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文献詳細

雑誌文献

臨床外科61巻5号

2006年05月発行

文献概要

外科学温故知新・10

創傷管理

著者: 岡村吉隆1

所属機関: 1和歌山県立医科大学第1外科

ページ範囲:P.647 - P.653

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1 はじめに

 各地の温泉地に行けば,効能に「切り傷,火傷……」と記載されている.温泉の保温効果や新陳代謝亢進が創傷治癒を促進すると考えられるが,鶴,鷺,鹿,猿,熊など,きずついた動物が温泉発見に関与した伝説は多い.病気の歴史は人類の歴史よりはるかに古く,創傷,感染,腫瘍など,地球に生命が誕生して以来,病気の実態に変化はないとさえ言われる.5億年前の貝の化石や100万年前の恐竜などの化石に,損傷や骨折などの明らかな証拠がある.人類も歴史に登場以来,つねに敵と戦わねばならなかった状況で,しばしばきずに見舞われたことを疑う余地はない.先史人は体内の病気は神秘的な存在と考えたが,体外の病気は自明であり,手当てが可能であった.その第一段階が創傷の保護であった.創傷の治癒が自分で確認できることも大きな関心を呼んだことは間違いない.

 最近,外科の各分野で話題になる低侵襲手術であるが,その条件の1つはきずの小ささである.いかに小さなきずでも低侵襲性においては薬による治療には及ばない.きずは疼痛,感染,美容など多くの問題を生む.外科医は細分化した専門領域の知識以外に,創傷管理という共通の問題に対処しなければならない.

参考文献

1)外須美天:麻酔の始まりと麻酔科学の進歩.臨外60:1451-1421,2005
2)W. J.ビショップ:外科の歴史.時空出版,2005
3)上山英明:華岡青洲先生 その業績とひととなり.医聖・華岡青洲顕彰会,1999
4)Peter D, Asmussen, Brigitte Sollner:創傷治癒の原理.ライフ・サイエンス,1999
5)真田弘美,中篠俊夫,宮地良樹,他(編),塩谷信幸(監修):創傷治癒.ブレーン出版,2005
6)松浦成昭,沖田鋼季,梅本麻由美,他:創傷治癒の分子機構.Surgery Frontier 10:121-126,2003
7)竹原和彦:創傷治癒と細胞増殖因子.Surgery Frontier 10:127-130,2003
8)日本脈管学会(編):下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療指針.2000
9)Fleck TM, Fleck M, Moidl R, et al:The Vacuum-assisted closure system for he treatment of deep sternal wound infections after cardiac surgery. Ann Thorac Surg 74:1596-1600, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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