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連載企画「外科学温故知新」によせて・2
手術管理,感染対策―産褥熱の征圧に挑んだSemmelweissの悲劇
著者: 佐藤裕12
所属機関: 1北九州市立若松病院外科 2日本医史学会
ページ範囲:P.808 - P.809
文献購入ページに移動ゼンメルワイスはこのことを直接の上司であるクライン教授に上申したが,かえって権威主義者の教授の怒りを買うところとなり,ゼンメルワイスの具申は無視されたのであった.そのためゼンメルワイスは気苦労から健康を害し,神経衰弱で倒れる寸前までになったという.その後,3週間ほどの休暇によって精神的安定を取り戻したゼンメルワイスがウィーンに戻ると,同僚の法医学のコレチュカ教授が解剖中に助手から受けた小さな傷から敗血症をきたして死去したことを知ったのであった.このコレチュカ教授の病理解剖を通じて,彼の死因が小さな傷から全身に拡がった敗血症であること,そしてこの敗血症にみられた臨床上の諸徴候と産褥熱のそれとがまったく同じであることに思い至ったゼンメルワイスは,「病理解剖を行った医師や医学生が,手指を洗うことなくそのままで病棟において産婦を診療することによって産褥熱が引き起こされている」との結論に達した.
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