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文献詳細

雑誌文献

臨床外科61巻2号

2006年02月発行

文献概要

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問

25.傷に消毒は必要か

著者: 夏井睦1

所属機関: 1慈泉会相澤病院外傷治療センター

ページ範囲:P.206 - P.207

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 傷に消毒は必要ない,と言うべきか,消毒薬は本来,傷のなかに入れてはいけない物質であり,このことは欧米の外科の教科書には以前から明記されていて,いわば普遍的事実である.「傷に消毒は必要か」という質問自体,すでに時代遅れなのである.

 傷の消毒は1870年代に始まった.近代外科の祖と言われるリスターの業績である.当時はちょっとした外傷や手術後の傷も高い頻度で化膿し,敗血症になることも稀ではなかった.このとき,リスターは傷を消毒することでそれらが劇的に減少することを示した.具体的には石炭酸という消毒薬で傷を洗い,石炭酸に浸したリント布で傷を覆う方法だった.これだけをみれば,「傷を消毒すると傷が化膿しなくなる」ように思われる.しかし,当時すでに,リスターが使用した石炭酸はあまり殺菌力が強くなく,多くの細菌が死なずに生き残っていることが指摘されていた.リスターが石炭酸消毒で創感染(敗血症)を減らしたのは事実であるが,その石炭酸の殺菌力は弱いというのも事実なのである.つまり,創感染の減少と石炭酸の殺菌力は無関係だったのである.

参考文献

1)Natsui M:Therapeutic management of problematic superficial wounds:a patient-centred approach. J Wound Care 12:63-66, 2003
2)Lawrence JC:The effect of bacteria and their products on the healing of skin wounds:A biological approach to thee wound healing process. Proceeding of symposium, Royal College of Phisicians, London, 5 June 1987, Anodover, medivax. 1987, pp9-21
3)Kramer SA:Effect of povidone-iodine on wound healing:a review. J Vasc Nurs 17:17-23, 1999
4)岩沢篤郎:ポビドンヨード製剤の使用上の留意点.Infection Control 11:18-24,2002
5)Balin AK, Pratt L:Dilute povidone-iodine solutions inhibit human skin fibroblast growth. Dermatol Surg 28:210-214, 2002
6)Valente JH, Forti RJ, Freundlich LF, et al:Wound irrigation in children:saline solution or tap water?. Ann Emerg Med 41:609-616, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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