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文献概要
胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・1
連載のはじめに―概観
著者: 高橋孝1
所属機関: 1たむら記念病院外科
ページ範囲:P.343 - P.348
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「胃癌外科におけるリンパ節郭清は,いつ,どこで,誰が始め,それがどのようにして日本の胃癌外科に繋がってきたのであろうか」,この疑問あるいは課題は私にとっては積年のものであり,私の外科医としての生活のなかに深く入り込んでいるものです.
それは私が大学を卒業(1962年)したのち,確とした進路の定まらぬまま無為な5年を過ごしたのち,伝手を頼って大塚の癌研究会病院に梶谷鐶先生を訪ねて胃癌の手術を見学し,その摘出標本の整理に立ち会って以来のものであります.当時見た胃癌の手術は,これまでは表面的に無思慮に眺めていた外科手術そのものを根本的に考え直すきっかけを私に与えてくれました.たとえば,胃を血流支配する4本の動脈は,これらが結紮・離断されて胃は安全に切除されるものと考えていましたが,実はこれらの動脈は第一義的には結紮されるためのものではなく,郭清のためのリンパ節を追跡していく道標として考慮されなければならないことに気がつきました.
「胃癌外科におけるリンパ節郭清は,いつ,どこで,誰が始め,それがどのようにして日本の胃癌外科に繋がってきたのであろうか」,この疑問あるいは課題は私にとっては積年のものであり,私の外科医としての生活のなかに深く入り込んでいるものです.
それは私が大学を卒業(1962年)したのち,確とした進路の定まらぬまま無為な5年を過ごしたのち,伝手を頼って大塚の癌研究会病院に梶谷鐶先生を訪ねて胃癌の手術を見学し,その摘出標本の整理に立ち会って以来のものであります.当時見た胃癌の手術は,これまでは表面的に無思慮に眺めていた外科手術そのものを根本的に考え直すきっかけを私に与えてくれました.たとえば,胃を血流支配する4本の動脈は,これらが結紮・離断されて胃は安全に切除されるものと考えていましたが,実はこれらの動脈は第一義的には結紮されるためのものではなく,郭清のためのリンパ節を追跡していく道標として考慮されなければならないことに気がつきました.
参考文献
1)川俣建二,村上忠重(校閲):胃外科の歴史.医学図書出版,1971
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7)村上栄一郎,永友知英,堀 馨,他,日本における胃癌研究のあゆみ.日本臨床25:1513-1550,1967
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10)Hiki S and Hiki Y:Professor von Mikulicz-Radecki, Breslau:100 years since his death. Langenbeck Arch Surg 390:182-185, 2005
11)隣孤庵遺稿 隣孤庵追憶.久留勝先生追憶集刊行会,1971
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15)佐藤 裕:ビルロート(Billroth),ミクリッツ(Mikulicz)と三宅速(胃癌外科手術の流れに関連して).九州大学医学部外科第一講座同門会誌32:21-20,1997
1)高木国夫(聞き手):梶谷鐶先生に聞く.MEDIC 21:13-18,1986
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