文献詳細
文献概要
胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・2
Billroth―1881年―まで(1)
著者: 高橋孝1
所属機関: 1たむら記念病院外科
ページ範囲:P.491 - P.496
文献購入ページに移動【癌をみる「まなざし」―病理,病因の変遷】(表1)
「癌がリンパ節に転移すること,転移リンパ節を郭清すると癌は治癒することを,いつ,誰が知ったのだろうか」,これが回答を求めている最初の質問です.1881年1月29日に胃癌に対する胃切除を世界に先駆けて成功させたときのBillrothの癌をみる「まなざし」を知りたいからであります.
話を1926年度のノーベル賞にまで飛躍させます.ノーベル賞の光と陰を物語るいくつかの本1,2)に必ず紹介されるのが,1926年度のノーベル医学・生理学賞(受賞は1927年)のFibigerによる線虫スピロプテラ・ネオプラスティカによる発胃癌作用であります.この線虫はゴキブリのなかに住みつき,これを食べたネズミは胃のなかに感染し,そこに胃癌が発生する.そしてこの寄生虫卵は糞のなかに排出され,これを食べたゴキブリの体内で再び繁殖するという生活循環を1913年に報告したのです.その後,この寄生虫発癌説は,ごく限られたネズミの種では正しいらしいが,一般的な発癌説としては誤謬であることがわかったのです.
「癌がリンパ節に転移すること,転移リンパ節を郭清すると癌は治癒することを,いつ,誰が知ったのだろうか」,これが回答を求めている最初の質問です.1881年1月29日に胃癌に対する胃切除を世界に先駆けて成功させたときのBillrothの癌をみる「まなざし」を知りたいからであります.
話を1926年度のノーベル賞にまで飛躍させます.ノーベル賞の光と陰を物語るいくつかの本1,2)に必ず紹介されるのが,1926年度のノーベル医学・生理学賞(受賞は1927年)のFibigerによる線虫スピロプテラ・ネオプラスティカによる発胃癌作用であります.この線虫はゴキブリのなかに住みつき,これを食べたネズミは胃のなかに感染し,そこに胃癌が発生する.そしてこの寄生虫卵は糞のなかに排出され,これを食べたゴキブリの体内で再び繁殖するという生活循環を1913年に報告したのです.その後,この寄生虫発癌説は,ごく限られたネズミの種では正しいらしいが,一般的な発癌説としては誤謬であることがわかったのです.
参考文献
1)馬場錬成:ノーベル賞の100年―自然科学三賞でたどる科学史.中公新書,2002
2)科学朝日(編):ノーベル賞の光と陰.朝日選書,1987
3)緒方知三郎,緒方富雄:癌腫の歴史.永井書店,1953
4)緒方知三郎,三田村篤志郎,緒方富雄:病理学總論下の巻.南山堂,1933
5)ピエール・ダルモン(著)・河原誠三郎,鈴木秀治,田川光照〔訳〕:癌の歴史.新評論,1997
6)堺 哲郎:Theodor Billrothの生涯略記(4).外科29:429-439,1967
7)Fisher B:A Vignette from breast cancer history. One hundred years after the Greenough report. J Am Coll Surg 200:484-486, 2005
8)Wangensteen OH, Wangensteen SO:The Rise of Surgery, Early Hospital Practice. Univ. Minnesota Press, 1981, p326
9)Thompson D, Goldin G:The Hospital;A social and architectural history. Yale Univ. Press, 1975
10)Norman JM(ed):Morton's Medical Bibliograpy. 4th ed. Scolar Press, 1991
11)Sigerist HE:The Great Doctors. WW Norton & Co, New York, 1933
掲載誌情報