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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科61巻4号

2006年04月発行

雑誌目次

特集 最新の手術器械―使いこなすコツを学ぶ

モノポーラー電気メスの使い方

著者: 谷川允彦

ページ範囲:P.419 - P.422

要旨:モノポーラー電気メスの外科手術への導入は,出血量を激減させるとともに,手術操作の多くの局面でその迅速化に貢献してきている.本稿では,モノポーラー電気メスにより組織を直接に切離する方法に始まり,テフロンコーティングしたクラッフォード鑷子に通電することにより,同鑷子が把持する組織を凝固するばかりでなく無出血下の切離操作に有用であることを,食道,胃手術などの実際を紹介しながら解説した.また,腹腔鏡下消化器癌手術においても同様の操作が迅速な手術遂行に有用であることも述べた.時代の推移とともに進化していく手術器械を随所に適宜使用することにより,出血の少ない,より安全な手術を実現させることは,各外科医に課せられた使命であると思われる.

バイポーラー電気メスの使い方

著者: 坂本宣英 ,   宮川菊雄

ページ範囲:P.423 - P.426

要旨:バイポーラー電気メスは,刃先に挟まれた部位のみを乾燥・凝固し,隣接する組織の熱損傷や電気的損傷が少なく,低電圧で使用できる利点がある.このことから,マイクロサージャリー領域や神経組織が周囲に多く存在する部位での止血に有用である.また腹腔鏡下手術においても,止血以外に組織の剝離や把持鉗子として用いられている.バイポーラー電気メスの原理や利点,モノポーラー電気メスとの相違点をよく理解することにより,より安全で有効な手術操作が可能となる.

バイポーラーシザーズ

著者: 小林道也 ,   杉本健樹 ,   荒木京二郎

ページ範囲:P.427 - P.430

要旨:バイポーラーシザーズは周辺組織への熱損傷が少ないことと,凝固・切離を行えることから,手術時間の短縮をはかることができる.現在,通常開腹用のものと鏡視下手術用のものがあり,わが国ではいずれも複数の製品が使用可能である.また,モノポーラーに比べて凝固能が有意に高いとは言えず,製品の特徴を理解し,その使用法に習熟する必要がある.本稿では現在わが国で入手可能なバイポーラーシザーズを紹介する.

超音波凝固切開装置

著者: 髙島元成 ,   吉野茂文 ,   硲彰一 ,   岡正朗

ページ範囲:P.431 - P.434

要旨:超音波凝固切開装置は,いまや内視鏡下手術のみならず開胸・開腹手術においても幅広く用いられその有用性が示されている.組織を切離する際は,周囲から十分に剝離して把持し,ブレードが周囲組織に接触していないことを確認して作動させる.このとき,切離組織とブレードの接触面積が大きいほど効率よく振動エネルギーが伝わるので,ブレード側からティシュー・パッド側にテンションをかけるようにする.シャフトに少し捻りを加えて接触面積を大きくするのも有用である.使用に際して最も注意すべき点はキャビテーション現象である.また,切離時に発生するミストを適時排除することも手術を安全かつスピーディーに行ううえで大切である.

LigaSureTM

著者: 福永哲 ,   比企直樹 ,   黒柳洋弥 ,   斎浦明夫 ,   大山繁和 ,   瀬戸泰之 ,   上野雅資 ,   大矢雅敏 ,   関誠 ,   山本順司 ,   山口俊晴

ページ範囲:P.435 - P.440

要旨:LigaSureTM(Vessel Sealing System)は,脈間壁内のコラーゲンやエラスチンを電気エネルギーによって融解させ一体化して閉鎖するバイポーラー電気メスであり,現在消化器外科,産婦人科,泌尿器科など多くの外科領域に応用されている.その特徴は7mmまでの血管の凝固切離が可能なことで,特に動脈は壁内のコラーゲンやエラスチンが豊富なため,血管周囲の組織が剝離されていても十分にシール形成と閉鎖が可能である.これに対して静脈やリンパ管では,脈管壁が薄いために周囲組織を含めた収束凝固切離が安全である.使用時には周囲への熱の波及を考慮に入れ1~2mmほど離し,通電時には組織の牽引を緩めることでより安全性が向上する.LigaSureTMの特性を理解し用いることで,手術での迅速・安全・確実な血管切離が可能となり,手術手技の簡略化,手術時間の短縮が期待できる.

肝切離における超音波吸引装置(CUSATM)の使い方

著者: 仲成幸 ,   来見良誠 ,   川崎誠康 ,   塩見尚礼 ,   遠藤善裕 ,   谷徹

ページ範囲:P.443 - P.447

要旨:超音波吸引装置は肝切離時に最も多く使用されているサージカルデバイスである.超音波吸引装置を用いた肝切離の特徴は,超音波振動の組織に対する特性を利用して肝切離面に熱を加えることなく,肝実質のみを破砕吸引し肝切離面に肝臓の細かな脈管構造を露出することが可能なことである.超音波吸引装置の構造および超音波振動,洗浄,吸引などの機能を理解したうえで肝切離時の使用方法のコツを学べば,あらゆる肝切除において安全で有効に使用することが可能である.

マイクロ波メスを用いた肝切除術

著者: 野浪敏明 ,   黒川剛 ,   大輪芳裕

ページ範囲:P.449 - P.452

要旨:マイクロ波メスは,電磁波によって発生する誘電熱を用いて,凝固,止血を行う器具である.特に肝硬変を伴うことの多い肝細胞癌の肝切除時に用い,出血量を減少させる手段として有用である.肝切離線に沿って電極を肝表面から約1cm間隔で突き刺し,80W・20秒の焼灼凝固を行なったのち,肝を切離する.これより深い部位はCUSATMとイリゲーションバイポーラーで切離する.合併症として後出血,胆汁瘻,感染などがあり得る.腹腔鏡下肝切除術時の肝切離にも出血量を減少させる手段として有用である.マイクロ波は肝腫瘍などの凝固焼灼治療としても用いられる.

ラジオ波凝固装置を用いた肝離断術

著者: 國土典宏 ,   有田淳一 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.453 - P.457

要旨:ラジオ波凝固を用いた肝離断装置Dissecting Sealer(DS3.0TM:saline-linked radiofrequency coagulator)が最近開発された.使用法の要点は,まず肝切離線にtractionをかけて広げながら先端部分を軽く押し当て,生理食塩水を滴下しながら通電し,precoagulationを3~5mmの深さまで行う.つぎにprecoagulation部分をやや強めにtractionをかけて広げながら先端を強く押し当てて往復運動をさせて凝固部分を離断する.筆者らは必要に応じてPringle法下にcrush clamping法を併用している.Dissecting Sealerのprecoagulationによる良好な止血効果はこの器械の最大のメリットであるが,この範囲を十分に取りすぎると肝離断に要する時間が延長し,肝実質のロスも大きくなるので,止血効果とスピードの適度なバランスをとって離断を進めていくのがコツである.

開腹術での自動吻合器

著者: 下地英明 ,   西巻正 ,   大城崇司 ,   狩俣弘幸 ,   砂川宏樹 ,   松原洋孝

ページ範囲:P.459 - P.461

要旨:開腹術での自動吻合器として使用されることの多いPCEEA(R)およびILS(R)のそれぞれの特徴と,これらを使用する際の一般的な注意事項を概説した.PCEEA(R)はアンビルの抜去を容易にするティルトトップアンビル機構が,ILSは吻合のステープル高を調整できるギャップセッティング機構が備わっているのが特徴である.器械吻合に際しては,適切なサイズの器械の選択,吻合部の血流保持,アンビルシャフトへの確実な巾着縫合,吻合部への周囲組織・腸管壁の噛み込みや吻合部の捻れ防止が重要であり,実際の使用に際しては,それぞれの器械の特徴に精通し,使用法を習熟することが肝要である.

内視鏡外科手術での自動縫合器

著者: 木村仁 ,   平田公一 ,   西陰亜紀 ,   川本雅樹 ,   木村康利 ,   水口徹 ,   山口浩司 ,   古畑智久 ,   桂巻正 ,   清水研吾 ,   清水矩基雄

ページ範囲:P.463 - P.467

要旨:内視鏡下手術の適応の拡大と普及はめざましく,欧米と同様にわが国においても開腹術と同等の術後成績を得られることが確認されている.このような鏡視下手術の発展を支える背景については,各種要因の相乗効果ではあるが,術者の技量を十分に発揮し得るよう工夫が重ねられた機器の進歩によるところもきわめて大きい.本稿では内視鏡下手術に使用されている機器のうち自動縫合器に焦点を当てて,その使用法のコツを紹介するとともに,最新の自動縫合器であるSurgASSIST(R) Systemについて概説した.

カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・4

胃:良性疾患―腫瘍性病変

著者: 星野美奈 ,   小野祐子 ,   平石秀幸 ,   藤盛孝博

ページ範囲:P.413 - P.418

はじめに

 胃の良性腫瘍には上皮性腫瘍である腺腫,非上皮性腫瘍性である平滑筋腫や脂肪腫,血管腫,GIST(gastrointestinal stromal tumor)などがある.腫瘍類似病変には,生検組織で比較的高頻度に観察される過形成性ポリープやいわゆる胃底腺ポリープなどがある.また,炎症性類線維性ポリープは反応性病変に分類されているが,近年は腫瘍性疾患としての可能性が報告されている.

 本稿では,これらの病変について概説するとともに,その典型的な組織像を呈示する.

病院めぐり

六本木ヒルズクリニック

著者: 平田欽也

ページ範囲:P.468 - P.468

2004年4月に六本木ヒルズはオープンしました.施行区域の約11ヘクタールにオフィス,住宅,国際級ホテル,商業施設,映画館,美術館,会議場などの機能を融合させた,国内最大規模の市街地の再開発プロジェクトです.15,000人が働き,2,000人が住まい,休日には1日10万人が訪れます.

 本院はヒルズのオープンに遅れること半年,2003年10月に開院しました.54階建のオフィス棟である森タワーの6階に位置し,フロアの約1/3にあたる420坪に13診療科を標榜しています.画像診断部を中心に,一般外来,健診・ドックセンターがこれを挟んで位置しています.

健康保険人吉総合病院外科

著者: 木村正美

ページ範囲:P.469 - P.469

日本三大急流の1つである球磨川の流域に広がる人吉市は,かつては相良藩700年の歴史を持つ城下町でしたが,現在は人吉温泉や球磨焼酎,川下りで知られる観光の町です.この町が西南の役の激戦地であったことはあまり知られていません.田原坂の戦いに敗れた西郷隆盛は九州山地を縦走してやっとの思いで人吉にたどり着き,傷病兵の手当てのためしばらくこの地に留まりました.そして人吉城に籠城し,迫り来る官軍との間で球磨川を挟んで大砲の撃ち合いとなり,市街を戦禍に巻き込み多くの犠牲が出たということです.その時,当院のルーツである私立人吉病院(文久3年開業)は焼失しました.戦後復旧にあたって新たな病院建設の気運が高まり,住民の寄付により明治11年に設立された公立人吉病院が当院の前身にあたります.初代病院長は江戸,佐倉(千葉県)で西洋医学を修めた西道庵先生で,外科を中心に診療していたようです.その後も住民の支持・協力によって病院の拡充を行い,太平洋戦争終結まで公立病院として運営されました.昭和22年,政府の医療政策に従い,当院は国に移譲され社会保険病院として現在に至っています.明治11年の設立から127年の間,一度も移転することなく球磨川を見渡す西郷の宿営舎前で,設立の経緯通り住民に愛され信頼される地域の中核医療機関として発展してきました.

 現在,ベッド数274床・17診療科で,急性期特定入院加算,地域医療支援病院,管理型臨床研修指定病院,災害拠点病院など過疎化の進む僻地で急性期医療を中心に医療提供を行っています.外科は熊本大学から医師の派遣を受け,現在は昨年から病院長となった筆者のほかスタッフ5人,研修医1人で心臓外科以外の外科診療とIVR,内視鏡検査,救急医療などを受け持っています.また,外科学会,消化器外科学会,乳癌学会,胸部外科学会など主要学会の認定・関連施設となっています.平成16年の外科手術症例は食道癌6例,胃癌51例,大腸癌44例,肺癌16例,乳癌35例,肝切除11例,膵十二指腸切除5例,手術総数463例(全麻408例)で,平成3年から開始した腹(胸)腔鏡下手術も,胆摘はもとより肺,食道,胃,大腸,虫垂,ヘルニア(鼠径,腹壁瘢痕),乳腺と積極的に取り組んでいます.

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・28

虫垂周囲膿瘍は緊急手術が必要か

著者: 安田一弘

ページ範囲:P.470 - P.471

急性虫垂炎はありふれた疾患であるが,炎症の程度が様々で多彩な臨床像を呈するため,適切な診断と治療が求められる.外科医の診療は「虫垂炎に始まって,虫垂炎に終わる」とも言われる.

 「手遅れになると虫垂炎は恐い」ということで,見逃しや重症化を避けるため,これまでの治療は緊急手術が第一選択とされてきた.特に穿孔性虫垂炎や膿瘍形成性虫垂炎は手術の絶対的適応とされ,わが国では多くの症例に対して緊急手術が行われているのが現状である.しかし,膿瘍形成性虫垂炎に対する手術は虫垂根部の処理が難しく回盲部切除が必要になることもあり,術後は腹腔内膿瘍や創感染などの合併症をしばしば起こす.欧米では1980年代から膿瘍形成性虫垂炎に対する抗生剤治療や経皮的ドレナージなどの保存的治療と炎症軽快後の待機的虫垂切除術(interval appendectomy)の有効性が報告されるようになってきた.

私の工夫 手術・処置・手順

皮膚の感染性粉瘤に対する処置の工夫―アルギン酸カルシウムによる膿瘍腔ドレッシング

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.476 - P.477

【はじめに】

 皮膚の感染性粉瘤は外科外来でよく遭遇する疾患である.とりあえず切開・排膿を行うが,capsuleを含めての十分な摘出が行われず,治癒までに多くの日数を要している症例が多い.そこで,本疾患に対しての外来処置における工夫点および注意点を報告する.

臨床研修の現状―現場からの報告・8

倉敷中央病院外科

著者: 小笠原敬三

ページ範囲:P.479 - P.481

1 はじめに

 当院は,岡山県西部の医療圏にある急性期病院である.基本理念として,「患者本位」,「全人医療」,「高度先進医療」を掲げ,地域中核医療機関として,さらに臨床中心の高機能病院としての医療を志向している.ベッド数は1,116床で,1日平均在院患者数は1,103人を数え,外来患者数も1日平均2,916人,救急医療センター受診患者数は年間およそ66,000人となっている.

 2004年度より管理型研修指定病院として研修医(ジュニアレジデント)を受け入れ,現在,1年次24名,2年次24名が研修している.研修医の出身大学は,北海道大学から鹿児島大学まであり,日本全国から幅広く集まってきており,当院としても出身大学が偏らず,様々な医学教育を受けた研修医を受け入れるよう努力している.

外科学温故知新・9

感染対策

著者: 貞廣莊太郎

ページ範囲:P.483 - P.488

1 はじめに

 外科領域における創傷治癒,感染の概念,予防,診断・治療への発展の歴史は近代の医学そのものの歩みでもある.本稿でははじめに,現在の臨床に直接連なっていると考えられる18世紀以降の消化器外科における「感染」の原因,診断,治療の発展を概説し,ついで1990年以降のSSI(surgical site infection)への取り組みと最近の話題の一部にも触れたい.

胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・2

Billroth―1881年―まで(1)

著者: 高橋孝

ページ範囲:P.491 - P.496

【癌をみる「まなざし」―病理,病因の変遷】(表1)

 「癌がリンパ節に転移すること,転移リンパ節を郭清すると癌は治癒することを,いつ,誰が知ったのだろうか」,これが回答を求めている最初の質問です.1881年1月29日に胃癌に対する胃切除を世界に先駆けて成功させたときのBillrothの癌をみる「まなざし」を知りたいからであります.

 話を1926年度のノーベル賞にまで飛躍させます.ノーベル賞の光と陰を物語るいくつかの本1,2)に必ず紹介されるのが,1926年度のノーベル医学・生理学賞(受賞は1927年)のFibigerによる線虫スピロプテラ・ネオプラスティカによる発胃癌作用であります.この線虫はゴキブリのなかに住みつき,これを食べたネズミは胃のなかに感染し,そこに胃癌が発生する.そしてこの寄生虫卵は糞のなかに排出され,これを食べたゴキブリの体内で再び繁殖するという生活循環を1913年に報告したのです.その後,この寄生虫発癌説は,ごく限られたネズミの種では正しいらしいが,一般的な発癌説としては誤謬であることがわかったのです.

臨床研究

シベレスタットナトリウム投与による食道癌術後の過凝固状態の制御

著者: 竹村雅至 ,   大杉治司 ,   李栄柱 ,   西川隆之 ,   福原784F一朗 ,   岩崎洋

ページ範囲:P.499 - P.504

はじめに

 近年の外科手術手技および周術期管理の向上によって食道癌根治術後の手術死亡率や術後合併症は減少してきているものの,依然として胃癌,大腸癌などのほかの消化管手術に比べ術後合併症の発症率は高率である1,2).この術後合併症のうちでも肺合併症は10%以上とする報告が多く,術後多臓器不全の原因となることもある.さらに,食道癌手術では手術侵襲の指標とされる血中の好中球エラスターゼ(PMNE)やInterleukin-6(IL-6)などのサイトカインが高値で推移することが報告されており,これらにより活性化された好中球が血管内皮細胞障害を引き起こし,様々な臓器機能障害を発症するとされている3,4)

 これに対し,最近臨床で使用されるようになったシベレスタットナトリウム(エラスポール(R),小野薬品)は好中球エラスターゼの特異的阻害剤であり,生体侵襲によって惹起される全身性炎症反応(SIRS)に伴う急性肺障害(Acute lung injury:ALI)の改善効果があるとされている5,6).われわれの施設では,これまでこのシベレスタットナトリウムを食道癌根治術施行例の術終了直後から投与開始することで,術後IL-6値やエラスターゼ値が低値で推移し,肺障害の指標とされるPaO2/FiO2比(P/F ratio)が高値で推移することを報告してきた7,8).今回はさらに同様の投与方法を用い,シベレスタットナトリウムが術後の凝固能や血管内皮細胞障害に与える影響についてretrospectiveに検討した.

小児急性虫垂炎スコアの有用性

著者: 結城敬 ,   長尾知哉 ,   大久保浩毅 ,   清水義雄

ページ範囲:P.505 - P.508

はじめに

 急性虫垂炎は,小児急性腹症のなかで最も頻度の高い疾患であるにもかかわらず,診断の遅れから穿孔後に手術されることも稀ではない1).小児の虫垂は内腔が閉塞しやすいうえに壁が薄く脆弱なため2),炎症が速やかに全層に波及し平均50時間で穿孔すると言われているが3),ひとたび穿孔すると腹腔内膿瘍や皮下膿瘍,腸閉塞といった合併症の頻度が非常に高くなり4,5)再手術率が増加し,在院日数も延長する.小児の腹痛では,患児の訴えが不確実である点や身体所見の解釈が客観性に欠ける点なども加わって正確な虫垂炎の診断は決して容易ではなく,手術の適否に関する信頼できる指標が求められている.

 今回,われわれは小児急性虫垂炎スコアを作成し,手術適応および経過観察に有用な知見を得たので報告する.

臨床報告・1

Kirschner鋼線が骨盤腔内に迷入した1例

著者: 北野義徳 ,   白石治 ,   石川真平 ,   津田宏 ,   黒田幸作 ,   亀山雅男

ページ範囲:P.509 - P.512

はじめに

 整形外科領域における固定用鋼線を用いた骨接合術は,手術手技が簡便であることから多用されている.その合併症として胸・腹腔内,心大血管への迷入などが知られているが,わが国での報告例は少ない1,2).今回,われわれは変形性股関節症の手術時に用いられたKirschner鋼線(以下,K-wire)が骨盤腔内に迷入した症例を経験したので報告する.

術前に胃gastro-intestinal stromal tumorと診断した副脾の1例

著者: 宇野雅紀 ,   小林陽一郎 ,   宮田完志 ,   竹内英司 ,   後藤康友 ,   三宅秀夫

ページ範囲:P.513 - P.517

はじめに

 副脾とは,後胃間膜内で複数の間葉細胞塊から脾臓が発生する過程で,主脾以外に生じる脾の組織塊である.成人剖検例の前向き研究で19%に認められたと報告されており1),特に稀なものではない.また,組織学的構造や機能は主脾と同一であり,副脾自体が臨床上問題となることは少ない.本稿では,胃壁外発育性gastro intestinal stromal tumor(GIST)と診断して切除術を行った径6cmの副脾症例を報告する.

急性虫垂炎の発症を契機に診断した盲腸癌の1例

著者: 石井要 ,   鎌田徹 ,   林田有市 ,   吉本勝博 ,   田島秀浩 ,   神野正博

ページ範囲:P.519 - P.522

はじめに

 盲腸癌に急性虫垂炎が合併することは稀であり,その際に盲腸癌自体を術前に診断することは困難とされている1).今回,われわれは急性虫垂炎による盲腸周囲膿瘍で発症した盲腸癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

右下腹部痛を主訴とした処女膜閉鎖症の1例

著者: 濱田徹 ,   井寺奈美 ,   塚原宗俊 ,   清水敦 ,   金田文輝 ,   栗原克己

ページ範囲:P.523 - P.526

はじめに

 処女膜閉鎖症は稀な疾患で,そのほとんどは思春期に月経発来のための子宮および腟留血腫による症状で発見される1).今回,われわれは,右下腹部痛を主訴とした処女膜閉鎖症の1例を経験したので報告する.

発症機転に進行胃癌が関与したと思われる胃軸捻転症の1例

著者: 久保雅俊 ,   治田賢 ,   宮谷克也 ,   宇高徹総 ,   水田稔 ,   白川和豊

ページ範囲:P.527 - P.530

はじめに

 胃軸捻転症は比較的稀な疾患であり,横隔膜ヘルニアなどの横隔膜疾患に伴うことが多い.われわれが検索した限りでは胃癌を合併した胃軸捻転症の報告例1~3)は少数認めるが,胃癌が原因で発症した胃軸捻転症の報告例はない.今回,われわれは,進行胃癌によって発症したと考えられる胃軸捻転症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

小腸および大腸が嵌頓壊死した上腰ヘルニアの1例

著者: 若月俊郎 ,   村上雅一 ,   豊田暢彦 ,   野坂仁愛 ,   竹林正孝 ,   谷田理

ページ範囲:P.531 - P.533

はじめに

 腰ヘルニアは腰背部の解剖学的抵抗減弱部位に発生する稀な疾患で,上腰三角から発生する上腰ヘルニアと下腰三角から発生する下腰ヘルニアがある.今回,われわれは小腸および大腸が嵌頓壊死した左上腰ヘルニアを経験したので報告する.

十二指腸,横行結腸浸潤を伴った腸間膜原発デスモイド腫瘍の1例

著者: 曽山鋼一 ,   白鳥敏夫 ,   吉邑由佳 ,   竹本香織 ,   藤居隆太 ,   蒲町綾子

ページ範囲:P.535 - P.539

はじめに

 デスモイド腫瘍は腹壁,腹壁外,腹腔内とその発生部位により分類される線維腫症の1種で,腹腔内に発生する腹腔内デスモイドは比較的稀である.

 腹腔内デスモイドのなかでも8%を占める腸間膜デスモイドは稀な疾患であり1),術前診断が難しく,腹腔内腫瘤として手術されることが多い2)

 今回,われわれは十二指腸,横行結腸に浸潤した小腸間膜原発デスモイド腫瘍の1切除例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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