特に従来提唱されていたこの概念について検証した.

臨床報告・1

臀部腫瘤を主訴とした成人前仙骨部epidermoid cystの1例

著者: 小松昇平 ,   河村史朗 ,   角泰雄 ,   島田悦司 ,   奥村修一 ,   藤田昌幸

ページ範囲:P.223 - P.227

はじめに

 前仙骨部は胎生期にcaudal endが存在し,多数の胎児性組織が集合するため,種々の先天性腫瘤が発生する可能性の高い部位である.今回,われわれは臀部腫瘤を主訴とした成人前仙骨部epidermoid cystの1例を経験したので,本邦報告43例を集計するとともに若干の文献的考察を加えて報告する.

胃癌術後6日目に発症した脾梗塞の1例

著者: 松岡隆久 ,   森景保則 ,   久我貴之 ,   中山富太 ,   藤井康宏

ページ範囲:P.229 - P.232

はじめに

 脾梗塞は稀な疾患であり,なかでも基礎疾患を有しない患者における胃癌術後合併症としての脾梗塞の報告例はわれわれの検索範囲内ではなかった.今回,われわれは胃癌術後6日目に発症した脾梗塞の1例を経験したので,若干の文献的考察(1983-2005 MEDLINE)を加えて報告する.

絞扼性イレウスを生じた成人型腸間膜乳び囊腫の1例

著者: 若月俊郎 ,   山本敏雄

ページ範囲:P.233 - P.235

はじめに

 腸間膜囊腫は比較的稀な疾患であり,そのなかでも成人型腸間膜乳び囊腫の報告は少ない.今回,絞扼性イレウス症状で発症し術前CTにて診断し得た1例を経験したので報告する.

腹壁腫瘤を呈した放線菌症の1例

著者: 若月俊郎 ,   野坂仁愛 ,   竹林正孝 ,   岡本恒之 ,   鎌迫陽 ,   谷田理

ページ範囲:P.237 - P.240

はじめに

 放線菌症は近年抗生物質の発達により比較的稀な疾患となってきており,なかでも腹部放線菌症の報告はわずか110例足らずである1).われわれは今回腹部腫瘤を呈した放線菌症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

Pagetoid spreadを伴った肛門管癌の1例

著者: 前田真一 ,   瀧川譲治 ,   豊山博信 ,   原口優清 ,   愛甲孝 ,   栗脇一三

ページ範囲:P.241 - P.244

はじめに

 Pagetoid spreadは腺癌細胞が皮膚に連続性に進展したもの1)で,これを伴う肛門管癌は稀である.今回,われわれはpagetoid spreadを伴う肛門管癌を経験したので報告する.

乳房温存術後5か月目に出現した残存乳房内出血の1例

著者: 稲田一雄 ,   川元俊二 ,   白日高歩 ,   平塚昌文

ページ範囲:P.245 - P.247

はじめに

 乳房温存術後約5か月経過して残存乳房内に出血を認め,局所再発など腫瘍性病変との鑑別が困難で診断・加療に難渋した症例を経験したので報告する.

白線ヘルニア嵌頓の2手術例

著者: 道免寛充 ,   西山徹 ,   竹林徹郎 ,   近藤哲

ページ範囲:P.249 - P.252

はじめに

 白線ヘルニアは白線の間隙から生ずる腹壁ヘルニアの1つであり,わが国では稀な疾患である1).今回われわれは,白線ヘルニア嵌頓の2手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Primitive neuroectodermal tumorと考えられる腸間膜腫瘍の1例

著者: 森田圭介 ,   伊藤重彦 ,   轟木秀一 ,   木戸川秀生 ,   中村司朗 ,   田口尚

ページ範囲:P.253 - P.256

はじめに

 Primitive neuroectodermal tumor(以下,PNET)は神経外胚葉性分化を示す稀な軟部組織腫瘍で,悪性小円形細胞腫瘍の1つである1).最近では種々の免疫組織学的診断が可能となり,神経芽細胞種,悪性リンパ腫などとの鑑別も可能となった.今回,われわれは,発生部位がきわめて稀な小腸間膜原発と考えられたPNETの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?